陶磁器様胆嚢(磁器胆嚢、(porcelain gallbladder))

  • 陶磁器様胆嚢は、慢性胆嚢炎による反復する炎症と瘢痕化の結果、胆嚢壁にカルシウム沈着(ジストロフィー性石灰化)が生じた状態。摘出標本において、壁が硬く脆くなり、青白色の磁器(Porcelain)のように見えることからこの名がついた。慢性胆嚢炎のなれの果て。ただし、全ての慢性胆嚢炎がこれになるわけではなく、むしろ比較的稀な病態。
  • 圧倒的に女性(男女比 1:5)に多く、60歳代以降に好発する。また、90%以上の症例で胆石を合併している。
  • 瘢痕化した胆嚢壁がびまん性に石灰沈着を来し、外観および硬度が陶磁器様に変化した病態。
  • 石灰化は壁に沿って線状に見られる場合や、粘膜内や粘膜下。Rokitansky- Aschoff sinus内に微細顆粒状の石灰化が散在性にみられる場合がある。
  • 2000年代以降の複数の研究により、実際の発癌率はかつての報告よりもはるかに低いことが明らかになった。Stephenらの報告(2001年)やSchnelldorferらのメタ解析(2013年)によれば、胆嚢癌の合併率は約6%程度(0〜15%)であるとされる。重要なのが、石灰化パターンの違いで「連続した完全な壁石灰化(Complete type)よりも、不連続な粘膜石灰化(Incomplete type)の方が、癌化のリスクが高い」。

    陶磁器胆嚢のCT,MRI画像所見:「石灰化パターン」が重要

    陶磁器様胆嚢で本当に重要なのは、「石灰化があるかどうか」だけではない。どのように石灰化しているかが最重要。

    • 完全型(Complete type)
      壁全体に連続した石灰化/粘膜消失/低リスク
    • 不完全型(Incomplete type)
      斑状・不連続な石灰化/粘膜残存/高リスク(癌の発生母地)

    このため、画像で陶磁器様胆嚢を見たときには、単に「石灰化胆嚢」とまとめるのではなく、連続性のある全周性石灰化なのか、あるいはまだらで粘膜側優位の石灰化なのかを意識して評価することが重要。

    この分類は、文献上ではcomplete intramural calcificationselective mucosal calcificationとして記載されることが多く、胆嚢癌リスクとの関連を考えるうえで非常に重要。

    完全型(Complete type)

    • 壁全体に連続した石灰化を認めます
    • 胆嚢壁はびまん性に石灰化・線維化しています
    • 粘膜が消失している、あるいはほぼ失われていると考えられます
    • 胆嚢癌のリスクは比較的低いとされています

    完全型では、胆嚢壁が全層性に石灰化し、慢性炎症の終末像のような形をとります。粘膜上皮が消失しているため、癌の発生母地となる上皮成分が乏しくなり、結果として悪性化リスクが低くなる可能性が指摘されています。

    実際、Stephenらの報告では、complete intramural calcificationを示した症例では胆嚢癌の合併は認められませんでした

    不完全型(Incomplete type)

    • 斑状・不連続な石灰化を認めます
    • 石灰化は粘膜側に限局しやすいです
    • 粘膜が残存しています
    • 胆嚢癌のリスクが高い型とされています

    不完全型は、文献上ではselective mucosal calcificationと表現されます。これは石灰化が主に粘膜層に偏っており、胆嚢粘膜が残存しているタイプです。

    胆嚢癌の多くは粘膜上皮を母地として発生するため、粘膜が残っている不完全型は癌の発生母地になりうると理解されます。したがって、同じ陶磁器様胆嚢でも、不完全型は完全型より注意深く評価する必要があります。

    Stephenらの検討では、44例の石灰化胆嚢のうち、完全型17例、不完全型27例に分類され、胆嚢癌は不完全型でのみ認められました。この報告では、不完全型における癌発生は約7%とされ、完全型との違いが強調されています。

     

    陶磁器様胆嚢の鑑別診断

    • 充満胆石:胆嚢内腔を埋め尽くす結石。壁自体は石灰化していない。
    • 石灰乳胆汁(Milk of calcium bile):胆嚢内に泥状の石灰質が貯留する。体位変換で石灰化の形状が変化する(鏡面形成など)ことで鑑別可能。
    • 気腫性胆嚢炎:消耗性疾患や糖尿病の患者に多い。

    症例 70歳代女性

    porcelain gallbladder CT findings

    腹部造影CTで胆嚢壁にびまん性の石灰化を認めています。

    完全型の陶磁器様胆嚢を疑う所見です。

    症例 70歳代女性

    porcelain gallbladder1

    腹部単純CTで胆嚢壁に不連続な石灰化を認めています。

    不完全型の陶磁器様胆嚢を疑う所見です。

    症例 90歳代女性

    gb1

    腹部単純CTで、胆嚢壁にびまん性の石灰化を認めています。

    胆嚢内にも石灰化あり。胆石の合併が疑われます。

    完全型陶磁器様胆嚢を疑う所見です。

    症例(動画)

     

    参考文献

    1. Ashur H, et al. Calcified gallbladder (porcelain gallbladder). Arch Surg. 1978;113:594–596.
    2. Stephen AE, Berger DL. Carcinoma in the porcelain gallbladder: a relationship revisited. Surgery. 2001;129:699–703.
    3. Schnelldorfer T. Porcelain gallbladder: a benign process or concern for malignancy? J Gastrointest Surg. 2013;17:1161–1168.
    4. Morimoto M, Matsuo T, Mori N. Management of Porcelain Gallbladder, Its Risk Factors, and Complications: A Review. Diagnostics (Basel). 2021;11(6):1073.
    5. Jones MW, Weir CB, Ferguson T. Porcelain Gallbladder. StatPearls. Updated 2023.
    6. Fujita N, et al. Evidence-based clinical practice guidelines for cholelithiasis 2021. J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2023.

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