食道表在癌の画像 深達度T1a・T1bと各検査の役割

健診のバリウム検査や内視鏡で「食道表在癌の疑い」と言われた人の画像を見ることがあります。表在癌とは何で、X線・内視鏡・CTはそれぞれ何を見ているのでしょうか?
表在癌は、癌が粘膜か粘膜下層までにとどまるものです。見つける検査と、深さを調べる検査、リンパ節を調べる検査が違います。深達度の分け方と、各検査の得意・不得意を整理すれば、レポートの意味が分かるようになります。

先に結論:表在癌は「深さ」で性格が変わる。検査ごとに役割が違い、CTは深さよりリンパ節の確認に使う

項目 ポイント
表在癌とは 癌が粘膜(T1a)または粘膜下層(T1b)にとどまるもの。肉眼型は0型(0-I・0-II・0-III)に分ける(Mine 2024)
深さと転移 中国の189例の手術例で、リンパ節転移は粘膜癌で4.3%、粘膜下層癌で33.1%。深いほど増える(Li 2013)
バリウム(X線) 二重造影で、陥凹の表面の顆粒の大きさ・壁の硬さ・輪郭の鮮明さが深達度と関連(Ueyama 1998)
内視鏡 ヨード染色で不染帯、NBI拡大の血管パターン(JES分類)で深さを推定。Type B血管の深達度の正診率は90.5%(Oyama 2017)
超音波内視鏡(EUS)・CT EUSはT1のT1a/T1b鑑別が得意(感度84%・83%)(Luo 2016)。CTのリンパ節転移の感度は41.0%と限られる(Zeng 2025)

食道表在癌とは

食道癌は、食道の壁の内側(粘膜)から外側へ広がります。日本食道学会の取扱い規約(第12版 Part I、2024年)では、腫瘍が粘膜または粘膜下層にとどまるものを表在型とし、頭に「0」をつけて0-I・0-II・0-IIIに分けます。固有筋層以深に及ぶ進行型(1〜4型)と区別されます(Mine 2024)。この記事の内容は、日本に多い扁平上皮癌が中心です。

深達度は、癌が壁のどの層まで入っているかで細かく分けられます。レポートで見る「T1a-EP」「T1b-SM2」といった記号は、次の図の位置を表しています。

図 食道表在癌の深達度の分け方(T1a-EP〜T1b-SM3)

食道表在癌の深達度分類 T1a-EP T1a-LPM T1a-MM T1b-SM1 SM2 SM3 のシェーマ
引用:Mine S, et al. Esophagus. 2024;21(3):179-215(Figure 8)、CC BY 4.0(図は加工していません)

粘膜内にとどまるのがT1a(EP・LPM・MM)、粘膜下層に入るのがT1b(SM1〜SM3)です。癌が深く入るほど、リンパ節への転移が増えることが知られています(Oyama 2017)。

深さとリンパ節転移:なぜ深達度が大事か

中国で、2006〜2011年に根治的なリンパ節郭清を受けた表在性の食道扁平上皮癌189例の検討があります。リンパ節転移は49例(25.9%)にあり、粘膜癌で4.3%、粘膜下層癌で33.1%でした。深さ別では、M1とM2で0%、M3で11.8%、SM1で24.0%、SM2で20.5%、SM3で43.8%でした。粘膜下層癌では、SM3と脈管侵襲(lymphovascular invasion)が転移の独立した危険因子でした(Li 2013)。

深達度 リンパ節転移(Li 2013、189例)
T1a-EP(M1) 0%
T1a-LPM(M2) 0%
T1a-MM(M3) 11.8%
T1b-SM1 24.0%
T1b-SM2 20.5%
T1b-SM3 43.8%

このため、粘膜固有層までの癌と、粘膜筋板以深の癌では、画像検査に求められることが変わります。粘膜下層に入っていれば、リンパ節の評価が重要になります。同じ研究では、傍気管リンパ節の転移が最も多く、いわゆる「飛び石転移(skip metastasis)」が転移例の約4割(20/49例)にありました(Li 2013)。

肉眼型(0型)と見え方

表在型は、隆起・平坦・陥凹の程度で細かく分類されます。内視鏡や切除標本では、次のように見えます(Mine 2024の図の解説を要約)。

型 形 見え方の特徴
0-Ip・0-Is 隆起型(有茎・無茎) 境界明瞭な隆起。無茎では正常上皮に覆われ、境界がはっきりしないこともある
0-IIa わずかな隆起 白色調で、粘膜からわずかに盛り上がる。高さが1 mm未満の病変もある
0-IIb 平坦型 通常観察では小さな凹凸だけで、ほとんど分からない。ヨード染色で不染帯になる
0-IIc わずかな陥凹型 境界が不明瞭な浅い陥凹で、表面は細かい顆粒状。発赤を伴う
0-III 陥凹型(潰瘍型) 深い陥凹と辺縁の隆起。粘膜筋板を超える浸潤を示唆する

平坦型(0-IIb)は、通常の内視鏡観察では指摘できないことがあり、ヨード染色やNBIで初めて見つかります(Mine 2024)。

バリウム検査(二重造影)で見ること

二重造影は、バリウムと空気で食道の壁を伸展させ、粘膜面の細かな変化を写し出す検査です。早期食道癌46病変を、手術または内視鏡で切除した標本の深さと対比した研究があります。陥凹型(30病変)では、表面の顆粒の大きさが深達度と強く相関し(rs=0.8147)、壁の硬さ(rs=0.7540)と輪郭の鮮明さ(rs=0.6731)も相関しました。隆起型(16病変)でも壁の硬さが相関しました(rs=0.6702)(Ueyama 1998)。

  • 陥凹の表面が粗大な顆粒状になっているほど、深く入っていると考える
  • 壁の伸展が悪い(硬い)所があるときは、深い浸潤を疑う
  • 輪郭の鮮明さも、深達度と関連する項目として評価する

バリウムの二重造影の見方の基本は、胃のバリウム検査の写真の見方(二重造影・充盈・圧迫)にまとめています。

内視鏡:ヨード染色とNBI拡大での深さの推定

内視鏡では、ヨード染色で境界のはっきりした不染帯を探します。日本の629人のアルコール多飲男性を内視鏡とヨード染色で検診した研究では、5 mm以上の明瞭なヨード不染帯が162人(25.8%)に見られ、そのうち21人(3.3%)が表在型の扁平上皮癌でした。強い酒の飲用と1日30本以上の喫煙が、不染帯や癌のリスクを高めていました(Yokoyama 1995)。

深さの推定には、NBI拡大観察による微細血管の形(日本食道学会 JES分類)を使います。Type A血管は非癌、Type B血管は癌で、B1はT1a-EP・LPM、B2はT1a-MM・T1b-SM1、B3はT1b-SM2の目安です。表在性の扁平上皮癌211人の前向き研究で、Type B血管による深達度の正診率は90.5%でした(Oyama 2017)。

図 表在型食道癌の内視鏡像(0-IIc型と0-III型)

表在型食道癌の内視鏡像 0-IIc型 通常観察 NBI ヨード染色 深達度T1a-LPMとT1b-SM1、0-III型
引用:Mine S, et al. Esophagus. 2024;21(3):179-215(Figure 7)、CC BY 4.0(図は加工していません)

同じ「陥凹型」でも、粘膜固有層までの癌(g)と、粘膜下層に入った癌(h、i)では、発赤の広がり・辺縁の隆起・陥凹の深さが違います。放射線科医としては、内視鏡の所見が「どの深さを想定しているか」を知っておくと、X線・CTの所見を読むときに役立ちます。

超音波内視鏡(EUS)でできること

食道扁平上皮癌の術前EUSを調べたメタ解析(44研究・2,880例)では、T1の診断の感度は77%、特異度は95%でした。T1のなかのT1aとT1bの鑑別では、感度が84%と83%、特異度が91%と89%でした。T4の診断は感度84%、特異度96%で、全体のT分類の正確度は79%、N分類は71%でした(Luo 2016)。つまり、EUSはT1の内部の深さを見るのに向いています。

CTでできること・できないこと

表在癌では、CTは壁の深さを見分ける検査ではありません。粘膜下層までの早期食道扁平上皮癌625例の検討(3施設)では、リンパ節転移は12.5%にあり、CTによるリンパ節転移の感度は41.0%、特異度は83.2%、陰性的中率は90.8%でした。T1a癌では感度50.0%、特異度81.7%、陽性的中率6.8%、陰性的中率98.4%で、T1b癌では感度40.0%、特異度85.0%、陽性的中率43.0%でした(Zeng 2025)。

転移のあったうち69.2%は脈管侵襲を伴っておらず、CTの感度も脈管侵襲がない例の方が低かった(33.3%、ある例は58.3%)と報告されています。著者らは、CTでリンパ節転移の約半数近くを拾え、特異度は高いため、術前のCTは必要と結論しています(Zeng 2025)。食道癌のCTでの進展度の見方は食道癌のCT画像診断、リンパ節の部位は食道癌のリンパ節転移の画像診断に整理しています。

読影のチェックリスト

検査 確認すること 注意点
バリウム(X線) 小さな陥凹・顆粒状の変化、壁の硬さ、輪郭の不整 陥凹の顆粒・壁の硬さは深達度の手がかり。疑えば内視鏡で確認する
内視鏡 ヨード不染帯、NBIの茶色の領域、血管の形(JES分類) 深達度は推定。最終は切除標本の病理
EUS T1a/T1bの鑑別、壁の層構造 T1の判定の感度は77%で、見落としもある(Luo 2016)
CT リンパ節(傍気管・縦隔・腹部)と遠隔転移 感度は約4割で、転移を見逃すことがある(Zeng 2025)

癌の症状・診断・治療のまとめは食道癌の症状は?診断、治療まとめ!、消化管の記事一覧は消化管疾患の画像診断まとめから探せます。

よくある疑問(Q&A)

Q. バリウム検査で食道に異常を指摘されました。表在癌ということですか?
A. バリウム検査での指摘は「疑い」で、癌とは限りません。炎症や良性の変化も同じように見えることがあります。確定には内視鏡での観察と組織検査が必要です。気になる症状があるときや精密検査を勧められたときは、医療機関を受診してください。

Q. 表在癌なら、リンパ節転移はないのですか?
A. そうとは限りません。粘膜癌でも転移が見られることがあり、粘膜下層癌では3割ほどに転移がありました(Li 2013)。深さと脈管侵襲を合わせて判断します。

Q. CTで深達度(T1aかT1b)は分かりますか?
A. CTは壁の層構造を直接見分けられません。T1の内部の深さは内視鏡(NBI拡大)やEUSで評価し、CTはリンパ節や遠隔転移の確認に使います(Luo 2016、Zeng 2025)。

Q. バリウム検査と内視鏡はどちらが優れていますか?
A. 目的が違います。X線は食道全体の形と壁の硬さを見るのに向いており、内視鏡はヨード染色やNBIで粘膜面の小さな変化と深さの推定に向いています。それぞれの強みを組み合わせて使います。

あわせて読みたい:腸管CTの追い方、注腸造影の見方

参考文献

  1. Mine S, Tanaka K, Kawachi H, et al. Japanese Classification of Esophageal Cancer, 12th Edition: Part I. Esophagus. 2024;21(3):179-215. PubMed
  2. Li B, Chen H, Xiang J, et al. Prevalence of lymph node metastases in superficial esophageal squamous cell carcinoma. J Thorac Cardiovasc Surg. 2013;146(5):1198-203. PubMed
  3. Ueyama T, Kawamoto K, Yamada Y, et al. Early esophageal carcinoma. Evaluation of the depth of invasion based on double-contrast esophagography. Acta Radiol. 1998;39(2):133-7. PubMed
  4. Oyama T, Inoue H, Arima M, et al. Prediction of the invasion depth of superficial squamous cell carcinoma based on microvessel morphology: magnifying endoscopic classification of the Japan Esophageal Society. Esophagus. 2017;14(2):105-112. PubMed
  5. Luo LN, He LJ, Gao XY, et al. Endoscopic Ultrasound for Preoperative Esophageal Squamous Cell Carcinoma: a Meta-Analysis. PLoS One. 2016;11(7):e0158373. PubMed
  6. Zeng Y, Liu Y, Li J, et al. Value of Computed Tomography Scan for Detecting Lymph Node Metastasis in Early Esophageal Squamous Cell Carcinoma. Ann Surg Oncol. 2025;32(3):1635-1650. PubMed
  7. Yokoyama A, Ohmori T, Makuuchi H, et al. Successful screening for early esophageal cancer in alcoholics using endoscopy and mucosa iodine staining. Cancer. 1995;76(6):928-34. PubMed

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