脳膿瘍(brain abscess)

  • 感染経路は血行性もしくは直接進展(副鼻腔,中耳乳突蜂巣)、開頭術後。約1/4は感染源が特定できない。
  • 病理像は脳炎(2週間)→壊死および被包化膿瘍(2週間以降)。
  • 単発のことも多発のこともある。
  • 診断後は、全身の感染源、右左シャントなどの検索をする。
  • 炎症反応に乏しい症例があるので注意が必要。
  • 頭痛や痙攣、局所神経症状が主症状となることもある。
  • 脳室に穿破を起こすと予後不良。

脳膿瘍の画像所見は?

  • CTよりもMRIにおいて感度が高い。
  • 被膜がリング状増強効果を示す。被膜の厚みは比較的均一であるが、脳表では厚いことがある。膿瘍の被膜はT1WIで高信号、T2WIで低信号になることがある。※T2WIで低信号は脳膿瘍に特徴であり、コラーゲン、血腫およびMφの産生するフリーラジカルによる。
  • ただし被膜形成前は典型的なリング状を示さず、不規則な造影効果を示し、悪性神経膠腫との鑑別が問題になる。
  • 浮腫や周囲へのmass effectの程度はさまざま。被膜を形成して膿瘍が成熟すると軽減するとされる。
  • DWIで著明な高信号、ADCにて低下を来す。膿性内容がADCの低下を来す。
  • SWIでdural rim sign(同心円状の辺縁の低および高信号)は脳膿瘍に特徴的。
  • 鑑別は壊死性脳腫瘍(転移や膠芽腫)など。被膜の厚みが不均一で、充実部があれば腫瘍を疑う。

関連:脳でリング状増強効果を呈する疾患(ring-enhancement lesions)の鑑別診断

症例 70歳代女性 脳膿瘍+脳室へ穿破し、脳室炎を合併

brain abscess

右の前頭葉の白質に周囲に浮腫性変化を伴い、拡散強調像(DWI)で著明な高信号を示し、ADCの信号低下を示す腫瘤を認めています。造影MRIでリング状に造影されています。脳膿瘍を疑う所見です。

brain abscess1

膿瘍の被膜はT1WIで高信号を示し、T2WIで低信号を示していることがわかります。

brain abscess2


症例 50歳代女性

F1.large SWIでdural rim sign(同心円状の辺縁の低および高信号)は脳膿瘍に特徴的。

AJNR 33:1534-1538,2012

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