
先に結論:注腸造影は「大腸の形」を写す検査。今はCTコロノグラフィと内視鏡が中心だが、所見の理解は役立つ
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな検査か | 肛門からバリウムと空気を入れ、二重造影で粘膜面の凹凸と大腸の形・狭窄を撮影する |
| 代表的な所見 | 大腸癌のapple core(りんごの芯)、隆起性病変、憩室、炎症性腸疾患の潰瘍・粘膜の変化 |
| CTCとの比較 | 症状のある55歳以上の3,838人の無作為化試験で、大腸癌または10 mm以上のポリープの検出率はCTCで7.3%、注腸で5.6%(SIGGAR、Halligan 2013) |
| 現在の位置づけ | 二重造影注腸は、手間と技術が必要なため検診の検査としてほとんど使われなくなった(Levine 2014) |
| 術後の確認 | 大腸の吻合部の漏れを水溶性造影剤で確認する方法は、今も使われる。感度は0.50で、CTより低い(Chierici 2023) |
注腸造影とは:検査の基本
注腸造影は、肛門から細い管を入れ、バリウム(造影剤)と空気を注入して大腸をX線透視で撮影する検査です。大腸の内側を、バリウムの白い影と空気の黒い影の対比で見ます。バリウムだけで満たす単純(充盈)法と、バリウムを粘膜に薄く付着させて空気で膨らませる二重造影法があり、細かな粘膜の変化は二重造影で見ます(Levine 2014)。
検査の前には、大腸をきれいにする前処置が必要です。体位を変えながら、大腸のすべての部位を、バリウムの付着と空気の伸展がよい状態で撮影します。ここが技術的に難しく、時間もかかることから、現在は検診ではほとんど使われなくなりました(Levine 2014)。
代表的な所見
注腸の所見は、「バリウムが大腸の内側に作る輪郭」の変化として見えます。基本は、腸管の内腔が欠ける(充盈欠損)のか、外に張り出す(憩室・潰瘍)のか、伸び縮みしない(狭窄・硬化)のか、の3つに分けて考えます。
| 疾患 | 注腸での見え方 | 覚えるポイント |
|---|---|---|
| 大腸癌 | 内腔を輪状に取り巻く狭窄。辺縁が段差状(shouldering)で、粘膜が不整。いわゆるapple core(りんごの芯) | 狭窄が短く、急に始まって急に終わる |
| ポリープ | バリウムの中に丸い欠け(充盈欠損)。二重造影ではバリウムの輪(リング)として見えることがある | 有茎性では茎が見えることがある |
| 憩室 | 腸管の外側に袋状に張り出すバリウムの影 | 多発しやすい |
| 潰瘍性大腸炎 | 粘膜が細かい顆粒状になる。進行すると、ハウストラが消えて管状(lead pipe)になる | 直腸から連続して広がる |
| クローン病 | 縦走する潰瘍、敷石状(cobblestone)の粘膜。病変が飛び飛び(skip lesion)に見える | 回腸末端を含むことが多い |
上の所見の細かい特徴は、教科書的なものです。個々の所見の診断精度は、検査の技術や読影者によって変わります。
症例 65歳男性 S状結腸の腺癌(2病変)

引用:Chung SY, et al. Korean J Radiol. 2012;13(3):290-299(Figure 3)、CC BY-NC 3.0(図は加工していません)
二重造影の注腸像で、S状結腸に2つの隆起性病変が指摘され、後の内視鏡で2つとも腺癌と確認された例です。注腸で見つけた病変は、内視鏡で位置と性状を確認するという流れが基本です。大腸癌の術後の合併症は大腸癌術後のCT画像診断にまとめています。
読み方のコツ:注腸像を見る順番
注腸造影の画像は、透視で撮った多数の画像(体位ごとの二重造影像、バリウムが溜まった像など)で構成されます。次の順番で見ると、見落としが減ります。
| 順番 | 見ること | 判断のしかた |
|---|---|---|
| 1 全体の形 | 大腸の走行、屈曲、長さ、どの部位を見ているか | 直腸・S状結腸・下行結腸・脾彎曲・横行結腸・肝彎曲・上行結腸・盲腸の順に追う。回盲弁で小腸との境目を確かめる |
| 2 壁の伸展 | 空気で膨らんだときの内腔の広さ | 体位を変えても同じ場所で伸びない所は、壁が硬い(浸潤や炎症)可能性がある |
| 3 輪郭 | バリウムが作る壁の線 | ぎざぎざ・段差・引きつれがないか。憩室は外へ張り出す袋、潰瘍は輪郭の外に出る影 |
| 4 粘膜面 | バリウムが薄く付着した面の細かな模様 | 顆粒状・網目の乱れ・小さな隆起がないか。炎症性腸疾患では粘膜の模様が乱れる |
| 5 内腔 | 欠け(充盈欠損)、狭窄、拡張 | 欠けが「病変」か「便・気泡」かを区別する |
偽病変に注意:便・気泡・バリウムのかたまり
注腸造影では、実際の病変でないものが病変に見えることがあります。便の残りは、体位を変えると動くことで病変と区別します。気泡は、丸い輪のように見えますが、やはり動きます。バリウムがたまった所は、潰瘍や憩室に似て見えることがあります。画像が1枚だけで判断が難しいときは、別の体位や別の撮影の像と比べます。これは、CTコロノグラフィでも同じく、便と病変の区別が重要になる点です。
CTコロノグラフィ・内視鏡との比較
症状のある55歳以上の患者さん3,838人(英国の21病院)を、注腸造影とCTコロノグラフィ(CTC)に無作為に割り付けた試験(SIGGAR)では、大腸癌または10 mm以上のポリープの検出率は、CTCで7.3%(93/1,277)、注腸造影で5.6%(141/2,527)と、CTCが有意に高い結果でした(相対リスク1.31)。見落とした大腸癌は、CTCで45例中3例、注腸で85例中12例でした。一方、追加の大腸検査が必要になった割合は、CTCの方が高く(23.5%と18.3%)、これは主にポリープの検出が多いためでした(Halligan 2013)。
11研究(5,995人)の二重造影注腸と30研究(6,573人)のCTCを比べたメタ解析では、10 mm以上のポリープの患者単位の感度は、注腸が0.702、CTCが0.823でした。特異度は0.850と0.954でした。6〜9 mmのポリープでも、注腸は感度が有意に低くなりました(Sosna 2008)。
CTCと内視鏡を比べたメタ解析(30研究)では、CTCの患者単位の感度は、10 mmを超えるポリープで0.82、6〜10 mmで0.63、5 mm以下で0.56でした。5 mmを超えるポリープでは、内視鏡の方が有意に正確でした(Rosman 2007)。
| 検査 | できること | 弱点 |
|---|---|---|
| 注腸造影 | 大腸全体の形と狭窄、粘膜の凹凸を一度に見る | 小さなポリープの感度が低い。前処置と技術が必要 |
| CTコロノグラフィ | 大腸全体と腸管外(他臓器・リンパ節)を同時に評価 | 小さなポリープは内視鏡より劣る。組織は取れない |
| 大腸内視鏡 | 直接観察して、その場で組織検査・切除ができる | 前処置が必要。まれに穿孔などの合併症がある(Khan 2011) |
CTCについての詳細はCTコロノグラフィ(大腸CT)とは?を参照してください。
今も注腸の知識が役立つ場面
過去の画像・報告書を読むとき
古いカルテや健診に残る「注腸」の所見を読むとき、apple coreは狭窄を伴う癌、ハウストラの消失は慢性の炎症、といった意味を知っておくと、現在のCTや内視鏡と対応させて理解できます。炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎のCT画像診断、クローン病のCT・MRI画像所見、憩室の合併症は大腸憩室炎のCT画像所見を参照してください。
子どもの腸の形を調べるとき
新生児や乳児では、腸の通過障害や形の異常を調べるために、バリウムや水溶性造影剤を使った注腸造影が行われることがあります。たとえば、ヒルシュスプルング病では、狭くなった腸と拡張した腸の境目(移行帯)が見えることがあります。成人の大腸癌の検査とは目的が違い、腸の通り道の形をみるための検査です。子どもに行う検査は、小児を診る施設の判断で選ばれます。
術後の吻合部の漏れの確認
大腸・直腸の手術後は、水溶性の造影剤を肛門から入れて吻合部の漏れ(縫合不全)を確認することがあります。19研究のメタ解析では、水溶性造影剤の注腸検査の感度は0.50、特異度は0.99でした。造影剤注腸のCTは感度0.89と有意に高く、内視鏡は感度0.69でした(Chierici 2023)。漏れがないと言い切れない点が、この検査の弱点です。
検査の合併症
大腸の画像検査には、腸の穿孔というまれな合併症があります。文献のレビューでは、二重造影注腸の穿孔率は0.02〜0.24%、大腸内視鏡は0.06%(640,433件中585例)、CTCは0.036%(24,365例中9例)でした(Khan 2011)。どの検査でも頻度は低いものの、腹痛が強くなる場合は早く医療機関に連絡する必要があります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 注腸造影はもう行われないのですか?
A. 二重造影注腸は、手間と技術が必要なため、検診ではほとんど使われなくなり、CTCが主な画像検査になりました(Levine 2014)。一方で、術後の吻合部の確認など、水溶性造影剤を使う注腸検査は今も行われます(Chierici 2023)。
Q. apple core signはいつも癌ですか?
A. 大腸癌に典型的な所見ですが、同じような狭窄は炎症など他の病気でも起こりえます。形だけで決めず、内視鏡での観察と組織検査で確かめます。
Q. 注腸造影と大腸内視鏡は、どちらが見つけやすいですか?
A. 注腸は小さなポリープの感度が低く、CTCも5 mm以下のポリープでは内視鏡に劣ります(Sosna 2008、Rosman 2007)。内視鏡は観察と同時に組織検査や切除ができる点も大きな違いです。
Q. 検診で便潜血が陽性でした。どの検査を受ければいいですか?
A. 便潜血が陽性のときは、精密検査として大腸内視鏡を受けるのが一般的です。受診先や検査の選び方は、医療機関で相談してください。
参考文献
- Levine MS, Yee J. History, evolution, and current status of radiologic imaging tests for colorectal cancer screening. Radiology. 2014;273(2 Suppl):S160-80. PubMed
- Halligan S, Wooldrage K, Dadswell E, et al. Computed tomographic colonography versus barium enema for diagnosis of colorectal cancer or large polyps in symptomatic patients (SIGGAR): a multicentre randomised trial. Lancet. 2013;381(9873):1185-93. PubMed
- Sosna J, Sella T, Sy O, et al. Critical analysis of the performance of double-contrast barium enema for detecting colorectal polyps > or = 6 mm in the era of CT colonography. AJR Am J Roentgenol. 2008;190(2):374-85. PubMed
- Rosman AS, Korsten MA. Meta-analysis comparing CT colonography, air contrast barium enema, and colonoscopy. Am J Med. 2007;120(3):203-210.e4. PubMed
- Khan JS, Moran BJ. Iatrogenic perforation at colonic imaging. Colorectal Dis. 2011;13(5):481-93. PubMed
- Chierici A, Granieri S, Frontali A. Diagnostic accuracy of water-soluble contrast enema, contrast-enema computed tomography and endoscopy in detecting anastomotic leakage after (Colo) proctectomy: A meta-analysis. Colorectal Dis. 2023;25(7):1371-1380. PubMed
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