顔面骨のレントゲン(正面・Waters法・側面)では、眼窩・上顎骨・頬骨・下顎骨・歯がすべて重なって1枚に写ります。そのため「この線はどの骨の縁か」がわからないと、骨折や腫瘍を見つける前に迷ってしまいます。

この記事では、画像診断cafeの3D-CT(骨を立体にした画像)の正面像・側面像に色を付けて、顔面骨の正常解剖を「正面から見える骨」「眼窩」「歯」「側面から見える骨」の順に解説します。レントゲンで見える影は、この立体の骨を正面や横から透かして見たものです。立体で骨の並びを覚えておくと、レントゲンのどの線がどの骨なのかが追いやすくなります。断面(CTの横断像・冠状断)で顔面骨を見る方法は顔面骨の解剖|顔の骨の名前とCTの見方で扱っています。

先に結論:顔面骨の正面・側面で見る順番と目印

  1. 眼窩の縁:上は前頭骨、外側は頬骨、下は上顎骨と頬骨、内側は上顎骨(前頭突起)と涙骨。左右の輪がそろっているかを最初に見ます
  2. 頬骨:眼窩の外下にある「ほお骨」。前頭骨・上顎骨・側頭骨・蝶形骨とつながる、顔の外側の柱です
  3. 上顎骨:眼窩の下から歯の上まで。中に上顎洞(空洞)があり、レントゲンでは黒く抜けて見えます
  4. 下顎骨:オトガイ(あご先)・体部・下顎角・下顎枝・関節突起・筋突起に分けて見ます
  5. 歯:正中から中切歯・側切歯・犬歯・第一小臼歯・第二小臼歯・第一大臼歯・第二大臼歯(・第三大臼歯)の順に並びます
  6. 側面:頬骨弓、翼状突起、外耳孔と下顎の関節突起、乳様突起・茎状突起の位置関係を確かめます

顔面骨レントゲンの撮り方と、何が見えるか

顔面骨のレントゲンは、目的によって角度を変えて撮ります。代表的なものは次のとおりです。

  • 正面像(Caldwell法):前頭洞・篩骨洞・眼窩の縁、上眼窩裂のあたりがよく見えます
  • Waters法:あごを上げて撮る方法で、上顎洞・眼窩の下の縁(眼窩底)・頬骨が錐体骨と重ならずに見えます。頬骨骨折や眼窩底の骨折を疑うときの基本です(副鼻腔レントゲン(Waters法)の見方)
  • 側面像:前頭洞・蝶形骨洞の前後の広がり、鼻骨、下顎骨の縦の並びがわかります
  • 頬骨弓の軸位像:下から見上げる方向で撮り、頬骨弓のへこみ(陥没骨折)を見ます
  • パノラマ撮影:歯と上顎・下顎を1枚に広げて見る撮影で、歯科や下顎骨折の評価で使われます

最近は顔のけがの評価はCTが中心ですが、レントゲンが最初に撮られる場面もまだあります。頭蓋骨全体のレントゲンの見方は頭蓋骨のレントゲンの見方を参考にしてください。

正面から見た顔の骨(全体)

顔面骨 正面 3D-CT 前頭骨 鼻骨 頬骨 上顎骨 下顎骨
正面から見ると、上に前頭骨(1)、眼窩の外下に頬骨(3)、鼻と歯の間に上顎骨(4)、いちばん下に下顎骨(5)が並びます。鼻の付け根には左右の鼻骨(2)、眼窩の奥の外側には蝶形骨の大翼(6)、耳の後ろの下には乳様突起(7)が見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

顔面骨の正面像は、大きく上(前頭骨)・中(眼窩・頬骨・上顎骨・鼻)・下(下顎骨)の3段に分けると整理しやすくなります。顔面骨折の分類も、この3段のどこが折れるかで考えます。

覚え方のポイントは次の3つです。

  • 頬骨は「四つ足」:上は前頭骨(前頭頬骨縫合)、内側は上顎骨、後ろは側頭骨(頬骨弓)、奥は蝶形骨とつながっています。頬骨骨折では、この4か所のつなぎ目が折れやすくなります(頬骨上顎複合骨折(ZMC骨折))
  • 上顎骨は「中が空洞」:上顎洞があるため、レントゲンでは眼窩の下に左右対称の黒い四角として写ります。片側だけ白っぽいときは、液体・出血・腫瘍などを考えます
  • 鼻骨は「薄くて小さい」:正面像では見えにくく、側面像のほうが骨折線を追いやすい骨です(鼻骨骨折の見分け方)

眼窩をつくる骨と孔

眼窩 3D-CT 前頭骨 頬骨 上顎骨 篩骨 涙骨 蝶形骨 上眼窩裂 下眼窩裂 眼窩下孔
眼窩の上の壁は前頭骨(1)、外側の壁は頬骨(2)、下の壁(眼窩底)は上顎骨(3)、内側の壁は篩骨(4)と涙骨(5)でできています。奥の上には蝶形骨の小翼(6)と上眼窩裂(7)、外下には下眼窩裂(8)があります。眼窩の上の縁には眼窩上切痕(9)、下の縁の少し下には眼窩下孔(10)があります。
画像:画像診断cafe(正常例)

眼窩は、前頭骨・頬骨・上顎骨・篩骨・涙骨・蝶形骨・口蓋骨の7つの骨が組み合わさったくぼみです。このうち薄いのは内側の壁(篩骨の眼窩板)と下の壁(上顎骨の眼窩面)で、目に強い力が加わったときに折れやすい場所です。これが眼窩吹き抜け骨折です(眼窩吹き抜け骨折とは?)。

眼窩の奥と縁には、神経や血管が通る孔があります。

  • 上眼窩裂:蝶形骨の大翼と小翼の間のすき間。目を動かす神経(動眼神経・滑車神経・外転神経)や眼神経の枝が通ります
  • 下眼窩裂:眼窩の外下の奥。翼口蓋窩や側頭下窩とつながります(翼口蓋窩とは?)
  • 眼窩上切痕(孔):眼窩の上の縁の内寄り。眼窩上神経(三叉神経第1枝の枝)が通ります
  • 眼窩下孔:眼窩の下の縁の少し下。眼窩下神経(三叉神経第2枝の枝)が出てきます。眼窩底の骨折でこの神経が傷つくと、ほおのしびれが出ます(眼窩下神経の走行)

眼窩の孔をまとめて知りたい場合は視神経管・上眼窩裂・下眼窩裂を通るもの一覧、眼窩の中身(外眼筋・視神経)は眼窩の画像解剖で解説しています。

歯の名前と並び方

歯の名前 3D-CT 中切歯 側切歯 犬歯 小臼歯 大臼歯 オトガイ孔
正中から外へ、中切歯(1)・側切歯(2)・犬歯(3)・第一小臼歯(4)・第二小臼歯(5)・第一大臼歯(6)・第二大臼歯(7)の順に並びます。下顎骨の前面、小臼歯の下あたりにはオトガイ孔(8)があります。
画像:画像診断cafe(正常例)

大人の歯(永久歯)は、上下左右それぞれ前から「1番〜8番」と数えます。1番が中切歯、2番が側切歯、3番が犬歯、4番・5番が小臼歯、6番・7番・8番が大臼歯で、8番がいわゆる親知らず(第三大臼歯)です。歯科や画像のレポートで「右下6番」と書かれていれば、右の下顎の第一大臼歯を指します。

画像で歯を見るときは、次の点を意識します。

  • 犬歯は根がいちばん長い:上顎の犬歯の根は鼻の横まで伸び、正面像でも目立ちます
  • 上顎の奥歯の根は上顎洞の底に近い:奥歯の根の炎症が上顎洞に広がる「歯性上顎洞炎」があります(副鼻腔の解剖は副鼻腔・鼻腔の解剖と排泄経路)
  • 下顎の奥歯の根の下には下顎管:下歯槽神経が走り、オトガイ孔から出てオトガイ神経になります(下顎管のCT画像解剖)
  • 親知らずは位置がさまざま:骨の中に埋まったまま(埋伏歯)のこともあり、下顎角の骨折線が通りやすい場所でもあります

側面から見た顔と頭の骨

頭蓋骨 側面 3D-CT 前頭骨 頭頂骨 後頭骨 側頭骨 蝶形骨 頬骨 上顎骨 下顎骨
横から見ると、前から前頭骨(1)・頭頂骨(2)・後頭骨(3)が頭の丸みをつくり、その下の横に側頭骨(4)、側頭骨と前頭骨の間に蝶形骨の大翼(5)があります。顔の側では鼻骨(6)・頬骨(7)・上顎骨(8)・下顎骨(9)が見えます。
画像:画像診断cafe(正常例)

側面では、前頭骨・頭頂骨・側頭骨・蝶形骨の大翼が集まるところ(プテリオン)が、骨が薄く、内側を中硬膜動脈が通る場所として知られています。頭の骨のつなぎ目(縫合)は骨折線と間違えやすいので、位置を覚えておくと役立ちます(頭蓋骨の縫合線と骨折線の見分け方)。

側面の細かい構造:頬骨弓・外耳孔・下顎の周り

頬骨弓 外耳孔 乳様突起 茎状突起 翼状突起 下顎骨 3D-CT 側面
頬骨(1)の後ろに側頭骨の頬骨突起(2)が続き、2つで頬骨弓という橋をつくります。頬骨弓の後ろの端の下に外耳孔(3)、その後ろに乳様突起(4)、下に細い茎状突起(5)があります。上顎骨(8)の後ろには蝶形骨の翼状突起外側板(6)が見え、下顎骨(7)の枝が頬骨弓の内側へ上がっていきます。
画像:画像診断cafe(正常例)

側面像で押さえておきたい位置関係は次のとおりです。

  • 頬骨弓:頬骨と側頭骨の頬骨突起がつながった細い橋です。横からの打撃でへこみやすく、下には側頭筋が通るため、陥没すると口が開けにくくなることがあります
  • 下顎の関節突起と外耳孔:下顎骨の関節突起は外耳孔のすぐ前で側頭骨と関節(顎関節)をつくります。あごを打ったあとの耳の前の痛みでは、関節突起の骨折を考えます(下顎骨骨折のCT画像診断と分類)
  • 筋突起:下顎枝の前の突起で、頬骨弓の内側に入り込み、側頭筋が付きます(咀嚼筋のまわりは咀嚼筋間隙の解剖)
  • 翼状突起:上顎骨の後ろにある蝶形骨の突起です。Le Fort骨折では、型にかかわらずこの翼状突起が折れるのが特徴です(顔面骨折の種類と症状・CT画像診断)
  • 乳様突起・茎状突起:外耳孔の後ろと下にある側頭骨の突起です。乳様突起の中には空気の入った小部屋(乳突蜂巣)があります(側頭骨CTの正常解剖)

よく間違える構造・正常変異

  • 縫合線を骨折と間違える:前頭頬骨縫合や頬骨側頭縫合は、レントゲンでは細い線に見えます。左右で同じ位置にあり、縁がなめらかなら縫合のことが多いです(前頭頬骨縫合とは?)
  • 孔を骨の欠けと間違える:眼窩下孔・オトガイ孔・眼窩上孔は、正面像で小さな黒い点に見えます。左右対称の位置にあるかを確かめます
  • 上顎洞・前頭洞の左右差:副鼻腔の大きさには個人差・左右差があり、前頭洞が小さい、またはほとんどない人もいます。片側が小さいだけで病気とは限りません
  • 歯の重なり:正面のレントゲンでは上下の歯が重なり、歯の根の先が骨の病変のように見えることがあります。歯の病気が疑われる場合はパノラマ撮影や歯科用CTで確かめます
  • まだ生えていない歯:子どもでは、骨の中に永久歯の歯胚がたくさん写ります。腫瘍と間違えないよう、年齢を確認します

この解剖が役立つ病気

画像診断cafeで自分で確かめる

この記事の画像は、正常な顔面骨の3D-CTをタップすると骨の名前がわかる無料ツール「画像診断cafe」から作りました。顔面骨 正面(画像診断cafe)と顔面骨 側面(画像診断cafe)で、眼窩の骨・孔、歯の1本1本、頬骨弓や翼状突起を自分でタップして確かめられます。

スマートフォンではアプリも使えます。iPhoneはApp Storeで「画像診断cafe」と検索してください。AndroidはGoogle Play(画像診断cafe)からインストールできます。

顔面骨の正常解剖でよくある疑問(Q&A)

Q. 顔面骨はレントゲンとCTのどちらで調べますか?
A. 顔のけがで骨折が疑われる場合は、骨の重なりがなく細かい骨折線まで見えるCTが中心です。レントゲンは、最初の確認や、歯・下顎の評価(パノラマ撮影)などで使われます。

Q. Waters法で頬骨骨折を見るコツはありますか?
A. 眼窩の下の縁、頬骨の外側の縁、上顎洞の外側の壁、頬骨弓を、左右で見比べながらなぞります。線の段差や途切れ、上顎洞が片側だけ白くなっていないか(出血)を確かめます。

Q. 歯の「6番」はどの歯ですか?
A. 正中から数えて6本目の第一大臼歯です。上下左右にあり、「右上6番」のように場所と合わせて呼びます。

あわせて読みたい:顔面骨骨折、頭蓋骨骨折まとめ

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