腰椎MRIの矢状断(しじょうだん)は、背骨を横から見た断面です。椎体と椎間板が積み木のように縦に並び、その後ろの脊柱管の中に硬膜嚢(こうまくのう)・脊髄円錐(せきずいえんすい)・馬尾(ばび)が見えます。腰痛や足のしびれでMRIを撮ったとき、最初に全体を見渡すのがこの断面です。

この記事では、画像診断cafeの正常な腰椎MRI(T2強調像の矢状断)に色を付けて、正中(まん中)の断面から外側へスライスを送りながら、椎体・椎間板・前縦靱帯と後縦靱帯・黄色靱帯・椎間関節・椎間孔と神経根を順に解説します。横断像と矢状断像の基本や無料ツールの使い方は腰椎MRIの見方|正常解剖を無料ツールでにまとめています。この記事は、そのうち矢状断を「前から後ろ」「まん中から外」へ1枚ずつ追う解説です。

先に結論:腰椎MRIの矢状断で見る順番と目印

  1. 高さを数える:仙骨(S1)から上へ、またはTh12から下へ数えて、L1〜L5を決めます
  2. 正中の前半分:椎体の並び(ずれ・つぶれ)、椎間板の高さと明るさ、椎体の前を前縦靱帯、後ろを後縦靱帯が走ります
  3. 正中の脊柱管:白い髄液をためた硬膜嚢の中で、脊髄が先細りして終わるところが脊髄円錐、その下は馬尾です
  4. 正中の後ろ半分:脊柱管の後ろの壁が黄色靱帯、その後ろに棘突起、棘突起どうしを棘間靱帯と棘上靱帯がつなぎます
  5. 少し外側:上下の関節突起が組み合わさる椎間関節が縦に並びます
  6. さらに外側:椎弓根の下の椎間孔を神経根が通ります。L4神経根はL4/5の椎間孔を出ます

腰椎MRIの矢状断の向きと高さの数え方

  • 画像の左が前(おなか側)、右が後ろ(背中側)、上が頭側です
  • 画像診断cafeでは1枚目が外側(椎間孔)、7枚目が正中の断面です
  • T2強調像では、髄液・水分を多く含む椎間板は白く、靱帯や骨の皮質は黒く見えます

高さは、仙骨のいちばん上(S1)から上へ数えるか、肋骨の付くTh12から下へ数えるのが基本です。腰椎が4個や6個に見える移行椎の人もいるため、数え方に迷うときは椎体の数え方と第12胸椎(Th12)はどこ?を参考にしてください。腰椎がゆるやかに前へカーブ(前弯)しているのが正常の形です。

正中の断面:硬膜嚢・脊髄円錐・馬尾

腰椎MRI 矢状断 正中 硬膜嚢 脊髄円錐 馬尾 L4/5椎間板
正中の断面です。椎体の後ろに緑の硬膜嚢が縦に伸び、その上のほうで脊髄が先細りして終わるところ(ピンク)が脊髄円錐です。その下は黄色の馬尾が硬膜嚢の中を下へ流れます。水色はL4/5椎間板です。
画像:画像診断cafe(正常例)

  • 硬膜嚢は、脊髄と馬尾を包む硬膜の袋で、中は髄液で満たされています。T2強調像では白い帯として見え、仙骨の上のほうで袋の底になります
  • 脊髄円錐は脊髄の下の端です。成人504人のMRIを調べた研究では、脊髄円錐の先端は平均でL1椎体の下3分の1の高さにあり、Th12椎体の中ほどからL3椎体の上3分の1までの幅がありました(Saifuddin 1998)。この例ではTh12/L1のあたりで終わっています
  • 馬尾は、脊髄円錐から下へ伸びる腰と仙骨の神経根の束です。馬のしっぽのように見えることから名づけられました。正常では硬膜嚢の後ろ側に、細い線がゆるやかに並びます

見るポイント:脊髄円錐の先端がどこにあるか、円錐が太くなっていないか、馬尾が1か所に固まったり、くねくねと蛇行したりしていないかを確認します。

正中の前半分:椎体・椎間板と2本の縦靱帯

腰椎MRI 矢状断 前縦靱帯 後縦靱帯 L3椎体 L3/4椎間板 椎体静脈
正中の断面の前半分を拡大しました。紫のL3椎体と水色のL3/4椎間板の前を、黄色の前縦靱帯が縦に走ります。椎体の後ろにはオレンジの後縦靱帯が走り、L2椎体の後ろの真ん中に、椎体静脈(赤)の入り口が見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

  • 椎体:角のとれた四角形で、上下の面(終板)は平らです。骨の中は骨髄で、年齢とともに脂肪が増えて明るくなります
  • 椎間板:中心のやわらかい髄核と、外側の線維輪からなります。若い人ではT2強調像で髄核が白く見え、変性が進むと水分が減って黒くなり、高さも低くなります
  • 前縦靱帯:椎体と椎間板の前の面を、上から下まで覆う幅の広い靱帯です。背骨が後ろへ反りすぎるのを防いでいます
  • 後縦靱帯:椎体の後ろの面(脊柱管の前の壁)を走る靱帯です。前縦靱帯より細く、椎間板のところでは幅が広がって椎間板に付きます
  • 椎体静脈(basivertebral vein):椎体の後ろの真ん中から入る静脈で、椎体の後ろの壁に小さな切れ込みとして見えます

見分けのポイント:椎体静脈の切れ込みは正常の構造で、骨折線と間違えないようにします。椎体の上下の面に見える小さなくぼみはシュモール結節、終板の近くの骨髄の信号変化はModic分類で表します。

正中の後ろ半分:黄色靱帯・棘突起と後ろの靱帯

腰椎MRI 矢状断 黄色靱帯 硬膜嚢 L4棘突起 棘間靱帯 棘上靱帯
正中の断面の後ろ半分を拡大しました。緑の硬膜嚢の後ろの壁に、黄色の黄色靱帯が見えます。その後ろに紫のL4棘突起があり、棘突起どうしの間を水色の棘間靱帯が、棘突起の先を縦にオレンジの棘上靱帯がつないでいます。
画像:画像診断cafe(正常例)

  • 黄色靱帯:上下の椎弓板をつなぐ、弾力のある厚い靱帯で、脊柱管の後ろの壁になります。年齢とともに厚くなると、後ろから硬膜嚢を押して脊柱管狭窄の原因になります
  • 硬膜外脂肪:黄色靱帯と硬膜嚢の間には、T2強調像・T1強調像で白く見える脂肪があります。脂肪が増えすぎると硬膜嚢を圧迫することがあります(硬膜外脂肪腫症)
  • 棘間靱帯:上下の棘突起の間を埋める靱帯です
  • 棘上靱帯:棘突起の先端を縦につなぐ、ひも状の靱帯です

覚え方:脊柱管を前後からはさむのが後縦靱帯(前の壁)と黄色靱帯(後ろの壁)です。どちらも厚くなったり骨になったりすると脊柱管が狭くなります(後縦靱帯骨化症、黄色靱帯骨化症)。

少し外側の断面:椎間関節

腰椎MRI 矢状断 椎間関節 上関節突起 下関節突起 L3椎体 L4椎体
正中から少し外へ送った断面です。紫のL3椎体とL4椎体の後ろに、L3から下へ伸びる水色の下関節突起と、L4から上へ伸びる黄色の上関節突起が向かい合い、その間のピンクが椎間関節(L3/4)です。
画像:画像診断cafe(正常例)

  • 椎間関節は、上の椎骨の下関節突起と、下の椎骨の上関節突起がかみ合ってできる関節で、左右に1つずつあります
  • 矢状断では、椎間関節が上下にくさりのように並びます。変形性の変化では、関節のすき間が狭くなり、骨が厚くなります
  • 椎間関節から脊柱管へ向かって袋ができると、神経根を押すことがあります

上関節突起と下関節突起の間の細い部分(関節突起間部)が切れるのが腰椎分離症で、矢状断でも確認できます(腰椎分離症・すべり症のCT・MRI画像診断)。

さらに外側の断面:椎間孔と神経根

腰椎MRI 矢状断 椎間孔 L4神経根 L5神経根 S1神経根 L4/5椎間板
さらに外側の断面です。紫のL4椎体と灰色のL5椎体の間に水色のL4/5椎間板があり、その後ろの椎間孔の上のほうを緑のL4神経根が通ります。下の椎間孔にはピンクのL5神経根、仙骨にはS1神経根(紫)が見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

椎間孔は、上下の椎弓根の間にできる穴で、矢状断では逆さにした涙のしずくや鍵穴のような形に見えます。前が椎体と椎間板、後ろが椎間関節です。

  • 神経根は椎間孔の上のほう、上の椎弓根のすぐ下を、白い脂肪に囲まれて通ります
  • 腰椎では、神経根の番号は上の椎骨と同じです。L4神経根はL4椎弓根の下、つまりL4/5の椎間孔を出ます
  • 椎間孔の下のほうには椎間板があり、椎間板が外側へはみ出すと(外側型ヘルニア)、その椎間孔を出る神経根を押します

見るポイント:神経根のまわりの白い脂肪が残っているかどうかで、椎間孔が狭くなっていないかを判断します。脂肪が消えて神経根がつぶれて見えるときは椎間孔狭窄を考えます。どのヘルニアがどの神経根を押すかは腰椎椎間板ヘルニアと圧排する神経根の関係で解説しています。

よく間違える構造・正常変異

  • 椎体静脈の切れ込み:椎体の後ろの真ん中の小さなくぼみは正常です。骨折と区別します
  • 移行椎:L5が仙骨とくっついたり(仙骨化)、S1が腰椎のように離れたり(腰椎化)すると、高さの数え間違いが起こります(椎体の数え方と移行椎)
  • 脊髄円錐の高さ:先端の高さには個人差があります。明らかに低い位置にある、または円錐が太いときは、脊髄係留や脂肪腫を考えます(脂肪脊髄髄膜瘤(脊髄脂肪腫)のMRI)
  • 馬尾の蛇行:狭窄部の上で馬尾がくねくねと曲がって見えるのは、正常ではなく狭窄の間接的なサインです(馬尾弛緩(redundant nerve roots))
  • 椎間板の黒さ:年齢とともに椎間板は黒くなります。症状のない人にもよく見られるため、黒いだけで痛みの原因とは決められません
  • 仙骨の神経根の袋:仙骨の中の丸い水の袋は、多くは症状のない神経根嚢胞です

この解剖が役立つ病気

脊椎MRI全体の読む順番は脊椎MRIの読み方、脊椎の記事一覧は脊椎MRI・CT画像診断まとめにあります。

画像診断cafeで自分で確かめる

この記事の図は、正常な腰椎MRIをタップすると解剖名がわかる無料ツール「画像診断cafe」から作りました。腰椎MRI 矢状断の正常解剖(画像診断cafe)では、外側の椎間孔から正中まで7枚の断面を動かしながら、椎体・椎間板・靱帯・神経根・脊髄円錐を色と名前で確かめられます。

スマートフォンではアプリも使えます。iPhoneはApp Storeで「画像診断cafe」と検索してください。AndroidはGoogle Play(画像診断cafe)からインストールできます。横断像は同じシリーズの「腰椎MRIの正常解剖(横断)」の記事で解説しています。

腰椎MRIの矢状断でよくある疑問(Q&A)

Q. 脊髄はどこまであって、どこから馬尾になりますか?
成人では、脊髄の下の端(脊髄円錐)は多くの人でL1〜L2の高さにあり、そこから下は馬尾になります(Saifuddin 1998)。腰椎の下のほうの脊柱管には脊髄はなく、神経根の束である馬尾が入っています。

Q. 椎間板が黒いと言われました。異常ですか?
T2強調像で椎間板が黒く見えるのは、水分が減った変性の状態です。年齢とともに多くの人に見られ、症状のない人にもあります。黒いことだけで痛みの原因とは決められず、ヘルニアや神経根の圧迫があるかどうかとあわせて判断します。

Q. 神経根は矢状断と横断のどちらで見ればよいですか?
椎間孔の中の神経根は外側の矢状断で、脊柱管の中を下っていく神経根(外側陥凹)は横断像で見るとわかりやすくなります。ヘルニアがどの神経根に当たっているかは、両方を見比べて判断します。

あわせて読みたい

参考文献

  1. Saifuddin A, Burnett SJ, White J. The variation of position of the conus medullaris in an adult population. A magnetic resonance imaging study. Spine (Phila Pa 1976). 1998;23(13):1452-6. PubMed

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