膠芽腫glioblastoma

■疫学
  • 星細胞由来の腫瘍の中で最も頻度が高い(33%)。WHO分類ではgrade Ⅳに属する。2年平均生存率は8〜12%と不良。
  • 発症年齢は55〜69歳が42%を占め、男性に多い(男女比1.4:1)。
  • 前頭葉~側頭葉など2葉にまたがることも多い。
  • 病理学的には脳梁を介した対側半球への進展も2/3の症例に見られる。
  • 後頭蓋窩に発生することは稀であるが、見られた場合は成人の小脳半球や小児の脳幹部腫瘍の形態を示すことが多い。
■予後
  • 多くは数か月の経過で急速に増大し(前駆病変のないprimary glioblastoma)、平均生存期間は8~12か月であるが, 10%以下程度はびまん性星細胞腫(WHO gradeⅡ)や退形成性星細胞腫(WHO gradeⅢ)の悪性転化によって生じ、数年の経過を呈する(secondary glioblastoma)。
■診断 MRI>CT
■遺伝子
  • 2次発生の膠芽腫の分子解析では、低悪性度の星細胞系腫瘍と同様、腫瘍抑制遺伝子であるTP53の欠損が特徴である。
  • 一方、原発性の膠芽腫では、外胚葉系成長因子受容体(EGFR)の遺伝子増幅が特徴的であり、両者は別の疾患概念とも考えられている
■治療
  • 手術+化学放射線療法(化学療法はテモゾロマイド、ベバシジマブ。照射線量は60Gy(三次元))

※腫瘍は出来るだけ摘出して、化学療法と放射線療法を加える。

 

関連記事)星細胞系腫瘍の画像診断(Astrocytic tumors)

神経膠芽腫の画像診断

 画像診断
MRI T1WI T2WI DWI 造影
低信号(亜急性期の出血は高信号) 不均一な高信号(壊死は高信号、充実部は低信号)腫瘍血管のflow void見えることあり。  細胞密度が高い部位は異常高信号。 リング状の造影効果。不規則な厚みで「花輪状」とも呼ばれる。
その他特徴
  • 腫瘍の周囲には、広範な血管原性浮腫や腫瘍細胞の浸潤が境界不明瞭に広がり、強い容積効果を伴うことが多い。
  • 膠芽腫の約20%の症例では病変は多発して見えるが、病理学的に真のmultifocalな症例は2.5%と言われている。
  • 亜型として、巨細胞膠芽腫(giant cell GB)、膠肉腫(gliosarcoma)がある。
症例① 50歳代女性

GBM1

症例② 70歳代女性

glioblastoma1-1 glioblastoma1-2 glioblastoma1-3 glioblastoma1-4

症例③ 80歳代女性 認知機能低下

gbm1 gbm2 gbm3 gbm4 gbm5

動画で学ぶglioblastoma

参考1)播種を来す脳腫瘍
参考2)脳でリング状増強効果を呈する疾患

 グリオーマの治療後の変化

放射線壊死
  • 3−24%で見られ、照射範囲や線量に関係。
  • 放射線治療終了後から壊死出現までの期間は、従来の治療から3−12ヶ月(数十年後もありうる)であったが、テモゾロミド(TMZ)を併用すると2ヶ月以内でも発生する。
  • 好発部位は脳梁、脳室周囲白質、皮髄境界
  • 原発巣の切除部辺縁>離れた同側半球>対側半球の頻度。
  • 増強パターンとしては、speckled pattern、geographic pattaernなど。
  • 再発との鑑別は、DWI、PWI、MRS。放射線壊死はADC高値、CBV低値、MRSでCho低値だが、難しいことが多い。
pseudoresponse
  • アバスチン(BEZ)を開始すると、効いていないのにあたかも腫瘍が小さくなっているかのように見えることがある。(pseudoresponse)
  • 治療後早期に、増強効果や浮腫が著明に軽減する。
  • BEZにより血管透過性が正常化するため。
pseudoprogression
  • テモダール(TMZ)を開始すると、効いているのにあたかも腫瘍が大きくなっているかのように見えることがある。(pseudoprogression)
  • 治療後3ヶ月以内に増強域が増大する。
  • 頻度は14−30%。
  • 症状の悪化はなく、むしろ予後良好の所見。
  • TMZにより血管透過性の亢進が増幅されるため。

 

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