先に結論:菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)
- 菊池病は若い女性に多い、発熱と痛みを伴う頸部リンパ節腫大で、白血球減少・LDH上昇を伴うことが多く、多くは数か月で自然に治ります
- CTでは後頸部(レベルII〜V)の、小さく多発するリンパ節腫大と周囲脂肪の炎症が特徴で、一部に壊死を伴います
- 悪性リンパ腫・結核・SLEとの区別が大切で、診断が難しいときはリンパ節生検を行います
- まれに再発することがあり、後からSLEを発症することもあるため、治ったあとも数年は経過をみます
菊池病とは
- 菊池・藤本病、組織球性壊死性リンパ節炎とも呼ばれる。
- アジア、特に日本に多い。
- 主として若年者(多くは30歳未満、女性に多い)に発症する(Bosch 2006)原因不明(なんらかの感染を契機として発症すると推測されている)の有痛性の頸部リンパ節腫大。
- 前駆症状として扁桃腫大を伴う上気道症状の後、急速に頸部リンパ節腫大と白血球減少を認める。
- 高熱とリンパ節腫脹のみで経過し、しばしば不明熱の原因となる。
- 他症状としては、頭痛、倦怠感、上気道症状、口内炎、肝腫大、脾腫大、関節炎など。
- 少数の症例に顎下部、腋窩部、鼠径部のリンパ節も腫大し、まれに一過性の皮膚発疹、肝・脾腫をきたすことがある全身性疾患である。また頸部のリンパ節腫大を伴わないこともある。
- 頸部リンパ節腫脹が最も多く、レベルⅡ〜Ⅴに多い。
- 診断はリンパ節生検(臨床経過からはStill病や悪性リンパ腫との鑑別が困難なことがある。)
- 治療は解熱鎮痛薬などの対症療法が中心で、ステロイドはまれに用いられる程度。1〜4か月で自然に治る予後良好な良性リンパ節疾患である(Bosch 2006)。再発することがあり(再発率は3〜4%との報告、Bosch 2006)、SLEの発症に注意して数年は経過観察する。
- 血液所見ではWBC低下、LDH上昇がみられる。CRPの上昇を伴う事も多い。
- 他、フェリチン、IL-2 receptorが上昇することもある。
関連記事)
▶リンパ節腫脹をきたす疾患の鑑別診断まとめ
▶頸部リンパ節腫脹、腫大、造影効果を有するものの鑑別診断
不明熱とは?
(2~3週間にわたり、≧38℃、一般検査で原因が特定できない)
| 感染症 28.7% | 膠原病 19.0% | 悪性腫瘍 14.4% |
| 結核 7.2% | 成人Still病 8.5% | 悪性リンパ腫 7.8% |
| ウイルス 6.5% | PMR 3.3% | MDS 1.3% |
| 化膿性リンパ節炎 5.9% | 血管炎 9.2% | その他 15.7% |
| 感染性心内膜炎 3.3% | 大動脈炎 5.9% | 菊池病 3.9% |
| 特発性細菌性腹膜炎 | ベーチェット 2.6% | キャッスルマン病 1.3% |
(Iikuni et al Int Med 33. 67)
菊池病の画像所見
- リンパ節腫大が上内深頚リンパ節、副神経リンパ節中心に多発する。レベルⅡ〜Ⅴに好発し、レベルⅡの発生頻度が最多。
- 1つ1つが小さなリンパ節で癒合に乏しい傾向にある。
- リンパ節周囲への炎症波及が80%以上の高頻度で見られる(96例中78例・81.3%、Kwon 2004)。
- 片側が76例、両側が20例と片側性が多い(Kwon 2004)。経過観察CTを行った32例では、14例でリンパ節腫大が消失し、18例で部分的に改善した(Kwon 2004)。
- 壊死を反映して内部が不均一なものと、均一に造影されるものの2パターンの報告あり。(小さなものは均一で、大きなものは壊死を伴う)参考)木村氏病は皮下に増強効果を示す病変を伴っていることが多い。
- 画像上は必ずしも壊死を示す所見が確認されるわけではない。96例の検討では均一な造影効果が83%と大半で、局所的な低吸収域は9%、リング状は7%にとどまり、1例あたり平均12.5個のリンパ節が腫大していました(大きさ0.5〜3.5cm、平均1.6cm)。壊死性頸部リンパ節腫大(転移110例・結核性71〜73例・菊池病71例・リンパ腫36例、計290例)を比べた検討では、リンパ節周囲の浸潤、壊死巣の数や程度などのCT所見が鑑別に有用で、さらに圧痛や悪性腫瘍の既往といった臨床情報を組み合わせると正診率は約87〜88%に上がりました。壊死を伴う場合も、CT所見だけでなく臨床情報と合わせて判断することが大切です。
菊池病(組織球性壊死性リンパ節炎)の病理
- リンパ節の傍皮質が広がり、境界のはっきりした壊死巣に核の破片(核崩壊物)が多く、好中球や好酸球がみられないのが特徴(Perry 2018)。
- 増殖型・壊死型・黄色腫型の3つの組織パターンがあり、病期とともに移り変わると考えられている(Perry 2018)。
- 組織球はミエロペルオキシダーゼ陽性で、T細胞(主にCD8陽性)が優位でB細胞はわずか(Perry 2018)。
- 病理でも感染性リンパ節炎、SLEによるリンパ節症、悪性リンパ腫との区別が問題になる(Perry 2018)。
症例 35歳男性 筋肉痛、発熱、リンパ節腫脹

右頸部に一部内部壊死を伴うリンパ節腫大あり。周囲に脂肪織濃度上昇あり。
症例 37歳女性

右頸部に一部内部壊死を伴うリンパ節腫大あり。周囲に脂肪織濃度上昇あり。
片側性複数のリンパ節腫大の鑑別診断
- 片側性複数のリンパ節腫大の鑑別にバルトネラ・ヘンセラ菌(グラム陰性桿菌)による猫ひっかき病がある。
- ネコによるひっかき傷や咬傷部位の所属リンパ節の有痛性腫脹。
- 上肢の傷で同側の腋窩リンパ節腫大が生じ、頚部リンパ節も腫大することがある。リンパ節周囲に炎症の波及がある。
白血球減少症の鑑別診断
- 粟粒結核、
- ブルセラ症、
- SLE、
- 悪性リンパ腫、
- 白血病・前白血病状態、
- チフス(Salmonella typhi)、
- 菊池病。
参考)
・画像診断2009年10月 頭頸部の感染症 自治医科大学 藤田晃史先生
・臨床画像2010年8月 頸動脈間隙 杏林大学 大原有紗先生
関連記事:川崎病の診断基準、画像診断(動脈瘤、リンパ節腫大)
菊池病でよくある疑問(Q&A)
Q1. 菊池病(壊死性リンパ節炎)は繰り返しますか?
多くは1〜4か月で自然に治りますが、再発率は3〜4%と報告されています(Bosch 2006)。数年後にSLEを発症する例もあるため、治ったあとも経過をみることが勧められています(Bosch 2006)。
Q2. 菊池病はどうやって診断しますか?
血液検査や画像で疑うことはできますが、確定には主にリンパ節の切除生検による病理診断が行われます(Bosch 2006)。CTやエコーでは、後頸部に多発する小さめのリンパ節腫大と周囲の炎症が手がかりになります(Kwon 2004)。
首のしこりが痛む、熱が続くなど気になる症状があれば、医療機関を受診してください。
参考文献
- Kwon SY, Kim TK, Kim YS, et al. CT findings in Kikuchi disease: analysis of 96 cases. AJNR Am J Neuroradiol. 2004;25(6):1099-102. PubMed
- Na DG, Chung TS, Byun HS, et al. Kikuchi disease: CT and MR findings. AJNR Am J Neuroradiol. 1997;18(9):1729-32. PubMed
- Bosch X, Guilabert A. Kikuchi-Fujimoto disease. Orphanet J Rare Dis. 2006;1:18. PubMed
- Iikuni Y, Okada J, Kondo H, et al. Current fever of unknown origin 1982-1992. Intern Med. 1994;33(2):67-73. PubMed
- Perry AM, Choi SM. Kikuchi-Fujimoto Disease: A Review. Arch Pathol Lab Med. 2018;142(11):1341-1346. PubMed
- You SH, Kim B, Yang KS, et al. Cervical necrotic lymphadenopathy: a diagnostic tree analysis model based on CT and clinical findings. Eur Radiol. 2019;29(10):5635-5645. PubMed
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