足の捻挫は8-9割が主に内反(足の裏が内側に向く方向(内返し強制))で起こります。
内くるぶしと外くるぶしを触ってみれば外くるぶしの方が下にありますよね。
これがその原因です。
つまり、足関節の捻挫では外側の靭帯が引っ張られやすく、損傷を受けやすいとされます。
今回は足関節の捻挫について外側の靭帯を中心に見ていきましょう。
足関節の外側(外くるぶし)の靭帯
足首の外側の周囲では注意すべき5つの靭帯があります。
- 前距腓靭帯(ATFL:anterior talofibular ligament):外果前縁から起始し距骨頸部外側に付着する
- 後距腓靭帯(PTFL:posterior talofibular ligament):外果底部から起始し距骨後方突起の外側結節に付着する
- 踵腓靭帯(CFL:calcaneofibular ligament):外果後縁から起始し距骨外側面に付着する
- 前脛腓靭帯(anterior tibiofibular ligament):脛骨遠位部と腓骨遠位部を前方でつなぐ
- 後脛腓靱帯(posterior tibiofibular ligament):脛骨遠位部と腓骨遠位部を後方でつなぐ
の5つです。
- 外側(側副)靭帯は腓骨外果より起始する靭帯で、通常は前距腓靭帯(ATFL)、後距腓靭帯(PTFL)、踵腓靭帯(CFL)の3つを指し、中でも前距腓靭帯(ATFL)は足関節全体の安定性に寄与しています。これらに前脛腓靭帯、後脛腓靱帯を含めることがある。
- 靱帯損傷の頻度は前距腓靱帯(ATFL)>前脛腓靱帯>踵腓靱帯(CFL)。
- 踵腓靱帯(CFL)損傷は前距腓靱帯(ATFL)を伴うことが多く、単独損傷は少ない。
- 後距腓靱帯(PTFL)、後脛腓靱帯の損傷は少ない。
- なので、まず観察するべきは、なにがなんでも前距腓靱帯(ATFL)!次に、踵腓靱帯(CFL)や前脛腓靱帯を観察する。
- 前距腓靭帯(ATFL)損傷では、同靭帯部に一致して疼痛、圧痛、皮下出血が見られる。
前距腓靱帯(ATFL)
- 前距腓靭帯(ATFL)は足関節の底屈で緊張し、底屈を制限する。
- 距骨の前方移動を制限しており、損傷により前方引き出し兆候が陽性となる。また、前距腓靭帯(ATFL)は関節包と密接に関連している
- 前距腓靱帯(ATFL)は形態にバリエーションが知られており、2本認めることが8割を占め、1本あるいは3本見られることがそれぞれ1割ずつ占める。(Orthop J Sports Med . 2021 Nov 19;9(11):23259671211047269.)この2本存在する正常例を断裂や損傷と診断しないように注意が必要。
前距腓靭帯(ATFL)・踵腓靭帯(CFL)・後距腓靭帯(PTFL)の正常解剖のMRI画像診断
次に、MRIによる画像診断です。
正常解剖を動画解説しました。
正常解剖はこちらで確認いただけます。
動画の一部をこちらで書き起こしました。
- 前距腓靱帯(ATFL)は腓骨外果前縁から距骨頸部外側に付着し、境界が明瞭な帯状の靱帯。
- 後距腓靱帯(PTFL)は距骨外果底部から起始し、距骨後方突起・外側結節に付着し、扇状の形状を示す。
- 踵腓靱帯(CFL)は腓骨外果前方下部から踵骨外側前方に付着する。長・短腓骨筋腱の深部を走行し、腓骨筋腱の腱鞘に密に接する。起始部から大きくカーブすることがあり、正常靱帯を損傷と診断しないように注意が必要。また、
足関節の靭帯損傷のMRI画像所見
MRIによる画像診断では、
- 靭帯の狭細化
- 靭帯の不整な走行
- 靭帯の連続性の消失
- 急性期には足関節外側部に浮腫性変化。内果や距骨内側の骨髄浮腫を認めます
- 慢性期には靭帯の肥厚像、関節滑膜の肥厚、関節遊離体の出現
として認められます。
ただし、実際には骨折を除外するためにレントゲンをまず撮影され、MRIは治癒困難な場合などに限られます。
前距腓靭帯(ATFL)・踵腓靭帯(CFL)・後距腓靭帯(PTFL)の損傷のMRI画像診断の注意点
- MRIにおける損傷の診断率は前距腓靱帯(ATFL)>踵腓靱帯(CFL)となる。
- その理由として、踵腓靱帯(CFL)損傷の損傷部位は腓骨付着部近傍が圧倒的に多いが、踵腓靱帯(CFL)の腓骨付着部はちょうど後距腓靭帯の付着部と短腓骨筋腱に挟まれて存在していることと、撮像角度によっては踵腓靭帯付着部が細切れにみえるため。また踵腓靭帯は薄く踵骨外側壁に沿って存在するため、骨膜の一部のようにみえる場合もある。
- 前距腓靱帯(ATFL)も踵腓靱帯(CFL)も損傷は急性期の方が慢性期よりもわかりやすいと報告されている。
- 前距腓靱帯(ATFL)損傷が腓骨外果起始部で損傷すると治りにくいとされるが、その理由として踵腓靱帯(CFL)や後距腓靭帯(PTFL)の損傷を腓骨付着部で合併している可能性があるからと考えられる。これら3つの靱帯は外果の先端で合流が見られ、深層で連続していると考えられる。
前脛腓靭帯損傷について
- 足関節捻挫によって断裂することがある。
- 治癒しにくい捻挫として重要な靭帯損傷とされる。
- たいていは果部骨折、脛骨遠位後面、腓骨骨幹の骨折を合併するが、単独での前脛腓靭帯損傷を起こすこともある。さらに三角靭帯損傷を伴っていることも多い。
- 断裂すると足関節前方の疼痛や腫脹が認められる。
- 足関節が背屈位になるような動作(しゃがみ込むなど)で痛みがある場合には、陳旧例の前脛腓靭帯損傷がある可能性がある。
- 遠位脛骨と腓骨の間隔は正常では5mmを超えないとされるが、脛腓靱帯の断裂により腓骨と脛骨の離開を認めることがある。
ちなみに内側の靭帯は?
まれですが、外反により足関節の捻挫が起こることがあり、その場合
- 三角靭帯
- 脛腓靭帯
が臨床的に重要。
関連記事:足関節の内側の三角靭帯(内側側副靭帯)損傷で重要なMRI解剖
参考文献:足の画像診断 第2版 P175-182