くも膜下出血の画像診断、原因、症状、治療についてまとめました。
くも膜下出血とは(SAH:subarachnoid hemorrhage)
- 40-70歳代に多く、男女比は1:2。
- 危険因子:喫煙、高血圧、大量飲酒、家族性発生(4-10%)。
- 原因:脳動脈瘤破裂(85%)、中脳周囲非動脈瘤性くも膜下出血(10%)、その他(動脈解離、脳出血穿破、動静脈奇形など)。
- 脳動脈瘤:90%がICA、A-com、MCA、10%がVA-BA系に発生し、20%に多発する。
- 合併症:再出血(24時間以内、特に6時間以内)、脳血管攣縮による梗塞、水頭症。
- 予後決定因子:発症時の意識障害の程度、動脈瘤再破裂、血管攣縮。
くも膜下出血の症状
- 多くは突然の頭痛で発症する。(1割に頭痛なし)
- 髄膜刺激症状(項部硬直など)は数時間後(12時間以内ははっきりしないこと多い)から発症する。
- 重篤なSAHを起こす前に、突然の頭痛(嘔気・嘔吐を伴いやすい)の既往が50%以上にある。これを警告徴候(warning sign)や警告頭痛(warning headache)と呼ばれ、少量の出血(minor leak)が原因とされている。(CTで半数指摘できない。腰椎穿刺でも確認できないこともあり、実際は出血していないこともあると言われる。)
- 4週間以内に再破裂を来たし、死亡率は50%を超えると言われる。
- IC-PC aneurysmが急速増大して、動眼神経を圧迫し、一過性動眼神経麻痺(散瞳から始まり眼瞼下垂)を呈することがある。
くも膜下出血の画像診断
指導医
SAHの画像診断は決して簡単ではありません。いかのステップに沿ってじっくり見ていきましょう。
- 正常解剖を知る。
- 原因動脈瘤の部位を推定する方法を知る。
- くも膜下腔の高信号を探すより、黒い脳脊髄液腔 (不明瞭化していないか)を確認する。
- 少量かつ発症から時間が経過した非典型的くも膜下出血の所見を知る。
- AN破裂以外の特殊なSAHを来す疾患を知る。
- SAH類似所見を呈する状態を知る。
- MRI(特にFLAIR)の特徴、注意点を知る。
くも膜下出血の診断が得られた後
- 重症度を分類する(Fisher分類)。CTで脳血管攣縮発生の予測をする。
※血腫が厚い、出血量が多い→Group3→血管攣縮が高頻度(血腫量がごく少量ならばGroup2) - 合併する水頭症の診断をする。
- 出血の原因検索をする。原因は脳動脈瘤が多いため、脳血管造影がgold standardである。
- 近年マルチスライスCTの普及により、単純CT撮影→CTAで動脈瘤の診断を行なう施設も増えている。
CTAのピットフォール:骨や血管の重なり
- 特に内頸動脈のC2以下では骨と瘤が重なる。
- またACAやMCA(M1/2)で小さな動脈瘤が動脈と重なってしまう。
参考文献)
・画像診断2007年6月 くも膜下出血の画像診断 大阪市立大学 下野太郎先生
・臨床画像2009年4月増刊号 救急画像診断 くも膜下出血 亀田総合病院 菊池陽一先生
・画像診断2010年8月くも膜下出血の画像所見 富山大学 野口京先生