先に結論:脳のリング状造影病変の考え方

  • 造影MRIで輪っかのように染まる病変は、代表的に膠芽腫・転移性脳腫瘍・脳膿瘍のほか、亜急性期の血腫や梗塞・脱髄(多発性硬化症)・放射線壊死・リンパ腫(免疫不全)などでも見られます(覚え方:MAGIC DR)
  • 見分けの手がかりは、拡散強調像で中心が白い(脳膿瘍)、壁が厚く不整(膠芽腫)、多発して皮髄境界(転移)、輪が一部開いている(open ring:脱髄)などです
  • 年齢・免疫状態・がんの既往・経過と合わせて判断し、必要に応じて灌流画像やMRスペクトロスコピーも使います

脳でリング状増強効果を呈する疾患(ring-enhancement lesions)の鑑別診断

輪の形も手がかりになり、薄く平滑な輪は被膜形成期の膿瘍、厚く不整な輪は壊死性腫瘍、一部が欠けた輪(open ring)は脱髄を示唆します(Smirniotopoulos 2007)。拡散強調像は脳膿瘍と他のリング状増強病変の区別に特に有用で、11研究のメタ解析では感度95%・特異度94%と報告されています(Xu 2014)。ただし非典型例もあるため、臨床経過と合わせて判断し、必要なら生検を考えます。

 

脳の外にできる病変がリング状に見えるとき:実質内か実質外かの見分け方

リング状の造影病変は脳の中(実質内)にできるものが多いのですが、脳の外(実質外:髄膜・神経・下垂体など)の腫瘍が嚢胞や壊死を伴ってリング状に見えることがあります。治療法も鑑別疾患も変わるため、最初に病変が脳の中か外かを決めます。

見るポイント 実質外(髄膜腫・神経鞘腫など) 実質内(膠芽腫・転移・膿瘍など)
脳との境界 脳を外から押しており、病変と脳の間に髄液のすき間(CSF cleft)が見えることがある 脳の組織が腫瘍を取り囲み、境が脳の中に埋もれる
白質の変形 白質が腫瘍に押されて内側へくぼむ(buckling) 病変の周囲の白質に浮腫が広がる
硬膜との関係 硬膜に広く接する、硬膜の肥厚(dural tail)を伴うことがある 硬膜との接点が小さいか、ない
脳表の血管 皮質の血管が脳の内側へ押される 皮質の血管は病変の外側にある
病変の中心 頭蓋骨・硬膜・神経・トルコ鞍などに接している 白質、皮質と白質の境界、深部灰白質

脳の組織が病変の縁を爪のようにつかんで見える(claw sign)ときは実質内、反対に病変が脳を外から押しのけて見えるときは実質外の病変を考えます(あくまで目安です)。薄いスライスで冠状断・矢状断を見直すと判断しやすくなります。

実質外の病変がリング状になる代表例

  • 髄膜腫の嚢胞変性:腫瘍の内部に嚢胞ができる「真の嚢胞性髄膜腫」は、硬膜の近くに嚢胞性の病変が見え、嚢胞の壁が造影されることもされないこともあります。神経膠腫や転移と間違えられることがあります。多方向の断面で硬い部分(充実成分)や硬膜の造影を探すことが手がかりになります(Carvalho 1997)。
  • 聴神経鞘腫(前庭神経鞘腫):小脳橋角部から内耳道に入り込む病変で、大きくなると嚢胞成分を伴い、嚢胞の周囲が輪のように見えることがあります。内耳道が広がっているかどうかが実質外の手がかりです。
  • 下垂体腺腫:トルコ鞍からその上へ伸びる腫瘤で、大きいものは嚢胞・出血・壊死を伴い、輪のように見えることがあります。鞍隔膜の部分でくびれた形(雪だるま型)も特徴です。

硬膜の肥厚(dural tail)は髄膜腫に特異的ではありません。造影MRIで腫瘤の近くの硬膜が線状に染まる所見ですが、98人の頭蓋内腫瘤の検討では22人(22.4%)に見られ、髄膜腫が18人、下垂体腺腫が2人、原発性脳リンパ腫と真菌性脳膿瘍が各1人でした。髄膜腫の診断に対する感度は58.6%、特異度は94.02%と報告されています(Rokni-Yazdi 2006)。dural tailがあるだけで髄膜腫と決めず、病変の位置や硬膜との接し方と合わせて判断します。

このほか、硬膜や髄膜に沿った造影は、髄膜腫だけでなく肉芽腫性疾患(サルコイドーシス)や転移でも見られます(Smirniotopoulos 2007)。

腫瘍様脱髄(tumefactive demyelinating lesion)を腫瘍と見分ける手がかり

大きな脱髄巣は腫瘤のように見え、リング状増強効果も示すため、膠芽腫や中枢神経リンパ腫との区別が問題になります。

  • 片側が開いた輪状造影(open-ring sign):19研究476人のメタ解析で、開いたリング(一部が途切れたリング)は35%にみられ、閉じたリング(18%)より多い所見でした(Suh 2018)。
  • 周囲への影響が小さい:T2強調像で縁が低信号48%、腫瘤効果がないか軽い67%、周囲の浮腫がないか軽い57%と報告されています(Suh 2018)。
  • 単純CTで低吸収:MRIで造影される部分が単純CTで低吸収だったのは、腫瘍様脱髄15人中14人(93%)に対し、腫瘍48人では2人(4%)でした。MRIに単純CTを加えると正しく診断できた割合は73%から97%に上がりました(Kim 2009)。
  • 灌流画像:腫瘍様脱髄は脳血液量(CBV)が低い傾向があります(Suh 2018)。ただしCBVだけで決めず、造影の形や単純CTと合わせて判断します。

リング状増強効果を見て腫瘍を考えたときは、生検の前に単純CTと造影の形を見直すことで、不要な生検を減らせる可能性があります。

症例 30歳代男性 発熱・胸部感染症の後に急に起きたけいれん

脳膿瘍 MRI 造影T1強調像 横断像
引用:Radiopaedia(Cerebral abscess)

右前頭葉の皮質〜皮髄境界に、壁が厚く全周性に染まるリング状増強病変を認めます(青丸)。病変は皮質を破って脳表に及び、隣接する髄膜にも造影効果がみられます(黄矢印)。拡散強調像では内部が強い拡散制限を示し、脳膿瘍と診断されました。

あわせて読みたい:腫瘤形成性脱髄病変(TDL)のMRI

参考文献

  1. Smirniotopoulos JG, Murphy FM, Rushing EJ, et al. Patterns of contrast enhancement in the brain and meninges. Radiographics. 2007;27(2):525-551. PubMed
  2. Garg RK, Sinha MK. Multiple ring-enhancing lesions of the brain. J Postgrad Med. 2010;56(4):307-16. PubMed
  3. Xu XX, Li B, Yang HF, et al. Can diffusion-weighted imaging be used to differentiate brain abscess from other ring-enhancing brain lesions? A meta-analysis. Clin Radiol. 2014;69(9):909-15. PubMed
  4. Suh CH, Kim HS, Jung SC, et al. MRI Findings in Tumefactive Demyelinating Lesions: A Systematic Review and Meta-Analysis. AJNR Am J Neuroradiol. 2018;39(9):1643-1649. PubMed
  5. Kim DS, Na DG, Kim KH, et al. Distinguishing tumefactive demyelinating lesions from glioma or central nervous system lymphoma: added value of unenhanced CT compared with conventional contrast-enhanced MR imaging. Radiology. 2009;251(2):467-75. PubMed
  6. Carvalho GA, Vorkapic P, Biewener G, et al. Cystic meningiomas resembling glial tumors. Surg Neurol. 1997;47(3):284-9; discussion 289-90. PubMed
  7. Rokni-Yazdi H, Sotoudeh H Prevalence of “dural tail sign” in patients with different intracranial pathologies. Eur J Radiol. 2006;60(1):42-5. PubMed

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