carpal boss X線・CT・MRI

carpal boss(手根隆起)とは、手の甲で第2・第3中手骨の付け根の背側にできる骨の出っ張りで、ガングリオンと同じ場所にできるため間違われやすい病変です。研修医のハジメくんと一緒に、X線・CT・MRIで何を見ればよいか、os styloideumとガングリオンとの区別を整理します。

先に結論

  1. carpal boss(手根隆起)とは、第2・第3中手骨の基部背側の骨性隆起。骨棘のほか、os styloideum(副骨)・偽関節・関節症の形をとる。
  2. X線(側面とcarpal boss view)とCTで骨の形と副骨を、MRIで四角関節まわりの骨髄浮腫を見る。骨髄浮腫は痛みと関連した。
  3. ガングリオンは液体のふくろ、carpal bossは骨。同じ場所にできるので、超音波・CT・MRIで中身を確かめる。

目的から読む: carpal bossとは / 原因・os styloideum / X線 / CT所見 / MRI所見 / ガングリオンとの区別 / 治療と画像

carpal boss(手根隆起)とは? 手の甲の骨の出っ張り

carpal boss(カーパルボス、手根隆起)は、手の甲で第2または第3中手骨の付け根の背側にできる骨の隆起です(Porrino 2015)。一般の人にもさまざまな程度で見られ、多くは症状がありませんが、手の甲の痛みや腫れの原因になります。

ハジメハジメ(研修医)
先生、手の甲の手首寄りに硬いしこりがある方がいて、場所的にガングリオンだと思って超音波をお願いしました。carpal bossって、何のことですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
ハジメくん、そのしこりは「硬くて動かない」感じでしたか、それとも「弾力がある」感じでしたか? carpal bossは骨の出っ張りです。ガングリオンと場所が同じなので、まず中身が骨か液体かを考えます。

どの骨が向かい合っている場所?

ごろ〜ごろ〜(指導医)
ここは4つの骨が向かい合う場所です。中手骨が2本、手根骨が2個。名前を言えますか?
ハジメハジメ(研修医)
第2・第3中手骨と…手根骨は舟状骨と月状骨ですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこは手首の側の列ですね。中手骨と向かい合うのは、指の側の列にある小菱形骨と有頭骨です。

この場所では、第2中手骨・第3中手骨の基部と、手根骨の小菱形骨・有頭骨の4つの骨が向かい合っています。この4つの骨が作る関節のまとまりを四角関節(quadrangular joint)と呼びます。第2中手骨の基部には長橈側手根伸筋腱、第3中手骨の基部には短橈側手根伸筋腱が付き、どちらも隆起の上を走ります。手根骨の並びと名前は手の解剖と骨の名称|手根骨8個の並び方で確認できます。

構造 位置と意味
第2・第3中手骨の基部 carpal bossの出っ張りができる場所
小菱形骨・有頭骨 中手骨の基部と向かい合う手根骨。中手骨と合わせて四角関節を作る
短橈側・長橈側手根伸筋腱 第3・第2中手骨の基部に付く手首の伸筋腱。隆起の上を走る
os styloideum 小菱形骨・有頭骨・第2・第3中手骨のあいだにある副骨(Greditzer 2017)
ハジメハジメ(研修医)
出っ張りは、横から見るとどこにあるんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
手の甲側、つまり背側です。中手骨の付け根と手根骨のつなぎ目の、背中側のふちが盛り上がります。ガングリオンも同じあたりの皮膚の下にできます。

carpal bossの原因とos styloideum

はっきりした原因はわかっていません(Porrino 2015)。軽い外傷と、本来は骨と癒合するはずのos styloideum(副骨)が残ったことが疑われています(Park 2008)。

ハジメハジメ(研修医)
os styloideumとは、どんな骨ですか? 骨折のかけらとは違うんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
小菱形骨・有頭骨・第2・第3中手骨のあいだにある小さな副骨です。一般の人での頻度は最大19%と推定されています(Greditzer 2017)。ふちがなめらかな皮質で囲まれていて、隣の骨と癒合していることも、偽関節を作っていることもあります。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
つまりcarpal bossは1つの形ではありません。中手骨の骨棘のこともあれば、副骨のこともある。形の違いをそろえて見てみます。

carpal bossのでき方には多くの説があります(Porrino 2015)。長く続くcarpal bossは、関節の変形性の変化を起こすことがあります(Park 2008)。形は次のように分けて考えると、画像で何を確かめるかが整理できます。

形 画像で確かめること
中手骨基部の骨棘 第2・第3中手骨の基部背側から骨が連続して出っ張る
os styloideum(分かれたまま) 中手骨と手根骨のあいだに、皮質に囲まれた小さな骨が別にある(Greditzer 2017)
os styloideum(癒合) 副骨が隣の骨(例: 小菱形骨)とつながり、反対側の骨と新しい関節を作る(Nicolodi 2017)
偽関節・関節症 骨の肥大、関節のすき間の不整、皮質の下の小さな嚢胞、骨髄浮腫(Krishnamurthy 2024)
ハジメハジメ(研修医)
副骨があるなら、それが痛みの原因と考えていいんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこは言い切れません。症状のない人にもある骨です。プロのアイスホッケー選手で副骨と骨髄浮腫が多かったという報告もあり、くり返しの負担への反応とする見方もあります(Greditzer 2017)。痛みとの関係は、あとで見るMRIの骨髄浮腫が手がかりになります。

carpal bossのX線: 正面では重なって見えにくい

X線では、第2・第3中手骨の基部の背側に骨の出っ張りが見えます。ただし正面像では骨が重なり、出っ張りがわかりにくいことがあります。

ハジメハジメ(研修医)
手関節の正面と側面を撮って、どちらも「骨に異常なし」でした。これでcarpal bossは否定できますか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
出っ張りは背側の小さな山なので、まっすぐの側面では隣の中手骨の付け根と重なって隠れることがあります。山を横からちょうど縁取るように写せたら、どうなると思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
山の輪郭だけが浮き出て見える…あ、手首を少し回して撮るんですね。
マルオマルオ(技師)
撮る側からひとことです! carpal boss viewは、ふつうの側面から手首を少し回して、出っ張りを接線で写します。依頼に「第3中手骨基部の背側のしこり」と場所を書いてもらえると、角度を合わせやすいです!

手根中手関節を接線方向に写すように手首を少し回して撮る側面像(carpal boss view)が、ほかの手の甲のしこりとの区別に使われます(Park 2008)。os styloideumが小菱形骨に癒合している例では、X線で小菱形骨と有頭骨のあいだの関節の隙間がはっきりしなくなっていました(Nicolodi 2017)。

carpal bossのCT所見: 骨棘か副骨か、癒合か偽関節か

CTは、出っ張りが中手骨の骨棘なのか、別の小さな骨(os styloideum)なのか、その骨がどの骨と癒合し、どの骨と偽関節を作っているのかを立体的に見るのに向きます(Krishnamurthy 2024)。

ハジメハジメ(研修医)
X線で出っ張りが見えたら、それで診断はついていますよね。CTまで撮る意味はありますか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
「出っ張りがある」ことと「その出っ張りがどの骨の一部か」は別の問題です。手術で削る範囲を考えるときには、骨棘か、副骨がどこに癒合し、どこと関節を作っているかが大事になります。横断だけでなく、矢状断で中手骨と手根骨のつなぎ目を縦に見ます。

引用元の図 小菱形骨に癒合したos styloideum

小菱形骨に癒合したos styloideumのX線・3D-CT・CT・MRI
引用:Nicolodi GC, et al. Carpal boss syndrome: os styloideum fused to the trapezoid. Radiol Bras. 2017 (Figure 1)。PMC5487237(CC BY)

手を背屈すると痛み、第2・第3中手骨の付け根に押すと痛む硬い隆起があった29歳女性です(Nicolodi 2017 Figure 1)。

  • A(X線):小菱形骨と有頭骨のあいだの関節の隙間がはっきりしません。
  • B・C(3D-CT・横断CT):os styloideumが小菱形骨に癒合し、有頭骨とのあいだに新しい関節を作っています。
  • D(T1強調像):新しい関節に接したos styloideumに骨髄浮腫が見られます。
マルオマルオ(技師)
CTでは薄いスライスで撮っておくと、あとから矢状断や3Dを作れます。手を伸ばした姿勢で、骨の並びが見やすいようにしています!

carpal bossのMRI所見: 四角関節まわりの骨髄浮腫

MRIは、骨だけでなく骨髄と軟部組織の変化を見ることができます。四角関節まわりの骨髄浮腫は、痛みのあるcarpal bossと強く関連していました(Mespreuve 2017)。

ハジメハジメ(研修医)
骨の形はCTで見えるなら、MRIは要らないんじゃないですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
出っ張りは症状のない人にもあります。では、その出っ張りが「いま痛んでいる」かどうかは、どこを見ればわかると思いますか?
ハジメハジメ(研修医)
骨の中…骨髄の変化ですか。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。四角関節をはさむ骨に骨髄浮腫があるかどうかが、痛みの出どころを考える大事な手がかりになります。
マサマサ(技師)
……骨髄浮腫は、脂肪抑制T2強調像やSTIRで白く、T1強調像で暗く見えます。手首は磁場の中心からずれやすくて、脂肪抑制にムラが出ると浮腫っぽく白く残ることがあるんですよね。T1でも暗いか、いっしょに見てもらえると安心です。

carpal bossの形はさまざまで、骨と軟部組織のいろいろな異常が伴っていました(Mespreuve 2017)。偽関節の部分では、皮質の下の小さな嚢胞(偽嚢胞)が見られることもあります(Krishnamurthy 2024)。

引用元の図 第3中手骨基部のcarpal boss(MRI・CT)

第3中手骨基部のcarpal bossのMRIとCT
引用:Krishnamurthy HA, et al. Carpal Boss: A Case Series of a Radiological Enigma in Dorsal Wrist Pathology. Cureus. 2024 (Figure 2)。PMC11438525(CC BY 4.0)

手の甲の第3中手骨の付け根に最近になって痛みと腫れが出た34歳女性で、最初はガングリオンが疑われていました(Krishnamurthy 2024 Figure 2)。MRI(脂肪抑制プロトン密度強調像)とCTで、第3中手骨の基部と小菱形骨の骨の肥大と偽関節、関節症性の変化、骨髄浮腫、皮質の下の小さな偽嚢胞が見られます。

X線・CT・MRIで分かること

検査 分かること
X線(正面・側面・carpal boss view) 第2・第3中手骨の基部背側の骨の出っ張り。副骨と隣の骨のあいだの隙間(Park 2008、Nicolodi 2017)
CT 骨棘か副骨か、癒合か偽関節か、関節症の変化(Krishnamurthy 2024、Nicolodi 2017)
MRI 四角関節まわりの骨髄浮腫(痛みと関連)、骨と軟部組織のさまざまな異常、偽関節部の小さな嚢胞(Mespreuve 2017、Krishnamurthy 2024)
超音波 手の甲のしこりが骨か液体かの区別(Arend 2014)
骨シンチグラフィ ほかの手の甲のしこりとの区別に使われることがある(Park 2008)

carpal bossとガングリオンの区別

ガングリオンは液体のふくろ、carpal bossは骨です。手の甲のしこりでもっとも多いのはガングリオンで、carpal bossは同じあたりにでき、症状もはっきりしないため間違われやすいとされます(Arend 2014)。

ハジメハジメ(研修医)
超音波で見分けるとしたら、どこを見ればいいですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
しこりの中身です。骨なら表面が明るい線(高エコー)で、その奥は音が届かず影になります。ガングリオンなら中が黒く抜けた嚢胞です。報告された3人の症例でも、最初はガングリオンや骨折が疑われていました(Krishnamurthy 2024)。

ガングリオンのMRIの特徴と、滑液包炎・滑膜嚢胞との違いはガングリオンとは?手・足の症状と治療、MRI画像で症例と合わせて見られます。

比べる点 carpal boss ガングリオン
中身 骨(骨棘・副骨) ゼリー状の液体の入ったふくろ
触ったとき 硬く、動かない 弾力があり、大きさが変わることがある
X線・CT 第2・第3中手骨の基部背側の骨の出っ張り 骨の異常はない
MRI 骨の信号。痛いときは骨髄浮腫を伴うことがある(Mespreuve 2017) T2強調像で均一な高信号の嚢胞。造影では壁だけが染まる
超音波 骨の表面の高エコーの出っ張り 中が黒く抜ける(無エコー)嚢胞

carpal bossには、骨だけでなくまわりの軟部組織の異常が伴うこともあります(Mespreuve 2017)。手首の伸筋腱は隆起の上を走るため、腱鞘炎との関係も見ておくとよいでしょう。手首の伸筋腱の6つの区画と腱鞘炎は手関節の伸筋腱の腱鞘炎のMRI画像診断で確認できます。

carpal bossの治療と画像の役割

症状のないcarpal bossは治療の対象になりません。痛みがあれば保存的治療から始め、症状がとれないときに隆起の切除が考えられます(Park 2008)。画像は、削る範囲を考える材料になります。

ハジメハジメ(研修医)
出っ張りが原因なら、大きめに削ってしまえば再発しなくて安心ですよね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこが落とし穴です。広く切除しすぎると関節が不安定になり、症状が続いたり悪化したりする危険があります(Park 2008)。だから、どこまでが出っ張りで、どこが痛んでいるかを画像で絞ることが役に立ちます。

痛みがあるときは保存的治療が行われますが、それで症状がとれないことがあり、隆起の切除が長くよく行われてきました(Park 2008)。一方で、広く切除しすぎると関節の不安定性が起こるため、切除の範囲は慎重に考えられています(Park 2008)。

手術を考えるときには、出っ張りが骨棘か副骨か、副骨がどの骨と癒合しているか、関節症の変化がどこまであるかが大事な情報になります。CTで骨の形を、MRIで骨髄浮腫の場所を確かめることは、痛みの出どころを推定し、切除の範囲を考える助けになります(Mespreuve 2017、Krishnamurthy 2024)。

よくある勘違い

Q. 手の甲の手首寄りのしこりは、まずガングリオン?

いちばん多いのはガングリオンですが、carpal bossも同じ場所にできます。硬くて動かないしこりなら、X線や超音波で骨か液体かを確かめます(Arend 2014)。

Q. 手関節の正面・側面X線で異常がなければ、carpal bossは否定できる?

いいえ。正面像では骨が重なり、出っ張りがわかりにくいことがあります。手首を少し回したcarpal boss viewや、CTで確かめます(Park 2008)。

Q. os styloideumがあれば、それが痛みの原因?

言い切れません。症状のない人にもある副骨です。痛みとの関係は、MRIで四角関節まわりに骨髄浮腫があるかが手がかりになります(Mespreuve 2017)。

今日のまとめ

  1. carpal bossは第2・第3中手骨の基部背側の骨の出っ張り。ガングリオンと同じ場所なので、まず骨か液体かを確かめる。
  2. X線はcarpal boss view、CTは骨棘か副骨か・癒合か偽関節かを見る。
  3. MRIは四角関節まわりの骨髄浮腫。痛みの出どころと切除の範囲を考える手がかりになる。

根拠(もう少し詳しく)

研究 対象 わかったこと
Mespreuve 2017 carpal bossの57人をMRIとX線で調べ、症状のない対照と比較 carpal bossの形はさまざまで、骨と軟部組織のいろいろな異常を伴った。四角関節まわりの骨髄浮腫は痛みのあるcarpal bossと有意に関連し(P<0.001)、正の相関があった(r=0.632)
Greditzer 2017 北米のプロアイスホッケー(NHL)の選手16人の手首 13人(81%)にos styloideumがあり、MRIを見た11人のうち10人(91%)で中手骨とos styloideumに骨髄浮腫のパターンがあった。手首にくり返しかかる負担への反応として生じている可能性を挙げている。一般の人での頻度は臨床・解剖の研究から最大19%と推定
Krishnamurthy 2024 3人の症例報告 MRIとCTで第2・第3中手骨の基部の骨の肥大と、偽関節・関節症性の変化が確かめられ、CTが骨の形を高い解像度で示した。最初はガングリオンや骨折が疑われていた
Nicolodi 2017 29歳女性の症例報告 小菱形骨に癒合したos styloideumが有頭骨と新しい関節を作り、X線で小菱形骨と有頭骨のあいだの隙間がはっきりしなかった

参考文献

  1. Porrino J, Maloney E, Chew FS. Current Concepts of the Carpal Boss: Pathophysiology, Symptoms, Clinical or Imaging Diagnosis, and Management. Curr Probl Diagn Radiol. 2015;44(5):462-8. PubMed
  2. Park MJ, Namdari S, Weiss AP. The carpal boss: review of diagnosis and treatment. J Hand Surg Am. 2008;33(3):446-9. PubMed
  3. Mespreuve M, De Smet L, De Cuyper K, et al. MRI diagnosis of carpal boss and comparison with radiography. Acta Radiol. 2017;58(10):1245-1251. PubMed
  4. Arend CF. The carpal boss: a review of different sonographic findings. Radiol Bras. 2014;47(2):112-4. PubMed
  5. Greditzer HG 4th, Hutchinson ID, Geannette CS, et al. Prevalence of Os Styloideum in National Hockey League Players. Sports Health. 2017;9(5):469-473. PubMed
  6. Nicolodi GC, Trippia CR, Caboclo MFFS, et al. Carpal boss syndrome: os styloideum fused to the trapezoid. Radiol Bras. 2017;50(3):200-201. PubMed
  7. Krishnamurthy HA, Gowda H, Parameshwara PB, et al. Carpal Boss: A Case Series of a Radiological Enigma in Dorsal Wrist Pathology. Cureus. 2024;16(8):e68078. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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