腰椎椎間板ヘルニアは腰の背骨である腰椎の間にある椎間板が脱出してしまう病気です。
- どの程度脱出するか
- どの部位に脱出するか
ということは、圧迫する神経根との位置関係を見る上で重要であり、症状との関係で非常に重要です。
同じ椎間板の脱出・偏位をするものを膨隆(bulging)と呼ぶことがありますが、その違いは何でしょうか?
また脱出する部位によりどのように分類されるのでしょうか?
そこで今回は腰椎椎間板ヘルニアについて、その分類と、圧迫する神経根の関係について図(イラスト)と実際のMRI画像を用いてまとめました。
椎間板ヘルニアとは?
椎間板ヘルニアは下の図のように線維輪の断裂を伴い、脊柱管内に脱出したものです。
髄核が後ろに飛び出すと、下の図ように神経根を圧迫することがあります。
これにより様々な症状を起こすことになります。
ちなみに後縦靭帯の断裂は必須ではなく、伴う場合と伴わない場合があります。
ヘルニアと膨隆(bulging)の違いは?
似たような病態に膨隆(読み方は「ぼうりゅう」英語表記でbulgingとしばしば記載されます)があります。
これは椎間板が変性・偏位して飛び出してくる点は同じなのですが、その範囲がヘルニアよりも広く、
- 突出が椎間板の1/4周以下(つまり90°以下)→ヘルニア
- 突出が椎間板の1/4周以上(つまり90°以上)→膨隆
と分類されています。
椎間板ヘルニアの分類は?
主にMRIにより評価される椎間板ヘルニアですが、
- どの程度、突出するか。
- どこに突出するか。
で分類されます。
椎間板ヘルニアの突出の程度による分類
まず、ヘルニアの脱出の程度により上の図のように
- 突出(protrusion):突出した椎間板内容物の最大径が突出した基部の長さを超えない場合。
- 脱出(extrution):突出した椎間板内容物の最大径が突出した基部の長さを超える場合。
- 遊離(sequestration):椎間板との連続性が失われて、文字通り遊離した場合。
の3つに分けることができます。
椎間板ヘルニアの局在(どこに突出するか)による分類
またヘルニアがどこに突出するかで上の図のように
- 後正中型(正中型)Central type
- 後外側型(傍正中型)posterolateral type
- 椎間孔内外側型(椎間孔外側型)intraforaminal type、Lateral type
- 椎間孔外外側型(椎間孔外型)extraforaminal type、far-lateral type
の4つに分けることができます。
頻度は、後外側型(傍正中型)が70-80%と最多で、次いで後正中型(正中型)が15-20%が続き、この2つがほとんどを占めるということになります。
このヘルニアがどこに突出するかということは、圧迫する神経根との関係で重要です。
ヘルニアと圧迫される神経根の関係は?
では、ヘルニアとそれにより圧迫される神経根の関係はどうでしょうか?
それを考える前に、そもそも何番目の神経根がどこを走行しているかを理解する必要があります。
L4/5で考えて見ましょう。
上のように、神経孔をL4の神経根が走行し、L5以降の神経根は脊柱管内で順番に並びます。
これとヘルニアの関係を示すと次のようになります。
すなわち、
②後外側型(最多)
③椎間孔内外側型
→L5を圧迫する可能性あり。
③椎間孔内外側型
④椎間孔外外側型
→L4を圧迫する可能性あり。
ということがわかります。
上に述べたように、後外側型(傍正中型)が70-80%と最多ですので、
- L4/5のヘルニアはL5神経根を圧迫することが多い。
ということができます。
ちなみに、一般的に表すと以下のようになります。
L4/5と具体的に見た方がわかりやすいかもしれませんね(^_^;)
症例 30歳代 男性
腰椎MRIのT2強調像の矢状断像です。
どうでしょうか?
L4/5の椎間板に変性(信号低下)を認めています。
軽度椎間板腔の減高を認め、椎間板が背側に突出しているのがわかります。
横断像を見てみると、左後外側型のヘルニアを認めています。
そして左のL5の神経根を圧迫している可能性があることがわかります。
左後外側型の腰椎椎間板ヘルニア(左のL5の神経根を圧迫している可能性あり)と診断されます。
最後に
腰椎の椎間板ヘルニアのMRI画像を読む上で必要なヘルニアの分類についてまとめました。
また、ヘルニアの部位により圧迫される神経根が異なり、それが具体的にどこの神経根なのかということがこれでおわかりいただけたと思います。
参考になれば幸いです( ^ω^ )