背部の筋肉は、厳密な解剖学分類ではさらに細かく分けられますが、胸部CTや腹部CTを読影する上表層、肩甲骨周囲の中間層、傍脊柱の深層の3群に大まかに整理すると理解しやすいです。
とくに胸部CT、腹部CT、脊椎CTでは、筋肉を細分類しすぎるよりも、「どの層にある筋か」「病変がどの層に属するか」を把握する方が局在診断に役立ちます。

本記事では、CT読影で使いやすい整理として、
- 表層=僧帽筋・広背筋、
- 肩甲骨周囲の中間層=菱形筋群・肩甲挙筋、
- 傍脊柱の深層=脊柱起立筋群・多裂筋
という分類で、背中の筋肉の大まかな構造とCT画像の解剖をまとめます。
1.表層:僧帽筋・広背筋
表層筋の特徴

表層筋は、背部の中でも皮下に近い位置にあり、CTではもっとも外側・後方に見える筋層である。背中の外形を作る筋群であり、病変の局在としては皮下直下の筋内病変、筋膜下血腫、皮下病変との連続性判断などで重要になる。
僧帽筋
僧帽筋は後頸部から上背部に広がる大きな扁平筋である。一般的な起始は、外後頭隆起、上項線、項靱帯、C7〜T12棘突起であり、停止は鎖骨外側1/3、肩峰、肩甲棘である。
CTでは、上背部から後頸部にかけて皮下直下に位置し、左右対称の広い筋板として見える。肩甲骨上方では僧帽筋がもっとも表層にあり、その深部に肩甲挙筋や菱形筋群が入る。

僧帽筋は、CTの横断像で背中の上部から中部にかけて確認でき、左右対称に広がる筋肉として描出されます。
自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→僧帽筋(trapezius)のCT画像の解剖
広背筋
広背筋は下位胸椎から腰背部にかけて広く分布する大きな表層筋である。一般的な起始は下位胸椎棘突起、胸腰筋膜、腸骨稜後部、下位肋骨であり、停止は上腕骨小結節稜である。
CTでは、下位胸部から腰部の後外側で表層に見え、背部外側の輪郭を形成する。肩甲骨下角付近から外側胸壁後方にかけて観察しやすく、深部には前鋸筋や肋骨、さらに内側には傍脊柱筋群が位置する。

自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→広背筋(Latissimus Dorsi Muscle)のCT画像の解剖
表層筋としての読影ポイント
- 皮下に最も近い筋層である
- 僧帽筋は上背部優位、広背筋は下背部〜後外側優位である
- 表層病変か深部病変かを見分ける際の基準になる
2.肩甲骨周囲の中間層:菱形筋群・肩甲挙筋
中間層の特徴

肩甲骨周囲の中間層は、表層の僧帽筋の深部に位置し、肩甲骨内側縁周囲でとくに重要となる。CTでは肩甲骨内側縁に沿う筋として見え、肩甲骨周囲の痛み、腫瘤、炎症、血腫の局在判断に有用である。
菱形筋群
菱形筋群は小菱形筋と大菱形筋からなる。小菱形筋の一般的な起始は項靱帯およびC7〜T1棘突起、停止は肩甲棘内側端付近である。大菱形筋の一般的な起始はT2〜T5棘突起、停止は肩甲骨内側縁である。
CTでは、肩甲骨内側縁の後内側に沿う筋として見え、表層の僧帽筋の深部に位置する。胸部CTで肩甲骨内側縁に接する軟部陰影をみたとき、表層なら僧帽筋、やや深く肩甲骨内側縁に密着するなら菱形筋群を考えると理解しやすい。

菱形筋は、CTの横断像で僧帽筋の深層に位置し、肩甲骨の内側から脊柱にかけて確認される筋肉です。
自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→菱形筋(rhomboid muscles)のCT画像の解剖
肩甲挙筋
肩甲挙筋の一般的な起始はC1〜C4横突起後結節であり、停止は肩甲骨内側縁の上角から肩甲棘基部の間である。
CTでは、頸部下部から肩甲骨上内側角へ向かう細長い筋として認識できる。上位胸郭や下頸部で肩甲骨内側上方に見えやすく、僧帽筋の深部で、菱形筋群よりやや頭側に位置する。肩甲骨上内側角に接する病変では、肩甲挙筋由来かどうかを考える手がかりになる。

肩甲挙筋は、CTの横断像で首の側面から肩甲骨上角に向かう細長い筋肉として確認されます。
自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→肩甲挙筋(levator scapulae muscle)のCT画像の解剖
肩甲骨周囲の中間層としての読影ポイント
- 僧帽筋の深部に位置する
- 肩甲骨内側縁周囲で見つけやすい
- 肩甲骨内側縁に沿う病変の局在診断に有用である
- 上内側角寄りなら肩甲挙筋、より広く内側縁に沿えば菱形筋群を考えやすい
3.傍脊柱の深層:脊柱起立筋群・多裂筋
深層筋の特徴

傍脊柱の深層は、脊椎のすぐ外側に位置する筋群であり、胸腹部CT・腰椎CTで極めて重要である。ここでは実用上、脊柱起立筋群と多裂筋に大きく分けて捉えるとわかりやすい。
CTでは、正中の棘突起のすぐ外側に多裂筋、そのさらに外側に脊柱起立筋群が位置する。すなわち、傍脊柱筋病変を見たときは、まず「棘突起に近いか、外側か」で大まかに局在を考えることが重要である。
脊柱起立筋群
脊柱起立筋群は、主として腸肋筋、長肋筋、棘筋からなる長大な筋群である。全体としては仙骨後面、腸骨稜後部、胸腰筋膜、腰椎・仙椎棘突起周囲から広く起こり、肋骨、椎骨横突起、棘突起、頸部へ向かって連続する。
CT読影では、腰椎レベルで脊柱起立筋群を細かく分けすぎる必要はなく、多裂筋の外側にある大きな傍脊柱筋塊として把握すると実用的である。とくに腹部CTでは、脂肪変性、萎縮、筋内腫瘤、血腫の評価でしばしば目にする。

自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→脊柱起立筋(rector spinae)のCT画像の解剖
多裂筋
多裂筋は横突棘筋群に属する深背筋であり、腰椎ではとくに発達している。一般的な起始は仙骨後面、上後腸骨棘付近、仙腸靱帯後部、腰椎乳頭突起、胸椎横突起、頸椎関節突起であり、停止は起始より2〜4椎体上位の棘突起である。
CTでは、棘突起の直外側に接する深層筋として見える。腰椎レベルでは、内側の多裂筋と外側の脊柱起立筋群の間に筋間隙があり、これは外科的Wiltse approachの基盤としても知られている。したがって、傍脊柱筋病変を見たときは、棘突起直外側なら多裂筋、やや外側なら脊柱起立筋群という整理が役立つ。

自分でCT画像をスクロールしてコロコロ連続画像で見たい方はこちら→多裂筋(multifidus muscle)のCT画像の解剖
傍脊柱深層としての読影ポイント
- 棘突起直外側が多裂筋である
- その外側の大きな筋塊が脊柱起立筋群である
- 腰椎レベルではこの2群の区別が実用上とくに重要である
- 脂肪変性、萎縮、血腫、筋内腫瘤の局在判断に有用である
まとめ
背中の筋肉は、厳密には多くの筋群から構成されるが、CT読影の実用上は表層・肩甲骨周囲の中間層・傍脊柱の深層という3分類で整理すると非常にわかりやすい。表層には僧帽筋と広背筋、中間層には菱形筋群と肩甲挙筋、深層には脊柱起立筋群と多裂筋を置くことで、病変の局在を大まかに把握しやすくなる。
とくに日常読影では、背部の筋肉をすべて厳密に同定することよりも、「肩甲骨周囲か、傍脊柱か、表層か」をまず整理することが重要である。この大まかな層構造を押さえておくことで、胸部CT、腹部CT、脊椎CTにおける背部筋病変の評価がより実践的になる。
参考文献
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