
先に結論:急性腸間膜虚血は「血管の異常」と「腸の障害」を両方探し、原因の型で読み分ける
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何の病気か | 腸管への血流が途絶えて、腸が壊死に進みうる状態。救急外科入院の0.09〜0.2%とまれだが、治療が遅れると死亡率は約50%の範囲(Bala 2022) |
| CTの精度 | 造影CTは第一選択。メタ解析で感度93.3%・特異度95.9%(Menke 2010)。CT angiographyでは感度92.0%・特異度98.8%(Reintam Blaser 2025) |
| 4つの型 | 動脈閉塞、静脈血栓(SMV血栓症)、非閉塞性(NOMI)、絞扼性腸閉塞。型によって腸管の見え方が違う(Garzelli 2023、Fitzpatrick 2020) |
| 読む順番 | 腸管内腔 → 腸管壁 → 腸間膜 → 血管 → 腹部の他の臓器、と内側から外側へ(Fitzpatrick 2020) |
| 注意点 | 壁の造影低下や腸管ガスなど、1つだけで診断を決めない。所見を組み合わせて、臨床経過と合わせて判断する(Reintam Blaser 2025) |
急性腸間膜虚血とは
急性腸間膜虚血(AMI)は、腸管へ向かう血流が途絶え、腸に酸素が届かなくなって起こる病気です。腸の壁が傷み、放置すると壊死に進みます。救急外科の入院全体の0.09〜0.2%と頻度は低く、年齢とともに増えますが、治療が遅れると死亡率は約50%の範囲にとどまるとされ、早期診断が重要です(Bala 2022)。
症状や血液検査が非特異的なため、画像が診断の中心になります。ところが、AMIの患者さんの半数以上は「AMIを疑われないまま」CTを撮られているとの報告もあります(Garzelli 2023)。つまり、腹痛のCTを読むとき、頭の片隅にAMIを置いておくことが大切です。
CTは第一選択:どれくらい信頼できるか
造影の多検出器CTによるAMI診断を調べたメタ解析(6研究・619例、4〜40列のCT)では、プールされた感度が93.3%、特異度が95.9%でした(Menke 2010)。2025年の系統的レビューでは、CT angiography(CTA)の感度が92.0%、特異度が98.8%と高く、それ以外のCTの撮り方では感度75.8%、特異度90.5%にとどまりました(Reintam Blaser 2025)。
撮り方については、動脈を見る相(angiographic phase)と静脈相の2相で撮るプロトコルが広く使われています(Yu 2023)。ただし、疑いが強い臨床状況では、門脈相(静脈相)の画像だけでも診断できることがあるとされます(Garzelli 2023)。CT angiographyは疑い例の第一選択で、迅速に行うべきとされています(Fitzpatrick 2020)。
4つの型と、腸管の見え方
AMIは原因によって、CTでの見え方が変わります。型を意識すると、所見の意味づけがしやすくなります(Garzelli 2023、Fitzpatrick 2020)。
| 型 | 血管の所見 | 腸管の主な所見 |
|---|---|---|
| 動脈閉塞(塞栓・血栓・SMA解離) | 上腸間膜動脈(SMA)の造影欠損や閉塞 | 壁の造影低下が中心。腸管の拡張が25 mmを超えると壊死を疑う(Garzelli 2023) |
| 静脈血栓(SMV血栓症) | 上腸間膜静脈(SMV)の血栓 | 低吸収の壁肥厚(粘膜下の浮腫)。造影が低下すると壊死を示唆(Garzelli 2023) |
| 非閉塞性(NOMI) | SMAの血流低下(血管そのものは開存) | 広い範囲に所見が出る。造影の消失と壁の菲薄化は壊死を示唆(Garzelli 2023) |
| 絞扼性腸閉塞 | 腸間膜の血管がねじれる・締められる | 拡張した腸管と閉塞点。絞扼の所見は別に読む(Fitzpatrick 2020) |
虚血性腸炎は、動脈性AMIの中の「局所の大腸の虚血・再灌流障害」という位置づけです。CTでは脂肪織の濃度上昇を伴う大腸壁の肥厚が主で、SMAや下腸間膜動脈の病変とは関係しないことが多いとされます(Garzelli 2023)。
CTを読む順番:内から外へ
腸管虚血のCTは、所見が多彩で見落としやすいため、決まった順番で見ると抜けが減ります。腸管内腔から始めて、壁、腸間膜、血管、腹部の他の臓器へと外側に進む「inside-out」の読み方が提案されています(Fitzpatrick 2020)。
| 見る場所 | 確認すること |
|---|---|
| 腸管内腔 | 拡張の程度、内容物、ガスや液面。麻痺性イレウスを「良性」と決めつけない(Fitzpatrick 2020) |
| 腸管壁 | 造影の低下・消失、壁の肥厚(浮腫)か菲薄化か、壁内ガス(pneumatosis)、壁の自然高吸収 |
| 腸間膜 | 脂肪織の濃度上昇、腹水、腸間膜の血管のねじれ |
| 血管 | SMAの閉塞・狭窄・解離、SMVの血栓、門脈・腸間膜静脈内ガス |
| 他の臓器 | 肝・脾・腎の梗塞、腹腔内遊離ガス(高い特異度の補助所見、Yu 2023) |
腸管壁の評価では、造影の低下を見やすくするため、撮影条件を工夫することがあります。低管電圧撮影やデュアルエナジー撮影などで、ヨードの見え方を高められるとされています(Yu 2023)。
症例 87歳女性 SMA閉塞による早期のAMI

引用:Garzelli L, et al. Br J Radiol. 2023;96(1151):20230232(Figure 3)、CC BY-NC 4.0(図は加工していません)
上腸間膜動脈の遠位部が血栓で閉塞し、回腸の壁の造影が低下している早期の例です。腸管は拡張しておらず、隣の正常な小腸と比べて初めて造影の差に気づきます。血管の閉塞部位と、腸管の「造影の差」を対にして探す読み方が分かります(Garzelli 2023)。
壊死を疑うサイン
治療方針に最も関わるのは、腸管が「全層の壊死(transmural necrosis)」に至っているかどうかです。11研究・1,037例のメタ解析では、次の所見が壊死の予測因子でした(Zeng 2023)。DOR(診断オッズ比)が大きいほど、壊死との関連が強いことを示します。
| CT所見 | DOR(95%信頼区間) |
|---|---|
| 腸管壁の菲薄化 | 13.10(3.71〜46.25)。特異度98% |
| 壁の造影の低下・消失 | 5.77(2.95〜11.30) |
| 腸管壁内ガス(pneumatosis) | 5.78(2.24〜14.95) |
| 門脈・腸間膜静脈ガス | 5.36(2.14〜13.40)。特異度95% |
| 腸管の拡張 | 3.23(2.03〜5.15) |
| 動脈閉塞型であること | 2.66(1.53〜4.63) |
また、原因によって壊死の予測因子が違う点も大切です。壁の造影低下と腸管拡張は、静脈閉塞型では壊死の予測因子でしたが、動脈由来のAMIでは関連しませんでした(Zeng 2023)。
壊死した腸管の所見は、原因ごとにも違います。壊死が病理で確認された77例の検討では、壁内ガスは非閉塞性AMIで59%、動脈閉塞で29%、絞扼性小腸閉塞で7%でした。門脈ガスは48%、10%、0%で、壁の自然高吸収は絞扼性小腸閉塞で41%と多く見られました(Calame 2020)。このため、ガスの有無や壁の濃度から、原因を推測する手がかりになります。
一方で、2025年のメタ解析では、造影の低下・消失が非血管性の所見の中で最も予後予測に有用でしたが(感度57.9%、特異度90.1%)、非血管性の所見は単独では診断や壊死への進行を確実に判断できず、複数の所見を組み合わせる必要があるとされました(Reintam Blaser 2025)。
紛らわしい所見とピットフォール
- 壁内ガス(pneumatosis)や門脈ガスは、AMIに特異的な所見ではなく、疑いが強い状況で意味が高まる所見です(Yu 2023、Fitzpatrick 2020)。ガスが偽性のこともあります(pseudopneumatosis)。
- 壁の肥厚、腸間膜の濃度上昇、腹水は頻度の高い所見ですが、重症度との相関は弱く、非特異的です(Yu 2023)。
- 炎症性腸疾患、感染性腸炎、血管性浮腫、放射線腸炎は、AMIに似た画像になります(Fitzpatrick 2020)。
- 小腸閉塞の約10%はAMIを合併します。閉塞の画像の中で虚血を見逃さないことが重要です(Yu 2023)。
疾患別の案内:個別記事の早見表
ここまでの内容を、当サイトの個別記事に対応させます。気になる型や所見から、詳しい記事へ進んでください。
| テーマ | 要点 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| SMA塞栓症・血栓症 | 動脈閉塞型の代表。原因・症状・CT所見と生存率 | 上腸間膜動脈閉塞症(SMA塞栓症・SMA血栓症)とは? |
| SMA解離 | 孤立性のSMA解離。造影CTでの見え方 | 上腸間膜動脈解離(SMA解離)とは? |
| SMV血栓症 | 静脈型。壁肥厚と静脈の血栓 | SMV(上腸間膜静脈)とは?血栓症の原因と造影CT所見 |
| NOMI | 低灌流による非閉塞性。smaller SMV sign | NOMI(ノミ)とは?非閉塞性腸管虚血の原因・診断基準とCT所見 |
| 虚血性腸炎 | 左側結腸の虚血と他の大腸炎との鑑別 | 左側結腸の腸炎の鑑別診断|虚血性腸炎のCT所見 |
| 虚血性腸炎と出血 | 下部消化管出血の原因としての虚血性腸炎 | 下部消化管出血の原因と造影CT |
| 絞扼性腸閉塞 | closed loopとbeak sign。腸間膜のねじれ | 絞扼性腸閉塞(絞扼性イレウス)とは? |
| 腸閉塞の全体像 | 小腸・大腸の閉塞をCTで整理 | 腸閉塞・イレウスのCT画像診断のまとめ |
| 門脈内ガス | 腸管虚血のサインと胆管内ガスとの違い | 門脈内ガス(門脈気腫)の原因とCT画像所見 |
| 腸管気腫症 | 壁内ガスが良性か壊死かの見分け方 | 腸管気腫症(腸管壁内気腫)とは? |
| 腸管壁の3層構造 | 壁の層構造から炎症・虚血・腫瘍を見分ける | 腸管壁の3層構造(target sign)とは? |
| 腹部CTの基本 | 見る順番と見落としチェックリスト | 腹部CTの読み方|見る順番と見落としチェックリスト |
よくある疑問(Q&A)
Q. 単純CTだけでAMIを除外できますか?
A. 単純CTでは血管の閉塞や壁の造影低下を評価できません。造影のCT angiographyの方が感度・特異度とも高いと報告されています(Reintam Blaser 2025)。疑いが強い場合は、動脈相と静脈相の2相で撮るプロトコルが広く使われています(Yu 2023)。
Q. 壁の造影が低下していれば、壊死と言えますか?
A. 造影低下は早期から出る特異的な所見ですが、早期の虚血でも出ます。壁の菲薄化や静脈ガスなど他の所見と組み合わせ、原因の型も合わせて判断します(Zeng 2023、Reintam Blaser 2025)。
Q. 虚血性腸炎とAMIは同じ病気ですか?
A. 虚血性腸炎は、動脈性AMIの中の局所の大腸の虚血と位置づけられています。CTでは大腸壁の肥厚と脂肪織の濃度上昇が主で、SMAの病変とは関係しないことが多いとされます(Garzelli 2023)。
Q. 腹痛が強いとき、どうすればいいですか?
A. 強い腹痛が続く、冷汗や意識の変化を伴う場合は、すぐに医療機関を受診してください。この記事は画像の見方を整理したもので、個々の診断や治療は担当医の判断によります。
あわせて読みたい:腸管CTの追い方、食道表在癌の画像、注腸造影の見方
参考文献
- Bala M, Catena F, Kashuk J, et al. Acute mesenteric ischemia: updated guidelines of the World Society of Emergency Surgery. World J Emerg Surg. 2022;17(1):54. PubMed
- Menke J. Diagnostic accuracy of multidetector CT in acute mesenteric ischemia: systematic review and meta-analysis. Radiology. 2010;256(1):93-101. PubMed
- Reintam Blaser A, Koitmäe M, Laisaar KT, et al. Radiological diagnosis of acute mesenteric ischemia in adult patients: a systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2025;15(1):9875. PubMed
- Zeng Y, Yang F, Hu X, et al. Radiological predictive factors of transmural intestinal necrosis in acute mesenteric ischemia: systematic review and meta-analysis. Eur Radiol. 2023;33(4):2792-2799. PubMed
- Garzelli L, Ben Abdallah I, Nuzzo A, et al. Insights into acute mesenteric ischaemia: an up-to-date, evidence-based review from a mesenteric stroke centre unit. Br J Radiol. 2023;96(1151):20230232. PubMed
- Calame P, Malakhia A, Turco C, et al. Transmural Bowel Necrosis From Acute Mesenteric Ischemia and Strangulated Small-Bowel Obstruction: Distinctive CT Features. AJR Am J Roentgenol. 2020;214(1):90-95. PubMed
- Yu H, Kirkpatrick IDC. An Update on Acute Mesenteric Ischemia. Can Assoc Radiol J. 2023;74(1):160-171. PubMed
- Fitzpatrick LA, Rivers-Bowerman MD, Thipphavong S, et al. Pearls, Pitfalls, and Conditions that Mimic Mesenteric Ischemia at CT. Radiographics. 2020;40(2):545-561. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
