中枢神経系原発悪性リンパ腫(primary central nervous system[CNS]lymphoma:PCNSL)
- 原発性脳腫瘍の5%、悪性リンパ腫全体の1%程度。近年増加傾向にある。
- PCNSLの9割以上はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)。>>>low‐grade lymphoma、Burkittリンパ腫、T細胞系リンパ腫など。
- そのため免疫染色ではCD19,20,22,79aが強陽性を示しMIB-1陽性率が高い。
- 60~70代に好発する。やや男性に多い。
- 免疫不全患者では30代に好発しAIDS患者に合併しやすい。
- 中枢神経系のどこにでも生じるが、テント上の脳脊髄液に接する部位(水際)に見ることが多い(95%)。好発部位は、脳室周囲白質、脳梁、基底核など。
- 脳梁を介して左右対称性に進展する(butterfly pattern)のが特徴的で、このような進展を来すのは、悪性リンパ腫と膠芽腫のみ。
- 30〜50%が多発性。免疫不全患者ほど多発。
- ステロイドに反応良好で、40%で腫瘍縮小する。
- ステロイド投与のみあるいは、無治療でサイズ縮小すればリンパ腫を疑う。
- 血液脳関門(BBB)のため使用できる薬剤が限られる。メトトレキサートを中心とした化学療法が行われる。
- 化学療法(high dose MTX)+放射線療法により白質脳症を発生させる可能性あり。特に60歳以上。
中枢神経系原発悪性リンパ腫の画像所見
- CT上やや高吸収を示す。細胞密度が高い腫瘍であることを反映。
参考)CTで高吸収を呈する脳腫瘍:悪性リンパ腫、髄芽腫、胚腫 - 均一な中等度以上のベタ〜とした増強効果を示す。
- 免疫不全患者では、多発性でリング状の造影増強効果を示すことが多く、壊死・出血が見られることもある。(なのでHIV患者において、トキソプラズマとの鑑別が問題になる)
- T1強調像では軽度低~等信号、T2強調像では低~高信号までさまざま。
- DWIにて高信号、ADC信号低下あり。
- 転移ほどランダム分布ではない。
- 多発性の増強効果の場合、膠芽腫よりも、よりリンパ腫らしい。
- 壊死、出血、石灰化はまれ。
悪性リンパ腫の鑑別診断は?
- 膠芽腫(腫瘍内出血や壊死を伴うことが多く、不整形で不均一な厚さのリング状濃染)
- 転移性腫瘍(多発し周囲の浮腫が強い)
- 脳膿瘍(DWIで内部が著明な高信号、T2WIで被膜が低信号。造影後均一な厚さのリング状増強効果)
- 脱髄性疾患(増強効果が乏しい)
- サルコイドーシス(T2WIやDWIで低信号が特徴)
- 免疫不全ならばトキソプラズマ(類似点多いが、ADCの低下、軟髄膜病変、PETでの高集積がリンパ腫で見られやすい)、PML(通常造影されない。)
※脳室上衣への進展が典型的で、血管周囲腔に沿った刷毛で掃いたような造影効果を見た場合はPCNSLを考慮する。
参考:よくわかる脳MRI(第3版)P123
大変まとまっていてわかりやすいのですが、宜しければ元の論文や教科書などの参考文献を教えていただけたらと思います。
takashi先生
徐々に参考文献も掲載していくようにしています。よろしくお願いします。