グリオニューロン腫瘍 場所と年齢で絞る早見表

「グリオニューロン腫瘍」という言葉をよく聞きますが、どんな腫瘍の集まりですか?神経節膠腫やDNTなど、見分けるコツを一覧で教えてください。
グリオニューロン腫瘍は、グリア(星細胞系)と神経細胞の2つの成分が混ざる腫瘍の仲間で、てんかんで見つかる若い人の腫瘍が中心です。場所と年齢、嚢胞・壁在結節・石灰化・造影のパターンで絞ります。早見表と、詳しい記事への案内にまとめました。

先に結論:グリオニューロン腫瘍は「場所と年齢」で絞る。皮質ならganglioglioma・DNT・MVNT、側脳室近くならPGNT・中枢性神経細胞腫、第4脳室ならRGNT

項目 ポイント
どんな腫瘍か グリアと神経細胞の成分が混ざる腫瘍。画像や遺伝子が他の腫瘍と重なり、診断が難しいものがある
皮質が主座 神経節膠腫(側頭葉の嚢胞+壁在結節)、DNT(脳溝に沿う多房性)、MVNT(皮質下の小結節の集まり)
側脳室の近く PGNT(嚢胞・隔壁・充実部)、中枢性神経細胞腫(透明中隔付近・泡沫状)
第4脳室・正中 RGNT(嚢胞と充実部の混在、水頭症)
間違えやすい腫瘍 毛様細胞性星細胞腫、PXA、上衣腫、乳幼児の胎児性腫瘍(AT/RT・ETMR)

グリオニューロン腫瘍とは

グリオニューロン腫瘍(glioneuronal tumor)は、グリア(星細胞系)の成分と神経細胞の成分が混ざった腫瘍の総称で、神経細胞だけからなる神経細胞性腫瘍(neuronal tumor)と合わせて「グリオニューロン・神経細胞性腫瘍」として分類されます(Warstadt 2026)。2021年のWHO分類(第5版)では、グリオニューロン腫瘍に3つの新しい腫瘍が加わりました(Warstadt 2026)。

画像診断で難しいのは、組織や遺伝子の特徴が、小児型のびまん性低悪性度グリオーマや限局性星細胞系腫瘍と重なることです。そのため、病理や遺伝子だけでは決まらない症例で、画像の特徴が診断を助けることがあります(Park 2023)。この記事は、個別の記事への案内を兼ねた早見表です。

長期のてんかんで薬が効きにくい患者さんの20〜30%には神経上皮系の腫瘍が見つかり、その多くはグリオニューロン腫瘍です。代表は神経節膠腫とDNTです(Urbach 2008)。

てんかん関連腫瘍(LEAT)の整理

小児の薬が効きにくいてんかんでよく見つかる腫瘍は、LEAT(low-grade epilepsy-associated tumor)と総称され、WHO分類の3つのカテゴリーに沿って整理されています(Pelissier 2026)。

カテゴリー 代表的な腫瘍(Pelissier 2026)
グリオニューロン・神経細胞性腫瘍 神経節膠腫、DNT、PGNT、MVNT
限局性の星細胞系腫瘍 毛様細胞性星細胞腫、多形黄色星細胞腫(PXA)
小児型のびまん性低悪性度グリオーマ MYB/MYBL1変化を伴うびまん性星細胞腫、血管中心性グリオーマ、MAPK経路変化を伴うびまん性低悪性度グリオーマ、若年者の多形性低悪性度神経上皮腫瘍(PLNTY)

グリオニューロン腫瘍だけを覚えるのではなく、「他のカテゴリーにも似た画像がある」ことを頭に置いておくと、読影の幅が広がります。

早見表:腫瘍ごとの特徴と詳しい記事

腫瘍 好発する場所・年齢 画像の決め手 詳しい記事
神経節膠腫(ganglioglioma) 皮質、または皮質と皮質下白質。内側側頭葉に最も多い(Urbach 2008) 嚢胞+壁在結節、石灰化、造影の程度 神経節膠腫の画像診断
DNT(胚芽異形成性神経上皮腫瘍) 皮質、または皮質と皮質下白質。ピークは10〜14歳(Urbach 2008、Pelissier 2026) 皮質を主座とする「泡状」の腫瘤で造影されにくい DNTの画像診断
PGNT(乳頭状グリア神経細胞腫瘍) 97%がテント上、年齢の中央値23歳(Schlamann 2014) 側脳室近くの嚢胞・隔壁・充実部 PGNT(乳頭状グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見
RGNT(ロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍) 80%が後頭蓋窩、年齢の中央値27歳(Schlamann 2014) 第4脳室の嚢胞と充実部の混在、水頭症 RGNT(ロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見
中枢性神経細胞腫 側脳室の透明中隔またはモンロー孔から発生(Donoho 2015) 一部石灰化、T2強調像で「泡沫状」、不均一な造影(Donoho 2015) 中枢性神経細胞腫の画像所見
MVNT(多結節性空胞化神経細胞腫瘍) 成人に多い。16例で16〜77歳(平均42歳)(Buffa 2020) 皮質下白質の小さな結節の集まり。T2・FLAIRで高信号、経過で変化しない(Buffa 2020) MVNTの画像所見

表の数字は、それぞれ異なる論文のものです。症例数が少ない腫瘍が多く、頻度や年齢は報告によって違います。個別の記事では、数字の出典と症例数を示しています。

覚え方:腫瘍ごとの一言ポイント

  • 神経節膠腫:側頭葉の皮質に多く、嚢胞と壁在結節の組み合わせが典型。てんかんの原因になる(Urbach 2008)
  • DNT:皮質を主座とする泡状の腫瘤。若い人のてんかんで、造影されにくい(Pelissier 2026)
  • PGNT:側脳室に接する嚢胞性腫瘤で、隔壁と充実部がある(Schlamann 2014)
  • RGNT:第4脳室に多い腫瘤。若い成人に多く、80%が後頭蓋窩(Schlamann 2014)
  • 中枢性神経細胞腫:透明中隔またはモンロー孔から発生する泡沫状の腫瘤(Donoho 2015)
  • MVNT:皮質下の小さな結節の集まりで、経過で変化しない(Buffa 2020)

この6つは、「場所」「年齢」「嚢胞や結節の形」の3つを順に確認すると、候補が2〜3つに絞れます。そこから先は、造影や石灰化、拡散制限などで微調整し、決めきれないものは鑑別として報告書に並べます。

場所から絞る考え方

場所 まず考える腫瘍
皮質、皮質下白質 神経節膠腫、DNT、MVNT、PXA(皮質・髄膜寄りの嚢胞+壁在結節)
側脳室に接する・脳室内 PGNT、中枢性神経細胞腫、上衣腫
第4脳室・小脳 RGNT、毛様細胞性星細胞腫、上衣腫、髄芽腫(小児)
松果体部 RGNT(まれ)、松果体実質腫瘍、胚細胞腫瘍など

症例 3歳女児 DNT(右前頭葉)

DNT 3歳女児 右前頭葉 MRI T2強調像・T2-FLAIR・造影T1強調像
引用:Pelissier L, et al. Pediatr Radiol. 2026;56(6):1207-1219(Figure 2)、CC BY 4.0(図は加工していません)

右の傍正中の前頭葉に、皮質を主座とする「泡状(bubbly)」の腫瘤があります。T2強調像(a)で高信号、T2-FLAIR(b)では辺縁が高信号で中心が低信号の「T2-FLAIR mismatch」を示し、造影T1強調像(c)で造影されません。遺伝子ではPDGFRA変異が見つかったと図の説明に書かれています(Pelissier 2026)。

混同しやすい腫瘍

グリオニューロン腫瘍に似た画像を示す腫瘍は、次のとおりです。

鑑別 ポイントと記事
毛様細胞性星細胞腫 小児の小脳・視神経経路・嚢胞+壁在結節。毛様細胞性星細胞腫の画像所見
多形黄色星細胞腫(PXA) 皮質・髄膜に接する嚢胞+壁在結節。PXAの画像所見
上衣腫 第4脳室・テント上・脊髄。上衣腫の画像診断
髄芽腫・PNET 小児の小脳の胎児性腫瘍。髄芽腫・PNETの画像診断
AT/RT 乳幼児の大きな不均一な悪性腫瘍。小脳橋角部への進展と出血が髄芽腫より多い(Koral 2008)。AT/RT(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)のMRI画像所見
ETMR 乳幼児の胎児性腫瘍。ETMR(多層ロゼットを伴う胎児性腫瘍)のMRI画像所見

乳幼児の大きな腫瘤では、グリオニューロン腫瘍ではなく、AT/RTやETMRのような悪性度の高い胎児性腫瘍が主な鑑別になります。年齢を最初に確認してください。

読影の進め方(チェックリスト)

  • 年齢と症状:てんかん発作の若い人か、乳幼児か。慢性の経過か
  • 場所:皮質か、側脳室近くか、第4脳室か。側頭葉は神経節膠腫やDNTが多い(Urbach 2008)
  • 内部構造:嚢胞、壁在結節、隔壁、石灰化、出血はあるか
  • 造影・拡散:造影の有無と程度。拡散制限が強ければ悪性度の高い腫瘍も考える
  • T2-FLAIR mismatch:DNTなどで見られるが、他の腫瘍でも見られるため単独では決めない
  • 経時変化:長期に変化がなければMVNTのような良性病変を考える(Buffa 2020)
  • 報告書:「グリオニューロン腫瘍(神経節膠腫、DNTなど)を鑑別」と書き、断定しない

診断までの流れ

多くの症例は、てんかん発作や頭痛をきっかけに頭部MRIを撮り、腫瘤が見つかります。画像診断科は、場所、年齢、内部構造から候補を2〜3つに絞って報告書に書きます。手術で取った組織の病理診断と遺伝子検査で、最終的な診断名が決まります。PGNTのように、組織像だけでは別の腫瘍と誤分類されることがあり、遺伝子検査で診断が確定する腫瘍もあります。画像診断科の報告書は、「画像でここまで言える」と「ここから先は病理」の境目を示すことが役割です。

治療について

薬が効きにくいてんかんの原因が神経節膠腫やDNTなどの腫瘍だったときは、病変を取る手術で発作が止まる割合が高いとされます。側頭葉のてんかんでは、神経節膠腫とDNTの患者さんの70%を超える人が、拡大した病変切除術の後に発作がなくなったと報告されています(Urbach 2008)。治療の詳細は、この記事では扱いません。てんかんや頭痛が続くときは、脳神経外科・神経内科で相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. どの腫瘍の記事から読めばよいですか?
A. 症例の場所から選んでください。皮質ならDNTと神経節膠腫、側脳室近くなら中枢性神経細胞腫とPGNT、第4脳室ならRGNTと上衣腫です。乳幼児の大きな腫瘤では、AT/RTとETMRの記事を先に読むと鑑別の見落としが減ります。

Q. グリオニューロン腫瘍はがんですか?
A. 神経節膠腫、DNT、PGNT、RGNT、中枢性神経細胞腫、MVNTなどは、低悪性度とされるものが多く、悪性度の高い胎児性腫瘍とは区別されます。ただし、PGNTの1.5年無増悪生存率は86%と報告されており、再発する例もあります(Schlamann 2014)。

Q. 画像だけで種類が決まりますか?
A. 決まらないことが多いです。画像、病理、遺伝子の組み合わせで診断され、病理や遺伝子でも判断が難しい症例では画像が補助になります(Park 2023)。

Q. 「LEAT」とは何ですか?
A. low-grade epilepsy-associated tumorの略で、てんかんに関連する低悪性度の腫瘍の総称です。グリオニューロン・神経細胞性腫瘍、限局性の星細胞系腫瘍(毛様細胞性星細胞腫、PXA)、小児型のびまん性低悪性度グリオーマに分けて整理されます(Pelissier 2026)。

Q. 腫瘍は大きくなりますか?
A. 腫瘍によります。MVNTでは、経過観察で変化がなかったと報告されています(Buffa 2020)。他の腫瘍は個別の記事を参照してください。

参考文献

  1. Park YW, Vollmuth P, Foltyn-Dumitru M, et al. The 2021 WHO Classification for Gliomas and Implications on Imaging Diagnosis: Part 3-Summary of Imaging Findings on Glioneuronal and Neuronal Tumors. J Magn Reson Imaging. 2023;58(6):1680-1702. PubMed
  2. Warstadt MB, Richards TJ, Shah LM, et al. Glioneuronal and Neuronal Tumors in Adults: World Health Organization 2021 Imaging and Molecular Updates. AJNR Am J Neuroradiol. 2026;47(4):867-878. PubMed
  3. Pelissier L, Sarma A, Rispoli J, et al. Pediatric low-grade epilepsy-associated tumors (LEATS): neuroimaging review and genetics update. Pediatr Radiol. 2026;56(6):1207-1219. PubMed
  4. Urbach H. MRI of long-term epilepsy-associated tumors. Semin Ultrasound CT MR. 2008;29(1):40-6. PubMed
  5. Schlamann A, von Bueren AO, Hagel C, et al. An individual patient data meta-analysis on characteristics and outcome of patients with papillary glioneuronal tumor, rosette glioneuronal tumor with neuropil-like islands and rosette forming glioneuronal tumor of the fourth ventricle. PLoS One. 2014;9(7):e101211. PubMed
  6. Donoho D, Zada G. Imaging of central neurocytomas. Neurosurg Clin N Am. 2015;26(1):11-9. PubMed
  7. Buffa GB, Chaves H, Serra MM, et al. Multinodular and Vacuolating Neuronal Tumor of the Cerebrum (MVNT): A case series and review of the literature. J Neuroradiol. 2020;47(3):216-220. PubMed
  8. Koral K, Gargan L, Bowers DC, et al. Imaging characteristics of atypical teratoid-rhabdoid tumor in children compared with medulloblastoma. AJR Am J Roentgenol. 2008;190(3):809-14. PubMed

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