先に結論:嚢虫症(有鉤嚢虫症)
- 嚢虫症は有鉤条虫(豚の条虫)の卵を口にして、幼虫が脳などに寄生する病気で、中南米・アジア・アフリカからの輸入例が見られます。てんかん発作・水頭症の原因になります
- MRIでは時期によって見え方が変わり、中に点状の頭節を持つ小さな嚢胞(cyst with dot sign)が特徴的です。死ぬとリング状の造影と強い浮腫、最終的に石灰化します
- 脳室内や脳槽にできると閉塞性・交通性水頭症を起こします
- レントゲンでは筋肉内の米粒状の石灰化が手がかりになります
cysticercosis(嚢虫症)
・グローバル化に伴い、先進国でも見られる機会が増えた輸入感染症(Kimura-Hayama 2010)。
・有鉤条虫の幼虫寄生により生じる。中枢神経系の寄生虫感染症としては最も多い。
・頭蓋内に好発するが、脊髄に発生することもある。
・小腸で成虫となり、便に虫卵が排泄→虫卵で汚染された食物や水を摂取→虫卵は消化管で幼虫となり、これが血行性に消化管粘膜、筋肉、皮下軟部組織、特に中枢神経系に好んで感染。
中枢神経への感染
・幼虫が脳実質を侵す実質型:痙攣発作、神経巣症状
・上衣脈絡叢に感染する脳室型:閉塞性水頭症
・髄膜を侵すクモ膜下型:交通性水頭症
嚢虫の時期と画像の見え方
脳実質の嚢虫は4つの時期に分けられます(Kimura-Hayama 2010)。
| 時期 | CT・MRIの見え方 |
|---|---|
| 嚢胞期(vesicular) | 髄液と同じ信号の嚢胞と点状の頭節。浮腫はほぼない |
| 膠様嚢胞期(colloidal vesicular) | 嚢虫が死に始める。リング状の造影と周囲の浮腫 |
| 顆粒結節期(granular nodular) | 嚢胞が縮み、結節状の造影。浮腫は減る |
| 石灰化結節期(nodular calcified) | 小さな石灰化。CTで高吸収、MRIのT2*強調像・SWIで低信号 |
画像所見
・感染の時期によって異なる。
・脳感染の初期:幼虫の感染巣は、CTで低吸収、T2強調像で高信号を示す小さな浮腫性病変として認められる。
・好発部位は脳実質が最も多いとされる(くも膜下腔型を最多とする資料もあり、文献により異なる)。
・嚢虫が成長すると、内部に頭節を有する数ミリ〜数センチの嚢胞が形成される。周囲には浮腫あり。T2 強調像では境界明瞭な輪状病変の中に頭節(scolex)を示唆する低信号を示す。2017年改訂のDel Brutto診断基準では、嚢胞内の頭節の描出は、組織での確認・網膜下嚢胞と並ぶ「絶対基準」とされています。頭節のない嚢胞・造影される病変・多房性嚢胞・石灰化は主要な画像基準、水頭症と軟膜の造影は副次的な画像基準に位置づけられています。嚢虫や頭節は通常のCT・MRIでは見えにくいことがあり、3D高分解能T2強調像(MR cisternography)で検出が改善します。転移や化膿性膿瘍との鑑別には拡散強調像・MRスペクトロスコピー・灌流画像が役立ちます。
・嚢虫が死亡すると、周囲の脳実質に強い炎症性変化が認められ、高度の浮腫が認められるようになる。痙攣、神経巣症状などが最も多く認められるのは、この時期である。リング状の造影効果を認める。
・感染後数年を経ると、嚢腫は縮小して、石灰化を認めるようになる。石灰化すると造影効果は消失するが、一部で認めるという報告もあり。
脳室内、中脳水道、Magendie ・Luschka孔の閉塞による二次性の閉塞性水頭症の原因
・Abscess
・Arachnoid cyst
・Basal arachnoiditis
・Colloid cyst
・Congenital aqueductal stenosis
・Cysticercosis
・Dandy-Walker syndrome
・Hematoma
・Neoplasm
造影される多発結節の鑑別
・転移性脳腫瘍
・原発性中枢神経系リンパ腫
・播種性感染症(Tb、嚢虫症、クリプトコッカスなど)
・炎症性疾患(多発性硬化症、サルコイドーシスなど)
脳内多発石灰化をきたす寄生虫疾患
・有鉤嚢虫症
・肺吸虫症
・日本住血吸虫症
・包虫症
有鉤嚢虫症のレントゲン(単純X線)所見
脳の嚢胞はレントゲンでは見えず、脳の評価にはCTとMRIを使います。一方、嚢虫が筋肉や皮下にも広がった例(播種性嚢虫症)では、死んだ嚢虫が石灰化し、レントゲンで筋肉内に散らばる米粒状・葉巻状の石灰化(rice-grain calcification)として写ります。骨盤・胸部・下肢のX線で、筋線維の向きにそろった多数の米粒状石灰化がみられた報告があります(Póvoa 2021)。この石灰化は、脳の嚢虫症を疑う手がかりになると報告されています(Kumar 2014)。
症例 40歳代男性 二次性全般化する焦点発作と左側の不随意運動

引用:Radiopaedia(Neurocysticercosis)
T2強調像で、両側の大脳皮質下、基底核などに、髄液と同じような高信号を示す小さな嚢胞が多数散在しています。いくつかの嚢胞の内部には点状の低信号(頭節)がみられます。報告では多くが周囲に浮腫を伴わない嚢胞期(vesicular stage)の病変でした。
有鉤嚢虫症でよくある疑問(Q&A)
Q1. 有鉤条虫症と有鉤嚢虫症は何が違いますか?
有鉤条虫症は、生焼けの豚肉の幼虫を食べて腸で成虫が育つ状態です。有鉤嚢虫症は、条虫の卵を口にして幼虫が筋肉や脳に嚢胞を作る状態で、脳のものを脳有鉤嚢虫症と呼びます。
Q2. 日本でもかかりますか?
国内での感染はまれで、主に流行地域からの輸入例です。けいれん発作や続く頭痛など気になる症状があれば、渡航歴を伝えて医療機関を受診してください。
参考文献
- Kimura-Hayama ET, Higuera JA, Corona-Cedillo R, et al. Neurocysticercosis: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2010;30(6):1705-19. PubMed
- Garcia HH, Nash TE, Del Brutto OH. Clinical symptoms, diagnosis, and treatment of neurocysticercosis. Lancet Neurol. 2014;13(12):1202-15. PubMed
- Lerner A, Shiroishi MS, Zee CS, et al. Imaging of neurocysticercosis. Neuroimaging Clin N Am. 2012;22(4):659-76. PubMed
- Del Brutto OH, Nash TE, White AC, et al. Revised diagnostic criteria for neurocysticercosis. J Neurol Sci. 2017;372:202-210. PubMed
- White AC, Coyle CM, Rajshekhar V, et al. Diagnosis and Treatment of Neurocysticercosis: 2017 Clinical Practice Guidelines by the Infectious Diseases Society of America (IDSA) and the American Society of Tropical Medicine and Hygiene (ASTMH). Clin Infect Dis. 2018;66(8):1159-1163. PubMed
- Póvoa A, Vieira P, Silva A, et al. Disseminated Cysticercosis. Eur J Case Rep Intern Med. 2021;8(3):002430. PubMed
- Kumar N, Sundriyal D, Wadhawan P, et al. ‘Rice-grain’ or ‘cigar-shaped’ calcification: radiological clue and minor criteria for neurocysticercosis. BMJ Case Rep. 2014;2014:bcr2014205363. PubMed
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