ETMR ETANTR・上衣芽腫との関係と読み方

乳幼児の脳腫瘍で「ETMR」という診断名を見ました。ETANTRや上衣芽腫とは違うのですか?画像ではどう見えますか?
ETMR(多層ロゼットを伴う胎児性腫瘍)は、以前は別々の名前で呼ばれていた3つの組織型をまとめた、乳幼児の悪性度の高い脳腫瘍です。画像は「大きく境界のはっきりした腫瘤」で、髄芽腫や上衣腫と似るため、診断は病理と遺伝子検査が中心になります。見たときの考え方を整理します。

先に結論:ETMRは「幼い子の大きな境界明瞭な腫瘤」で疑うが、画像での確定は難しく、診断はLIN28Aと19q13.42(C19MC)の検査

項目 ポイント
何か ETANTR・上衣芽腫・髄上皮腫の3つの組織型をまとめた胎児性腫瘍。分子的に1つの腫瘍とされる
年齢 乳幼児。上衣芽腫の22例では診断時の平均年齢2.1歳
画像 大きく境界明瞭。T2強調像で等〜高信号、拡散制限あり。造影は不均一〜乏しいなど一定しない
鑑別 髄芽腫・上衣腫・AT/RTなど。MRIだけでは区別が難しい
診断 LIN28A免疫染色と19q13.42(C19MC)のFISH。組織像だけでは典型的に見えないことがある

ETMRとは

ETMRは embryonal tumor with multilayered rosettes の略で、「多層ロゼットを伴う胎児性腫瘍」と訳されます。ロゼットとは、細胞が輪のように並ぶ顕微鏡下の配列のことです。

この腫瘍は、もともと3つの組織型として別々に知られていました。ETANTR(豊富な神経線維網と真性ロゼットを伴う胎児性腫瘍)、上衣芽腫(ependymoblastoma)、髄上皮腫(medulloepithelioma)です。97例を調べた研究で、組織型が違っても遺伝子の特徴が同じであることが分かり、1つの腫瘍としてまとめる考え方が示されました(Korshunov 2014)。

診断の目印は、19番染色体の19q13.42にあるC19MC(マイクロRNAの遺伝子群)の増幅と、LIN28Aというたんぱく質の免疫染色での陽性です。研究では、LIN28A免疫染色と19q13.42のFISH検査を組み合わせることが勧められています(Korshunov 2014)。C19MCの増幅がない症例では、DICER1という遺伝子の生殖細胞系列の変異などマイクロRNAに関わる異常が多いと報告されています(Lambo 2019)。

以前、上衣芽腫は中枢神経系のPNET(原始神経外胚葉性腫瘍)の一部として扱われていました(Nowak 2014)。PNETを含む胎児性腫瘍の基本は髄芽腫・PNETの画像診断にまとめています。

ETMRはまれな腫瘍ですが、乳幼児の大きな腫瘤では髄芽腫・上衣腫・AT/RTと並ぶ鑑別として名前が挙がります。病理報告にETMRとあったとき、その意味と画像の限界が分かっていると、紹介状や症例検討会での説明に役立ちます。

名前が複数ある理由

ETMRの話が分かりにくいのは、画像診断の教科書や古い論文ごとに呼び名が違うためです。ETANTRや上衣芽腫は、病理の見た目から付けられた名前で、診断のしかたが変わるにつれて「ETMR」にまとめて呼ばれるようになりました(Korshunov 2014)。研修医が古い教科書で「上衣芽腫」や「髄上皮腫」と書かれた腫瘍を見ても、いまは同じ仲間と考えて構いません。報告書や紹介状には、病理の診断名に合わせて記載します。

年齢・場所・性別

ETANTRの報告(22例の追加と最初の7例)では、乳児に起こり、大脳皮質に最も多く、小脳や脳幹は少ない部位でした(Gessi 2009)。上衣芽腫22例の検討では、診断時の平均年齢は2.1歳でした(Nowak 2014)。

性別は報告によって違います。ETANTRでは他の胎児性腫瘍と異なり女児に多いとされましたが(Gessi 2009)、上衣芽腫では男児が多く、男女比は1.75対1でした(Nowak 2014)。性別だけで疑うことはできません。

画像所見:MRIとCTで何を見るか

所見 内容
大きさ・境界 大きな腫瘤で境界は明瞭(Gessi 2009、Nowak 2014)
T2強調像 等〜高信号(Nowak 2014)
拡散(DWI) 拡散制限あり(Nowak 2014)
造影 部分的(パッチ状)に造影されるか、造影されない(Gessi 2009)。上衣芽腫では軽度〜中等度の造影傾向で一定しない(Nowak 2014)
嚢胞 少なくとも一部が嚢胞性のものが5例(18%)(Gessi 2009)
髄膜播種 上衣芽腫では多いが、診断時にはないこともある(Nowak 2014)

どれも一般的な胎児性腫瘍にも当てはまる所見で、ETMRに特有のサインはありません。上衣芽腫(ETMRの組織型の1つ)を、上衣腫や中枢神経系PNET(NOS)と比べた研究(各22例)でも、年齢、信号、境界、浮腫、嚢胞、造影の様子に差は見つかりましたが、MRIだけで個々の症例を区別できるとは言えないと結論されています(Nowak 2015)。

症例 18か月女児 ETMR

ETMR 18か月女児 橋の腫瘤 MRI T1強調像・T2強調像・FLAIR・造影T1強調像
引用:Alshoabi SA, et al. BJR Case Rep. 2022;8(4):20210216(Figure 2)、CC BY 4.0(図は加工していません)

右の橋に腫瘤があり、右の中小脳脚に伸びて第4脳室を圧迫しています。T1強調像(a)で低信号、T2強調像(b)とFLAIR(c)で高信号で、造影後の信号上昇は軽度です(d)。この症例は歩行のふらつきと左半身の脱力が2か月続いて受診した、18か月の女児です(Alshoabi 2022)。

このように、ETMRは大脳皮質に多いという報告の一方で、脳幹や後頭蓋窩にも起こります。場所だけで除外しないことが大切です。

鑑別と読影の考え方

乳幼児の大きな脳腫瘍では、次のものを考えます。

鑑別 ポイント
髄芽腫 後頭蓋窩の胎児性腫瘍で最も多い。第4脳室から小脳。詳細は髄芽腫・PNETの画像診断
上衣腫 第4脳室やテント上。石灰化・嚢胞を伴う。詳細は上衣腫の画像診断
AT/RT 乳幼児の大きな不均一腫瘤。出血、偏在する嚢胞、小脳橋角部への進展が多いと報告されている
その他の胎児性腫瘍 画像だけでは区別できず、病理・遺伝子検査で分類する

画像診断科が書く報告書は、「大きな境界明瞭な腫瘤で、拡散制限あり。胎児性腫瘍(髄芽腫、ETMR、AT/RTなど)を鑑別」とし、病理に委ねる形が現実的です。

見たときの手順:乳幼児の大きな腫瘤

ETMRそのものを画像で当てることは目標にしません。次の順に見て、報告書に必要な情報を落とさないことが役に立ちます。

  1. CT:石灰化、出血、水頭症の有無。緊急の対応が必要かどうかを先に判断する
  2. MRIの信号:T2強調像、DWI/ADC、造影の様子を確認する。拡散制限が強い腫瘤は細胞が密な胎児性腫瘍を考える
  3. 場所:大脳、小脳、橋・脳幹のどこか。周囲の構造への浸潤はあるか
  4. 播種:脳・脊髄の髄膜に造影される部分がないか。診断時の播種は上衣芽腫で多いが、初回にはないこともある(Nowak 2014)
  5. 鑑別:髄芽腫・上衣腫・AT/RTを並べ、病理と遺伝子検査に委ねる

病理の診断で気をつけること

ETANTRと診断された腫瘍も、経過のなかで二相性の構造を失い、典型的な形に見えなくなることがあります(Xu 2022)。2018〜2022年に診断された小児17例の検討では、16例がETANTR、1例が髄上皮腫で、LIN28Aの免疫染色が全例で陽性でした。再発した腫瘍では、原発よりも強くびまん性に染まっていました(Xu 2022)。C19MC増幅が確認できたものの、神経芽腫に似た像で多層ロゼットが見当たらなかった症例も報告されています(Sugawa 2022)。組織像だけで除外せず、分子検査が診断の決め手になります。

分子検査が診断に使われる理由

ETMRは組織の見た目が一定しないため、分子検査が診断を支えます。193例の原発腫瘍と23例の再発腫瘍を調べた研究では、DICER1の異常など、マイクロRNAに関わる変化が腫瘍の背景にあることが示されました(Lambo 2019)。画像診断科が分子検査の結果を直接読むことはありませんが、「ETMR、C19MC増幅あり」といった病理報告の意味を知っておくと、画像と病理を照らし合わせるときに役立ちます。

経過と予後について

ETANTRの古い報告では、経過を追えた25例のうち19例が亡くなり、生存期間の中央値は9か月でした(Gessi 2009)。この報告は2009年のもので、現在の治療成績とは異なる可能性があります。また、17例の検討では、4歳を超える小児では転移が100%にみられ、それより幼い群では18%でした(Xu 2022)。

治療は手術・化学療法・放射線治療を組み合わせることが中心ですが、詳しくはこの記事では扱いません。ご家族は小児脳腫瘍を扱う専門施設で説明を受けてください。

報告書の書き方の例

  • 「大きな境界明瞭な腫瘤。拡散制限あり。胎児性腫瘍(髄芽腫、ETMR、AT/RTなど)を鑑別」
  • 「脊髄を含む造影MRIでの播種の評価を推奨」
  • 「水頭症あり。緊急の対応は脳神経外科と相談」

読影のチェックリスト

  • 年齢:乳幼児か。診断時の年齢が低いほどETMRやAT/RTを考える
  • 場所:大脳(テント上)に限らず、後頭蓋窩・橋にもあり得る
  • 境界・大きさ:境界明瞭な大きな腫瘤か
  • 拡散・造影:拡散制限はあるか。造影はパッチ状・乏しいなど一定しないことを知っておく
  • 播種:脳と脊髄の造影MRIで髄膜播種の有無を確認する
  • 報告書:「胎児性腫瘍」として鑑別を並べる。ETMRと断定しない

よくある疑問(Q&A)

Q. ETANTR、上衣芽腫、髄上皮腫とETMRはどう違うのですか?
A. 組織像による3つの名前ですが、遺伝子の特徴が同じで1つの腫瘍と考えられるようになりました。現在はETMRとまとめて呼ぶことが一般的です(Korshunov 2014)。

Q. MRIでETMRと診断できますか?
A. できません。髄芽腫・上衣腫・AT/RTと似ており、画像だけで区別することは難しいとされます(Nowak 2015)。診断はLIN28A免疫染色と19q13.42の検査です(Korshunov 2014)。

Q. C19MCの増幅がなければETMRではないのですか?
A. C19MCが増幅していないETMRもあります。193例の解析では、そうした腫瘍にDICER1の生殖細胞系列変異などマイクロRNAに関わる異常が多く見られました(Lambo 2019)。検査の組み合わせは病理・遺伝子診断の担当が判断します。

Q. 何歳くらいの子どもに多いですか?
A. 乳幼児です。ETANTRは乳児に起こるとされ(Gessi 2009)、上衣芽腫22例の診断時の平均年齢は2.1歳でした(Nowak 2014)。4歳を超える年長の小児では、転移がより多かったという17例の報告もあります(Xu 2022)。

Q. 子どもの頭の病気が心配です。
A. 乳幼児の嘔吐が続く、元気がない、歩き方がおかしい、頭が急に大きくなるなどの変化があれば、早めに小児科や脳神経外科を受診してください。

あわせて読みたい:AT/RT(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)のMRI画像所見、RGNT(ロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見、PGNT(乳頭状グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見

参考文献

  1. Korshunov A, Sturm D, Ryzhova M, et al. Embryonal tumor with abundant neuropil and true rosettes (ETANTR), ependymoblastoma, and medulloepithelioma share molecular similarity and comprise a single clinicopathological entity. Acta Neuropathol. 2014;128(2):279-89. PubMed
  2. Gessi M, Giangaspero F, Lauriola L, et al. Embryonal tumors with abundant neuropil and true rosettes: a distinctive CNS primitive neuroectodermal tumor. Am J Surg Pathol. 2009;33(2):211-7. PubMed
  3. Nowak J, Seidel C, Berg F, et al. MRI characteristics of ependymoblastoma: results from 22 centrally reviewed cases. AJNR Am J Neuroradiol. 2014;35(10):1996-2001. PubMed
  4. Nowak J, Seidel C, Pietsch T, et al. Systematic comparison of MRI findings in pediatric ependymoblastoma with ependymoma and CNS primitive neuroectodermal tumor not otherwise specified. Neuro Oncol. 2015;17(8):1157-65. PubMed
  5. Lambo S, Gröbner SN, Rausch T, et al. The molecular landscape of ETMR at diagnosis and relapse. Nature. 2019;576(7786):274-280. PubMed
  6. Xu K, Sun Z, Wang L, et al. Embryonal tumors with multilayered rosettes, C19MC-altered or not elsewhere classified: Clinicopathological characteristics, prognostic factors, and outcomes of 17 children from 2018 to 2022. Front Oncol. 2022;12:1001959. PubMed
  7. Sugawa M, Fukuoka K, Mori M, et al. Prognostic impact of the multimodal treatment approach in patients with C19MC-altered embryonal tumor with multilayered rosettes. J Neurosurg Pediatr. 2022;30(2):232-238. PubMed
  8. Alshoabi SA, Abdu AM, Alkhalidi HM, et al. Embryonal tumor with multilayered rosettes: a report of a rare case. BJR Case Rep. 2022;8(4):20210216. PubMed

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