頸部に外傷、打撲を受けた際、まず撮影されるのが頚椎レントゲン(頚椎X線)です。
頚椎レントゲンや頚椎CTを読影する際に、なんとなく
- 頚椎の配列(alignment)が整であること
- 骨折や脱臼がないこと
を確認すればいい・・・なんとなくはわかるけど、どこが何mm以下なら正常となると、ちょっと難しいですよね。
そこで今回は、頚椎レントゲン写真の見方を正常像を用いて解説しました。
頚椎レントゲン写真の正常像の読影方法
頚椎レントゲンを外傷で撮影する際には、
- 正面
- 側面
- 開口位正面
の3方向を撮影するのが基本となりますが、今回はもっとも重要な側面の読影方法について解説します。
症例は30歳代男性、頸部の外傷で来院されました。
頚椎レントゲン写真の側面像をみてみましょう。
椎体の解剖をチェック
まず椎体の解剖をチェックしましょう。
- C1は環椎
- C2は軸椎
とそれぞれ名前がついています。
C1は文字通り、軸椎であるC2を取り囲むように環状の構造を示します。
C1~C7部分に色をつけると次のようになります。
椎体をチェックする際に、椎間板の厚さをそれぞれのレベルでチェックしましょう。
頚椎では椎間板の厚さはどのレベルでも概ね同じくらいです。
今回の症例でもこの点は問題ありませんね。
また同時にこの椎体の前後に前縦靭帯や後縦靭帯の骨化の有無をチェックしましょう。
この椎体の位置関係がわかったところで、見るべき点を見ていきましょう。
4つのアライメントをチェック
頚椎の側面像に4つの線を頭の中もしくは指で追いながら引きましょう。
- 頚椎の前の線
- 椎体の後ろの線
- 椎弓の前の線(sublaminar line)
- 棘突起の先端を結んだ線(ただし、C1はここでは含まず)
この4つの線を引くと次のようになります。
環椎歯突起間距離(Atlanto-axial distance)をチェック
次に見るのは、C1である環椎とC2の先端である歯突起との距離です。
この環椎歯突起間距離(Atlanto-axial distance)を計測して
- 成人≦3mm
- 小児≦5mm
の正常範囲に収まっているかを確認します。
ここが開大している場合は、環軸椎の亜脱臼が疑われます。
椎体前縁の軟部組織の距離をチェック
続いて、椎体の前にある軟部陰影の距離をチェックします。
ここに線を引くと次のようになります。
C2-4レベルまではほぼ同じ厚さですが、C5以下では急に太くなります。
これは食道が現れるためです。
ではここの距離の正常値は、
- C2-4レベルでは成人でも小児でも≦7mm
- C4レベルではC4椎体前後径の4/10を超えない。(The cervical spine in trauma.W.B. Saunders,1978)
- C6レベルで小児≦14mm(C2-4レベルの約2倍)、成人≦22mm(C2-4レベルの約3倍)
と報告されています。
脊柱管前後径のチェック
最後に脊柱管の前後径を測定します。
脊柱管の前後径は、椎体の後ろ〜椎弓までの距離のことです。
この距離は>14mmが正常とされており、12mm以下は脊柱管狭窄として診断します。
なお、この脊柱管前後径は椎体前後径にほぼ等しいと言われています。
最後に
頚椎レントゲンの側面像の読影の仕方、各々の正常値についてまとめました。
今回参考にした書籍は、「手・足・腰診療スキルアップ」というものです。
書籍には開口位の読み方についても記載があります。
頚椎のみでなく整形外科領域について初心者でもわかりやすく読めるように書いてあり、オススメです。
この記事が頚椎レントゲンの正常像の読影で迷っておられる救急医療に携わる医療関係者に役立てば幸いです。
参考文献)
手・足・腰診療スキルアップ P65-67
研修医当直御法度第3版 P153