
先に結論:拡張した腸を追って「移行部」を探し、原因と合併症(絞扼・虚血)まで確認する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 基本の考え方 | 腸管を口側または肛門側へ追跡し、拡張から虚脱へ口径が急に変わる移行部を探す。原因は移行部にある |
| 冠状断の価値 | 移行部の位置診断の正確度は、軸位断のみ86%・84%、冠状断など(MPR)を加えると93%・90%(Hodel 2009、読影者2人) |
| 小腸の便様内容 | 拡張した小腸内の粒状の内容物(small-bowel feces sign)は、閉塞が中等度以上の例に多く、移行部へ追える(Lazarus 2004) |
| 原因の探し方 | 壁の病変、壁外の索状物・癒着、ヘルニア、内腔の異物を順に確認。beak signやfat notch signは癒着索状物の例で多い(Delabrousse 2009) |
| 見落としやすい点 | 絞扼・虚血は、実際の診断感度が高くない。造影の低下に注目すると改善する(Sheedy 2006) |
なぜ腸管CTは難しいのか
腸管は食道から直腸まで1本の管ですが、CTの軸位断では「輪切り」の断面がばらばらに並んで見えます。しかも空腸・回腸・横行結腸・S状結腸は動きが大きく、人によって位置が変わります。そのため、1枚の画像だけで腸の名前や位置を決めるのは難しく、スライスを上下にスクロールして断面をつないでいく必要があります。
腸管の異常を見つけたら、「どこの腸か」「どこまで続くか」「どこで終わるか」を確かめます。腸管CTを追う目的は、病変の位置と原因を決め、緊急性(絞扼や虚血)の有無を判断することです。小腸閉塞の画像診断では、重症度・部位・原因を決め、絞扼の有無を評価することが重要とされています(Silva 2009)。
追う前に知っておく解剖:固定されている腸と動く腸
| 区分 | 腸管 | 追うときの目印 |
|---|---|---|
| 固定されている(後腹膜) | 十二指腸(大部分)、上行結腸、下行結腸、直腸 | 位置がほぼ決まっているので、出発点に使いやすい |
| 動く(腸間膜がある) | 空腸、回腸、横行結腸、S状結腸 | 腸間膜の血管(上腸間膜動静脈の枝)を手がかりに追う |
| 区切りの構造 | 十二指腸空腸曲(Treitz靭帯付近)、回盲弁 | 小腸のはじまりと終わり。ここから追うと、空腸・回腸の区別がつきやすい |
小腸は、口側の空腸ほど左上腹部にあり、壁のヒダ(輪状ヒダ)が目立って羽毛状に見えます。回腸は右下腹部寄りで、壁が平滑に見えます。大腸は小腸より内腔が太く、腸管の外周に沿って走り、内容物に便(気泡の混じった便)が見えます。
腸管を追う手順(6ステップ)
| 手順 | 見ること | コツ |
|---|---|---|
| 1 全体像 | 拡張した腸の有無、ガス・液体、虚脱した腸と大腸の状態 | 拡張は「どの範囲の腸か」を最初につかむ。大腸が虚脱していれば、高度の小腸閉塞を考える |
| 2 拡張腸管を追う | 最も拡張している腸から、スライスをスクロールして両方向へ追跡 | 1か所だけでなく、口側と肛門側の両方向を追う |
| 3 移行部を探す | 拡張から虚脱へ口径が急に変わる所 | 冠状断・矢状断を使うと、位置の確信度が上がる(Hodel 2009) |
| 4 原因を探す | 移行部の壁内の病変(腫瘍・炎症)、壁外(索状物・癒着・ヘルニア)、内腔(異物・胆石・便塊) | 癒着索状物ではbeak signとfat notch signが多い(Delabrousse 2009) |
| 5 合併症を探す | closed loop、腸間膜のねじれ、壁の造影低下、壁内ガス、腹水 | 絞扼・虚血の見落としが最も危険 |
| 6 確認する | 冠状断で全体の走行を見直す | 追った腸管が1本につながったか確かめる |
冠状断を足す価値
小腸閉塞の移行部を探した研究では、軸位断のみの場合の位置診断の正確度は、読影者2人でそれぞれ86%と84%でした。冠状断・矢状断・斜断を加える(MPR)と、93%と90%に上がりました(統計的に有意だったのは前者のみ)。また、診断の確信度は2人とも有意に上がりました(Hodel 2009)。腸閉塞の診断自体は軸位断でも十分に可能で、MPRは確信度を上げる補助として使うことが勧められています(Keoplung 2013)。
腸管の走行がイメージしにくいときは、冠状断を出して、腸管の流れと腸間膜血管の向きを全体で見ると迷いが減ります。腸間膜の血管が1点に向かって集まっていないか(closed loopの手がかり)も、冠状断で見つけやすくなります。
症例 小腸閉塞 small-bowel feces sign

引用:Chang WC, et al. PLoS One. 2014;9(2):e89804(Figure 2)、CC BY 4.0(図は加工していません)
拡張した小腸の内容物に、便のような粒状の構造が見えます。この所見が出ている腸管の肛門側を追うと、閉塞部位にたどり着けます。冠状断では、この内容物の入った腸が全体のどの位置にあるかも分かりやすくなります。
small-bowel feces signを手がかりに移行部を探す
small-bowel feces sign(小腸便様内容)は、拡張した小腸の中に便のような粒状の物質が見える所見です。小腸閉塞34例の前向き検討では、55.9%(19例)にこの所見がありました。程度別では、軽度で6例中1例、中等度で11例中8例、高度で17例中10例でした。この所見がある例では、粒状の内容物を移行部まで追うことができ、移行部で最も目立ちました(Lazarus 2004)。
ただし、この所見が閉塞の原因を示すわけではありません。癒着性小腸閉塞では、癒着索状物の例よりも、癒着が塊になった例(matted adhesions)で多く見られたと報告されています(Delabrousse 2009)。また、虚血との関連も指摘されており、小腸虚血の例でこの所見との有意な関連が見られました(Sheedy 2006)。見つけたら「ここから先を追う」手がかりとして使い、原因や虚血は別に評価します。
原因のあたりをつける所見
癒着性の小腸閉塞では、癒着索状物か、癒着が塊になったかの違いが、CTである程度分かります。67例の検討では、closed loopのパターンとwhirl signは癒着索状物の例にだけ見られました。beak signとfat notch signも索状物の例で有意に多く、small-bowel feces signは癒着が塊になった例に多く見られました。腸管の虚血や壊死も、索状物の例で多かったと報告されています(Delabrousse 2009)。
| 所見 | 意味するもの(Delabrousse 2009、Balthazar 1992) |
|---|---|
| beak sign | 移行部で腸がくちばし状に細くなる。癒着索状物の例で多い |
| fat notch sign | 移行部の脂肪の切れ込み。索状物の例で多い |
| whirl sign | 腸間膜の血管がねじれて渦を巻く。索状物・closed loopの例 |
| U字・C字に拡張した腸 | closed loopの形。腸間膜の血管が1点に向かって放射状に集まる |
| 2つの隣り合った虚脱腸管 | 閉塞部位で、近接する2つの虚脱した腸(closed loopの所見) |
症例 小腸閉塞 whirl sign

引用:Chang WC, et al. PLoS One. 2014;9(2):e89804(Figure 4)、CC BY 4.0(図は加工していません)
軸位断で、腸間膜の血管が渦巻き状にねじれています。このような所見が見られるときは、腸が絞扼されていないか、壁の造影や腸間膜の濃度を合わせて確認します。
絞扼・虚血を見落とさない
closed loop閉塞19例(うち絞扼性16例)の古典的な報告では、closed loopの徴候として、U字に拡張し液体で満たされた腸、whirl sign、beak sign、三角形の腸、閉塞部位の2つの隣り合った虚脱腸管などが挙げられました。絞扼の徴候は、腸管壁の肥厚・高吸収・target signと、腸間膜の異常でした。虚血や梗塞の所見がなくても、絞扼は否定できないとも述べられています(Balthazar 1992)。
小腸虚血のCT診断を、手術・病理で確認した60例で調べた研究では、虚血は27例(44%)でした。検査当時の読影の感度は14.8%と低く、2人の読影者による後ろ向き読影でも29.6%と40.7%、合議で51.9%でした(特異度は85〜94%)。区域性の造影低下が最も特異的な徴候で、これに注意することで診断が改善すると結論されています(Sheedy 2006)。
つまり、拡張した腸を追って移行部を見つけたら、その口側の腸管壁に「造影が悪い区域」がないかを、隣の腸と比べて確認します。虚血のCTは、腸管壁・腸間膜・血管・他の臓器を順に見る内から外への読み方が提案されています(Fitzpatrick 2020)。腹部CT全体を見る順番は腹部CTの読み方の見落としチェックリストも参考になります。
追う前後に気をつけること
- 正常な空腸は、壁が厚く見えて「壁肥厚」と間違えやすいことがあります(正常な空腸が壁肥厚に見える理由を参照)。
- 小腸閉塞は、閉塞の程度(低度・高度)や原因によって、CT以外の検査を使い分けます。高度の閉塞が疑われる場合は、超音波やCTで絞扼を除外します(Silva 2009)。
- 閉塞点の詳細な分類は小腸閉塞の分類とCT所見、絞扼の所見は絞扼性腸閉塞のCTにまとめています。
- 断面の見え方が分かりにくいときは、腹部CTの冠状断・矢状断の解剖で腸間膜血管や臓器の位置関係を確認すると、迷いにくくなります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 腸管を追うとき、どこから始めればいいですか?
A. 拡張した腸が見つかっているときは、最も拡張した部分から両方向へ追うのが実践的です。拡張がはっきりしないときは、十二指腸空腸曲や回盲弁のような区切りの構造から出発すると、空腸と回腸の区別がつきます。
Q. 冠状断はいつも見る必要がありますか?
A. 軸位断でも腸閉塞の診断は十分にできますが、冠状断などを加えると移行部の位置の確信度が上がります(Hodel 2009、Keoplung 2013)。走行が分かりにくいときの補助として使います。
Q. feces signがあれば、そこが閉塞点ですか?
A. この所見は、閉塞部位の口側に見られ、粒状の内容物を移行部まで追える手がかりになります(Lazarus 2004)。所見そのものが原因を示すわけではなく、移行部の原因と虚血は別に評価します。
Q. CTで絞扼がなければ、手術は不要ですか?
A. 絞扼の所見がなくても、絞扼を除外できるとは限りません(Balthazar 1992)。実際の読影でも虚血の感度は高くないと報告されており(Sheedy 2006)、臨床の経過と合わせて判断します。強い腹痛が続く場合は、医療機関に相談してください。
参考文献
- Hodel J, Zins M, Desmottes L, et al. Location of the transition zone in CT of small-bowel obstruction: added value of multiplanar reformations. Abdom Imaging. 2009;34(1):35-41. PubMed
- Keoplung S, Teerasamit W, Suvannarerg V. Diagnosis of bowel obstruction: added value of multiplanar reformations from multidetector CT in comparison with axial planes alone. J Med Assoc Thai. 2013;96(12):1569-77. PubMed
- Lazarus DE, Slywotsky C, Bennett GL, et al. Frequency and relevance of the “small-bowel feces” sign on CT in patients with small-bowel obstruction. AJR Am J Roentgenol. 2004;183(5):1361-6. PubMed
- Sheedy SP, Earnest F 4th, Fletcher JG, et al. CT of small-bowel ischemia associated with obstruction in emergency department patients: diagnostic performance evaluation. Radiology. 2006;241(3):729-36. PubMed
- Delabrousse E, Lubrano J, Jehl J, et al. Small-bowel obstruction from adhesive bands and matted adhesions: CT differentiation. AJR Am J Roentgenol. 2009;192(3):693-7. PubMed
- Silva AC, Pimenta M, Guimarães LS. Small bowel obstruction: what to look for. Radiographics. 2009;29(2):423-39. PubMed
- Balthazar EJ, Birnbaum BA, Megibow AJ, et al. Closed-loop and strangulating intestinal obstruction: CT signs. Radiology. 1992;185(3):769-75. PubMed
- Fitzpatrick LA, Rivers-Bowerman MD, Thipphavong S, et al. Pearls, Pitfalls, and Conditions that Mimic Mesenteric Ischemia at CT. Radiographics. 2020;40(2):545-561. PubMed
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