脳梗塞後に起こる合併症

脳梗塞後の合併症って何かありますか?

なんといっても注意すべきは出血性梗塞です。

他には、合併症というより慢性期脳梗塞に起こる変化として、

  • 層状壊死(laminar necrosis)
  • Waller変性

があります。

関連記事)ワーラー変性のMRI画像診断

出血性梗塞とは?

  • 発症直後(2-5日後)に起こるものと、亜急性期(2週間前後)に起こるものに分類される。cerebralinfarction

参考)こちらは拡大できます。保存するならこちら。cerebralinfarction copy

直後(2-5)

  • 梗塞に陥った組織に血流の再開通が生じることにより、血管性浮腫の増悪や出血を生じる。
  • 塞栓性梗塞で頻度高い。
  • 血栓溶解療法によっても一定の確率で起こる。
  • early CT signが見られた症例、ADC低下の領域が広い症例でリスクが上がる。

亜急性期(2週間前後)

  • 梗塞辺縁部の側副血行路の発達により、少量の出血を来す。この出血が予後不良因子となることは稀。

慢性期脳梗塞に起こる変化

慢性期脳梗塞に起こる変化として、

  • 層状壊死(laminar necrosis)
  • Waller変性

があります。

層状壊死(laminar necrosis)

  • 発症2週間以後から慢性期にかけて、T1WIで梗塞巣の皮質に沿って高信号域が見られる。画像所見を反映して、cortical hyperintensityとも呼ばれる。
  • これを見ると病歴が不明確な場合、梗塞があったという証拠になる所見。皮質に沿った梗塞なので症状が出にくく、時間が経過してから受診したりする。
  • FLAIRでは数カ月は高信号を示すが、液状化するとその部位は低信号を示すようになる。
  • 梗塞巣の造影効果は発症から2日後に始まり、2週間でピーク、2ヶ月後までに消失する(2-2-2のルール。)

より細かく・・・!

  • 大脳の皮質は6層から構成され、本疾患では第3層次いで第5、6層が障害を受け皮質内に層状の壊死巣を生じるため層状壊死(laminar necrosis)とよばれる。
  • これは主幹動脈間の境界領域である分水嶺領域、特に主幹動脈から最も遠い頭頂後頭葉で強く、また脳溝深部で目立つ傾向がある。
  • 組織学的には神経細胞の壊死・脱落がみられ、ミエリン代謝産物を貧食した大食細胞が分布している。
  • 壊死巣内への出血はまれであり、層状壊死によるT1緩和時間の短縮の原因には壊死巣内の変性した蛋白、星細胞など膠細胞の反応性増多、大食細胞からのフリーラジカルの過剰産生などの関与が考えられている。
症例 20歳代男性 もやもや病による慢性期脳梗塞

laminar necrosis MRI T1WI findings

左優位に両側後頭葉に陳旧性脳梗塞あり。
梗塞部位の脳表に沿ってT1強調像で高信号あり。

laminar necrosis(層状壊死)を疑う所見です。

症例 70歳代男性 慢性期脳梗塞

laminar necrosis

左MCA領域の脳表に沿って陳旧性脳梗塞部位にT1強調像で高信号を認めています。

laminar necrosisを疑う所見です。

動画で学ぶlaminar necrosis

Waller変性

  • 梗塞に伴う2次性変性
  • 神経細胞の障害に伴う2次性の順行性変性
  • 錐体路に沿って委縮とT2WIで高信号が認められることが多い。
症例 80歳代男性 慢性期脳梗塞

waller1

左大脳脚に萎縮及びT2強調像で異常な高信号域あり。

waller変性を疑う所見です。

動画で学ぶwaller変性(錐体路のWaller変性)

 

参考)より詳しいwaller変性のまとめはこちら

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