脊髄硬膜動静脈瘻(spinal dural arteriovenous fistula, SDAVF,spinal dural AVF)
- 脊髄血管奇形、血管障害の中で最多で7割を占める。
- 中年以上の男性に生じる。女性に比べて男性は5倍頻度が高い。
- 多くは頸胸椎移行部以下、特に下位胸椎から腰椎レベル(Th6からL2レベル)に好発する。
- シャントは椎間孔あるいは神経根に沿って認められ、流入血管を根動脈の硬膜枝、流出血管を根髄質静脈、脊髄静脈、脊髄冠状静脈叢とする。
- 上のようにAVFは硬膜動静脈瘻(dura AVF)、硬膜外動静脈瘻(extradural AVF)、表面動静脈瘻(perimedullary AVF)に分けられる。
- 静脈圧亢進による慢性の虚血が原因で、脊髄症となって神経症状が生じる。
- 症状は、下肢の筋力低下が最多。
- 運動により増悪し、安静により軽快する傾向あり。
- その他、感覚障害、背部痛・腰痛、膀胱直腸障害。
- 治療は、マイクロ手術や血管内治療による塞栓術。
脊髄硬膜動静脈瘻の画像診断
- 脊髄の腫大(約50%)
- T2WIで髄内に異常高信号。(静脈うっ滞による浮腫を反映)
- 脊髄周囲には背側優位に多数の異常なflow void。拡張・蛇行した異常血管を示唆。
- 造影T1WIではこの異常血管が脊髄背側表面の点状の造影効果としてとらえられる。
- 脊髄の辺縁に低信号:静脈圧上昇で停滞した血流のデオキシヘモグロビンを反映。T2*強調像の追加も有用。
症例 40歳代男性 2年間で進行する腰部の痛み、だるさ、 下肢のしびれ。
引用:radiopedia
下部胸髄〜腰髄の腫大およびT2WI高信号あり。また脊髄の周りに多数の血管のflow voidあり。
脊髄硬膜動静脈瘻(spinal dural arteriovenous fistula)と診断されました。
脊髄硬膜動静脈瘻の鑑別診断
- T2WIでの脊髄の異常高信号からは、脊髄炎、脱髄、腫瘍など。
- 拡張・蛇行した異常血管のflow voidや造影効果も併せて考えれば血管奇形を疑う事が可能。(ただし全例に異常血管が画像でわかるわけではない。)
参考)
- 新 骨軟部画像診断の勘ドコロ P363-366
- すぐ役立つ救急のCT、MRI
- 画像診断2012年6月 おさえておきたい脊椎・脊髄画像診断の基本