先に結論:薬剤性肺障害(薬剤性肺炎)のCT
- 薬剤性肺障害は、抗がん剤・分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬・抗リウマチ薬・抗菌薬・漢方薬など、あらゆる薬で起こり得ます。多くは飲み始めて数週〜数か月で、咳・息切れ・発熱が出ます
- CTの見え方はDAD(びまん性肺胞傷害)型・器質化肺炎型・過敏性肺炎型・NSIP型・好酸球性肺炎型などさまざまで、DAD型(すりガラス影+浸潤影に牽引性気管支拡張)は最も重く、命にかかわります。もともと間質性肺炎がある人は起こりやすいです
- 免疫チェックポイント阻害薬による肺炎(irAE肺炎)は器質化肺炎(OP)型が最も多く、DAD(ARDS)型は少ないものの最も重症です(Nishino 2016)
- 関節リウマチの薬では、メトトレキサートやレフルノミドの肺障害が知られています。リウマチの人はニューモシスチス肺炎も起こりやすく、画像だけでは両者を見分けにくいことがあります(下の「抗リウマチ薬による肺障害」)
- 画像だけで薬が原因と決めることはできず、感染症(ニューモシスチスなど)・心不全・がんの悪化を除外して、薬の中止・ステロイドなどを判断します
※薬の使用中に咳・息切れ・発熱が出たときは、自己判断で中止せず、すぐに処方医に相談してください。
薬剤性肺障害/薬剤性肺炎(drug-induced lung injury)とは
- 薬剤投与中に発症した呼吸器系の障害の中で薬剤と関連があるもの。
- 薬剤性間質性肺炎、喘息発作、咳嗽、CO2ナルコーシスがこれに含まれる。
- 薬剤投与開始から数週〜数ヶ月で見られるものが多い。
- リスク因子として、高齢、既存の慢性間質性肺炎、喫煙、全身状態(PS)の低下、CTでの正常肺の減少、心疾患の合併などが報告されている(日本人肺癌患者の検討:Kudoh 2008)。
- 血液生化学・免疫学的検査では、好酸球増加、肝機能障害、血清KL-6/SP-D/SP-A/LDH/CRPの上昇を認める。
- 確定診断が困難であり、病理学的な分類が報告者によって異なる。
- 薬剤性肺炎は、薬剤投与中の変化という、外因に基づく分類であり、その病態は症例により様々である。このため、薬剤性肺炎の画像所見は多岐にわたる。
- 類似する(特発性)びまん性肺疾患のパターンに基づき分類される。
- 薬剤によって特徴的な反応パターンをとるものも存在するが、同一の薬剤でも異なる反応を呈しうるため、画像からの診断は困難な場合も多い。
- 画像的には,薬剤性肺炎以外の病態(感染症、原疾患増悪)などの除外診断も重要である。
- DAD類似型は治療反応性に乏しく予後不良であるが、その他は薬剤の中止やステロイド投与で改善することが多い。
薬剤性肺障害のCT画像パターン

- びまん性肺胞障害(DAD:diffuse alveolar damage)類似型:最も重篤。すりガラス影+浸潤影に牽引性気管支拡張を伴う点が重要。
- 非心原性肺水腫(NCPE:noncardiogenic pulmonary edema)
- 器質化肺炎(OP:organizing pneumonia)類似型:肺野末梢の非区域性の陰影。
- 過敏性肺炎(HP:hypersensitivity pneumonitis)類似型:広範な均一なすりガラス影〜小粒状陰影。
- 非特異性間質性肺炎(NSIP:Non-specific interstitial pneumonia)類似型:気管支血管束沿いのすりガラス影〜浸潤影。
- 急性好酸球性肺炎(AEP:acute eosinophilic pneumonia)類似型:広義間質病変。
DADパターン(DAD類似型)のCT所見
- 両肺に広がるすりガラス影と浸潤影(コンソリデーション)が基本で、病期によって見え方が変わる。
- 牽引性気管支拡張を伴わない濃度上昇は滲出期〜増殖期早期、牽引性気管支拡張を伴う濃度上昇は増殖期〜線維化期に対応していた(急性間質性肺炎14例の検討:Ichikado 1997)。
免疫チェックポイント阻害薬による肺炎(irAE肺炎)のCT
- ニボルマブの臨床試験170例のうち20例に肺炎が起こり、開始から発症までの中央値は2.6か月だった(Nishino 2016)。
- CTパターンは器質化肺炎(COP)型13例、NSIP型3例、HP型2例、AIP/ARDS型2例で、COP型が腫瘍の種類や治療法によらず最も多かった。重症度はAIP/ARDS型が最も高く、次いでCOP型だった(Nishino 2016)。
薬剤性肺障害のCT画像所見
- 両肺野広範なGGAおよびconsolidation、非特異的な所見。
- 小葉性陰影、小葉中心性陰影をきたすことは少ないが、抗生剤によるものでは、起こる事もある。60例の薄層CTの検討では、抗腫瘍薬では小葉内間質の肥厚を伴うびまん性・多巣性のすりガラス影、抗菌薬では小葉中心性陰影と小葉間隔壁肥厚を伴う斑状のすりガラス影が多かった。また病変の広がりは動脈血酸素分圧と強く相関した(r=−0.84)。
- 急性発症は、非心原性肺水腫、HP、DADの臨床像、慢性発症はNSIP、COPの臨床像を示すことが多い。
- CT所見から類推した病理所見と実際の病理の一致率は45%と低い(20例の検討:Cleverley 2002)。なので、病理所見を類推することはあまり意味がない。=画像パターンが病理所見を示すのではない。
特殊な薬剤による肺障害の画像所見
- アミオダロン:ヨードを含むため、コンソリデーションが高吸収で肝の吸収値が上がる。
- 肺癌に対する分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI):日本人の肺癌患者3166例の検討で、ゲフィチニブは化学療法よりも間質性肺疾患を起こしやすく(オッズ比3.2)、特に開始後4週以内に多かった。発症した人の約3割(31.6%)が肺障害で亡くなっていた(Kudoh 2008)。
- mTOR阻害薬:エベロリムスで治療した乳癌86例ではCTで52.3%に肺障害がみられたが、症状があったのは31.1%だけで、両側・下肺優位のすりガラス影や網状影が多かった(Gong 2021)。
- トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、エンハーツ):9試験1150例の統合解析で、薬剤関連の間質性肺疾患は15.4%(死亡に至るgrade 5は2.2%)。77.4%はgrade 1〜2の軽症で、87.0%が開始から12か月以内に起こった(Powell 2022)。
- メトトレキサート(MTX)肺障害:関節リウマチに用いられ、HP類似型だが、ニューモシスチス肺炎との鑑別が難しいことがある。
抗リウマチ薬による肺障害(メトトレキサート・レフルノミド)と、リウマチ肺・感染との見分け
関節リウマチ(RA)の人では、リウマチそのものの肺病変(間質性肺炎など)、薬による肺障害、感染症が同じ時期に重なることがあり、画像だけでは区別しにくいのが実情です。薬ごとの特徴は次のとおりです。
- メトトレキサート(MTX):RAの二重盲検ランダム化試験22件(8,584人)をまとめた解析では、MTXで呼吸器の有害事象全体(RR 1.10)と呼吸器感染(RR 1.11)が小さいながら有意に増えていました。肺炎(pneumonitis)が記載された試験に絞るとRR 7.81でしたが、信頼区間が広い(1.76〜34.72)点には注意が必要です。肺疾患による死亡(RR 1.53)や感染以外の呼吸器イベント(RR 1.02)は有意に増えていませんでした(Conway 2014)。
- レフルノミド:日本のRA患者5,054人の市販後調査で、61人(1.2%)に間質性肺疾患の発症または悪化が報告されました。危険因子はもともとの間質性肺疾患(オッズ比8.17)、喫煙(3.12)、低体重(40kg未満で2.91)、導入時の負荷投与(3.97)で、もっとも重要なのは既存の間質性肺疾患でした(Sawada 2009)。
- レフルノミドの肺障害26例の画像解析では、びまん性または斑状のすりガラス影・コンソリデーションが基本で、小葉間隔壁の肥厚や小葉内の網状影を伴うことが多く、DAD・急性好酸球性肺炎・過敏反応・器質化肺炎の4つのパターンに分けられました。13例はもともと間質性の肺病変がありました。DAD群で死亡率が高い傾向がありましたが、統計学的な差はありませんでした(Sakai 2005)。
MTX肺炎とニューモシスチス肺炎(PCP)は画像で見分けにくい
RA患者のPCP14例、RAのMTX肺炎10例、AIDS患者のPCP11例を比べた日本の多施設研究があります。RAのPCPとMTX肺炎は、AIDSのPCPより発症が速く、CRPが高く、血漿β-Dグルカンが低く、酸素化の障害が強いという共通点がありました。RAのPCPの死亡率は14%でした(Tokuda 2008)。
| 病態 | CTのすりガラス影の特徴(Tokuda 2008) |
|---|---|
| MTX肺炎(RA) | 小葉間隔壁で境される、びまん性で均一なすりガラス影(type A)が70% |
| PCP(AIDS) | 小葉間隔壁による境界のない、びまん性のすりガラス影(type B)が91% |
| PCP(RA) | type Aが6例、type Bが5例と混在し、MTX肺炎と似ることがある |
- 画像所見だけではニューモシスチス肺炎などの感染症を除外できないため、発症の時期、血液検査、気管支肺胞洗浄などの結果と合わせて判断します(Sakai 2005、Tokuda 2008)。
- RA患者の肺に新しい陰影が出たときは、「リウマチ肺の悪化」「薬剤性」「感染」の3つを並べて考え、薬の使用歴と経過を確認します。
関連記事:関節リウマチに伴う肺病変のCT所見
症例 50歳代男性 呼吸苦

両側上下葉に広汎な斑状のすりガラス影あり。
漢方による過敏性肺炎(HP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。
症例 50歳代女性

両側下葉優位に広汎な斑状のすりガラス影あり。
アミオダロン(アンカロン)による過敏性肺炎(HP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。

また肝臓は著明に高吸収でCT値は平均92HUと高値を認め、アミオダロン肝と診断されました。
症例 70歳代男性

右上下葉に気管支血管束周囲を中心としたすりガラス影を認めており、抗癌剤による非特異性間質性肺炎(NSIP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。
症例 70歳代男性

右上葉および両側下葉末梢にすりガラス影〜コンソリデーションを認めており、糖尿病薬による器質化肺炎(OP)類似型の薬剤性肺炎と診断されました。
薬剤性肺炎でよくある疑問(Q&A)
Q. 薬剤性肺炎はCTだけで診断できますか?
A. できません。CTから推定したパターンと病理の一致は45%にとどまり(Cleverley 2002)、感染症(ニューモシスチス肺炎など)・心不全・がんの悪化を除外したうえで、薬を使い始めた時期と症状の経過から総合的に判断します。
Q. 薬剤性肺炎は治りますか?
A. 型によって違います。病理が器質化肺炎・過敏性反応・好酸球浸潤だった8例は全員が改善しましたが、間質性肺炎/線維化やDADの13例で改善したのは5例でした(Cleverley 2002)。薬の中止や治療は処方医が判断するため、症状が出たら自己判断で中止せず相談してください。
Q. 関節リウマチの薬で肺が悪くなることはありますか?
A. あります。メトトレキサートではRAの試験をまとめた解析で肺炎の報告が増え(Conway 2014)、レフルノミドでは日本の市販後調査で1.2%に間質性肺疾患の発症・悪化が報告されました(Sawada 2009)。薬の使用中に咳・息切れ・発熱が出たら、自己判断で中止せず、すぐに主治医に相談してください。
Q. MTX肺炎とニューモシスチス肺炎はCTで見分けられますか?
A. 難しいことがあります。MTX肺炎では小葉間隔壁で境された均一なすりガラス影が70%にみられましたが、RAのニューモシスチス肺炎にも同じ形のものが6例あり、混在していました(Tokuda 2008)。画像だけで感染を除外せず、検査結果や経過と合わせて判断します。
参考文献:
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