足関節MRIの横断(アキシャル)は、足首を輪切りにした断面です。足首のまわりには、骨を取り囲むように前・内側・外側・後ろの4つのグループの腱が並び、その間を動脈・静脈・神経が通ります。腱の病気(腱鞘炎・断裂・脱臼)を見るときに、いちばん役に立つ断面です。

この記事では、画像診断cafeの正常な足関節MRI(横断)に色を付けて、前脛骨筋・長母趾伸筋・長趾伸筋・長腓骨筋・短腓骨筋・後脛骨筋・長趾屈筋・長母趾屈筋・アキレス腱と、脛骨神経・後脛骨動脈・前脛骨動脈・深腓骨神経の位置を、高さごとに解説します。靱帯の見つけ方は足関節MRIの正常解剖ツール(3方向)、外側靱帯は前距腓靱帯(ATFL)とは?で扱っています。

先に結論:足関節MRI横断で腱を見つける目印

  1. 前(伸筋腱):内側から前脛骨筋腱→長母趾伸筋腱→(前脛骨動脈・深腓骨神経)→長趾伸筋腱の順に並びます。前脛骨筋腱がいちばん太く、いちばん内側です
  2. 内側(内果の後ろ):前から後脛骨筋腱→長趾屈筋腱→動脈・静脈・脛骨神経→長母趾屈筋腱。「Tom, Dick And Very Nervous Harry」と覚えます
  3. 外側(外果の後ろ):短腓骨筋腱が骨に近い側(前内側)、長腓骨筋腱がその外側(後外側)に重なるように並びます
  4. 後ろ:皮膚のすぐ下の、横長の楕円形の黒い腱がアキレス腱です
  5. 長母趾屈筋は低い位置まで筋肉が残る:足関節のすぐ上でも筋肉(筋腹)が見えるのが正常です
  6. 腱は全部黒が正常:腱の中が白い、太い、まわりの腱鞘に液体が多い場合は異常を考えます

足関節MRIの横断で見えるもの

横断では、画面の上が前(足の甲側)、下が後ろ(かかと側)です。この記事の図は画面の左が外側(腓骨側)、右が内側(脛骨側)になっています。左右は撮り方や左右の足で変わるので、腓骨(細い方の骨)がある側が外側と覚えておくと迷いません。

スライスは上(すね)から下(かかと)へ進めます。この記事では、果部の上→前の拡大→距腿関節→内果の後ろの拡大→踵骨の5枚で、腱と神経血管の位置を追います。

果部の上:4つのグループの腱がそろう高さ

足関節MRI 横断 果部の上 前脛骨筋腱 長母趾伸筋腱 長趾伸筋腱 腓骨筋 後脛骨筋腱 長趾屈筋腱 脛骨神経 長母趾屈筋 アキレス腱
脛骨(中央の大きな骨)と腓骨(左の小さな骨)が並ぶ、足関節のすぐ上の高さです。番号1〜3が前の伸筋腱、4・5が外側の腓骨筋、6・7が内側の屈筋腱、8が脛骨神経、9が長母趾屈筋、10がアキレス腱です。
画像:画像診断cafe(正常例)

足関節の少し上では、骨のまわりに4つのグループがそろって見えます。

前(伸筋のグループ):脛骨の前に、内側から前脛骨筋腱(1)、長母趾伸筋腱(2)、長趾伸筋(3)が並びます。いずれも足首を上に反らせる(背屈)筋で、深腓骨神経に支配されます。

外側(腓骨筋のグループ):腓骨の後ろに短腓骨筋(4)と長腓骨筋腱(5)が並びます。この高さでは短腓骨筋はまだ筋肉(筋腹)が残っていて、長腓骨筋はすでに腱になっています。足を外へ返す(外がえし)筋で、浅腓骨神経に支配されます。

内側(深い屈筋のグループ):脛骨の後ろ内側に、後脛骨筋腱(6)と長趾屈筋腱(7)、その後ろに脛骨神経(8)と後脛骨動脈・静脈が並びます。

後ろ:中央の後ろの大きな筋肉が長母趾屈筋(9)、皮膚の近くの横長の黒い腱がアキレス腱(10)です。長母趾屈筋は足関節の近くまで筋肉が残るのが特徴で、腱だけを探すと見落とします。

拡大:足首の前(伸筋腱と前脛骨動脈)

足関節MRI 横断 拡大 前脛骨筋腱 長母趾伸筋腱 前脛骨動脈 深腓骨神経 長趾伸筋 大伏在静脈
足首の前を拡大した図です。右(内側)から前脛骨筋腱(1)、長母趾伸筋腱(2)、その奥に前脛骨動脈(3)と深腓骨神経(4)、左に長趾伸筋(5)が並びます。右端の6は皮下を走る大伏在静脈です。
画像:画像診断cafe(正常例)

前の腱は、内側から前脛骨筋腱→長母趾伸筋腱→前脛骨動脈と深腓骨神経→長趾伸筋腱(→第三腓骨筋)の順です。英語の頭文字で「Tom Has Very Nice Dog Pet(Tibialis anterior, Hallucis, Vessels, Nerve, Digitorum, Peroneus tertius)」と覚える方法もあります。

前脛骨筋腱はいちばん太く、いちばん内側で、皮膚のすぐ下にあります。前脛骨動脈と深腓骨神経は、長母趾伸筋腱と長趾伸筋腱の間の奥、脛骨の前面のすぐ上を走ります。足首より下では前脛骨動脈は足背動脈と名前が変わります。

前の腱は、伸筋支帯という帯の下を通ります。伸筋腱の病気と伸筋支帯の解剖はNgら(2013)が詳しくまとめています。内側の皮下を走る大伏在静脈は、内果の前を通るのが目印です。

距腿関節の高さ:内果と外果の後ろ

足関節MRI 横断 距腿関節 距骨 腓骨筋腱 後脛骨筋腱 長趾屈筋腱 長母趾屈筋腱 脛骨神経 アキレス腱
距骨(中央の四角い骨)の上の部分が見える、足関節の高さです。外側では短腓骨筋腱(4)と長腓骨筋腱(5)が外果の後ろに、内側では後脛骨筋腱(6)・長趾屈筋腱(7)・脛骨神経(8)が内果の後ろに並びます。9が長母趾屈筋腱、10がアキレス腱です。
画像:画像診断cafe(正常例)

距骨が見える高さでは、腱はほとんど細い腱になっています。

外側では、短腓骨筋腱と長腓骨筋腱が外果(腓骨の下端)の後ろの溝に前後に重なって入り、上腓骨筋支帯という帯で押さえられています。短腓骨筋腱が骨側(前)、長腓骨筋腱が外側(後ろ)です。短腓骨筋腱は外果の後ろで平たく三日月形に見えることがあり、縦に裂ける縦断裂がおきやすい場所です(Wang 2005)。上腓骨筋支帯が傷むと腱が外果の前へずれる腓骨筋腱脱臼になります(上腓骨支帯損傷による腓骨筋腱脱臼のMRI画像所見)。

内側では、内果のすぐ後ろに後脛骨筋腱、その後ろに長趾屈筋腱が並びます。後脛骨筋腱は長趾屈筋腱より明らかに太いのが正常で、同じくらいに細く見えたら後脛骨筋腱の断裂や萎縮を疑います。

長母趾屈筋腱は、ほかの屈筋腱から離れて距骨の後ろの真ん中を通ります。距骨の後ろの2つの突起(内側結節と外側結節)の間の溝を通るためで、外側結節が分かれた三角骨があると、ここで腱が擦れて痛むことがあります(三角骨(足首の副骨)とは?)。

拡大:内果の後ろ(足根管)の並び

足関節MRI 横断 拡大 足根管 後脛骨筋腱 長趾屈筋腱 後脛骨動脈 後脛骨静脈 脛骨神経 長母趾屈筋腱 屈筋支帯
内果の後ろ下を拡大した図です。前から後脛骨筋腱(1)、長趾屈筋腱(2)、神経と血管(3〜5)、長母趾屈筋腱(6)が並び、外側を屈筋支帯(7)が覆っています。
画像:画像診断cafe(正常例)

内果の後ろ下で、屈筋支帯という帯に覆われたトンネルを足根管と呼びます。中を通るものは、前から後脛骨筋腱(Tom)→長趾屈筋腱(Dick)→後脛骨動脈(And)・静脈(Very)→脛骨神経(Nervous)→長母趾屈筋腱(Harry)の順です。

この症例では、脛骨神経が動静脈より少し前に写っています。神経と動静脈の前後は高さや人によって入れ替わることがあり、「腱2本→神経血管束→長母趾屈筋腱」という大きな並びで覚えておけば十分です。脛骨神経は足根管の中やその少し先で内側足底神経と外側足底神経に分かれるため、2つの点に見えることもあります。

足根管の中にガングリオン、静脈瘤、腫瘍などができて脛骨神経が圧迫されると、足の裏のしびれや痛み(足根管症候群)の原因になります(ガングリオンとは?、神経鞘腫と神経線維腫のMRI画像診断)。

踵骨の高さ:腓骨筋腱と足根管の続き

足関節MRI 横断 踵骨 短腓骨筋腱 長腓骨筋腱 後脛骨筋腱 長趾屈筋腱 長母趾屈筋腱 脛骨神経 屈筋支帯 アキレス腱
踵骨(下の大きな骨)が見える高さです。左(外側)に短腓骨筋腱(1)と長腓骨筋腱(2)、右(内側)に後脛骨筋腱(3)・長趾屈筋腱(4)・脛骨神経(5)・長母趾屈筋腱(6)と屈筋支帯(7)、後ろにアキレス腱(8)が見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

かかとの高さでは、腓骨筋腱は踵骨の外側の面に沿って前下へ進みます。踵骨の外側には腓骨筋滑車という小さな出っ張りがあり、その上を短腓骨筋腱、下を長腓骨筋腱が通ります。短腓骨筋腱は第5中足骨の付け根へ、長腓骨筋腱は立方骨の下を回って足の裏を横切り、第1中足骨の付け根へ向かいます。

内側では、後脛骨筋腱は舟状骨へ向かって前へ進みます。舟状骨の付着部の近くでは腱が扇状に広がり、少し白っぽく見えるのは正常です。副舟状骨(外脛骨)があると、ここで痛みの原因になります(外脛骨(副舟状骨)とは?)。長母趾屈筋腱は踵骨の載距突起の下を通り、母趾へ向かいます。

アキレス腱は踵骨の後ろの下の方に付きます。正常のアキレス腱は横長の楕円形で、前の面が平らかややくぼむ形です。前の面が丸く膨らむ、中が白い、といった変化はアキレス腱症や部分断裂を考えます(アキレス腱付着部炎・アキレス腱炎・周囲炎の違い)。

よく間違える構造・正常変異

  • マジックアングル効果:腓骨筋腱や後脛骨筋腱が果部の下でカーブする所は、短いTEの画像で白っぽく見えることがあります。T2強調像で黒ければ正常と考えます(Magic angle effectとは?)
  • 長母趾屈筋腱の腱鞘の液体:長母趾屈筋腱の腱鞘は足関節とつながっていることがあり、関節液が多いと腱のまわりに液体が見えます。それだけで腱鞘炎とは言えません
  • 第四腓骨筋・副ヒラメ筋:腓骨筋腱の近くや足根管の近くに、余分な筋肉が見える正常変異があります。腫瘤と間違えないようにします(副ヒラメ筋の画像所見)
  • 短腓骨筋の筋腹が低い:短腓骨筋の筋肉が外果の近くまで残る人もいて、腱が混み合う原因になります(Wang 2005)
  • 副骨:三角骨・外脛骨・腓下骨などの副骨は骨折と間違えやすい構造です(過剰骨(副骨)とは?)

この解剖が役立つ病気

画像診断cafeで自分で確かめる

この記事の画像は、正常なMRIをタップすると解剖名がわかる無料ツール「画像診断cafe」から作りました。足関節MRI横断の正常解剖(画像診断cafe)では、すねからかかとまでスライスを動かしながら、それぞれの腱が上から下へどう移動するかを色分けで追えます。冠状断・矢状断も同じツールで見られるので、靱帯の位置とあわせて確かめてください。

スマートフォンではアプリも使えます。iPhoneはApp Storeで「画像診断cafe」と検索してください。AndroidはGoogle Play(画像診断cafe)からインストールできます。アプリの紹介は画像診断cafeアプリを公開しました、足首の三角靱帯は三角靱帯(足首の内側側副靱帯)とはどこ?で解説しています。

足関節MRIの横断でよくある疑問(Q&A)

Q. 後脛骨筋腱と長趾屈筋腱はどうやって見分けますか?
A. 内果のすぐ後ろ、骨にいちばん近いのが後脛骨筋腱で、その後ろが長趾屈筋腱です。正常では後脛骨筋腱の方が明らかに太く見えます。下へ追うと、後脛骨筋腱は舟状骨へ、長趾屈筋腱は足の裏へ向かうので、行き先でも確かめられます。

Q. 長腓骨筋腱と短腓骨筋腱はどちらが前ですか?
A. 外果の後ろでは、短腓骨筋腱が骨に近い前側、長腓骨筋腱がその後ろ外側です。「短い方が骨に近い」と覚えます。かかとの高さでは、腓骨筋滑車の上に短腓骨筋腱、下に長腓骨筋腱が通ります。

Q. 足根管はどの高さで見ればよいですか?
A. 内果の後ろ下から踵骨の内側にかけて、屈筋支帯に覆われた範囲です。横断で内果の下の端から踵骨の載距突起の高さまでを追い、後脛骨筋腱・長趾屈筋腱・神経血管束・長母趾屈筋腱の並びと、間にできものがないかを確認します。

参考文献

  1. Ng JM, Rosenberg ZS, Bencardino JT, et al. US and MR imaging of the extensor compartment of the ankle. Radiographics. 2013;33(7):2047-64. PubMed
  2. Wang XT, Rosenberg ZS, Mechlin MB, et al. Normal variants and diseases of the peroneal tendons and superior peroneal retinaculum: MR imaging features. Radiographics. 2005;25(3):587-602. PubMed
  3. Rosenberg ZS, Beltran J, Bencardino JT. MR imaging of the ankle and foot. Radiographics. 2000;20 Spec No:S153-79. PubMed

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