
先に結論:アキレス腱が太い=腱に脂質が溜まっている可能性。画像で厚みと内部を確認し、脂質の検査につなげる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | コレステロールを含む細胞が腱に溜まった塊。アキレス腱が最も多い |
| 背景 | 家族性高コレステロール血症(FH)で特徴的。ほかの原因もあるため脂質の検査が必要 |
| 画像 | X線・エコーで腱の厚みを測る。MRIでは腱内の脂質や形を調べられる |
| 区別が要る病気 | アキレス腱症、付着部炎、痛風結節、リウマチ結節、まれな遺伝性の脂質蓄積症 |
| 見つけたら | 血液検査(脂質)と家族歴の確認。内科・循環器内科・脂質外来へ |
腱黄色腫とは
黄色腫は、コレステロールなどの脂質を取り込んだ細胞が皮膚や腱などに溜まってできる、黄色みを帯びた塊です。体のどこにできるかで、画像診断の教科書では次のように分けられています。
| 型 | できる場所・特徴 |
|---|---|
| 発疹型 | 膝、殿部、肩などの皮膚に出る |
| 腱型 | アキレス腱が最も多い。手指の伸筋腱や膝蓋腱にもできる |
| 結節型 | 皮下に結節をつくる |
| 骨膜下型・骨型 | 骨のすぐ外側にできて骨の表面を押しへこませる、または骨の中の脂質沈着で透亮像(骨が抜けたように黒く見える所見)になる |
このうち腱型が、今回取り上げる腱黄色腫です。家族性高コレステロール血症(FH)は、LDLコレステロールが生まれつき高い遺伝性の病気で、若いうちから心臓の血管(冠動脈)の動脈硬化が進みやすいことが特徴です。FHではアキレス腱や手の腱に黄色腫がみられ、年齢とともに目立つようになることがあります。まぶたの黄色板症(黄色腫の一種)や、角膜の縁の白い輪(角膜輪)を伴うこともあります(Ison 2014)。
なぜアキレス腱を見るのか
アキレス腱の厚みは、FHの診断で使われる所見のひとつです。総説では、アキレス腱の厚みはFHで特異性の高い身体所見の一つで、X線やエコーで測った厚みは診断だけでなく、リスクの層別化(重症度の見積もり)にも役立つと整理されています。また、視診や触診だけに頼ると見逃して診断が遅れる可能性があるとされています(Tada 2025)。
アキレス腱黄色腫は、冠動脈疾患がより重いことや、心血管イベントのリスクが高いこととも関連します。視診・触診での検出には限界があり、エコーやMRIで見つけやすくなる可能性があります(Scott 2019)。
日本の循環器の施設で、冠動脈インターベンション(PCI)を受けた冠動脈疾患423例にアキレス腱の軟線撮影(柔らかいX線での撮影)を行った研究があります。この研究では最大厚9mm以上を腱黄色腫と定義しました。結果は次のとおりです(Kitahara 2019)。
| 対象 | アキレス腱黄色腫 | ヘテロ接合体FH |
|---|---|---|
| 安定した冠動脈疾患(273例) | 9.2% | 3.7% |
| 急性冠症候群(150例) | 15.3% | 5.3% |
| うちST上昇型心筋梗塞 | 19.5% | 7.3% |
(Kitahara 2019。9mmは、この研究で腱黄色腫とみなした基準です。FHの診断に使う基準値は、診療ガイドラインの現行の版をご確認ください)
FHでなくても、腱の黄色腫やアキレス腱の肥厚が見つかる人がいることがわかります。画像で腱の変化に気づくことは、脂質異常や動脈硬化のリスクに目を向けるきっかけになります。
画像検査での見え方
| 検査 | わかること・特徴 |
|---|---|
| X線(側面) | アキレス腱の厚みを測る。軟部組織の腫れとして写る。簡便で広く使える。FHの診断にX線やエコーの厚みを取り入れた診療ガイドラインは、現時点では日本のものだけと報告されている(Tada 2025、Kitahara 2019) |
| エコー | 腱の厚みと、内部の構造の乱れを見る。ドプラで腱内に微小な血流が見えた報告がある(Tanaka 2021) |
| MRI | 腱の厚み、内部の信号を評価。脂質量の定量(Dixon法)は研究段階(Zahradnik 2021) |
| CT | ほかの目的で撮ったCTで、腱の肥厚に気づくことがある |
エコー・MRIの診断精度
FHのアキレス腱黄色腫に対するエコー・MRIの診断精度を調べた系統的レビューでは、15研究(FH 699例、FHでない868例)が対象でした。エコーとMRIは、腱の肥厚を見つける点で許容できる感度がありそうですが、根拠の質は低く、厚みの基準値にも大きなばらつきがありました(Scott 2019)。つまり「何mm以上なら黄色腫」という線は、方法によって揺れます。測るときは、測定部位と撮り方を一定にし、左右や以前の画像と比べることが大切です。
MRIで脂質を見る試み
アキレス腱黄色腫10例、使い過ぎによる腱症10例、健常10例のMRIをDixon法(脂肪と水の信号を分けて解析する方法)で調べた研究があります。腱内の脂質量は、黄色腫で腱症・健常より有意に多い結果でした。厚みも黄色腫のほうが平均では厚いものの、グループ間で分布が重なっていました。著者らは、十分な人数での検証が必要と述べています(Zahradnik 2021)。
引用図:Dixon法MRIで見たアキレス腱黄色腫

引用:Zahradnik TM, et al. BMC Musculoskelet Disord 2021(Figure 1)。CC BY 4.0 PubMed
左はアキレス腱黄色腫、中央は腱症、右は正常のアキレス腱で、左足首の横断像です。上段が脂肪の信号、下段が水の信号を示す画像で、腱は黄色の線で囲まれています。黄色腫では脂肪と水の信号が強く、腱の前後方向の厚みが目立つ、と図の説明に書かれています。腱症も厚みは増しますが、脂肪の信号は黄色腫のほうが明らかに強い、というのがこの研究の見方です。
似た病気との見分け方
アキレス腱が太い、腱の周りに塊がある、というだけでは黄色腫と決められません。次の病気と並べて考えます。
| 疾患 | 見分けのヒント |
|---|---|
| アキレス腱症(使い過ぎ) | 厚みだけでは区別しにくく、分布が重なる(Zahradnik 2021)。両側性か、脂質異常や家族歴があるかを合わせて考える |
| 付着部炎・腱周囲炎 | 痛む場所と、かかとの骨の変化がヒント。アキレス腱付着部炎・アキレス腱炎・周囲炎の違いを参考にしてください |
| 痛風結節 | 尿酸の沈着。関節周囲が多く、石灰化を伴うことがある。痛風結節の画像診断も参照 |
| 脳腱黄色腫症(CTX) | まれな遺伝性の脂質蓄積症。血漿コレステロールは正常〜低めで、コレスタノールが高い。腱黄色腫は10〜20歳代で出る(Federico 2003) |
| 腱鞘巨細胞腫など腫瘍 | 腱に沿った塊。手や足では腱滑膜巨細胞腫(TGCT)のMRIが鑑別になる |
CTXでは、腱黄色腫のほかに、乳児期の下痢、小児期の白内障、成人での神経症状などが現れることがあります。脂質の値が高くない若い人に腱黄色腫が見つかったら、このまれな病気も頭の片隅に置いておきます(Federico 2003)。
MRIで腱を読むときは、腱が撮像角度によって一時的に高信号に見えるmagic angle effect(マジックアングル効果)にも注意が必要です。腱炎や断裂と見間違えないために、MRIで腱が高信号になる理由と見分け方も確認してください。
読影のチェックリスト(研修医向け)
| 順番 | 見るところ |
|---|---|
| 1 | 左右とも太いか(両側性なら全身の要因を考える) |
| 2 | 厚みを、同じ位置・同じ条件で測っているか |
| 3 | 内部は均一か、まだらか、血流が増えているか(エコー・MRI) |
| 4 | ほかの腱(手指の伸筋腱、膝蓋腱)にも塊がないか |
| 5 | かかとの骨に炎症や変形を示す変化がないか(付着部炎との区別) |
| 6 | 皮膚の黄色い結節、まぶたの黄色い斑、角膜の輪、家族の早発性の心臓病がないか(臨床情報) |
読影レポートには、「腱の肥厚(厚みの値)」「内部の性状」「両側か片側か」に加えて、「腱黄色腫の可能性があり、脂質の検査を勧める」と書いておくと、臨床医に伝わりやすくなります。
見つかったあとにすること
画像で黄色腫を疑ったら、血液検査でLDLコレステロールなどの脂質を調べます。FHが疑われるときは、家族歴の確認や、ほかの血管の評価が検討されます。FHの管理は、脂質を下げる治療、生活習慣の見直し、危険因子の管理が中心で、専門医への紹介が考慮されます(Ison 2014)。FHは血縁者にも関係する病気なので、家族への説明も大切です。
FH患者のアキレス腱黄色腫で、ドプラエコーにより腱内の微小な血流が見えた2例の報告があります。新しい血管の形成は慢性炎症に伴うとされ、著者らは黄色腫の成り立ちに関わる可能性を考察しています(Tanaka 2021)。ただし2例の報告にとどまり、診断にどう使うかはこれからの課題です。
よくある疑問(Q&A)
Q. アキレス腱が太いだけで、家族性高コレステロール血症と診断されますか?
A. 腱が太いことは重要な手がかりですが、診断は血液検査の値、家族歴、ほかの所見を合わせて行います。アキレス腱症など別の原因でも太くなるため、画像だけでは決められません(Zahradnik 2021、Tada 2025)。
Q. 触ってもわからないのに、画像で見つかることはありますか?
A. あります。視診や触診だけでは見逃すことがあるため、X線やエコーでの評価が役に立つとされています(Tada 2025、Scott 2019)。
Q. FHでなければ、腱黄色腫は出ませんか?
A. FHに多い所見ですが、それだけではありません。まれな遺伝性の病気(CTXなど)でも腱黄色腫が出ます(Federico 2003)。また、冠動脈疾患の患者を調べた研究では、ヘテロ接合体FHと診断された人よりも、アキレス腱の肥厚がみられた人のほうが多い結果でした(Kitahara 2019)。
Q. 気になるときは何科に行けばよいですか?
A. 健診でアキレス腱の厚みや脂質の異常を指摘されたら、内科や循環器内科で相談してください。足首の痛みや腫れが続く場合は整形外科でも診てもらえます。気になる症状があれば、医療機関を受診してください。
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参考文献
- Scott A, Zahradnik TM, Squier K, et al. Diagnostic accuracy of ultrasound and MRI for Achilles tendon xanthoma in people with familial hypercholesterolemia: A systematic review. J Clin Lipidol. 2019;13(1):40-48. PubMed
- Tada H, Nohara A, Kawashiri MA, et al. Impact of Achilles tendon on diagnosis and phenotypes of familial hypercholesterolemia. Curr Opin Lipidol. 2025;36(4):163-169. PubMed
- Kitahara H, Mori N, Saito Y, et al. Prevalence of Achilles tendon xanthoma and familial hypercholesterolemia in patients with coronary artery disease undergoing percutaneous coronary intervention. Heart Vessels. 2019;34(10):1595-1599. PubMed
- Zahradnik TM, Cresswell M, Squier K, et al. Can Achilles tendon xanthoma be distinguished from Achilles tendinopathy using Dixon method MRI? A cross-sectional exploratory study. BMC Musculoskelet Disord. 2021;22(1):627. PubMed
- Tanaka T, Yahagi K, Wada O, et al. Possible Neoangiogenesis in Achilles Tendon Xanthoma with Familial Hypercholesterolemia: A Novel Approach to Achilles Tendon Xanthoma. Intern Med. 2021;60(24):3921-3926. PubMed
- Ison HE, Clarke SL, Knowles JW. Familial Hypercholesterolemia. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2026. 2014 Jan 2 [updated 2025 Jan 30]. PubMed
- Federico A, Gallus GN. Cerebrotendinous Xanthomatosis. In: Adam MP, et al., editors. GeneReviews. Seattle (WA): University of Washington, Seattle; 1993-2026. 2003 Jul 16 [updated 2024 Nov 14]. PubMed
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