脊柱管狭窄症(読み方は「せきちゅうかんきょうさくしょう」、英語では、Spinal canal stenosis)は文字どおり
- 脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や神経根が圧迫されてさまざまな症状が現れる病気
のことです。
その原因として一番有名なのが、腰椎椎間板ヘルニアです。
ただし、それ以外にも脊柱管狭窄を起こす原因は様々です。
そこで今回は、
- 脊柱管狭窄とはどのようなものであり、
- どのような病態が原因となりうるのか
を図やイラストを用いてわかりやすく解説しました。
脊柱管狭窄症とは?
まず脊柱管とは、椎体(背骨)に囲まれた管状の空間を指します。
下の図のように、背骨は椎体と椎弓からなり、その間には脊髄(腰椎の場合は馬尾)が縦に通る空間があります。
その部分を脊柱管と言います。
脊柱管の中には、硬膜に包まれた脊髄やその周りの髄液が存在しています。
脊柱管狭窄症とは、この脊柱管が文字通り狭くなる病態です。
脊柱管狭窄症の原因は?
では、この脊柱管を狭くする原因にはどのような病態があるのでしょうか?
脊柱管狭窄の原因は大きく、
- 変形性脊椎症(狭義)
- 椎間板髄核の変性・偏位
- 椎間関節の変性
- 靭帯の肥厚・変性
- 脊椎配列異常
に分けることができます。
変形性脊椎症(狭義)
狭義の変形性脊椎症とは、椎体そのものの変性により椎体の主に端っこに起こる骨棘(こつきょく)の形成のことを指します。
上のように骨棘が椎体の後方の端っこにできると脊柱管狭窄及び神経根の走行路である神経孔を圧迫して、狭くすることがわかります。
椎間板髄核の変性・偏位
続いて、椎間板髄核の変性や偏位により脊柱管狭窄が起こる場合を見てみましょう。
いわゆる椎間板ヘルニア(hernia)や膨隆(bulging)と呼ばれる変化です。
椎間板が変性して、後方に偏位することにより上のように脊柱管が圧迫されます。
椎間関節の変性
椎間関節は、上の図のように、椎体の後ろ側にある下の椎弓の上関節突起と上の椎弓の下関節突起が作る関節です。
ここに変性や骨性増殖が起こると、脊柱管方向に進展して、脊柱管狭窄や神経根の圧迫を生じることがあります。
症例 50歳代女性 歩行障害、知覚障害、膝以下の筋力低下
Th11/12において両側の椎間関節の肥厚及び骨化を認めています。
また椎体の骨棘形成もあり。
さらに椎体の配列異常もあります。
それに伴い脊柱管狭窄及び神経孔の狭小化を認めています。
Th11/12の椎間関節症と診断され、手術となりました。
滑膜嚢胞
また椎間関節は滑膜関節であるため、変性により滑膜嚢胞(synovial cyst)が形成されることがあります。
これを
- (傍)椎間関節嚢胞(嚢腫)(facet cyst)
- 滑膜嚢胞(synovial cyst)
と呼びます。
下の図のように椎間関節との連続性を認める点がポイントであり、これを主にMRIの画像で確認することが重要です。
これが脊柱管狭窄や神経孔の狭小化の原因になることもあります。
関連記事:滑膜嚢胞(傍椎間関節嚢胞)とは?MRI画像診断のポイントは?
広義の変形性脊椎症と狭義の変形性脊椎症
ちなみに、狭義の変形性脊椎症は最初に説明したように、椎体における骨棘形成とほぼ同義でしたが、広義の変形性脊椎症とは、以下のように
- 椎間板(髄核)の変性・偏位
- 椎間関節の変性
を含むものです。
ですので、ここまで説明した
- 変形性脊椎症(狭義)
- 椎間板髄核の変性・偏位
- 椎間関節の変性
はまとめて変形性脊椎症(広義)として扱われることもあります。
詳しくはこちらをご覧ください。
靭帯の肥厚・変性
脊柱管狭窄に関与する靭帯には、下の図のように
- 黄色靭帯
- 後縦靭帯
の2種類があります。
これらが局所的あるいはびまん性に肥厚すると、以下のように脊柱管狭窄の原因となります。
上のように
- 後縦靭帯の肥厚は前から脊柱管や神経根を圧迫
- 黄色靭帯の肥厚は後から脊柱管や神経根を圧迫
することがわかります。
脊椎配列異常
最後に脊椎の配列異常による脊柱管狭窄です。
ここには、
- 変性すべり症(前方すべり、後方すべり、側方すべり)
- 後弯症
- 側弯症
が含まれます。
変性すべり症のうち、前方すべりは主に椎間関節の変性、分離症により起こります。
また後方すべりは椎間板の変性、側方すべりは偏在性の椎間板変性により起こリます。
このほか、椎体が後ろに弯曲してしまう後弯症や側方に弯曲してしまう側弯症も脊柱管狭窄の原因となります。
関連記事:腰椎分離症、辷り症とは?CT、MRI画像診断のポイントは?
最後に
脊柱管狭窄の原因となりうる病態についてまとめました。
最も有名なのはヘルニアですが、それ以外にも様々な原因があることがわかりましたね。
これらの病態は単発で起こることもありますが、複合的に起こるのが一般的です。
これらの評価には一般的には頚椎や腰椎のMRI検査が有効ですが、靭帯の骨化の有無などにはレントゲンやCT検査が有用です。
参考になれば幸いです( ^ω^ )