膠原病肺の画像診断
- 膠原病肺は原疾患の種類によって肺疾患にバリエーションがある。
- 間質性肺炎の頻度が高く、特発性間質性肺炎の分類上ではNSIPあるいはUIPに分類される形態をとることが多い。慢性間質性肺炎のうち、膠原病に合併するものの頻度は高く、間質性肺炎発症時には膠原病の診断基準を満たさず、後に膠原病の肺外症状が顕在化することもある。
- 間質性肺炎以外の病態を起こすものとしては、肺胞出血(SLE)、細気管支炎(RA,sjs)などがある。
- RAでは治療薬による肺障害あるいは感染症の頻度も高いので注意を要する。
- 膠原病のうち特に間質性肺炎合併頻度が高いものに皮膚筋炎・多発性筋炎、全身性硬化症がある。
- 急性~亜急性型の膠原病関連の間質性肺炎としては、抗ARS抗体陽性や抗MDA5抗体陽性の間質性肺炎が予後に影響するため重要。(抗ARS抗体、抗MDA5抗体は多発性筋炎/皮膚筋炎(PM/DM)に代表される特発性炎症性筋炎で検出される自己抗体)
- 抗ARS抗体陽性の間質性肺炎と比較して、抗MDA5抗体陽性の間質性肺炎の方が、急速進行性の経過を取りやすく、予後不良。
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎(CADM:clinically amyopathic dermatomyositis)
- 皮膚筋炎の一種で、特徴的な皮膚所見を有する。
- 筋症状はほとんどない。
- 皮膚筋炎の2割を占める。
- 急速に進行する間質性肺炎をきたししばしば致死的。急速に進行し、治療に対して抵抗性があることが多く、診断後6ヶ月以内の死亡率は33%から59.2%に及ぶ1)。
- 抗CADM-140抗体(MDA-5)が陽性で、CADMに特異的。
- 14%に悪性腫瘍の合併あり。
抗MDA5抗体陽性間質性肺炎の画像所見
- 下葉優位胸膜直下を主体とした浸潤影、すりガラス影で収縮傾向を伴う。
- ランダムな分布を示すすりガラス影。
- すりガラス影(83.3%)、非中隔線状または板状不透明度(83.3%)、および葉間中隔肥厚(66.7%)。
- OPパターンを見たときに、この疾患を考慮に入れなければならない。
症例 40歳代男性 抗CADM-140抗体陽性
AおよびB:診断時、末梢および気管支血管周囲のコンソリデーションが観察された(矢じり)。また、葉間中隔肥厚および非中隔線状または板状陰影も見られた(矢印)。
CおよびD:6週間の治療にもかかわらず、重度の呼吸不全が発生し、びまん性すりガラス影およびコンソリデーションが両肺全体に広がっていた。患者は1週間後に呼吸不全で死亡した。
症例 A,B:50歳代男性、C,D:60歳代男性 いずれもCADM-140抗体陽性
- A:胸膜下に非分節性のすりガラス状陰影(GGA)を認める。
- B:末梢および気管支血管周囲周囲のコンソリデーション(矢じり)および葉間中隔肥厚と非中隔線状または板状不透明度(矢印)が見られます。
- C:気管支透亮像を伴う胸膜下の非分節性コンソリデーション(矢じり)が観察されます。
- D:胸膜下の非分節性すりガラス状陰影(GGA)(矢印)も見られる。
Respiratory Medicine (2011) 105, 1380-1387より引用。
SLEの肺病変
- 免疫抑制療法が行われることが多いため、感染症の合併が多い。
- SLEそのものによる病変は胸膜病変が多い。(ADAが高値となることがあり結核との鑑別が問題となる)
- 肺胞出血を認めることがある。
- 横隔膜の挙上、肺容積の減少を認めるのが特徴(shrinking lungと呼ばれる)。
- 心膜炎を伴うことあり。
- 肺高血圧症を来すことあり。
- 抗リン脂質抗体症候群合併例では、肺動脈塞栓が認められることあり。
顕微鏡的多発血管炎(MPA)の肺病変
- 肺胞出血(+/ー)のDADの報告あり。
- CT画像では、すりガラス影94%>コンソリデーション78%>気管支肺動脈肥厚51%>小葉間隔壁肥厚45%>小葉中心性小結節45% (J Comput Assist Tomogr 28:710-716,2004)
- 慢性型では、UIP~NSIP型とも言えないような間質性肺炎像を示す。間質性肺炎の合併は30%。
症例 60歳代女性 MPA
右上葉優位に両側広範なすりガラス影あり。一部で牽引性気管支拡張あり。
肺胞出血が疑われた。
参考)