
先に結論:AT/RTは「幼い子の大きな不均一腫瘤+出血・偏在する嚢胞」で疑い、確定は病理(INI1/SMARCB1の欠失)
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何か | 主に乳幼児に起こる悪性の胎児性腫瘍。SMARCB1(INI1)という遺伝子の異常が特徴 |
| 画像の手がかり | 大きく不均一な腫瘤、偏在する(端に寄った)嚢胞、出血、拡散制限、脳室や脳槽の近く |
| 髄芽腫との違い | より低年齢、小脳橋角部への進展と腫瘤内出血が多い。ただし画像だけでは区別しにくい |
| 成人 | まれ。女性・テント上(鞍上部を含む正中構造)に多いと報告されている |
| 確定診断 | 病理でINI1(SMARCB1)蛋白の核内発現が失われていること |
AT/RTとは
AT/RTは atypical teratoid/rhabdoid tumor の略で、日本語では非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍といいます。名前に「奇形腫」とありますが、奇形腫ではありません。顕微鏡で見ると、ラブドイド細胞(横紋筋に似た細胞)が見られることから付けられた名前です。
小児の中枢神経系の悪性腫瘍で、6か月未満の乳児では最も多い悪性の脳腫瘍とされています(Frühwald 2016)。大多数でSMARCB1(INI1とも呼ばれる遺伝子)に異常があり、少数ではSMARCA4という別の遺伝子の異常があります(Frühwald 2016)。2021年のWHO分類(第5版)は、病理だけでなく分子診断を重視する形に改められています(Louis 2021)。
画像診断科や救急で最初にこの腫瘍に出会うのは、「髄芽腫かもしれない小児の後頭蓋窩腫瘍」として見たときです。髄芽腫の基本は髄芽腫・PNETの画像診断で整理しています。
症状と見つかるきっかけ
AT/RTの神経症状は特異的なものではありません(Calandrelli 2023)。乳幼児では、嘔吐、元気がない、歩き方のふらつき、頭囲の拡大など、小児の頭蓋内腫瘍に共通する症状で受診し、頭部CTやMRIで腫瘤が見つかります。症状から腫瘍の種類を絞ることはできないため、画像で腫瘤の性質を読み取ることが大切になります。
報告書では、腫瘤の大きさと位置、水頭症の有無、播種の有無を先に書くと、脳神経外科が緊急度を判断しやすくなります。
画像所見:どこに・どんな見え方か
AT/RTに特有の画像所見はなく、「これならAT/RT」と言い切れる所見はありません。ただ、報告をまとめると疑うきっかけになる所見がいくつかあります。
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 低年齢。乳児〜3歳未満に多い。10人の小児では7人が3歳未満(Calandrelli 2023) |
| 場所 | テント上にもテント下にも発生。24か月未満の小児ではテント下がより多い(Calandrelli 2023) |
| 腫瘤の形 | 大きく不均一。脳室や脳槽(髄液の腔)の近くにできやすい(Calandrelli 2023) |
| 嚢胞 | 腫瘤の端に偏在する嚢胞(eccentric cyst)が特徴的。小児・テント上で多い(Calandrelli 2023) |
| 出血 | 19例中9例(47.4%)に腫瘤内出血(Koral 2008)。ただし出血そのものは特異的ではない(Calandrelli 2023) |
| 拡散(DWI) | 高信号で拡散制限があるものがほとんど(Koral 2008、Nowak 2018) |
| 造影 | 強く造影される傾向があるが、SHHサブグループでは造影されない例もある(Nowak 2018) |
| 髄膜播種 | 診断時に画像で見える播種は10人中5人(Calandrelli 2023)。分子サブグループ別の検討では診断時の画像上の髄膜播種はまれだった(Nowak 2018) |
髄膜播種(腫瘍が髄液の流れに乗って脳や脊髄の表面に広がること)の頻度は報告によって違います。対象の年齢や数、評価のしかたが異なるためで、「播種が見えない=AT/RTではない」とは言えません。診断時には脳だけでなく脊髄の造影MRIも確認することが大切です。
症例 1歳男児 AT/RT

引用:Wu HW, et al. Cancer Med. 2023;12(9):10449-10461(Figure 2)、CC BY 4.0(図は加工していません)
後頭蓋窩の多房性の腫瘤で、T2強調像(A〜C)では中心部に壊死があり、中小脳脚(B)と脳幹(C)に局所的に浸潤しています。軟部組織成分はT1強調像(D)で等信号、造影T1強調像(E)でよく造影されます。T2強調像(A)、T1強調像(D)、DWI(F)に液面形成(fluid-fluid level)があり、腫瘤内の出血を示すと図の説明に記載されています。病理ではAT/RT(一部に壊死あり)でした(Wu 2023)。
髄芽腫との見分け方
後頭蓋窩の小児腫瘍では、まず髄芽腫が頭に浮かびます。AT/RTと髄芽腫は通常のMRIで似ており、ほとんど区別できないとされます(Wu 2023)。それでも、次のような差が報告されています。
| 見るところ | AT/RTと髄芽腫の差 |
|---|---|
| 年齢 | AT/RTがより低年齢(平均2.8歳 対 6.5歳)(Wu 2023)。テント下のAT/RTも髄芽腫より低年齢(Koral 2008) |
| 小脳橋角部への進展 | AT/RT 11例中8例(72.7%)、髄芽腫36例中4例(11.1%)(Koral 2008) |
| 腫瘤内出血 | AT/RT 19例中9例(47.4%)、髄芽腫36例中2例(5.6%)(Koral 2008) |
| 周囲への浸潤 | AT/RTで脳幹・中小脳脚への浸潤が多い(Wu 2023) |
| tumor central vein sign | 髄芽腫の24/57(42.1%)に対しAT/RTは1/16(6.3%)。中心を走る太い1本の導出静脈が見えれば髄芽腫寄り(Wu 2023) |
| ADC(拡散の強さ) | Wu 2023ではAT/RTでADCが低く、最小ADCが544.7×10-6 mm2/s以下、ADC比が0.705以下、DWI比が1.595以上で区別しやすかった。Koral 2008ではADCの平均値に有意差はなかった |
ADCの結果は研究によって食い違っています。症例数が少なく、測定の方法も違うため、「ADCが低いからAT/RT」と決めずに、年齢・場所・出血・浸潤・導出静脈を組み合わせて考えるのが現実的です(Koral 2008、Wu 2023)。
Koral 2008は、拡散制限のある小児の後頭蓋窩腫瘤が小脳橋角部に及んでいれば、髄芽腫よりAT/RTをより疑うと述べています。
他に鑑別に挙がる腫瘍
乳幼児の大きな脳腫瘍では、他の胎児性腫瘍や上衣腫も鑑別になります。画像だけで絞り込めないことが多く、診断は病理です。AT/RTでは、病理でINI1(SMARCB1がつくる蛋白)の核での発現が失われることが診断の決め手になります。
分子サブグループによる画像の違い
AT/RTは、遺伝子の特徴によってSHH、TYR、MYCの3つのサブグループに分けられることが知られています。EU-RHABレジストリの43例を調べた研究では、サブグループごとの画像の傾向が報告されています(Nowak 2018)。
| サブグループ(症例数) | 画像の傾向(Nowak 2018) |
| SHH(17例) | 周辺の嚢胞が71%。造影されない例が29% |
| TYR(16例) | 主にテント下。周辺の嚢胞が94%。造影されない例は0% |
| MYC(10例) | 周囲の浮腫が他より強い。周辺の嚢胞は40% |
これは探索的な研究で、画像だけでサブグループを決められるわけではありません。帯状の造影(band-like enhancement)は全体の28%に見られました(Nowak 2018)。
大人のAT/RT
AT/RTは大人ではまれです。成人92例の系統的レビューでは、女性に多く、テント上に多く、鞍上部を含む正中構造に好発する傾向でした(Broggi 2022)。40歳を超える女性では特に正中構造に多いとされます。成人では他の腫瘍に似て見えることが多く、診断は病理が中心です。予後は小児・成人とも厳しいと報告されていますが、成人では経過に幅があります(Broggi 2022)。
PET/CTでの見え方
小児6例の報告では、原発巣と転移巣のどちらにもFDG(ブドウ糖に似た薬剤)の明らかな集積がありました。この6例では、頭蓋内のほか脊髄、肺、リンパ節にも転移が見つかっています(Kang 2022)。AT/RTは中枢神経の外に転移することもあり、全身の評価が必要になる場合があります。ただし6例の報告であり、PET/CTの役割が決まっているわけではありません。
読影のチェックリスト
- 年齢:乳児〜3歳未満か。3歳未満の大きな腫瘤ではAT/RTを鑑別に入れる
- 場所:テント上か下か。小脳橋角部・中小脳脚・脳幹への広がりはあるか
- 内部:不均一か。端に寄った嚢胞、出血(液面形成)はあるか
- 拡散:DWI高信号とADC低下があるか(髄芽腫でも同じ所見は出る)
- 導出静脈:中心に太い静脈が見えるか(見えれば髄芽腫寄り)
- 播種:脳と脊髄の造影MRIで髄膜の造影はあるか。水頭症はないか
- 報告書:「髄芽腫を第一に、AT/RTなどの胎児性腫瘍も鑑別」と書いて病理に委ねる
水頭症が疑われる乳児の頭囲拡大は乳児の頭囲拡大の原因、頭部MRIの基本の見る順番は頭部MRIの読み方が参考になります。
報告書の書き方の例
画像だけでは確定できない腫瘍なので、断定を避けて鑑別を並べるのが基本です。たとえば次のように書きます。
- 「後頭蓋窩に大きな不均一腫瘤。拡散制限あり。髄芽腫が第一、年齢と小脳橋角部への進展・出血からAT/RTなどの胎児性腫瘍も鑑別」
- 「脊髄を含む造影MRIでの播種の評価を推奨」
- 「水頭症あり。緊急の対応は脳神経外科と相談」
治療と予後について
AT/RTの治療は手術、化学療法、放射線治療を組み合わせる集学的な治療が検討されます。詳細な治療法はこの記事では扱いません。診断を受けたご家族は、小児脳腫瘍を扱う専門施設で説明を受けてください。サブグループによって画像や経過が異なる可能性があり、研究が進んでいます(Nowak 2018)。
よくある疑問(Q&A)
Q. AT/RTは画像だけで診断できますか?
A. 画像だけで確定することはできません。通常のMRIでは髄芽腫と似ているため、病理でINI1(SMARCB1)の発現が失われていることを確認して診断します(Wu 2023、Frühwald 2016)。
Q. 髄芽腫との違いで一番役に立つ所見は?
A. 年齢が低いこと、小脳橋角部への進展、腫瘤内出血が報告されています(Koral 2008)。導出静脈が中心を通る「tumor central vein sign」が見えれば髄芽腫寄りとされます(Wu 2023)。1つの所見で決めず組み合わせて考えます。
Q. 大人にもありますか?
A. まれですが、成人の報告があります。成人92例の検討では女性とテント上に多い傾向でした(Broggi 2022)。
Q. 子どもの頭の腫瘍と言われました。気になる症状があれば?
A. 乳幼児の嘔吐、ぐったりして元気がない、頭囲が急に大きくなる、歩き方がおかしいなどがあれば、早めに小児科や脳神経外科を受診してください。
あわせて読みたい:ETMR(多層ロゼットを伴う胎児性腫瘍)のMRI画像所見、RGNT(ロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見、PGNT(乳頭状グリア神経細胞腫瘍)のMRI画像所見
参考文献
- Louis DN, Perry A, Wesseling P, et al. The 2021 WHO Classification of Tumors of the Central Nervous System: a summary. Neuro Oncol. 2021;23(8):1231-1251. PubMed
- Frühwald MC, Biegel JA, Bourdeaut F, et al. Atypical teratoid/rhabdoid tumors-current concepts, advances in biology, and potential future therapies. Neuro Oncol. 2016;18(6):764-78. PubMed
- Nowak J, Nemes K, Hohm A, et al. Magnetic resonance imaging surrogates of molecular subgroups in atypical teratoid/rhabdoid tumor. Neuro Oncol. 2018;20(12):1672-1679. PubMed
- Koral K, Gargan L, Bowers DC, et al. Imaging characteristics of atypical teratoid-rhabdoid tumor in children compared with medulloblastoma. AJR Am J Roentgenol. 2008;190(3):809-14. PubMed
- Wu HW, Wu CH, Lin SC, et al. MRI features of pediatric atypical teratoid rhabdoid tumors and medulloblastomas of the posterior fossa. Cancer Med. 2023;12(9):10449-10461. PubMed
- Calandrelli R, Massimi L, Pilato F, et al. Atypical Teratoid Rhabdoid Tumor: Proposal of a Diagnostic Pathway Based on Clinical Features and Neuroimaging Findings. Diagnostics (Basel). 2023;13(3). PubMed
- Broggi G, Gianno F, Shemy DT, et al. Atypical teratoid/rhabdoid tumor in adults: a systematic review of the literature with meta-analysis and additional reports of 4 cases. J Neurooncol. 2022;157(1):1-14. PubMed
- Kang X, Xia H, Skudder-Hill L, et al. Magnetic Resonance Imaging (MRI) and Positron Emission Tomography (PET)/Computed Tomography Features of Atypical Teratoid/Rhabdoid Tumors: Case Series and Review. J Child Neurol. 2022;37(12-14):1003-1009. PubMed
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