脳出血のCT,MRI画像診断についてまとめました。
急性期脳出血の読影
脳出血の全体像はこちら。
指導医
救急医療をする上で、脳出血の知識は必須です。CTで白いところがあるから出血だ!と判断できることが第一ですが、それだけでは不十分です。
でも救急していて脳出血患者をみたら、びっくりしてパニックになるんですけど。とても、いちいち評価する暇なんてありません。
指導医
発症直後に死亡しうる血管障害は、
- クモ膜下出血
- 心筋梗塞
- 大動脈解離、大動脈瘤破裂
です。つまり、高血圧性の脳出血や脳梗塞は、発症直後に死亡はしない病気です。もちろん悠長にはしていられませんが、ある程度しっかり評価して、専門科に伝えましょう。
脳出血の診断
- 存在診断:CTで高吸収域を確認する。発症直後の高血圧性脳出血にMRを施行する必要はない。ただし、MRでも診断することはできる。
- 局在診断:部位、大きさ、広がり、随伴所見(脳室穿破、水頭症、ヘルニア、SAH)について評価する。
- 質的診断:部位と年齢、患者背景(高血圧、凝固能異常、心房細動の有無など)
- 更なる精査:MRI/MRA、血管造影
存在診断はCTで白いから分かりやすいですね。
指導医
脳出血の原因は何が多いでしょうか?
高血圧が多いと思います。
脳出血の局在と原因
- まず大きく、高血圧によって起こる脳出血と、そうでない脳出血に分けられる。
- 高血圧性出血は、高血圧により穿通動脈に圧が加わり、微小動脈瘤形成→破綻によりおこる出血。
- 高血圧性出血は、穿通動脈が分布する被殻(4割)、視床(3割)>小脳歯状核、橋、皮質下で起こりやすい。脳内出血の8割を占める。
- 非高血圧性出血の可能性を考慮するのは、皮質下出血、脳室内出血、小脳出血(歯状核以外)、脳幹出血(橋以外)、多発出血。
※ただし、皮質下出血でも5割は高血圧性。
指導医
脳出血の8割は高血圧性で典型的な場所に起こります。逆に非典型的な部位に出血を認めたら、他の原因も考慮しましょう。
頭部CTにて左被殻に高吸収域を認めており、左被殻出血を疑う所見です。
頭部CTにて右小脳に高吸収域を認めており、小脳出血を疑う所見です。
大きさと手術適応
- 出血の部位に関係なく、血腫量10ml未満(直径2.5cm以下)ならば手術適応なし。
手術を考慮
- 被殻出血:血腫量が31ml以上(直径4cm以上)、圧迫が高度な場合。
- 小脳出血:最大径が3cm以上。神経学的症候が増悪している場合。
- 皮質下出血:脳表からの深さが1cm以下。
※なので大きさを測定して記載する。ここから分かるように、橋出血など脳幹出血や視床出血には原則的に手術適応はない。
4cmの根拠
- 血腫量の計算式:「楕円形の体積≒長径×短径×高さ÷2」で計算する。4cmを代入してみると、血腫量=4×4×4÷2=32ml>31mlとなるので、4cmが手術適応の目安となる。
随伴所見をチェック
脳室穿破を起こしやすい出血と部位
- 被殻出血→側脳室
- 視床出血→側脳室や第3脳室
- 小脳・脳幹出血→第4脳室
水頭症は手術や脳室ドレナージの適応となるので、チェック。
脳出血をみたときに次は何時間後にCTでフォローすればいいですか?1時間毎とかですか?
指導医
それはやりすぎです。よほど大きな血腫なら話は別ですが、数時間後に1度再検してみて血腫の増大をチェックすることが多いです。
関連記事)
血腫のフォローと周囲浮腫について
・血腫は発症後6時間までは2割の症例で増大するのでフォローが必要。
・周囲浮腫は発症時は軽微だが、3〜5日後に最大となる。その後、CTでは、3〜4週間で等吸収となる(嚢胞化する)。
高血圧性脳出血ですって自信を持って診断したいので、ポイントを教えてください。
高血圧性脳出血の診断のポイント
- 60〜70歳代に好発する。ただし若年発症もある。
- 好発部位である。つまり、被殻>視床>橋、小脳、皮質下。
- 出血近傍に脳血管奇形や脳腫瘍など二次性出血の原因となるような疾患がない。
- 深部穿通動脈に高血圧性のラクナ梗塞や出血の既往がある。(必須ではない)
逆にどのようなときに非高血圧性を考えればいいですか?
どんなときに非高血圧性を考えるか?
- 部位が高血圧性に典型的ではない場合。
- 50歳未満の発症例。
- 心房細動、担癌患者、凝固能異常の発症例。
→更なる精査が必要。
症例 10歳代女性 皮質下出血(海綿状血管腫)
なるほどやはり部位が特に大事なんですね。そもそも非高血圧性の原因ってどんなものがあるんですか?
非高血圧性出血の原因
結構たくさんありますね…。
指導医
そうですね。高血圧性ぽくないな、と思ったら年齢や臨床情報を参照にして、鑑別診断を挙げましょう。
では、ここからは実際に典型的な高血圧性の脳出血の画像を見て行きましょう。
被殻出血
- 主な責任血管は、レンズ核線条体動脈外側枝(中大脳動脈からの穿通枝)
- 隣り合う内包が障害されることで、反対側の片麻痺、感覚障害、病巣側への水平性共同偏視などの症状が生じる。
動画で学ぶ被殻出血5症例、手術適応
視床出血
- 主な責任血管は、視床膝状動脈、後視床穿通動脈(いずれも後大脳動脈の穿通枝)
- 血腫と反対側の感覚障害、視床症候群、眼球の内下方偏位や病巣側への共同偏視、縮瞳などの症状あり。
- 脳室に隣接しているので、脳室穿破を起こしやすい。
- 脳室内出血により閉塞性水頭症をきたした場合は脳室ドレナージ術の適応。
関連記事)視床出血の症状や原因、CT画像まとめ!
動画で学ぶ視床出血6症例
小脳出血
- 主な責任血管は上小脳動脈の分枝。
- 頭痛、回転性めまい、嘔吐、小脳失調、歩行障害、反対側への共同偏視など。
- 血腫による脳幹への直接圧排や第4脳室圧排による閉塞性水頭症のリスクあり。
関連記事)小脳出血の症状、CT画像、治療法まとめ!
動画で学ぶ小脳出血4症例
橋出血
- 主な責任血管は脳底動脈橋枝。
- 意識障害、眼球の正中固定、高度縮瞳(pinpoint pupils)、両眼の下方沈下(ocular bobbing)など。
- 脳幹を直接損傷するため、生命予後が不良な事がある。
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