【胸部】症例6
【症例】80歳代男性
【主訴】発熱、悪寒戦慄
【現病歴】本日、22時頃就寝し、直後より15分程度の悪寒戦慄あり、救急受診された。2週間前から風邪症状あり。
【既往歴】誤嚥性肺炎で何度か入院歴あり。慢性心不全/肥大型心筋症/慢性心房細動
【内服薬】ビラノア、モンテルカスト、アンブロキソール、プロカテロール、ナゾネックス、セキコデ、セララ、アゾセミド、イグザレルト、トリクロルメチアジド、カルベジロール、ノボラピッド、グラクティブ、ハルシオン
【身体所見】意識清明、BT 39.3℃、BP 155/70mmHg、P 83bpm、SpO2 92%(RA)、lung:右下肺野で減弱、coarse crackles聴取。
【データ】インフルエンザ迅速検査陰性、WBC 12100、CRP 0.34
まず胸部レントゲンでは、やや斜位になっています。
心陰影の拡大を認めています。
また右下肺野内側に血管では説明がつかない浸潤影を認めていることがわかります。
右下肺野内側の正常の見え方を胸部レントゲン画像診断ツールで確認ください。
右の下葉のS7領域を中心に、中葉のS4にも区域性のすりガラス影〜浸潤影を認めています。
特にB7は内部の空気を認めておらず誤嚥が疑われます。
またS7ほどではありませんが、右下葉のS10領域にもすりガラス影〜浸潤影を認めています。
ただし、両下葉の背側には重力効果によるすりガラス影を左右対称に認めています。
これを肺炎としないように注意が必要です。
ということで、所見をまとめますと、
- 右下葉S7を中心にS10および中葉S4に区域性に広がるすりガラス影〜浸潤影を認めている
ということがわかります。
区域性の広がりから気道散布性病変を疑います。
また誤嚥性肺炎を繰り返しているというエピソードも合わせて、誤嚥性肺炎を再発しているということが疑われます。
診断:右下葉および中葉に誤嚥性肺炎疑い。
加療され4ヶ月後のCTです。
左肺底部の瘢痕を疑う結節は残存していますが、(誤嚥性)肺炎像は消失しています。
また右大葉間裂沿いに認めた結節影も軽減しています。
関連:
【胸部】症例6の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
具体的な病名は挙げられず、気管支肺炎主体で気管支壁の肥厚が見られることだけ指摘できました。
リンクの解説を見ると、分布や壁肥厚など誤嚥性肺炎を疑う要素はたくさんあるのですね。レポートに「誤嚥性肺炎疑い」としっかり指摘されているのをよく見ることからも、画像から鑑別しやすいのかなと感じました。(高齢者だと数も多いのかもしれませんが。)
アウトプットありがとうございます。
>気管支肺炎主体で気管支壁の肥厚が見られることだけ指摘
画像からだけですと、実際はこれでいいのかもしれませんね。
>レポートに「誤嚥性肺炎疑い」としっかり指摘されているのをよく見ることからも、画像から鑑別しやすいのかなと感じました。
肺炎像の分布や気管支内容物などから判断していますね。
人によっては単なる肺炎として書くケースも多いと思います。
ありがとうございました。今回のようにエピソードがあり、右であり、詰まっている気管支があればまだ判断しやすいですが、リンパ節も腫れており腫瘍じゃないかと思ってしまったりします(ここまで感想)。質問ですが、気管支内誤嚥物の確認は起始部(分岐部)に近いばあいは私には分かりにくいのですがコツのようなものはないでしょうか?やはり丁寧にみていき読影力を高めるしかないですかね。
アウトプットありがとうございます。
>リンパ節も腫れており腫瘍じゃないかと思ってしまったりします
肺炎のように見える腫瘍もありますので、常に腫瘍の可能性は考えることは重要です。
>気管支内誤嚥物の確認は起始部(分岐部)に近いばあいは私には分かりにくいのですがコツのようなものはないでしょうか?やはり丁寧にみていき読影力を高めるしかないですかね。
そうですね。気管支内のairを追って末梢まで追えるかをチェックするしかないですね。
肺炎の分布や既往は、誤嚥性肺炎を想像させます。肺炎の起因菌を考える上で、「誤嚥性肺炎」の可能性を示唆することは、その後の抗生剤選択に影響を及ぼすということでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>「誤嚥性肺炎」の可能性を示唆することは、その後の抗生剤選択に影響を及ぼすということでしょうか?
おっしゃるとおりで、抗生剤を選択する上で、嫌気性菌を気にするようです。
ただし、気にする程度で治療にはほとんど影響しないと言う呼吸器の先生もおられますが(^_^;
心拡大と小葉間隔壁も肥厚しているように思え,心不全も合併しているのかなと思ってしまいました.
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるように心拡大がありますね。
小葉間隔壁の肥厚は・・・・確かにその目で見ると右肺底部に少し認めるかも知れませんが、これらの所見だけで心不全と画像から記載するのは微妙ですね。
重力効果によるすりガラス影に気付くことはできましたので、まずは誤嚥性肺炎を上げることができました。
何となくで申し訳ないのですが、小葉間膜も肥厚しているのかと思い、好酸球性肺炎も疑いとして回答しちゃいました。
アウトプットありがとうございます。
>重力効果によるすりガラス影に気付くことはできましたので、まずは誤嚥性肺炎を上げることができました。
重力効果によるすりガラス影は正常変異です。
>小葉間膜も肥厚しているのかと思い、好酸球性肺炎も疑いとして回答しちゃいました。
小葉間隔壁肥厚→好酸球性肺炎とはならないですね・・・。
>重力効果によるすりガラス影は正常変異です。
そうなんですね。知らないとは恐ろしい事です。覚えます。
>小葉間隔壁肥厚→好酸球性肺炎とはならない
これも覚えておきます。手元の胸部画像診断に関する資料をもう少し読み込んでおきます。
日々、症例と向き合わないとなかなか身につかないですが、わかり易い解説をちゃんと消化するようにもう少し努力が必要ですね。(反省↓↓)
今日もありがとうございます。
エピソードとB7の気管支内の内容物から誤嚥性肺炎を疑いました。普段は5mmスライスで見ることが多いですが気管支を追うことを考えるとやはりボリュームデータは偉大ですね。
アウトプットありがとうございます。
>気管支を追うことを考えるとやはりボリュームデータは偉大
そうですね。thin sliceが残っていて、かつ提示する意味があるだろうと考えられる症例については提示しています。
スマホからだと読み取りが遅くてチカチカする現象が起こることがありますが(^_^;)
病歴から誤嚥性肺炎は疑われるのですが、誤嚥性肺炎というと 重力のため背側中心でS8-10という印象があり、また、末梢の陰影がすくなく、気管支の途中と肺門近傍だったので、あえて気管支浸潤性の癌や気管支結核などを考えてしまいました。S4は前(胸)側向きの気管支ですが、このようにあまり重力の向きでないと思われる気管支の、しかも末梢ではなく、途中の気管支周辺で炎症をきたすのはよくあるのでしょうか?また、S7も同様に誤嚥性肺炎をきたしやすい部位なのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>誤嚥性肺炎というと 重力のため背側中心でS8-10という印象
もちろんそうなのですが、今回のように中葉などにも認めることはあります。
>気管支浸潤性の癌や気管支結核などを考えてしまいました。
もちろんこれらも鑑別には挙がるかもしれませんが、症状や頻度からまずは肺炎、なかでも誤嚥性肺炎を考えたいところです。
>途中の気管支周辺で炎症をきたすのはよくあるのでしょうか?また、S7も同様に誤嚥性肺炎をきたしやすい部位なのでしょうか?
S4だけということは少ないかもしれませんが、中葉や上葉も伴っていることはよくあります。
またS7も解剖学的にも好発部位です。
病歴から誤嚥性肺炎を疑う事ができ、誤嚥性肺炎の画像所見を見る事ができ勉強になりました。4ヶ月後のCTも提示してあり比較する事ができました。
アウトプットありがとうございます。
単なる肺炎疑いでもよいのですが、日常臨床でも割と遭遇する誤嚥性肺炎(疑い)を取り上げてみました。
S7の気管支閉塞とその抹消側の浸潤影→誤嚥性肺炎が疑われるとのことでしたが,細菌性肺炎→気道分泌物貯留→閉塞でも同じ像とありうるのかな,と思いました.
今回の症例では,閉塞よりも浸潤影の部位と既往が誤嚥性肺炎らしさを表しているようにおもいましたが,そのような理解でよいでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>浸潤影の部位と既往が誤嚥性肺炎らしさを表しているようにおもいましたが,そのような理解でよいでしょうか?
おっしゃるとおりです。より誤嚥性肺炎らしいということです。画像だけでの鑑別はできませんので。
区域性の広がりから気道散布性病変を疑います
この文面を詳しく説明して頂けないでしょうか?
レポートでもよくお見受けする表現なのですが
どのようなパターンなのか
掴めずにいます。
病変がある肺区域がどことどこか、その間の区域
誤嚥したものが移動しやすいか、で決まるのでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
>区域性の広がりから気道散布性病変を疑います
この文面を詳しく説明して頂けないでしょうか?
気道に沿った陰影→気道散布性病変であり、区域性の広がりであるということです。
こちらの動画を復習してください。
passは、pneumoniaです。
重力効果も胸部tipsでやりましたね(*^^*)
誤嚥性肺炎が肺胞性の濃い陰影(浸潤影)を呈する点は意外ですね。
アウトプットありがとうございます。
>重力効果も胸部tipsでやりましたね(*^^*)
症例1でやりましたね。
>誤嚥性肺炎が肺胞性の濃い陰影(浸潤影)を呈する点は意外ですね。
どんな陰影でも陰影が強いところは濃い陰影になりますね。
ありがとうございました。中枢に近い側の気管支壁肥厚に気づけて成長を感じました。
この方の気管支がうまく同定できなくて困りました。
(先生の気管支の同定動画は視聴済みです)
shin sliceで
122/269で二股に分かれているのは、
•b2とb3
•b3aとb3b
どちらですか?
b3aとb3bの分岐は124/269にも見えますが、119/269の分岐がb1とb2の分岐にも見えます。
162/269で外側に分岐するのがb8, 173/269で分岐するのがb9とb10かなと思ったのですが、そうすると157/269で背側に分岐する太めの気管支はなんですか?
アウトプットありがとうございます。
>この方の気管支がうまく同定できなくて困りました。
ちょっとこの方はそもそも息止め不良なのか見えにくいですね(^_^;)
>122/269で二股に分かれているのは、
•b2とb3
•b3aとb3b
どちらですか?
・122/269→b2bとb3a
・124/269→b3aとb3b(b2も見えている)
・119/269→b1とb2a
ですかね。
>162/269で外側に分岐するのがb8, 173/269で分岐するのがb9とb10かなと思ったのですが、そうすると157/269で背側に分岐する太めの気管支はなんですか?
・157/269で背側に分岐する太めの気管支→b6cの単独分岐
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsre/18/8/18_KJ00003352612/_pdf
こちらの症例19(figure5)ですかね・・・・。
間違ってたら言ってください(^_^;)
丁寧にありがとうございます。
variant、anomalous難しいです。
いままで気管支を同定して、その周りが対応する肺区域、と考えるだけでしたが、
『だいたいこの辺がS9だな』と肺区域の場所も覚えることで、『この辺に伸びていくからB9だろう』と逆にも考えることが、大切なのだなと、今更ながら気づきました。
平面と立体を行き来するの苦手なので、
画像診断cafeの正常をみて、覚えて行こうと思います。
>variant、anomalous難しいです。
ですね(^_^;)
気管支も結構個人差があるんでしょうね。
>画像診断cafeの正常をみて、覚えて行こうと思います。
今回画像診断cafeもじっくり見ながら考えてみたのですが、これもb6cの単独分岐がありそうですね・・・・
いつも勉強になっています。肺区域がまだ空で判断できないので精進します!
誤嚥性肺炎のページでもそうなのですが、プレ「ボ」テラがPrevotellaなので正しいかと思われます…!
ありがとうございます。修正しました!
胸部Xpにて大動脈の陰影が追いにくかったので何か腫瘤があるのかなと考えましたが、斜位気味で取られたものだったんですね。撮影条件の判定の仕方も参考になりました。
アウトプットありがとうございます。
>撮影条件の判定の仕方も参考になりました。
棘突起と両側鎖骨との距離に着目して正中にあるのかをチェックするようにしましょう。
解説ありがとうございました。
右大葉間裂抹消の結節影は今回の誤嚥性肺炎とは無関係でしょうか?
初心者の質問ですみません。
アウトプットありがとうございます。
>右大葉間裂抹消の結節影は今回の誤嚥性肺炎とは無関係でしょうか?
4ヶ月後のCTではこの部分も軽減していますので、ここにも誤嚥性肺炎かはわかりませんが、肺炎があったのでしょうね。
4ヶ月後に変化がなければ、陳旧性の瘢痕だったと判断できます。
画像診断cafeのはごろ~先生のでしたか!
非常に有用なツールを作製無料公開し続けてくださりありがとうございます。あまりに素晴らしいので私のTwitterの固定ツイートでおすすめさせていただいています。
今回はS4とS7だとズバり指摘できませんでした(◞‸◟ㆀ)
コメ欄見ると他にもいらっしゃる様子。無くなる事はまず考えられない誤嚥性肺炎の炎症区域をしっかりレポートできるようになる為に、肺区域同定ブートキャンプの開催をお願いします!隊長っ!
アウトプットありがとうございます。
>画像診断cafeのはごろ~先生のでしたか!
です(^_^;)
>あまりに素晴らしいので私のTwitterの固定ツイートでおすすめさせていただいています。
裸体を固定ツイートされている気分です(嘘)
>コメ欄見ると他にもいらっしゃる様子。無くなる事はまず考えられない誤嚥性肺炎の炎症区域をしっかりレポートできるようになる為に、肺区域同定ブートキャンプの開催をお願いします!隊長っ!
か、考えます・・・・。
胸部救急+TIPSの超密スケジュールをこなしている方もおられるので、かなり広めのソーシャルディスタンスを確保した上で・・・・。
いつも勉強になっております。ありがとうございます!
右大葉間裂沿いの結節影も誤嚥性肺炎の影響でしょうか?
また単純レントゲンで右上肺野(大動脈弓の高さ)が左に比べて透過性が低下しているように見え、最初は浸潤影かと思ったのですが、CTでは特に所見もありませんでした。
アウトプットありがとうございます。
>右大葉間裂沿いの結節影も誤嚥性肺炎の影響でしょうか?
そうですね。こちらも肺炎だったということですね。
>また単純レントゲンで右上肺野(大動脈弓の高さ)が左に比べて透過性が低下しているように見え、最初は浸潤影かと思ったのですが、CTでは特に所見もありませんでした。
斜位の影響もあるのだと思います。
いつも大変お世話になっております。
今回の胸部レントゲンは座位でX線束の角度も頭足方向に振り過ぎな画像だなとは思いましたが、よく見ると斜位にもなってしまっているのですね。。ポータブルでしょうが、撮影者側とするとどの辺まで許容されるのかが、冷や汗ものです。
診断に関してはちゃんとエピソードを読んでいたのに、誤嚥に気が付きませんでした。
次回以降に生かしていければと思います。
アウトプットありがとうございます。
>ポータブルでしょうが、撮影者側とするとどの辺まで許容されるのかが、冷や汗ものです。
ポータブルの場合は場合によってはなかなか難しいですよね。撮影する方も・・・。
>診断に関してはちゃんとエピソードを読んでいたのに、誤嚥に気が付きませんでした。
次回以降に生かしていければと思います。
肺炎であることが分かれば問題ありません。
GGO consolidation 気道散布性などひとつひとつ用語から勉強しております!とても個人的な質問なのですが、これ先生の肺ということは誤嚥性肺炎だったのでしょうか?心配ですw
アウトプットありがとうございます。
>これ先生の肺ということは誤嚥性肺炎だったのでしょうか?心配ですw
そうです。80歳代男性例は私です。ゴホゴホ・・・。
ではなく、正常解剖ツールが私です。
ややこしくてすいません(^_^;)
気管の中に唾液が見られ、痰が多いと思われました。
thin sliceで見ると、S7の陰影とS4の陰影が連続しているように見えてしまいますが、
大葉間膜を貫いてしまうということはあり得ないでしょうね。
アウトプットありがとうございます。
>thin sliceで見ると、S7の陰影とS4の陰影が連続しているように見えてしまいますが、
大葉間膜を貫いてしまうということはあり得ないでしょうね。
そのように見えなくもないですが、連続はしておらず、S7の陰影とS4の陰影は別だと思います。
気管支内内容物によるairの消失がない誤嚥性肺炎の場合もありますか?また気管支内内容物があるので誤嚥性肺炎と診断していいというわけではないですよね?
アウトプットありがとうございます。
>気管支内内容物によるairの消失がない誤嚥性肺炎の場合もありますか?
あります。
>また気管支内内容物があるので誤嚥性肺炎と診断していいというわけではないですよね?
ですね。気管支に付着した喀痰が見えるだけのこともあります。末梢にある場合は肺炎に至る可能性がありますが。
バイタルで比較的徐脈がありレジオネラなどを鑑別に入れましたが画像からはどうでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
レジオネラ肺炎は肺胞性肺炎を来すことが知られていますが初期は気管支肺炎ですので、初期像としては否定できないですね。鑑別に挙げるのは良いと思います。
あとは数日で急速に両側性、多様性に広がるのが特徴です。