頭蓋内の血管奇形は4つ
- 動静脈奇形(AVM)
- 静脈奇形(venous angioma)
- 海綿状血管奇形
- 毛細血管拡張症(capillary telangiectasia)
後者2つは、血管造影で描出されない“angiographically occult vascular malformation”とも呼ばれMRIの普及とともに見つかることが多くなってきた。
海綿状血管腫(cavernous angioma)
- 海綿状血管奇形ともいう。血管内皮細胞に囲まれた洞様の血管腔からなる腫瘍。静脈形成異常の一つで脳実質は病変に介在しない。
- 内部にさまざまな時期の出血、血栓、石灰化、周囲にヘモジデリン、gliosisが見られる。
- 慢性的な血液のしみ出しが画像で重要となる。
- capillary telangiectasiaやvenous malformationに比して、出血、痙攣などの臨床症状を呈することが多い。
- 剖検では脳血管奇形の5〜13%を占める。人口全体の0.4〜0.7%に見られる。15〜50%で多発。
- 家族内発生があり、その場合80%に多発する。
- 主に20〜60歳で発見される。30歳代に多い。性差なし。
- 大脳(90%)>橋>小脳の順に多い。
- 出血のリスクは1%以下/年。有意な脳出血を起こす頻度は全患者の10%前後。
- テント上の場合はてんかん発作、テント下の場合は巣症状で発症することが多い。
海綿状血管奇形の画像所見
- CTにて出血および石灰化により不均一な結節状限局性の淡い高吸収域を示す。
- 増強効果はないものから強いものまでさまざまである。
- 石灰化は半数程度に認められる。
- T2WIにおいてさまざまな時期の血腫を示す低〜高信号が混在する“popcorn-like”な内部構造が、ヘモジデリンによる低信号のrimに囲まれているのが典型的である。
- T1WIでも低~高信号が混在し、高信号が顕著な場合は最近の出血が疑われる。
- 小病変・多発性病変を評価するためにT2*強調像を行う。慢性的な血液の染み出しの評価に重要。
- 多発性病変の検出はCTより、MRIが優れている。
- 最大径4cmくらいまで達することがある。
症例
左の尾状核にT2WIにてpopcorn-likeな内部構造が低信号のrimに囲まれており、海綿状血管腫を疑う所見。
▶動画でチェック
毛細血管拡張症capillary telangiectasia
- 臨床上問題になることは稀で、剖検時偶然見つかることが多い。
- 拡張した毛細血管の集合で、血管網の間に脳実質が介在する。
- 出血は稀。
- 橋に最も多く発生し、テント上・脊髄にも見られる。
- MRIではT2*強調像で低信号を呈することが診断に有用とされている。
(脳実質外性の)海綿状血管腫cavernous hemanigoma(malformation)
- 脳実質内の海綿状血管腫は、高率に出血を伴い、多発(30~50%)することも多い。
- 脳実質外性の海綿状血管腫は中年女性の中頭蓋窩に好発し、中頭蓋窩の髄膜腫と類似した視力障害や眼球運動障害などを呈することが多い。
- 脳実質外性の血管腫は肝臓の血管腫と同じ信号パターンを呈する。
- T2強調像で、均一で著明な高信号、T1強調像では脳実質と同等のやはり均一な信号を示すのが特徴である。
- 脳実質内とは違って、造影剤による増強効果は著明であることが多い。ダイナミックで徐々に造影増強効果の範囲が広がり、遅延相で全体に濃染される。
- 出血はほとんど見られない。
参考)よくわかる脳MRI 第3版 (画像診断別冊KEY BOOKシリーズ)