【胸部】症例7
【症例】60歳代男性
【主訴】発熱、食欲低下
【現病歴】膵癌 stageⅣ(肝転移)に対して化学療法を行っていたが薬剤性肺炎の疑いで中止となり、放射線治療を約10日前まで行っていた。定期外来受診で来院。
【身体所見】意識清明、SpO2 98%(RA)、BT 37.7℃、BP 113/63 mmHg、HR 97回/分、整
【データ】WBC 5100、CRP 8.17
画像はこちら
まずレントゲンです。
レントゲンでもわかるような両側肺野にびまん性に非常に粒の小さな粒状影を認めています。
CTにおいても同様です。
両側肺野にびまん性に非常に粒の小さな粒状影を認めています。
分布は気道に沿ったものではなく、気道とは関係なくランダムにびまん性に認めていることがわかります。
気道散布性病変ではない、小葉中心性の分布ではないということは、胸膜直下にも粒状影を認めている点からも理解できます。
小葉中心性の分布の場合は、胸膜直下は保たれるのが特徴でしたね。
(※小葉中心性の分布でも炎症が強い場合は胸膜に及ぶこともあります。)
このように小葉の構造を無視して分布するパターンをランダムパターンと言います。
で、このようなランダムパターンに分布する結節影や粒状影を見たときに考えなければならないのが、
- 粟粒結核
- 多発肺転移
- その他(リンパ球浸潤性・増殖性肺疾患、珪肺/炭坑夫肺、好酸球性肉芽腫症)
となります。
今回は膵癌がありますので、粟粒結核>多発肺転移の両方が考えられましたが、尿、痰から塗抹やTb-PCR陽性となり、粟粒結核/肺結核(排菌あり)と診断されました。
診断:粟粒結核
※イスコチン、リファンピシン、エサンブトールでの治療を開始し、他院へ転院となりました。
関連:
【胸部】症例7の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
肺転移と答えたのですがびまん性すぎますし、ちょっと違うかなと思いながらの回答でした。ありがとうございました。
アウトプットありがとうございます。
肺転移とともにランダムパターンであり、この画像だけでは、肺転移なのか、粟粒結核なのかはわからないですね。
両方鑑別に挙げられる事が重要です。
粟粒結核と膵癌の肺転移は外せないと思いました。陰影はランダムパターンで、小さく、比較的均一な粒状影を呈して、発熱があることより、一応、粟粒結核に比重をおきました。
アウトプットありがとうございます。
>陰影はランダムパターンで、小さく、比較的均一な粒状影を呈して、発熱があることより、一応、粟粒結核に比重をおきました。
素晴らしいですね。模範解答です(^^)
こういった所見をランダムパターンというのですね。今までとは雰囲気が随分違うため、印象に残りました。
転移性病変と答えてしまいましたが、ランダムパターンの鑑別覚えておきます。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。胸膜直下や葉間胸膜などにも結節を認めた場合は、小葉中心性パターンでないと判断できることが重要ですね。
その場合、ランダムパターンや広義リンパ路病変の可能性が残りますが、今回は小葉間隔壁の肥厚や気管支血管束の肥厚と言った所見は認めませんので、ランダムパターンとなります。
>転移性病変と答えてしまいました
転移と粟粒結核がまずは重要ですので、押さえておいてください。
今回のようにザラザラ?した肺=じん肺しか知りませんでしたが、確かに気道と関係なく広がっているので吸入性の変化でないと考えるべきでした。ランダムパターンというのですね。インプットしました。
アウトプットありがとうございます。
ちなみに珪肺の場合は、広義リンパ路病変+気道散布性病変を形成します。
一般的に上葉に多いので今回のようにびまん性に来た場合はランダムパターンを考えましょう。
参考:
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/1189
粟粒結核も見たことはありませんが,化学療法をしておられる患者さんは多いのでいつ来てもおかしくないですよね.
勉強になりました.
アウトプットありがとうございます。
そうですね。二次結核と同様にいつ来てもおかしくありません。
お住まいの地域にもよるのかもしれませんが(^_^;)
今日もありがとうございます。
粟粒結核だなとすぐ飛びついてしまいましたが肺転移でもこれくらい細かな粒状影になることもあるのですね。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように肺転移の場合でもこれくらい粒の小さな陰影をびまん性に認めることがあります。
頻度としてはもう少し大きい肺転移が多いですが。
勉強になります。ありがとうございます。
癌性リンパ管症を鑑別に挙げたのですが、この症例では広義間質の肥厚に乏しい点でやはり考えにくいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
そうですね。
・小葉間隔壁の肥厚 ←亀甲状と表現されるように亀の甲羅のように明瞭に認めるのが特徴です。
・気管支血管束の肥厚
これらを認めていない点で考えにくいですね。
参考
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/21106
いつもわかりやすい解説をありがとうございます。
CXRで右気管傍線の下部右側の陰影が少し目立つように思ったのですが正常の範囲内でしょうか。
また、CTでtree in bud appearanceがあるようにも見えたのですが、粟粒結核が血行性に広がることから病態が合わないですし、
ランダム陰影が多すぎてそのように見えてしまう、という解釈で良いでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>CXRで右気管傍線の下部右側の陰影が少し目立つように思ったのですが正常の範囲内でしょうか。
CTの縦隔条件で気管の右側に小リンパ節が散見されますのでその影響だと思います。所見として拾って良いと思います。
>CTでtree in bud appearanceがあるようにも見えたのですが、粟粒結核が血行性に広がることから病態が合わないですし、ランダム陰影が多すぎてそのように見えてしまう、という解釈で良いでしょうか。
確かに、tree in bud appearanceのように見えなくもないところもありますが、気管支血管束に粒が重なってそのように見えているだけだと考えます。
小葉中心性の粒状影が見えて、気道を埋めるように外に向かって広がっていくV字型やY字型がtree in bud appearanceとなります。
いつもありがとうございます。
少ない経験から肺転移だと もう少し 病変の大きさが 不揃いなのかと思っておりました。
肺転移にしては 粒がそろいすぎているということはないのでしょうか。
肺転移でも ここまで 粒ぞろいなことは あるのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
>肺転移だと もう少し 病変の大きさが 不揃いなのか
そうですねえ。肺転移の場合はここまで粒の細かい粒状影で来ることは稀で、大小不同の結節影がランダムパターンで来ることが多いです。
そういう意味でも今回はより粟粒結核らしいということはできますね。ただし、転移も常に考えなければなりませんが。
右第2弓の線が不自然ですが、おそらく心膜外脂肪塊ですね。
リンパ路病変とも迷いましたが、葉間胸膜との親和性がなさそうなので、ランダムパターンかなと思いました。
粟粒結核は”ぞくりゅうけっかく”と読むのですね。”あわつぶけっかく”かと思ってました^^;
アウトプットありがとうございます。
>右第2弓の線が不自然ですが、おそらく心膜外脂肪塊ですね。
そうですね。肺野条件のCTで確認することができますね。
>葉間胸膜との親和性がなさそうなので、ランダムパターンかなと思いました。
その通りです。胸膜に接する病変や葉間胸膜に接する病変があり、小葉間隔壁の肥厚がない点に着目しましょう。
>粟粒結核は”ぞくりゅうけっかく”と読むのですね。”あわつぶけっかく”かと思ってました^^;
カンファレンスなどで、「あわつぶ」と言ったら場は和みそうですが・・・・その場に後輩がいたら(^_^;)
いつもありがとうございます。縦郭条件でのリンパ節腫大についてですが、正常構造の血管影と迷ってしまいます。何かコツがあれば教えていただきたいです!!
アウトプットありがとうございます。
>縦郭条件でのリンパ節腫大についてですが、正常構造の血管影と迷ってしまいます。
胸部に限らずですが、リンパ節腫大の場合は上下にスクロールすると連続性がなく追えなくなります。
また今回は横断像のみですが、冠状断像などあればそれらも参考にすることもあります。
今回は上縦隔に小さなリンパ節が多数あるので、ちょっと紛らわしいかもしれませんが、連続性がないためいずれもリンパ節です。
粒の大きさから粟粒結核だと思いましたが、病歴から肺転移だとしてしました(´๑•_•๑)
肺区域同定ブートキャンプを考えてくださってるんですね!承知しました!半分ネタで何度も言ってすみませんでした!
アウトプットありがとうございます。
転移も鑑別に挙げる必要がありますが、粟粒結核も必ず考えましょう。
>半分ネタで何度も言ってすみませんでした!
こちらも半分ネタで答えてます(;゚ロ゚)
ランダムパターンと既往で飛びついてしまいました。鑑別にあげるようにします。
アウトプットありがとうございます。
飛びつきますよね。その際ももしかして・・・・と鑑別に挙げて除外するようにしてください。
いつも大変お世話になっております。
粟粒結核で良く見る画像であったので、それに飛びつきましたが、当然転移性の肺癌も鑑別にあげなければいけませんでした。
反省反省
あと、縦隔条件のCTが途中で終わってしまっており、膵臓の方を確認できませんでしたので、可能であれば修正をお願いできれば幸いです。
アウトプットありがとうございます。
>当然転移性の肺癌も鑑別にあげなければいけませんでした。
びまん性に肺転移を認めることもありますので注意ですね。
>縦隔条件のCTが途中で終わってしまっており、膵臓の方を確認できませんでしたので、可能であれば修正をお願いできれば幸いです。
確かに肺野の途中で終わっておりました。
修正しました。申し訳ありません。
むしろ肺転移の鑑別を失念していました、反省です。
不勉強でお恥ずかしいのですが、小葉中心性の病変においては胸膜直下がスペアされるというのは、肺構造の問題として胸膜直下まで、呼吸細気管支/一次小葉は至ることがないからという認識であっていますでしょうか。
最近ではCOVIDの所見として胸膜直下がスペアされる、(いや最近ではされないものもあるよねという話なのでしょうが)などありますが、正直、胸膜直下の病変の有無を判断材料にできておりません。お忙しいとは存じますがこちらについての説明、講義などいただけると嬉しいです。
アウトプットありがとうございます。
>小葉中心性の病変においては胸膜直下がスペアされるというのは、肺構造の問題として胸膜直下まで、呼吸細気管支/一次小葉は至ることがないからという認識であっていますでしょうか。
そうですね。
>お忙しいとは存じますがこちらについての説明、講義などいただけると嬉しいです。
症例1のところの補足動画
https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/training/archives/7275
■2次小葉と末梢について
■小葉中心性の分布とは
を見ていただけると納得していただけると思います。
>最近ではCOVIDの所見として胸膜直下がスペアされる、(いや最近ではされないものもあるよねという話なのでしょうが)などありますが、正直、胸膜直下の病変の有無を判断材料にできておりません。
COVID-19肺炎は胸膜直下がスペアされている場合とされていない場合があり、胸膜直下のスペアの有無ではCOVID-19肺炎かどうかは判断できないと思います。
COVID-19肺炎を示唆する所見で、胸膜直下のスペアの有無というものはありません。
そもそもCOVID-19肺炎は非区域性に広がりますので、気管支肺炎のパターンとは別個に考えてください。
粟粒結核は血行性散布とのことですが、どこから飛んできたのかを探す、という
ことをする必要はないのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
1,初感染に引き続いて起こる早期蔓延型:若年者中心に見られる。
2,肺内外の陳旧性病変が再燃して血行性に全身に広がる晩期蔓延型:高齢者や免疫抑制患者に見られる。
で、2,の頻度が高いと言われております。
今回も2であると考えられ、どこかの陳旧性病変が再燃して広がったと考えられます。
それがどこからなのかはわからないのではないかと考えます。
参考
困ったときの胸部の画像診断 P64-65
この小さい粒々には気が付いていたのですが、こんなに肺全体に粟粒結核が広がってしまうケースがあるのですね。
結核病院で初期研修をしておりましたが、すっかりキレイにわすれている自分が怖いですね。
アウトプットありがとうございます。
>この小さい粒々には気が付いていたのですが、こんなに肺全体に粟粒結核が広がってしまうケースがあるのですね。
そうですね。びまん性に広がっています。
>結核病院で初期研修をしておりましたが、すっかりキレイにわすれている自分が怖いですね。
(;゚ロ゚)
ここで痛い思いをしたので、次の現場では、大丈夫です。
この間当直帯で全く分からず(既往なし症状発熱のみ)後から診断知らされたので、今回は粟粒結核では?と疑いながらCT見ることができました!
粟粒結核:miliary tuberculosis 、呼吸器の先生が「みりてい」と呼んでいるイメージです(どこでもそうなのでしょうか?)
アウトプットありがとうございます。
>この間当直帯で全く分からず(既往なし症状発熱のみ)後から診断知らされたので、今回は粟粒結核では?と疑いながらCT見ることができました!
この講座が先だったら診断できていたかもしれないですね(^_^;)
>粟粒結核:miliary tuberculosis 、呼吸器の先生が「みりてい」と呼んでいるイメージです(どこでもそうなのでしょうか?)
どうなんでしょう・・。
私は普通に粟粒結核と言っておりますが、結核はなぜかテーベーと言うことが多いです。