先に結論:脂肪腫のCT・MRIと「脂肪肉腫を疑うサイン」
- 脂肪腫は最も多い良性の軟部腫瘍で、CT・MRIで皮下脂肪と同じ濃さ・信号のかたまりとして見え、脂肪抑制で完全に黒くなり、隔壁は薄く(2mm以下)造影されないのが特徴です
- 10cm以上・筋肉の中など深い場所・高齢・厚い隔壁や結節状の脂肪でない部分・造影される部分があれば、異型脂肪腫様腫瘍(ALT)/高分化脂肪肉腫を疑います。はっきりした充実部があれば脱分化型脂肪肉腫を考えます
- ほかに筋肉内脂肪腫・紡錘細胞脂肪腫・褐色脂肪腫(hibernoma)・樹枝状脂肪腫など特徴的な脂肪性腫瘍があります
※しこりが大きくなる・5cmを超える・深い所にあるときは、整形外科で相談してください。
脂肪を主体とする脂肪性腫瘍
脂肪を主体とする脂肪性腫瘍は以下のように分類されます。

脂肪腫(lipoma)
- 脂肪腫は最も高頻度に遭遇する軟部腫瘍の1つ。
- 成熟した脂肪細胞。
- 皮下にも深部(筋間など)にも発生する。
- 表在性(皮下)脂肪性腫瘍の多くは脂肪腫。一方、ALT/WDLは深部に存在することが多い。
- 多発することがある。
- 時に著しく巨大化。
脂肪腫(lipoma)の画像所見
- 境界明瞭な脂肪のかたまり+隔壁。隔壁、被膜は2mm以下と薄く一様で結節状部分を持たないことが多い。
- 脂肪抑制で完全に抑制される。
- 内部は造影されない。
- 筋肉内脂肪腫では筋線維の間に入り込み、筋線維による線状のパターンを示す。
症例 30歳代

右腰部皮下に薄い被膜を有して、T1WI、T2WIにて高信号、脂肪抑制T1WIにて信号低下をきたす腫瘤あり。
脂肪腫を疑う所見。
以下の所見を伴う場合、脂肪腫よりもALT/WDLを疑う。
脂肪腫よりALT /WDLをより疑う所見
- 高齢(MDM2で確認したALTの平均年齢は60歳との報告。性差は明らかでなく、同報告ではALTの64%が女性)
- サイズが10cm以上
- 腫瘍の局在が皮下ではなく深在性(筋間、筋内、筋膜下)
- 脂肪成分が75%未満
- CTやMRIで内部に非脂肪性の厚い隔壁(>2mm)および結節状の非脂肪成分。
- 脂肪抑制T2強調像での淡い信号上昇、造影効果など
脂肪腫、ALT/WDL、脱分化型脂肪肉腫の大まかな鑑別
-
ほぼ均一な脂肪、薄い隔壁のみ
→ 脂肪腫が第一候補 -
脂肪主体だが、厚い隔壁、結節状非脂肪成分、深部、大型
→ ALT / WDL を考える -
脂肪成分に加えて明らかな充実部が目立つ
→ 脱分化型脂肪肉腫を考える。高分化型脂肪肉腫の中に1cmを超える結節状の非脂肪成分があれば脱分化を示唆し、生検はその非脂肪部分を狙う。なお脂肪腫とALT/WDLの画像所見は重なりが大きく、最終的な区別はMDM2遺伝子増幅などの分子病理で行うことが推奨されている。MDM2で確認した116腫瘍の検討では、放射線科医3名のMRI読影による脂肪腫とWDLの区別はAUC0.61〜0.74にとどまった。一方、113例の検討では、ALTは皮下に1例もなく(87%が筋間)、2mmを超える厚い隔壁がALTの85%にみられたと報告されている。
CT・MRIでの見え方の比較(脂肪腫と脂肪肉腫)
| 脂肪腫 | ALT/WDL | 脱分化型脂肪肉腫 | |
|---|---|---|---|
| CT | 皮下脂肪と同じ低い吸収値 | 脂肪の中に厚い隔壁・結節 | 脂肪の横に軟部組織濃度のかたまり |
| MRI(T1WI・脂肪抑制) | 皮下脂肪と同じ信号で、脂肪抑制で一様に低下 | 脂肪抑制で抑制されない隔壁・結節が残る | 脂肪でない充実部がはっきり残る |
| 造影 | 内部は造影されない | 隔壁・結節が造影されることがある | 充実部が造影される |
| 場所 | 皮下に多い | 筋間など深部に多い | 後腹膜や深部に多い |
ただし画像の重なりは大きく、MDM2で確認した87例の検討では、MRIによるALT/WDLの診断は感度90.9%に対し特異度37.0%で、脂肪腫の多くも「ALT/WDL疑い」と読まれていました(Brisson 2013)。造影効果があるとALTの可能性が上がると報告されています(Knebel 2019)。CT・MRIは「悪性の可能性が高い所見があるか」を拾う役割で、確定は病理(MDM2)で行います。
特徴的な所見や特徴を呈する良性脂肪性腫瘤
- 筋肉内脂肪腫(intramuscular lipoma)
- 紡錘細胞性脂肪腫(spindle cell lipoma)
- 褐色脂肪腫(hibernoma)
- 樹枝状脂肪腫(lipoma arborescens)
筋肉内脂肪腫(intramuscular lipoma)
- T1WI・T2WIで筋線維と同様の信号が腫瘍の内部に認められる
紡錘細胞性脂肪腫(spindle cell lipoma)
- 中高年男性の後頸部、肩、上背部皮下に発生することが多い。そのためShawl area(ショール:肩掛け)に好発するとされる。
- 境界は明瞭で、卵円形>二葉の形態を示す。
- 画像上、腫瘍内に脂肪を同定できることが多いが、できないこともある。
症例 50歳代男性 後頚部腫脹

引用:Radiopaedia
後頚部皮下腫瘤を認めており、腫瘍の下極の内部に一部脂肪成分を認めています。
紡錘細胞性脂肪腫(spindle cell lipoma)と診断されました。
褐色脂肪腫(hibernoma)
- 熱産生に関与する褐色脂肪への分化を示す脂肪性腫瘍。
- 大腿が好発部位。
- 若い成人に多いとされるが、73病変の検討では5〜75歳(平均46歳)と幅広い年齢にみられた(Long 2026)。
- 非脂肪抑制T1WIで皮下脂肪よりやや低い信号(T1 shading)を示すのが診断の手がかりになる。PETのSUVmaxは平均10.4と高かった(Long 2026)。
- 褐色脂肪を反映してFDG-PETで強い集積を示すため、脂肪肉腫などの悪性腫瘍と紛らわしいことがある。MRIでは脂肪性腫瘤の中に蛇行する血管構造を伴うのが特徴。
症例 20歳代女性

引用:Radiopaedia
右大殿筋と中殿筋の間に境界明瞭な腫瘤を認め、 栄養血管を示唆するflow voidを有しています。
腫瘤はT1WI/T2WIで皮下脂肪よりやや低信号、脂肪抑制T1WIで信号低下を認めます。
褐色脂肪腫(hibernoma)と診断されました。
樹枝状脂肪腫(lipoma arborescens)
- 滑膜下に成熟脂肪組織が増生する疾患。
- 膝関節、特に膝蓋上嚢(suprapatellar pouch)に好発する。他には、肩の三角筋下滑液包や、肘の上腕二頭筋橈骨滑液包に生じることがある。
- MRIでは関節内腔もしくは滑液包内に脂肪を示唆する信号域が葉状ないし多結節状に認める。
症例 10歳代男性 膝の痛みと腫脹(外傷はなし)

引用:Radiopaedia
膝蓋上嚢を中心に関節液貯留を認め、内部に樹枝状の突起構造が多数あります。
一部はT1WI/T2WIで高信号で脂肪抑制で低信号となっており、脂肪の存在を示唆する所見です。
典型的な(年齢は典型的ではないが)、樹枝状脂肪腫(lipoma arborescens)と診断されました。
脂肪腫の画像でよくある疑問(Q&A)
Q. 脂肪腫のCT値はどのくらいですか?
A. 脂肪腫は皮下脂肪と同じ低い吸収値(マイナスの値)を示します。脂肪より高い値の隔壁や結節が目立つときは、ALT/WDLなどを考えます(Murphey 2004, Kransdorf 2002)。
Q. 脂肪腫は悪性(脂肪肉腫)に変わりますか?
A. 経過中に「悪性化した」ように見える例の一部は、もともとALT/WDLだったものが最初に脂肪腫と診断されていた可能性があると指摘されています(Jeong 2026)。大きくなる・深い所にある・脂肪でない部分があるしこりは、画像と病理で確かめます。
関連記事:異型脂肪様腫瘍(ALT)、高分化脂肪肉腫(WDL)のMRI画像所見のポイント
参考文献
- Kransdorf MJ, Bancroft LW, Peterson JJ, et al. Imaging of fatty tumors: distinction of lipoma and well-differentiated liposarcoma. Radiology. 2002;224(1):99-104. PubMed
- Brisson M, Kashima T, Delaney D, et al. MRI characteristics of lipoma and atypical lipomatous tumor/well-differentiated liposarcoma: retrospective comparison with histology and MDM2 gene amplification. Skeletal Radiol. 2013;42(5):635-647. PubMed
- Murphey MD, Carroll JF, Flemming DJ, et al. From the archives of the AFIP: benign musculoskeletal lipomatous lesions. Radiographics. 2004;24(5):1433-1466. PubMed
- Murphey MD, Arcara LK, Fanburg-Smith J. From the archives of the AFIP: imaging of musculoskeletal liposarcoma with radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2005;25(5):1371-1395. PubMed
- Knebel C, Neumann J, Schwaiger BJ, et al. Differentiating atypical lipomatous tumors from lipomas with magnetic resonance imaging: a comparison with MDM2 gene amplification status. BMC Cancer. 2019;19(1):309. PubMed
- Vos M, Starmans MPA, Timbergen MJM, et al. Radiomics approach to distinguish between well differentiated liposarcomas and lipomas on MRI. Br J Surg. 2019;106(13):1800-1809. PubMed
- Long JR, Larsen BT, Murphey MD, et al. Imaging features of soft tissue hibernoma: a review of 73 cases. Skeletal Radiol. 2026;55(12):3073-3082. PubMed
- Jeong HS, Lee SK, Kim JY, et al. Malignant Transformation and Progression of Musculoskeletal Lesions with Imaging-Pathology Correlation-Part 2: Soft Tissue Lesions. Diagnostics (Basel). 2026;16(12):1782. PubMed
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