先に結論:脊髄硬膜動静脈瘻(SDAVF)のMRI

  • 脊髄硬膜動静脈瘻は、背骨の神経根の近くの硬膜で動脈と静脈が直接つながり、脊髄の静脈の圧が上がって脊髄がむくむ(静脈うっ血)病気で、中高年の男性に多く、ゆっくり進む足のしびれ・脱力・排尿障害が出ます。最も多い脊髄の血管奇形です
  • MRIでは下部胸髄〜円錐のT2高信号と腫大、脊髄の背側表面に並ぶ拡張した血管(flow void)が特徴で、造影MRA・CTAで瘻の位置を推定し、脊髄血管撮影で確定します
  • 脊髄炎や腫瘍と間違われやすく、ステロイドで悪化することもあるため注意が必要です。手術や血管内治療で瘻を閉じれば改善が期待できます

※足のしびれや力の入りにくさ、排尿の異常がだんだん進むときは、脳神経内科・脳神経外科を受診してください。

脊髄硬膜動静脈瘻(spinal dural arteriovenous fistula, SDAVF,spinal dural AVF)

脊髄血管奇形の分類:動静脈瘻(硬膜動静脈瘻・硬膜外動静脈瘻・脊髄辺縁部動静脈瘻)、動静脈奇形(Glomus type・Juvenile type)

  • 脊髄の動静脈奇形の中で最多で7割を占める(Koch 2006)。
  • 中年以上の男性に生じる。男性に多い。
  • 多くは頸胸椎移行部以下、特に下位胸椎から腰椎レベルに好発する。瘻の位置は下部胸椎44.5%、腰椎28.4%でした(Filis 2024)。
  • シャントは椎間孔あるいは神経根に沿って認められ、流入血管を根動脈の硬膜枝、流出血管を根髄質静脈、脊髄静脈、脊髄冠状静脈叢とする。
  • 上のようにAVFは硬膜動静脈瘻(dural AVF)、硬膜外動静脈瘻(extradural AVF)、脊髄辺縁部動静脈瘻(perimedullary AVF)に分けられる。
  • 静脈圧亢進による慢性の虚血が原因で、脊髄症となって神経症状が生じる。
  • 症状は、下肢の筋力低下が最多(初発症状の48.4%、Muralidharan 2011)。
  • 運動により増悪し、安静により軽快する傾向あり。運動で脱力が悪化する例は43.1%でした(Muralidharan 2011)。
  • その他、感覚障害、背部痛・腰痛、膀胱直腸障害。
  • 治療は、マイクロ手術や血管内治療による塞栓術。瘻を閉じることで約70%で症状の改善が得られるとされます(Koch 2006)。

脊髄の動静脈瘻・動静脈奇形の種類と違い

脊髄の血管奇形は、シャント(動脈と静脈の短絡)の場所で分けられます(Zozulya 2006)。

種類 シャントの場所 主な症状の出方
脊髄硬膜動静脈瘻(Type Ⅰ、dural AVF) 神経根近くの硬膜の中 静脈うっ血でゆっくり進む脊髄症。中高年男性に多い
脊髄髄内動静脈奇形(Type Ⅱ、glomus AVM) 脊髄の中のナイダス(異常血管の塊) 出血で急に発症することがある
脊髄辺縁部動静脈瘻(Type Ⅳ、perimedullary AVF) 脊髄の表面(硬膜の内側) うっ血や出血
硬膜外動静脈瘻(extradural AVF) 硬膜の外(硬膜外静脈叢) 拡張した静脈による圧迫やうっ血

脊髄硬膜動静脈瘻の画像診断

  • 脊髄の腫大
  • T2WIで髄内に異常高信号。(静脈うっ滞による浮腫を反映)
  • 脊髄周囲には背側優位に多数の異常なflow void。拡張・蛇行した異常血管を示唆。
  • 造影T1WIではこの異常血管が脊髄背側表面の点状の造影効果としてとらえられる。静脈うっ血による脊髄実質の造影効果もみられることがあり、脊髄浮腫・脊髄周囲の拡張血管・脊髄の造影効果の組み合わせが特徴的とされます。造影MRIを撮った51例では86%に髄内の造影効果があり、その43%で、長い範囲の強い全周性造影の中に造影されない部分が島状に抜ける「missing-piece sign」がみられました。このサインは他の脊髄症144例には1例もなく、flow voidがはっきりしない例で血管撮影へ進むきっかけになります。
  • 脊髄の辺縁に低信号:静脈圧上昇で停滞した血流のデオキシヘモグロビンを反映。T2*強調像の追加も有用。
  • T2高信号は95%で脊髄円錐に及んでいました。感覚障害のレベルから瘻の高さは推定しにくいため、疑ったら脊椎全体をMRIで調べることが勧められています(Muralidharan 2011)。

症例 40歳代男性 2年間で進行する腰部の痛み、だるさ、 下肢のしびれ。

引用:Radiopaedia

下部胸髄〜腰髄の腫大およびT2WI高信号あり。また脊髄の周りに多数の血管のflow voidあり。

脊髄硬膜動静脈瘻(spinal dural arteriovenous fistula)と診断されました。

脊髄硬膜動静脈瘻の鑑別診断

  • T2WIでの脊髄の異常高信号からは、脊髄炎、脱髄、腫瘍など。
  • 拡張・蛇行した異常血管のflow voidや造影効果も併せて考えれば血管奇形を疑う事が可能。(ただし全例に異常血管が画像でわかるわけではない。)

参考)

参考文献

  1. Krings T, Geibprasert S. Spinal dural arteriovenous fistulas. AJNR Am J Neuroradiol. 2009;30(4):639-48. PubMed
  2. Ma Y, Hong T, Chen S, et al. Steroid-Associated Acute Clinical Worsening and Poor Outcome in Patients With Spinal Dural Arteriovenous Fistulas: A Prospective Cohort Study. Spine (Phila Pa 1976). 2020;45(11):E656-E662. PubMed
  3. Zalewski NL, Rabinstein AA, Brinjikji W, et al. Unique Gadolinium Enhancement Pattern in Spinal Dural Arteriovenous Fistulas. JAMA Neurol. 2018;75(12):1542-1545. PubMed
  4. Jellema K, Tijssen CC, van Gijn J. Spinal dural arteriovenous fistulas: a congestive myelopathy that initially mimics a peripheral nerve disorder. Brain. 2006;129(Pt 12):3150-64. PubMed
  5. Koch C. Spinal dural arteriovenous fistula. Curr Opin Neurol. 2006;19(1):69-75. PubMed
  6. Filis A, Romualdo SMF, Engellandt K, et al. Diagnostic, clinical management, and outcomes in patients with spinal dural arteriovenous fistula. Front Surg. 2024;11:1374321. PubMed
  7. Muralidharan R, Saladino A, Lanzino G, et al. The clinical and radiological presentation of spinal dural arteriovenous fistula. Spine (Phila Pa 1976). 2011;36(25):E1641-1647. PubMed
  8. Zozulya YP, Slin’ko EI, Al-Qashqish II. Spinal arteriovenous malformations: new classification and surgical treatment. Neurosurg Focus. 2006;20(5):E7. PubMed

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