軟部腫瘍の画像診断の要点と進め方

  • 圧倒的多数は良性。悪性腫瘍はその1/100 !!
  • なので、不要な検査や手術をしないために良性を正確に良性と診断することが大事。
  • 多くは非特異的。
  • 特徴的所見と部位により質的診断ができるものも存在する。
  • 時に軟部腫瘤でなく正常構造も含まれるため要注意。
    例)副筋、過剰筋、異常筋、肉離れ、筋挫傷、筋肉ヘルニア、非被包化脂肪組織など
  • 悪性の可能性がある場合はそのstagingと生検部位を決定。
  • 3割当たればよいと思う。

まず敵を知る:知っておくべき軟部腫瘤26

良性中間型悪性
脂肪腫
血管腫
血管奇形
神経鞘腫
神経線維腫
表皮嚢腫(粉瘤)#
高分化型脂肪肉腫
/異型脂肪腫様腫瘍
表在型線維腫症##
類腱腫##
SFT*(血管周皮腫)##
粘液型脂肪肉腫
平滑筋肉腫
悪性リンパ腫#
筋肉内粘液腫
ガングリオン#
腱鞘巨細胞腫/PVNS*
弾性線維腫##
モートン神経腫#
結節性筋膜炎##
石灰化上皮腫#
グロムス腫瘍
リンパ管腫
悪性神経鞘腫瘍 (MPNST)
粘液線維肉腫:以前の粘液型MFH*
未分化多形性肉腫: 多形型MFH
横紋筋肉腫
胞巣状軟部肉腫

#:WHO分類2013で軟部腫瘍には含まれないもの
##:WHO分類2013で線維芽/筋線維芽性に分類
*SFT::solitary fibrous tumor, PVNS::pigmented vellous nodular synovitis, MFH:malignant fibrous histiocytoma

軟部腫瘤診療の流れ

  1. 臨床的事項、単純X線、超音波+MRI →腫瘍の同定、広がりを診断
  2. 高頻度の腫瘍、特徴のある腫瘍を疑う。質的診断。鑑別を絞る。
  3. 低頻度の腫瘍を考える。良悪性の鑑別診断をする。
  4. 他の画像検査(CT、核医学)、生検
  5. フォローアップ、治療(手術、放射線治療、化学療法)

MRIで何を撮影するか

  • T1WI(時に脂肪抑制)
  • T2WI(Fast SE法)(時にT2*WI(Fast GE法))
  • 脂肪抑制T2WI/STIR
  • 拡散強調像
  • DWIBS(ADC map)
  • ダイナミック造影
  • MRA

MRI読影の手順は?

Step1:脂肪抑制T2WI / STIR , 拡散強調像・DWIBS で腫瘍を同定する (脂肪腫以外は同定可能)。
Step2:T1WI ,T2WIなどで内部性状を推測する。
Step3:ADC値で拡散のしやすさを評価する。
Step4:ダイナミック造影・MRAで血行動態を評価する。

どうやって内部性状を推測するの?

T2強調像で著明な高信号の腫瘤

全体/大部分が高信号なら

粘液型軟部腫瘍の鑑別診断のポイント
内部均一脂肪膠原線維粘液基質内の血管網
筋肉内粘液腫ほぼ均一×-〜±少なく極めて繊細
粘液型脂肪肉腫やや不均一-〜±繊細な毛細血管網発達
粘液線維肉腫不均一×部分的に○豊富

部分的に高信号なら

  • 神経鞘腫
  • 神経線維腫
  • 腫瘤内嚢胞変性

など

T1WIで高信号の/高信号を含む腫瘤

脂肪:

血液/血腫

T2WIで低信号の/低信号主体の腫瘤

膠原線維:

  • 表在型線維腫症(palmar/plantar fibromatosis)
  • 類腱腫(desmoid-type fibromatosis)
  • SFT(血管周皮腫)

ヘモジデリン:

ADC値からの良悪性の鑑別

・ADC<1.35で悪性。

ダイナミックパターンからの良悪性の鑑別

・rapid plateau/washoutのパターンで悪性が多い。

軟部腫瘤診断の8step 診断法

  • step1. 嚢胞性腫瘤を評価する。 (表皮嚢腫,ガングリオン,リンパ管腫)
  • step2. 粘液腫成分を探す。 (筋肉内粘液腫,粘液型脂肪肉腫,粘液線維肉腫)
  • step3. 脂肪成分を探す。 (脂肪腫,高分化型脂肪肉腫,粘液型脂肪肉腫)
  • step4. 神経原性腫瘍を疑う。 (神経鞘腫,神経線維腫,悪性神経鞘腫瘍)
  • step5. 血管性腫瘍を疑う。 (血管腫/血管奇形)
  • step6. T2強調像で低信号の腫瘤を評価する。 (表在型線維腫症,類腱腫,SFT/血管周皮腫,腱鞘巨細胞腫/PVNS)
  • step7. 早期に非常に強く造影される腫瘤を評価する。 (血管腫/血管奇形,グロムス腫瘍,胞巣状軟部肉腫)
  • step8. ADC値,Dynamic patternによる良悪性診断

年齢と頻度から軟部腫瘍にせまる

良性中間型悪性
1歳まで血管腫
脂肪芽腫
リンパ管腫
線維腫症線維肉腫
横紋筋肉腫
1-15歳血管腫
神経線維腫
結節性筋膜炎
線維腫症滑膜肉腫
横紋筋肉腫
15-45歳血管腫
神経鞘腫
神経線維腫
結節性筋膜炎
脂肪腫
腱鞘巨細胞腫
線維腫症
高分化型脂肪肉腫
滑膜肉腫
脂肪肉腫
悪性神経鞘腫瘍
45-65歳脂肪腫
神経鞘腫
血管腫
腱鞘巨細胞腫
線維腫症
高分化型脂肪肉腫
脂肪肉腫
平滑筋肉腫
悪性神経鞘腫瘍
65歳-脂肪腫
神経鞘腫
神経線維腫
血管腫
高分化型脂肪肉腫脂肪肉腫
平滑筋肉腫
悪性神経鞘腫瘍
未分化多形性肉腫

発生部位から軟部腫瘍にせまる

皮膚

  • 表皮嚢腫
  • 石灰化上皮腫
  • 隆起型皮膚線維肉腫
  • 悪性リンパ腫

筋膜

頸部

  • リンパ管腫:小児頚部
  • 横紋筋肉腫:小児頚部,生殖器
  • 石灰化上皮腫:小児上腕,肩,頚部

手足

  • 浅在性線維腫症:足底/手掌

傍椎体

  • 傍神経節腫:傍脊椎

腹壁

  • 類腱腫:腹壁,術後

会陰

  • 侵襲性血管粘液腫

その他

  • 滑膜肉腫:大関節周辺
  • 神経鞘腫:神経に沿う

軟部腫瘍の質的診断

内部性状から診断を絞る。

着目すべき8つの所見
  • ①石灰化・骨化
  • ②空気
  • ③脂肪
  • ④粘液様基質
  • ⑤拡張した血管腔
  • ⑥出血(ヘモジデリン)
  • ⑦線維
  • ⑧flow void

①-③:単純X線写真・CTでみる
③-⑧:MRIでみる。

▶特徴的所見を有する頻度の高い良性軟部腫瘍

発生部位から診断を絞る。

  • ①爪下+早期に造影→Glomus腫瘍
  • ②手指の屈筋腱鞘+T2WI低信号→GCTTS
  • ③手掌(正中神経)+脂肪→脂肪線維腫
  • ④肘上部尺側+網目状信号→猫引っ掻き病
  • ⑤肩甲下部+線維と脂肪→弾性線維腫
  • ⑥腹壁+線維→デスモイド型線維腫症
  • ⑦会陰+粘液基質→侵襲性血管粘液腫
  • ⑧足底+線維→足底線維腫症

軟部腫瘍と鑑別すべき疾患

  • ①リンパ腫・転移性腫瘍
  • ②猫引っ掻き病
  • ③サルコイドーシス
  • ④膿瘍
  • ⑤化骨性筋炎
  • 結節性筋膜炎
  • ⑦滑膜包炎
  • ⑧表皮嚢腫

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