
先に結論:RGNTは「第4脳室などの正中にある、若い成人の嚢胞・充実混在の腫瘤」。画像で確定せず、病理でロゼットと神経細胞・グリアの二相性を確認
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 神経細胞とグリア(星細胞に似た細胞)の2成分からなる、まれな低悪性度の腫瘍。WHO grade 1 |
| 好発 | 後頭蓋窩(第4脳室)が約80%(85例の検討)。松果体部や第4脳室の外にも報告がある |
| 年齢 | 若い成人。85例の年齢の中央値は27歳(6〜79歳) |
| 画像 | 嚢胞と充実部が混在、水頭症を伴うことがある。これだけという特異的な所見はない |
| 注意点 | 衛星病変(小さな娘結節)、播種を伴うことがある。まれに悪性転化の報告も |
RGNTとは
RGNTは rosette-forming glioneuronal tumor の略で、日本語ではロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍といいます。2002年にKomoriらが初めて報告した腫瘍で、WHO分類ではgrade 1(低悪性度)に分類されています(Wilson 2020)。
顕微鏡で見ると、2種類の成分があります。1つは、毛様細胞性星細胞腫に似たグリア(星細胞系)の成分、もう1つは、小さな細胞が輪状に並んだ「ロゼット」や血管のまわりの偽ロゼットを作る神経細胞の成分です(Lin 2021)。「グリオニューロン(glioneuronal)」という名前は、このグリアと神経細胞の混在に由来します。
画像診断科では、第4脳室や松果体部の腫瘤を見たときに鑑別として名前が出ます。実際に出会う頻度は低いため、「まれな低悪性度腫瘍があり、過剰な手術を避けるためにも名前を知っておく」ことが読影の目的になります(Marhold 2008)。
グリオニューロン腫瘍の中での位置づけ
2007年のWHO分類で、グリオニューロン腫瘍として新たに3つが加わりました。乳頭状グリア神経細胞腫瘍(PGNT)、第4脳室のロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍(RGNT)、神経毡様島を伴うグリア神経細胞腫瘍(GNTNI)です(Schlamann 2014)。そのうちRGNTは、第4脳室を中心とした正中の腫瘍として知られています。同じ仲間でも、好発する部位や年齢が違うため、「場所と年齢で絞る」ことが読影の近道になります。
どこに・誰にできるか
2014年の個別患者データを使ったメタ解析(182例)では、RGNTは85例で、年齢の中央値は27歳(範囲6〜79歳)、80%が後頭蓋窩にありました(Schlamann 2014)。2020年の系統的レビュー(130例、80研究)でも、第4脳室に好発する腫瘍として整理されています(Wilson 2020)。若年成人・思春期に多く、女性にやや多いと報告されています(Yang 2024)。
当初は第4脳室に限られると考えられていましたが、現在はそれ以外の場所にも見つかっています。第4脳室を含まないRGNTは32例の文献レビューで整理され(Beuriat 2016)、松果体部は報告6例に文献上の16例を合わせた検討があります(Lin 2021)。松果体部の腫瘍の一般的な鑑別は松果体実質腫瘍の画像所見で整理しています。
症状と見つかるきっかけ
症状は幅広く、腫瘤の大きさと広がりによって決まります。4例の報告では、腫瘤内出血と閉塞性水頭症で救急受診した例、頭痛と片側の感覚の異常が続いた例、頭痛・吐き気・耳鳴りの例、偶然見つかった例がありました(Marhold 2008)。特異的な症状はないため、画像で腫瘤が見つかったときに初めて疑う腫瘍といえます。
画像所見:MRIとCT
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 内部構造 | 嚢胞と充実部が混在するものが多い(Yang 2024) |
| 水頭症 | 第4脳室の腫瘤では水頭症を伴うことが多い(Yang 2024) |
| 特異的な所見 | 一般に区別できる特徴はないが、小さな衛星病変が見られることがある(Marhold 2008) |
| 造影 | 不均一に造影される例、造影されない例がある(Huang 2022の2例) |
| 拡散(DWI) | Huang 2022の第4脳室の1例では低信号 |
信号や造影の様子は症例ごとのばらつきが大きく、診断は病理です。4例の検討でも、組織は二相性ではっきりしていましたが、画像では区別できる特徴はほとんどなく、小さな衛星病変が2例に見られた程度でした(Marhold 2008)。
症例 27歳男性 RGNT(第4脳室)

引用:Huang XD, et al. BJR Case Rep. 2022;8(1):20210125(Figure 1)、CC BY 4.0(図は加工していません)
後頭部の張った感じと重い感じが時々あった27歳男性です。MRIでは第4脳室の腫瘤で、T1強調像(A)で等〜低信号、T2強調像(B)で等〜高信号、DWI(C)で低信号です。造影T1強調像(D)では不均一に造影されます。第4脳室腫瘤として手術され、病理でRGNTと診断されました(Huang 2022)。
CTとMRIの使い分け
救急でまず撮られるCTでは、第4脳室の腫瘤による水頭症と、腫瘤内の石灰化や出血を確認します。腫瘤内出血をきたしたRGNTの報告があります(Marhold 2008)。出血はRGNTだけに特有の所見ではありません。MRIでは、腫瘤の範囲、脳幹・小脳との境界、衛星病変、髄膜への播種を評価します。播種の評価では、脳だけでなく脊髄の造影MRIも確認するのが基本です(Hockman 2021)。
鑑別と読影の考え方
第4脳室や松果体部の腫瘤で、RGNTを疑うときは、より頻度の高い腫瘍を先に考えます。
| 鑑別 | ポイント |
|---|---|
| 上衣腫 | 第4脳室の代表的な腫瘍で、第4脳室の孔から外へ伸びる。詳細は上衣腫の画像診断 |
| 毛様細胞性星細胞腫 | 小脳の嚢胞と壁在結節。RGNTの星細胞成分と組織が似る。詳細は毛様細胞性星細胞腫の画像所見 |
| 髄芽腫 | 小児の第4脳室から小脳の腫瘍。拡散制限が強い。詳細は髄芽腫・PNETの画像診断 |
| その他 | 血管芽腫・脈絡叢乳頭腫・転移など。年齢と症状で絞る |
上の症例のRGNTはDWIで低信号でした。拡散制限が強い腫瘤は細胞密度の高い胎児性腫瘍などを考えますが、これは1例の所見で、他のRGNTにも当てはまるとは言えません(Huang 2022)。
RGNTを疑う意味は、「手術のしかたを考える材料」を主治医に渡せることにもあります。低悪性度の腫瘍と分かっていれば、無理な切除を避けるという考え方がとれます。報告書では、腫瘤の範囲、脳幹や脳室との位置関係、水頭症の有無、衛星病変の有無を具体的に書くことが、病理診断前の画像の役割です(Marhold 2008)。
多発・播種と悪性転化
RGNTは低悪性度ですが、衛星病変や髄液を介した播種を起こすことがあります。多発(multifocal)RGNTの文献21例では、髄液播種が43%、脳実質内への広がりが48%、両方が10%でした。髄液播種のある例は進行しやすく、脳実質内の広がりのみの例は進行しなかったと報告されています(Hockman 2021)。追跡期間の中央値は17か月と短く、長期の経過は不明です。
悪性転化もまれに報告されており、一部でTERT遺伝子の変異が見つかっています(Yang 2024)。低悪性度の経過をとることが多いものの、増悪する可能性があるため、WHO grade 1の腫瘍でも経過観察が必要です(Wilson 2020、Beuriat 2016)。
病理と遺伝子の特徴
免疫染色では、神経細胞の成分がsynaptophysin、グリアの成分がGFAPに陽性です(Yang 2024)。遺伝子では、FGFR1とPIK3CAの変異が高頻度に見られます(Yang 2024)。松果体部のRGNT 6例の検討では、MAPK経路とPI3K経路の遺伝子変化が全例に併存していました(Lin 2021)。画像診断科が遺伝子を読むことはありませんが、病理報告にこれらの語があっても、RGNTとして矛盾しません。
経過と予後
メタ解析の結果では、RGNTの1.5年無増悪生存率と1.5年全生存率はどちらも100%でした(Schlamann 2014)。ただし追跡期間の中央値は全体で1.5年と短く、長期の経過は分かっていません。第4脳室の外のRGNT 32例でも、手術後の死亡例の報告はありませんでした(Beuriat 2016)。全摘出が難しい場所にあることが多く、全摘出が報告されたのは85例中36例(42%)でした(Schlamann 2014)。治療の詳細はこの記事では扱いません。
読影のチェックリスト
- 場所:第4脳室、松果体部、第4脳室以外の正中に腫瘤があるか
- 内部:嚢胞と充実部が混在するか。石灰化や出血の有無
- 水頭症:側脳室・第3脳室の拡大はないか。緊急の対応が必要か
- 衛星病変:本体の近くに小さな結節がないか
- 播種:脳と脊髄に造影される髄膜病変がないか
- 報告書:「上衣腫・毛様細胞性星細胞腫を第一に、グリオニューロン腫瘍(RGNTなど)も鑑別」と書く
同じグリオニューロン腫瘍の仲間は、神経節膠腫(ganglioglioma)の画像診断も参考になります。
よくある疑問(Q&A)
Q. RGNTはがんですか?
A. WHO分類のgrade 1に当たる低悪性度の腫瘍です。ただし、まれに播種や悪性転化の報告があるため、経過をみることが大切です(Wilson 2020、Hockman 2021)。
Q. 第4脳室の腫瘍で、画像でRGNTと診断できますか?
A. 画像だけで診断することは難しいとされます。上衣腫や毛様細胞性星細胞腫に似ていて、4例の検討でも区別できる特徴は見つかりませんでした(Marhold 2008)。
Q. 子どもにもありますか?
A. 年齢の範囲は6〜79歳と報告されており、小児の例もあります(Schlamann 2014)。ただし中央値は27歳で、若い成人に多い腫瘍です。
Q. 「ロゼット」とは何ですか?
A. 小さな細胞が輪のように並ぶ顕微鏡の形です。RGNTでは、この小さな細胞の集まりが神経細胞の成分で、グリアの成分と混ざって見られます(Lin 2021)。画像では見えないため、病理の診断名として覚えておけば十分です。
Q. 若い人に多いのはなぜですか?
A. 理由は分かっていません。報告では若年成人・思春期に多く、女性にやや多い傾向があります(Yang 2024)。
Q. 頭痛やふらつきが続いています。
A. 第4脳室の腫瘤は水頭症を起こすことがあります。頭痛や吐き気、ふらつきなどが続くときは、早めに脳神経外科や神経内科を受診してください。
あわせて読みたい:AT/RT(非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍)のMRI画像所見、ETMR(多層ロゼットを伴う胎児性腫瘍)のMRI画像所見、PGNT(乳頭状グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見
参考文献
- Wilson CP, Chakraborty AR, Pelargos PE, et al. Rosette-forming glioneuronal tumor: an illustrative case and a systematic review. Neurooncol Adv. 2020;2(1):vdaa116. PubMed
- Schlamann A, von Bueren AO, Hagel C, et al. An individual patient data meta-analysis on characteristics and outcome of patients with papillary glioneuronal tumor, rosette glioneuronal tumor with neuropil-like islands and rosette forming glioneuronal tumor of the fourth ventricle. PLoS One. 2014;9(7):e101211. PubMed
- Marhold F, Preusser M, Dietrich W, et al. Clinicoradiological features of rosette-forming glioneuronal tumor (RGNT) of the fourth ventricle: report of four cases and literature review. J Neurooncol. 2008;90(3):301-8. PubMed
- Yang Z, Zhang X. The Clinical and Molecular Landscape of Rosette-Forming Glioneuronal Tumors. Biomedicines. 2024;12(10). PubMed
- Beuriat PA, Tauziede-Espariat A, Pages M, et al. Rosette-forming glioneuronal tumor outside the fourth ventricle: a case-based update. Childs Nerv Syst. 2016;32(1):65-8. PubMed
- Hockman JT, El Tecle NE, Urquiaga JF, et al. Dissemination Patterns and Short-Term Management of Multifocal Rosette-Forming Glioneuronal Tumors. World Neurosurg. 2021;149:86-93. PubMed
- Lin CC, Mansukhani MM, Bruce JN, et al. Rosette-Forming Glioneuronal Tumor in the Pineal Region: A Series of 6 Cases and Literature Review. J Neuropathol Exp Neurol. 2021;80(10):933-943. PubMed
- Huang XD, Zhang HW, Feng YN, et al. Rosette-forming glioneuronal tumours: two case reports and a review of the literature. BJR Case Rep. 2022;8(1):20210125. PubMed
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