結核の中枢神経病変
- 結核患者の2〜5%にみられ、特にAIDSの結核患者には10%にみられる。
- 他の日和見感染症に比べてCD4陽性リンパ球数が保たれている初期に発症する傾向あり。
- 40%では脳以外にTbcがない。
- 中枢神経病変としては①髄膜炎、②結核腫、脳膿瘍、肉芽腫、血管炎を生じる。動脈が侵されると梗塞をきたすこともある。
- 症状としては髄膜炎により頭痛、発熱、意識障害などを呈する。また結核腫により痙攣や頭蓋内圧亢進症状をきたす。
- 多発のときは転移性脳腫瘍に類似(ともに皮髄境界:corticomedullary junction)
①結核性髄膜炎
- 脳底槽髄膜炎(脳底槽の軟膜優位(PS pattern)の増強効果)の頻度が高く、交通性水頭症を起こしやすい。
- 硬膜炎は軟髄膜炎と併せてみられ、局所性かつ結節状の硬膜増強効果(en plaque tuberculoma)を呈しすることあり。
- 動脈炎による脳梗塞を合併することあり。
結核性髄膜炎の画像所見
- MRIでは脳底槽がT1強調像で等信号、T2強調像、FLAIR像で高信号を呈する。
- FLAIR像にて脳溝が高信号となる場合もある(FLAIR sulcal hyperintensity)。
- 造影では脳底槽やSylvms裂の増強効果がみられる。
症例
脳底部で造影される凸状の形態をした多発結節、硬膜や小脳テントの造影効果を認めており、結核性髄膜炎に矛盾しない所見です。
②結核腫(tuberculoma)
- 肉芽腫は頭蓋内病変としては最も多い。
- 皮髄境界や脳室近傍に好発するため転移性脳腫瘍と鑑別困難なことがある。
- 10~30%で多発する。
- CTでは低吸収〜高吸収までさまざま。円形〜分葉状形態。
- 造影にて輪状・結節状の増強効果を受ける。慢性期には石灰化を呈する。
- 非乾酪性→充実性乾酪性→液化乾酪性結核腫の時期がある。非乾酪性期には均一な増強効果。液化乾酪性期では輪状増強効果。
- MRIでは経時的に、T2強調像で高〜等信号。やがて辺縁が低信号となる。中心壊死を反映して中心部は高信号となる。
症例 40歳代男性
引用:radiopedia
右前頭葉の脳室周囲の深部白質に腫瘤あり。
T2WIで辺縁高信号で内部は低信号、造影T1WIでリング状造影効果を認めています。
感染性の病因 (結核、真菌、またはトキソプラズマ症など) の可能性が高く、手術にて結核 (tuberculoma) と一致する乾酪壊死を伴う慢性肉芽腫性炎症と診断されました。
③その他
- 結核性血管炎→脳梗塞を起こすことがあり、穿通枝領域やMCA領域に多い。
- 結核膿瘍は、他の膿瘍同様にDWIで高信号。
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