腱鞘巨細胞腫,色素性絨毛結節性滑膜炎とは?
- 腱鞘巨細胞腫(Giant cell tumor of tendon sheath: GCTTS)は色素性絨毛結節性滑膜炎 (pigmented villonodular synovitis: PVS) と組織的には同ーの滑膜増殖性疾患である。
- ともに滑膜の線維組織球性増殖性疾患。 2002年に出版された骨軟部腫瘍の新WHO分類では、軟部腫瘍のなかのso-called fibro-histiocytic tumoursの項目内で取り上げられている。
※慢性的に滑膜が増生した状態が継続することによって関節障害が生じる。
- GCTTSとPVNSの臨床像は異なっている。
- GCTTSは30-50歳代の成人に好発し、やや女性に多い。好発部位は手の腱鞘で、特に第2,3指の近位指節間(PIP)関節近傍に限局性の結節を形成する。良性であるが、切除後の再発率は10-30%。他、足、膝、股関節などに発生。
1位 ガングリオン
2位 腱鞘巨細胞腫
3位 類表皮嚢腫
4位以下 脂肪腫、腱鞘線維腫、末梢神経腫瘍
- 一方、PVNSも、成人に好発するが、性差はなく、膝、股、足などの大関節に好発する。2/3は膝蓋下脂肪体(intrapatellar fat pad)に発生。症状は関節の腫脹、疼痛、可動域制限である。
- 以前は「黄色腫(xanthoma)」と呼ばれていた。
- 肉眼的に病変は、褐色、黄褐色、黄色を呈する。GCTTSは境界明瞭な結節性腫瘤で、PVNSは境界不明瞭で絨毛状、結節状の滑膜の増殖として認められる 。
腱鞘巨細胞腫(GCTTS)の画像診断
- 単純X線では、軟部腫瘤を認め、ときに骨表面に圧排性侵食像をきたす。
- MRIではヘモジデリン・線維成分沈着を反映して、T2WIで低信号、T1WIでは低〜中等度の信号。Gdで早期から造影効果を認める。通常は腱に接して腫瘤を認める。
症例 30歳代女性
右の第2指の中節骨に接して長径9.5mm第の、境界明瞭な腫瘤あり。T2WIにて低信号から一部高信号あり。手術にて、腱鞘巨細胞腫であった。
色素性絨毛結節性滑膜炎の画像所見
- 単純X線写真において、異常石灰化や硬化性変化や溶骨性変化はみられない。(滑膜性軟骨腫症との鑑別点)
- ヘモジデリン沈着を反映して、滑膜はT2WIおよびT2*WIで低信号を呈する。
T2WIで低信号を有する〜低信号主体の腫瘤
- 膠原線維:表在性線維腫症、類腱腫(デスモイド)、SFT
- ヘモジデリン:GCTTS/PVNS
関節に発生する腫瘍の鑑別
▶滑膜に沿った軟部組織の増生
・滑膜性軟骨腫症:MRIでの所見はPVNSに酷似。ただしCTで石灰化を有する点で鑑別できる。
▶滑膜に発生する良性腫瘍
・血管腫(hemangioma)と脂肪腫(lipoma)が知られて いるが、軟部組織発生の血管腫や脂肪腫と比べると発生頻度は低く,まれ。血管腫は関節血症(hemarthrosis)をきたすことがある。滑膜の脂肪腫は、その大部分が滑膜の樹枝状の増生を示す”lipoma arborescens”といわれるもので、真の腫瘍ではなく、反応性の病変と考えられている。
▶骨端部に発生する骨腫瘍の炎症反応
・骨端部の骨に発生する類骨骨腫(intra – articular osteoid osteoma)は、罹患部の関節炎症状が主症状で、nidus周囲の反応性骨形成が乏しく非典型的な経過をとる。
・骨端部に発生する軟骨芽細胞腫(chondroblastoma)や骨芽細胞腫(osteoblastoma)も周囲に炎症反応をきたし、滑膜炎や周囲組織に浮腫などの炎症反応を惹起することがある。
▶滑膜に原発する=関節内に発生する悪性腫瘍
・極めて稀。
・滑膜肉腫(synovial sarcoma)、滑膜性軟骨肉腫(synovial chondrosarcoma)、
・悪性健鞘巨細胞腫/悪性色素性絨毛結節性滑膜炎(malig- nant giant cell tumor of tendon )sheath/malignant pigmented villonodular synovitis):良性のものが転移を起す症例と、再発を繰り返すうちに明らかに肉腫に転化する例がある。
相違点は?
→骨内や骨膜下にも血腫が出来たり、関節内出血を反映したfIuid-fluid levelが形成される点はPVNSには見られない。
②アミロイドーシス(アミロイド関節症)
相違点は?
→アミロイドも確かにT1,T2強調像ともに低信号を示すが、ヘモジデリンのような磁化率アーチファクトを示さないので、その点で鑑別される。また、アミロイド関節症は両側に生じる。
純毛
絨毛
下が正しいと思います。
ありがとうございます。修正しました。