滑液包(炎)、滑膜嚢胞、ガングリオンの違い
- まず滑膜とは、関節包を覆っている薄い膜状の組織で滑液を産生する。
- 滑液包(炎)、滑膜嚢胞はともにその滑膜の裏打ちのある線維性被膜に包まれる嚢胞であるが、ガングリオンは滑膜による裏打ちはない嚢胞。
- 滑膜嚢胞はしばしば関節腔と交通し、関節内圧の上昇により滑膜と関節液が飛び出したもの。膝関節ではBaker嚢胞が代表。
- 一方で滑液包は、腱や関節包、骨、筋肉、靱帯など様々な2つの接する構造の間に存在し、液体貯留腔として存在するもので、摩擦軽減のために存在する。
- しかし滑液包(炎)、滑膜嚢胞はしばしば同義で用いられ、特定の場所に発生する。
- ガングリオンは中身はゼラチン状で、壁は薄く、靱帯や腱の近傍の関節内外に発生する。
滑液包(炎)(bursitis)
- 滑液包は正常だとMRIでの指摘は困難であるが、滑液包の炎症により滑液包炎を生じると嚢胞性腫瘤として同定できるようになる。
- 特定の部位に存在するため、解剖学的位置を把握しておくことが重要。
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滑膜嚢胞(synovial cyst)
- 滑膜に裏打ちされた関節近傍の嚢胞性腫瘤で、関節液の限局性の進展により生じる。
- 関節液貯留に伴う関節内圧上昇が発生の原因として重要。
- 上記の滑液包炎とほぼ同義。
- 膝関節ではBaker嚢胞(膝窩嚢胞)が代表。
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ガングリオン(ganglion)
- 単房性あるいは多房性の壁の薄い嚢胞で滑膜の裏打ちはない。
- 壁は厚い線維性組織からなり上皮細胞を欠く。
- 内部にはゼリー状あるいは粘液状の内容物を含む。
- 関節包や腱鞘との連続性が見られる場合と見られない場合がある。
- 半数以上は手関節や手指に見られる。
参考文献:画像診断 Vol.35 No.11 臨時増刊号2015 P136-139