部分容積効果 ゼロからの画像診断 #06

ゼロからの画像診断 #06

小さな影なのに、CT値を測ると思ったより低い。臓器の端が、病気のようにぼんやり灰色に見える。研修医のハジメくんと一緒に、その理由「部分容積効果」を図で確かめます。

先に結論

  1. CTの画像は小さな箱(画素)の集まり。1つの箱に2つのものが入ると、CT値は2つのまぜた平均になる。これが部分容積効果。
  2. だから、スライスの厚さより薄いもの・小さいものは、本当より灰色に(CT値が本当とちがう値に)見える。
  3. 対策は、薄い画像で見る・上下の画像も見る・別の断面で見る。

腎臓の端に灰色の影?

ハジメハジメ(研修医)
先生、腎臓のてっぺんに、まわりより薄い灰色のところがあります。腫瘍でしょうか…?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
1つ下の画像では、そこはどう見えますか?
ハジメハジメ(研修医)
下の画像では…ふつうの腎臓です。影はありません。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
それは部分容積効果かもしれませんね。むずかしい名前ですが、しくみは単純です。CTの画像が何でできているかから考えてみましょう。

画像は小さな箱の集まり

ごろ〜ごろ〜(指導医)
CTの画像は、小さな四角(画素)が並んでできています。じつは1つ1つの画素は、スライスの厚さぶんの奥行きがある小さな箱です。1つの箱には、1つの数字(CT値)しか入れられません。
ハジメハジメ(研修医)
箱の中に骨と水が半分ずつ入っていたら、どうなるんですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いい質問です。そのときは、まぜた平均の数字になります。図で見てみましょう。
図1 1つの箱には1つの数字 左は本当の形、右はCTの画素(模式図)。ものの縁にかかった画素は、入っている割合に応じた「まぜた平均」の灰色になる。
図1 1つの箱には1つの数字 左は本当の形、右はCTの画素(模式図)。ものの縁にかかった画素は、入っている割合に応じた「まぜた平均」の灰色になる。
ハジメハジメ(研修医)
縁のところが、白でも黒でもない灰色になっていますね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。しかもこれは、画面の上下左右だけでなく、スライスの厚さの向き(体の上下)でも起こります。厚い箱ほど、いろいろなものがまざりやすくなります。

厚さより薄いものは、値が下がる

ごろ〜ごろ〜(指導医)
たとえば、肺の中(およそ-850)に、本当は+40のかたまりがあるとします。かたまりの厚さが、スライスの厚さより薄いとどうなるでしょう。
図2 ものの厚さと、見えるCT値 計算した模式図。箱の中を占める割合だけ値が上がる。スライスが5mmだと、厚さ2mmのかたまりは本当の+40に届かず、およそ-500になる。
図2 ものの厚さと、見えるCT値 計算した模式図。箱の中を占める割合だけ値が上がる。スライスが5mmだと、厚さ2mmのかたまりは本当の+40に届かず、およそ-500になる。
ハジメハジメ(研修医)
本当は+40なのに、-500くらいに見えるんですか!すっかり別のものの値ですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
はい。1mmのスライスなら、2mmのかたまりでも本当の値になります。実際に絵にしてみましょう。
図3 同じかたまりを1mmと5mmのスライスで 肺の中の、直径3mm・6mm・10mmのかたまり(本当は同じ濃さ)の模式図。5mmのスライスでは、小さいものほど薄い灰色になる。
図3 同じかたまりを1mmと5mmのスライスで 肺の中の、直径3mm・6mm・10mmのかたまり(本当は同じ濃さ)の模式図。5mmのスライスでは、小さいものほど薄い灰色になる。
ハジメハジメ(研修医)
5mmだと、3mmのかたまりは、すりガラスみたいな薄い影に見えます…。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうなんです。薄く見えるのは、本当に薄いからとは限らない。小さいものは、薄いスライスで見直すのが大事です。

臓器の端が灰色になる

ごろ〜ごろ〜(指導医)
最初の腎臓の話に戻りましょう。腎臓のてっぺんを厚いスライスで切ると、箱の中に腎臓とまわりの脂肪がまざります。
図4 腎臓のてっぺんを切ると 左は切る高さ(冠状断の模式図)。厚いスライスの箱には腎臓と脂肪がまざるので、腎臓の上の端が本当より暗い灰色に見える。病気の影と見まちがえやすい。
図4 腎臓のてっぺんを切ると 左は切る高さ(冠状断の模式図)。厚いスライスの箱には腎臓と脂肪がまざるので、腎臓の上の端が本当より暗い灰色に見える。病気の影と見まちがえやすい。
ハジメハジメ(研修医)
あ、ぼくが見た「薄い灰色の影」は、これですね。下の画像でふつうだったのも、腎臓の真ん中を切っていたからだ…。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そのとおりです。同じことは、小さな石のCT値でも起こります。
図5 小さな石のCT値 腎臓の中の直径3mmの石(模式図・本当は+1000)。丸で囲んで測った値は、1mmのスライスより5mmのスライスのほうが低くなる。数値は模型から計算した例。
図5 小さな石のCT値 腎臓の中の直径3mmの石(模式図・本当は+1000)。丸で囲んで測った値は、1mmのスライスより5mmのスライスのほうが低くなる。数値は模型から計算した例。
ハジメハジメ(研修医)
小さい石だと、CT値だけで「石じゃない」と決めたら、まちがえそうですね。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そうです。小さいもののCT値は、低めに出ることがあると覚えておいてください。
マルオマルオ(技師)
撮る側からひとこと!いまのCTは、薄いスライスのデータを残しておけることが多いです。5mmの画像で気になるところがあったら、薄い画像があるか聞いてください。作り直しのくわしい話は次の回で!
図6 部分容積効果にだまされないために 薄い画像で見る・上下の画像も見る・別の断面で見る。どれも「箱にまざったものを減らす・確かめる」工夫。
図6 部分容積効果にだまされないために 薄い画像で見る・上下の画像も見る・別の断面で見る。どれも「箱にまざったものを減らす・確かめる」工夫。

よくある勘違い

Q. 薄い灰色に見えるものは、本当に薄い(すりガラスのような)もの?

とは限りません。スライスの厚さより小さいものは、まわりとまざって薄く見えます。薄いスライスで見直します。

Q. 小さな石のCT値が低ければ、石ではない?

小さいものはまわりとまざって、CT値が低めに出ることがあります。値だけで決めず、薄い画像でも確かめます。

Q. 部分容積効果は、厚いスライスのときだけ起こる?

どんな画像でも、ものの縁にかかった画素では起こります。厚いスライスほど目立ちやすくなります。

今日のまとめ

  1. CTの1つの画素(箱)には1つの数字。2つのものが入ると平均の値になる(部分容積効果)。
  2. スライスより薄いもの・小さいもの・臓器の端は、本当より灰色に見え、CT値もずれる。
  3. 薄い画像・上下の画像・別の断面で確かめる。

図はすべてコードで描いた模式図で、実際の画像ではありません。

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