
首のしこり(頸部腫瘤)とは、首にふれるかたまりの総称で、原因はリンパ節・甲状腺・唾液腺・生まれつきの嚢胞などさまざまです。「首の横の水っぽいしこりだから鰓裂嚢胞」と、場所と見た目だけで良性と決めたことはありませんか。研修医のハジメくんと一緒に、年齢・場所から原因をしぼる考え方、がんを疑うサイン、エコー・CT・MRIで見るところを整理します。
先に結論
- 首のしこり(頸部腫瘤)とは、首にふれるかたまりのこと。原因は先天性・炎症・腫瘍の3つに分かれ、子どもは感染や先天性、大人で続くしこりは腫瘍を考える。
- 大人で2週間以上続く・硬い・動かない・1.5cmを超えるしこりは、がんを否定できるまで調べる。首の横の嚢胞も、のどのがんのリンパ節転移のことがある。
- 子どもや甲状腺・唾液腺のしこりにはエコーが役立つ。がんが疑われる大人は造影CTまたは造影MRIと、必要に応じて細い針で細胞をとる穿刺吸引細胞診で診断を進める。
目的から読む: 首のしこりとは / 年齢・場所別の原因 / 嚢胞は安心? / がんを疑うサイン / エコーでわかること / CT・MRIでわかること / 検査の流れと紹介先
首のしこり(頸部腫瘤)とは? 原因は大きく3つ
首(頸部)のしこりは医学的に頸部腫瘤(けいぶしゅりゅう)と呼びます。原因は大きく、生まれつきのもの(先天性)、炎症、腫瘍の3つに分けられます(Aulino 2019)。
アメリカ放射線学会(ACR)の画像検査の指針は、年齢が高いほど腫瘍を、子どもでは先天性のものを考え、年齢・しこりの場所・脈打つかどうかで検査を選ぶとしています(Aulino 2019)。また、子どもの首のしこりは感染によるものが多いのに対し、大人で続くしこりは腫瘍が多く、がんの頻度が高いとされます(Pynnonen 2017)。
ただし、専門の外来に紹介された大人4103人を調べた研究では、がんだったのは約5%で、多くはがんではありませんでした(Kshirsagar 2021)。大人のしこりを全部がんとして扱う必要はありませんが、続くものは診断がつくまで追いかけます。
首のしこりの原因: 年齢・場所別の主な病気
首の真ん中なら甲状舌管嚢胞や甲状腺、首の横なら鰓裂嚢胞やリンパ節、耳の前・下なら耳下腺、あごの下なら顎下腺やガマ腫が、場所から考える代表です。
| 場所 | 子ども・若い人に多いもの | 大人で考えるもの |
|---|---|---|
| 首の真ん中(のどぼとけ付近) | 甲状舌管嚢胞(正中頸嚢胞) | 甲状腺のしこり(結節) |
| 首の横(胸鎖乳突筋の前) | 鰓裂嚢胞(側頸嚢胞)、リンパ節炎 | がんのリンパ節転移(のど・扁桃など)、悪性リンパ腫 |
| 耳の前・下 | リンパ節炎 | 耳下腺腫瘍(多形腺腫・ワルチン腫瘍など) |
| あごの下 | ガマ腫、リンパ節炎 | 顎下腺の腫れ・腫瘍、リンパ節 |
| 首のあちこち・両側 | かぜなどによる反応性のリンパ節腫大、菊池病 | 悪性リンパ腫、結核性リンパ節炎 |
※あくまで目安です。どの年齢でも別の病気のことがあります。
首の横の嚢胞は良性? 「嚢胞だから安心」とは限らない
大人の首の横の嚢胞は、鰓裂嚢胞に見えてものど(中咽頭)のがんのリンパ節転移のことがあり、良性と決めつけずに診断がつくまで調べます。
ACRの指針は、どの年齢でもヒトパピローマウイルス(HPV)関連のがんを考えるべきとしています(Aulino 2019)。大人の単発の嚢胞性しこり79人の研究では、首の横〜後ろにあったもの49人中19人(39%)が悪性で、首の前側(30人中1人)より多くみられました(Pupić-Bakrač 2024)。アメリカ耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会のガイドラインも、嚢胞性のしこりを良性と決めつけず、診断がつくまで調べるよう勧めています(Pynnonen 2017)。
首のしこりでがんを疑うサイン
大人で2週間以上続く、硬い、周りにくっついて動かない、1.5cmを超える、皮膚がただれているしこりは、がんのリスクが高いと考えます(Pynnonen 2017)。
| 見るところ | がんを疑うサイン | 文献 |
|---|---|---|
| 経過 | 感染のきっかけがなく2週間以上大きさが変わらず続く、いつからあるかわからない | Pynnonen 2017 |
| さわった感じ | 周りにくっついて動かない、硬い、1.5cmより大きい、皮膚がただれている | Pynnonen 2017 |
| 年齢・性別 | 年齢が高いほど、男性で多い(40歳未満2.1%→70歳以上8.4%) | Kshirsagar 2021 |
| 画像 | 短いほうの径が1.5cm以上、複数ある、中が不均一・境界がはっきりしない | Kshirsagar 2021 |
| エコーのリンパ節 | 形が丸い、中心のリンパ門(脂肪の筋)が消える、中が壊死している、石灰化、血流のパターンが乱れる | Ahuja 2008 |
首のしこりのエコー所見: リンパ節は形とリンパ門を見る
エコーは放射線を使わず手軽にでき、子どもではまずエコーが基本です(Park 2026)。リンパ節は大きさだけでなく、形(楕円か丸か)とリンパ門が残っているかを見ます。
大人でも、甲状腺・唾液腺・リンパ節のしこりの性質を見るのに向いています。リンパ節では、大きさ・形・内部の構造(リンパ門、壊死、石灰化)を見て、ドプラで血流の分布を確かめます(Ahuja 2008)。エコーを見ながら細い針を刺して細胞をとることもできます。
首のしこりのCT・MRI所見: 広がりと周りとの関係を見る
がんの可能性が高い大人には造影CT(または造影MRI)を行うよう強く勧められています(Pynnonen 2017)。CT・MRIでは、しこりの広がり、周りの臓器との関係、首の奥のさわれない部分、ほかのリンパ節を一度に見ます(Park 2026)。
| しこりの種類 | 画像でのイメージ |
|---|---|
| 反応性リンパ節 | 楕円形で、中心にリンパ門(脂肪)が残る |
| がんの転移リンパ節 | 丸く腫れる、中が壊死して不均一、嚢胞のように水っぽいこともある |
| 悪性リンパ腫 | 複数のリンパ節が均一に腫れる |
| 甲状舌管嚢胞・鰓裂嚢胞 | 壁の薄い水のふくろ(感染すると壁が厚くなる) |
| 唾液腺腫瘍 | 耳下腺・顎下腺の中のかたまり。MRIで種類を推定 |
※表の画像イメージは典型像の目安で、実際には重なりがあります。
リンパ節がどの「場所(レベル)」にあるかは、どこのがんから転移しやすいかの手がかりになります。レベルの分け方は「頸部リンパ節のレベル分類と正常・異常のCT画像」で正常・異常のCTと合わせて確認できます。首の横の多房性の水のふくろはリンパ管腫(リンパ管奇形)、頸動脈の分かれ目のよく染まるかたまりは傍神経節腫(頸動脈小体腫瘍)で症例を見られます。
症例 30歳代女性 2日前からの押すと痛む左首の腫れ

引用:Radiopaedia(Second branchial cleft cyst)
- 場所:左の首(画像では右側)。胸鎖乳突筋の内側、顎下腺の後ろです。
- 中身:水のように暗く写る袋状のしこり(嚢胞)です。
- 周りとの関係:首の太い血管(頸動脈・頸静脈)を内側へ押しのけています。
手術で側頸嚢胞(第2鰓裂嚢胞)と確かめられました。若い人のこの場所の嚢胞は鰓裂嚢胞の典型ですが、大人では嚢胞性の転移との区別が要ることは上の節のとおりです。
首のしこりの検査の流れと紹介先
問診・診察とのどの中の観察をもとに、画像(子どもや甲状腺・唾液腺はエコー、がんが疑われる大人は造影CTまたは造影MRI)と穿刺吸引細胞診で診断を進め、続くしこりや疑わしいしこりは耳鼻咽喉科・頭頸部外科(甲状腺なら甲状腺外来・内分泌内科でも)へ紹介します。
- 問診と診察:いつから・大きさの変化・痛み・発熱・たばこ/お酒・飲み込みにくさ・声がれなど
- のどの中を見る:がんが疑われるときは、喉頭・舌の付け根・咽頭をファイバーなどで観察(Pynnonen 2017)
- 画像検査:子どもや甲状腺・唾液腺の評価ではエコー。がんが疑われる大人では造影CTまたは造影MRIを勧める(Pynnonen 2017)。エコーを先に行うことは必須ではない
- 穿刺吸引細胞診(FNA):診断がつかないときは、切って取る手術より先に、細い針で細胞をとる検査を行う(Pynnonen 2017)。エコーを見ながら外来で行えます
- それでも不明なら:追加の検査や、麻酔下での詳しい観察を検討(Pynnonen 2017)
状況ごとの次の一手
- 熱や痛みがあり数週間で小さくなる → 経過を見てよいことが多い。消えなければ再評価
- 2週間以上続く・大きくなる・硬い・動かない → 耳鼻咽喉科・頭頸部外科へ紹介
- 首の真ん中で飲み込むと動くしこり → 甲状腺の可能性。「甲状腺結節の悪性を疑う所見」も参考に
- CTで偶然「甲状腺の結節」が見つかった → 「甲状腺の結節をCTで指摘されたら」
- 首が急に赤く腫れて熱・飲み込みにくさが強い → 膿がたまっていることがあり、早めに評価する(頸部膿瘍)
よくある勘違い
Q. 首の横の壁の薄い嚢胞は、鰓裂嚢胞と考えてよい?
大人では決めつけません。のど(中咽頭)のがんのリンパ節転移が嚢胞のように見えることがあり、首の横〜後ろの嚢胞性しこりは49人中19人が悪性でした(Pupić-Bakrač 2024)。診断がつくまで調べます。
Q. 子どもの首のしこりも、まずCTを撮る?
子どもでは、放射線を使わないエコーがまず行われます。広がりを詳しく見る必要があるときにCTやMRIを追加します(Park 2026)。
Q. 診断がつかないしこりは、まず抗菌薬で様子を見る?
細菌感染の症状がないしこりに、とりあえず抗菌薬を出すことは勧められていません。続くしこりは、画像と細い針の細胞診で診断を進めます(Pynnonen 2017)。
今日のまとめ
- 首のしこりは年齢と場所で原因をしぼる。子どもは感染・先天性、大人で続くものは腫瘍を考える。
- 2週間以上続く・硬い・動かない・1.5cm超は詳しく調べる。大人の首の横の嚢胞は転移のことがある。
- エコーは形とリンパ門、CT・MRIは広がりと周りとの関係を見る。診断は切る前に細い針の細胞診で。
根拠(もう少し詳しく): 研究の中身
| 研究 | 対象 | わかったこと |
|---|---|---|
| Kshirsagar 2021 | 2017年に耳鼻咽喉科へ紹介された大人4103人(後ろ向き) | がんは205人(5.0%)。男性は女性の2倍以上がんが多い(調整オッズ比2.38)。最小径1cm未満では3.0%、2cm以上では31%超。画像で最小径1.5cm以上(オッズ比3.87)、2個以上(5.07)、不均一・境界不明瞭(2.57)が悪性と強く関係 |
| Pupić-Bakrač 2024 | 大人の単発の嚢胞性しこり79人(後ろ向き) | 首の横〜後ろ49人中19人(38.8%)、首の前側30人中1人(3.3%)が悪性。エコー+細胞診と、さらにCT・MRIを加えた群で良性・悪性の見分けの成績に有意差なし |
| Pynnonen 2017 | 大人の首のしこりの診療ガイドライン | がんのリスクが高いしこりの条件、造影CT・MRI、切る前の細胞診、嚢胞性しこりを良性と決めつけない、根拠のない抗菌薬は勧めない |
| Ahuja 2008 | 悪性の頸部リンパ節のエコーの総説 | 大きさ・形・内部構造(リンパ門の消失・壊死・石灰化)とドプラの血流で転移・リンパ腫を見分ける |
| Park 2026 | 子どもの首の病変の画像の総説 | 最初はエコー。CT・MRIは広がり・組織の性質・周りとの関係を補う |
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参考文献
- Pynnonen MA, Gillespie MB, Roman B, et al. Clinical Practice Guideline: Evaluation of the Neck Mass in Adults. Otolaryngol Head Neck Surg. 2017;157(2_suppl):S1-S30. PubMed
- Aulino JM, Kirsch CFE, Burns J, et al. ACR Appropriateness Criteria® Neck Mass-Adenopathy. J Am Coll Radiol. 2019;16(5S):S150-S160. PubMed
- Kshirsagar RS, Anderson M, Boeckermann LM, et al. The Adult Neck Mass: Predictors of Malignancy. Otolaryngol Head Neck Surg. 2021;165(5):673-681. PubMed
- Pupić-Bakrač J, Jayasekara S, Peiris PM, et al. Malignancy and “Violated Neck” Rates in Consecutive Cohort of 79 Adult Patients With Solitary Cystic Neck Mass-Lessons Learned and Recommendations for Clinical Practice Guidelines. J Craniofac Surg. 2024;35(4):e380-e385. PubMed
- Ahuja AT, Ying M, Ho SY, et al. Ultrasound of malignant cervical lymph nodes. Cancer Imaging. 2008;8(1):48-56. PubMed
- Park JE. Imaging Strategies for Pediatric Neck Lesions: A Contemporary Review. J Korean Soc Radiol. 2026;87(3):405-415. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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