先に結論:脳出血のCT・MRI
- 脳出血の多くは高血圧性で、被殻・視床・小脳・橋・皮質下に起こります。典型的でない部位・若い人・高血圧がない人では、血管奇形・腫瘍・アミロイドアンギオパチー・凝固異常などを考えます
- 読影では部位・大きさ(血腫量)・脳室穿破・水頭症・脳ヘルニアを評価します。血腫は発症後数時間以内に増大することがあるため、再検で確認します
- 脳出血はレントゲン(単純X線)では分からず、CTで高吸収域(白く写る)として診断します。MRIのT2*強調像なども急性期の出血をCTと同じくらい検出できます
- 血腫量はABC/2法(長径×短径×高さ÷2)で簡単に見積もれます。手術を考えるかどうかは、部位・血腫量・神経症状・水頭症などから脳神経外科が判断します
脳出血のCT,MRI画像診断についてまとめました。
急性期脳出血の読影
脳出血の全体像はこちら。

発症直後に死亡しうる血管障害は、
- クモ膜下出血
- 心筋梗塞
- 大動脈解離、大動脈瘤破裂
です。高血圧性の脳出血や脳梗塞も重症例では急速に悪化しますが、多くは評価する時間がある病気です。もちろん悠長にはしていられませんが、ある程度しっかり評価して、専門科に伝えましょう。
脳出血の診断
- 存在診断:CTで高吸収域を確認する。発症直後の高血圧性脳出血にMRを施行する必要はない。ただし、MRでも診断することはできる。
- 局在診断:部位、大きさ、広がり、随伴所見(脳室穿破、水頭症、ヘルニア、SAH)について評価する。
- 質的診断:部位と年齢、患者背景(高血圧、凝固能異常、心房細動の有無など)
- 更なる精査:MRI/MRA、血管造影

脳出血の局在と原因
- まず大きく、高血圧によって起こる脳出血と、そうでない脳出血に分けられる。
- 高血圧性出血は、高血圧により穿通動脈に圧が加わり、微小動脈瘤形成→破綻によりおこる出血。
- 高血圧性出血は、穿通動脈が分布する被殻、視床>小脳歯状核、橋、皮質下で起こりやすい。脳内出血の多くを占める。
- 非高血圧性出血の可能性を考慮するのは、皮質下出血、脳室内出血、小脳出血(歯状核以外)、脳幹出血(橋以外)、多発出血。皮質下(脳葉型)出血の原因として重要な脳アミロイドアンギオパチーは、2022年のボストン基準2.0では、50歳以上でMRI上の厳密に脳葉性の出血性病変(脳出血・微小出血・脳表ヘモジデリン沈着)が2つ以上、または1つ+白質所見(半卵円中心の高度な血管周囲腔拡大、多発斑状の白質高信号)でprobableと判定する。剖検例での感度は74.5%、特異度は95.0%と報告されている。

頭部CTにて左被殻に高吸収域を認めており、左被殻出血を疑う所見です。
頭部CTにて右小脳に高吸収域を認めており、小脳出血を疑う所見です。
大きさと手術適応
- 血腫が小さい場合は、部位に関係なく手術の対象にならないことが多い。
手術を考慮
- 被殻出血:血腫が大きく、圧迫が高度な場合。
- 小脳出血:血腫が大きい場合、神経学的症候が増悪している場合、脳幹の圧迫や水頭症を伴う場合。
- 皮質下出血:血腫が脳表に近い場合。
※具体的な基準値は各国の診療ガイドラインで示されており、最終的には脳神経外科が判断する。読影では大きさを測定して記載する。ここから分かるように、橋出血など脳幹出血や視床出血には原則的に手術適応はない。
血腫量の計算(ABC/2法)
- 血腫量の計算式:「楕円形の体積≒長径×短径×高さ÷2」で計算する。例えば長径・短径・高さがいずれも4cmなら、血腫量=4×4×4÷2=32mlとなる。このABC/2法(A:最大径、B:Aに直交する径、C:出血が見えるスライス数×スライス厚)は、計算機による計測とよく相関し1分以内に算出できることが示されている。
随伴所見をチェック
脳室穿破を起こしやすい出血と部位
- 被殻出血→側脳室
- 視床出血→側脳室や第3脳室
- 小脳・脳幹出血→第4脳室
水頭症は手術や脳室ドレナージの適応となるので、チェック。
関連記事)
血腫のフォローと周囲浮腫について
・発症3時間以内の脳出血では、1時間後のCTで26%、さらに20時間後までに12%で血腫の明らかな増大がみられ、増大は神経症状の悪化と関連するためフォローが必要。
・CTアンギオグラフィで血腫内に造影剤の点状の漏れ(spot sign)があると血腫増大の目印になる。発症6時間以内の268例では30%が陽性で、増大量の中央値は陽性例8.6ml、陰性例0.4mlであった(Demchuk 2012)。
・周囲浮腫は発症時は軽微だが、その後数日かけて増大する。その後、CTでは時間とともに吸収値が下がって数週間で周囲の脳と等吸収となり、やがて低吸収(嚢胞化)となる。
MRIでの脳出血の見え方(時期による信号の変化)
- T2*強調像やSWIで、出血は強い低信号として鋭敏に写る。発症6時間以内の200例では急性期出血の検出はMRIとCTで同等(96%一致)で、微小出血など古い出血はMRIでしか見えない例が49例あった(Kidwell 2004)。
- 救急ではCTが基本で、MRIは出血の原因(血管奇形・腫瘍・アミロイドアンギオパチーなど)の精査で役立つ。
血腫の信号は時期で変わる(ヘモグロビンの変化)
| 時期 | 主な成分 | T1強調像 | T2強調像 |
| 超急性期 | オキシヘモグロビン | 等〜軽度低信号 | 高信号 |
| 急性期 | デオキシヘモグロビン | 等〜軽度低信号 | 低信号 |
| 亜急性期早期 | メトヘモグロビン(赤血球内) | 高信号 | 低信号 |
| 亜急性期後期 | メトヘモグロビン(赤血球外) | 高信号 | 高信号 |
| 慢性期 | ヘモジデリン・フェリチン | 低信号(辺縁) | 低信号(辺縁) |
高血圧性脳出血の診断のポイント
- 中高年に好発する。ただし若年発症もある。
- 好発部位である。つまり、被殻>視床>橋、小脳、皮質下。
- 出血近傍に脳血管奇形や脳腫瘍など二次性出血の原因となるような疾患がない。
- 深部穿通動脈に高血圧性のラクナ梗塞や出血の既往がある。(必須ではない)
どんなときに非高血圧性を考えるか?
- 部位が高血圧性に典型的ではない場合。
- 若年の発症例。
- 心房細動、担癌患者、凝固能異常の発症例。
→更なる精査が必要。
症例 10歳代女性 皮質下出血(海綿状血管腫)

非高血圧性出血の原因
脳出血の部位別まとめ(CTでの見分け方)
| 部位 | 主な責任血管 | CTでの位置 | 主な症状・注意点 |
| 被殻出血 | レンズ核線条体動脈外側枝 | 内包の外側 | 片麻痺、病巣側への共同偏視 |
| 視床出血 | 視床膝状動脈、後視床穿通動脈 | 内包の内側 | 感覚障害、眼球の内下方偏位、脳室穿破 |
| 小脳出血 | 上小脳動脈の分枝 | 小脳半球(歯状核付近) | めまい・嘔吐、水頭症に注意 |
| 橋出血 | 脳底動脈橋枝 | 橋の中央 | 意識障害、高度縮瞳 |
| 皮質下出血 | 皮質枝 | 大脳の皮質直下 | 非高血圧性の原因も考える |
被殻と視床は内包をはさんで外側か内側かで見分けるのがコツです。
では、ここからは実際に典型的な高血圧性の脳出血の画像を見て行きましょう。
被殻出血
- 主な責任血管は、レンズ核線条体動脈外側枝(中大脳動脈からの穿通枝)
- 隣り合う内包が障害されることで、反対側の片麻痺、感覚障害、病巣側への水平性共同偏視などの症状が生じる。
動画で学ぶ被殻出血5症例、手術適応
視床出血
- 主な責任血管は、視床膝状動脈、後視床穿通動脈(いずれも後大脳動脈の穿通枝)
- 血腫と反対側の感覚障害、視床症候群、眼球の内下方偏位や病巣側への共同偏視、縮瞳などの症状あり。
- 脳室に隣接しているので、脳室穿破を起こしやすい。
- 脳室内出血により閉塞性水頭症をきたした場合は脳室ドレナージ術の適応。
関連記事)視床出血の症状や原因、CT画像まとめ!
動画で学ぶ視床出血6症例
小脳出血
- 主な責任血管は上小脳動脈の分枝。
- 頭痛、回転性めまい、嘔吐、小脳失調、歩行障害、反対側への共同偏視など。
- 血腫による脳幹への直接圧排や第4脳室圧排による閉塞性水頭症のリスクあり。
関連記事)小脳出血の症状、CT画像、治療法まとめ!
動画で学ぶ小脳出血4症例
橋出血
- 主な責任血管は脳底動脈橋枝。
- 意識障害、眼球の正中固定、高度縮瞳(pinpoint pupils)、両眼の下方沈下(ocular bobbing)など。
- 脳幹を直接損傷するため、生命予後が不良な事がある。
関連記事)脳幹出血(橋出血)の症状や治療法、CT画像まとめ!
動画で学ぶ橋出血
脳出血の画像診断でよくある疑問(Q&A)
Q. 脳出血はレントゲンで分かりますか?
A. 頭の単純X線写真(レントゲン)では脳そのものは写らないため、脳出血は分かりません。脳出血の診断にはCTを使い、出血は白い(高吸収の)かたまりとして写ります。
Q. どんな症状があれば受診すべきですか?
A. 急な片側の手足の麻痺やしびれ、言葉が出にくい、激しい頭痛、めまいや嘔吐、意識がおかしいといった症状は脳卒中のサインです。このような症状があればすぐに救急車を呼んでください。
参考文献
- Brott T, Broderick J, Kothari R, et al. Early hemorrhage growth in patients with intracerebral hemorrhage. Stroke. 1997;28(1):1-5. PubMed
- Kothari RU, Brott T, Broderick JP, et al. The ABCs of measuring intracerebral hemorrhage volumes. Stroke. 1996;27(8):1304-5. PubMed
- Greenberg SM, Ziai WC, Cordonnier C, et al. 2022 Guideline for the Management of Patients With Spontaneous Intracerebral Hemorrhage: A Guideline From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2022;53(7):e282-e361. PubMed
- Charidimou A, Boulouis G, Frosch MP, et al. The Boston criteria version 2.0 for cerebral amyloid angiopathy: a multicentre, retrospective, MRI-neuropathology diagnostic accuracy study. Lancet Neurol. 2022;21(8):714-725. PubMed
- Kidwell CS, Chalela JA, Saver JL, et al. Comparison of MRI and CT for detection of acute intracerebral hemorrhage. JAMA. 2004;292(15):1823-30. PubMed
- Demchuk AM, Dowlatshahi D, Rodriguez-Luna D, et al. Prediction of haematoma growth and outcome in patients with intracerebral haemorrhage using the CT-angiography spot sign (PREDICT): a prospective observational study. Lancet Neurol. 2012;11(4):307-14. PubMed
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