メッシュ術後の感染 仙骨腟固定術後の膿瘍と椎間板炎

数か月前に骨盤臓器脱で腹腔鏡下仙骨腟固定術(メッシュ手術)を受けた方が、腰痛と発熱、炎症反応の上昇で来られました。腰椎のCTでは加齢変化しか指摘できません。メッシュの感染や仙骨の椎間板炎を考えるべきでしょうか?CTとMRIで何を見ればよいですか?
考えるべきです。仙骨腟固定術は、腟の断端(または子宮頸部)と仙骨の岬角の前面をメッシュでつなぐ手術で、メッシュを留める位置のすぐ上にL5-S1の椎間板があります。まれですが、メッシュの感染が骨盤内の膿瘍や、L5-S1の椎間板炎・仙骨の骨髄炎として現れることがあり、早い時期のCTでは異常がはっきりしないことがあります。椎間板炎の診断ではMRIが中心になります。報告の数字と、画像で見るポイントを整理します。

先に結論:仙骨腟固定術後の腰痛・殿部痛と炎症反応の上昇では、L5-S1の椎間板炎・仙骨骨髄炎とメッシュ周囲の膿瘍を疑う。頻度はまれだが、腰痛はほぼ全例、発熱は半数未満。診断はMRIが中心で、CTは骨盤内の膿瘍や骨の破壊を見るのに使われる

項目 ポイント
どのくらいまれか 低侵襲の仙骨腟固定術1,610件で仙骨骨髄炎・椎間板炎は0件(Stork 2021)
症状 文献52例で腰痛96.1%、発熱42.3%、下肢への放散痛32.7%(Stabile 2021)
発症の時期 手術から平均332日。数日後から数年後まで幅がある(Stabile 2021)
画像検査 52例の76.9%がMRIで診断。手術所見との一致はMRIで高い(Stabile 2021、Mahoney 2020)
治療 抗菌薬だけで治ったのは26.9%、67.3%は追加の手術を要した(Stabile 2021)

仙骨腟固定術(メッシュ手術)と合併症

仙骨腟固定術(sacrocolpopexy)は、骨盤臓器脱、とくに子宮摘出後の腟断端脱などの頂部の脱に対して行われる手術です。合成メッシュの一端を腟の前壁・後壁(子宮を残す場合は子宮頸部)に、もう一端を仙骨岬角の前面の前縦靱帯に縫合やタッカーで固定し、腟を吊り上げます。開腹、腹腔鏡、ロボット支援のいずれでも行われます。骨盤臓器脱そのもののMRI評価は骨盤臓器脱・骨盤底機能低下のMRIで解説しています。

この手術は長持ちする治療とされる一方、メッシュに関わる合併症があります。米国の無作為化試験(CARE)を延長した追跡では、腹式仙骨腟固定術後7年のメッシュびらん(腟などへの露出)の確率は10.5%と推定されました(Nygaard 2013)。画像診断の総説は、出血や尿路損傷などの急性期の合併症は主にCT、メッシュの露出や瘻孔などの慢性の合併症は主にMRIで評価し、感染・膿瘍・椎間板炎・骨髄炎が疑われるときはMRIで、状況によってはCTで評価するとしています(Haouari 2023)。

合併症 主に使われる検査
術後の出血・尿路損傷・尿管狭窄 CT
腸閉塞 CT
メッシュの露出・瘻孔 MRI
感染・膿瘍・椎間板炎・骨髄炎 MRI(状況によりCT)

出典:Haouari 2023(Radiographics)の総説の記載をもとに作成

なぜL5-S1の椎間板が問題になるのか

メッシュを固定する仙骨岬角のすぐ頭側にはL5-S1の椎間板があります。女性の献体25体とCT 100例を測った研究では、仰臥位で仙骨前の空間でいちばん突出している構造はL5-S1の椎間板で、「本当の」岬角より約1.5cm頭側まで広がっていました。L5とS1の前面のなす角は平均で約60度で、手術中にこの落ち込みを意識することが椎間板への刺入を避ける手がかりになるとされています(Good 2013)。固定の針やタッカーが椎間板に達すると、そこから感染が広がることがあります。文献のレビューにも、仙骨腟固定術のスクリューが誤ってL5-S1の椎間腔に入った例が含まれています(Stabile 2021)。

どのくらい起こるか・どんな症状か

仙骨の骨髄炎・椎間板炎はまれな合併症です。米国の1つの医療システムで11人の術者が行った低侵襲の仙骨腟固定術1,610件(腹腔鏡55.2%、ロボット支援44.8%、全例ポリプロピレンメッシュ)を調べた研究では、発生は0件で、頻度は1,000件に1件未満と結論されています(Stork 2021)。ただし追跡期間の中央値は7.7か月で、遅れて起こる例は拾いきれていない可能性があります。

症状と経過は、文献の52例をまとめた系統的レビューがよく整理しています(Stabile 2021)。

項目 52例のまとめ
平均年齢 59.6歳(全例女性)
もとの手術 腟固定術42例(80.8%)、直腸固定術6例、子宮固定術2例、両方2例
手術から発症まで 平均332日
症状 腰痛50例(96.1%)、発熱22例(42.3%)、下肢への放散痛17例(32.7%)、腟からの分泌物5例(9.6%)
メッシュのびらん・瘻孔 びらん9例(17.3%)、瘻孔9例(17.3%)
診断に使われた検査 MRI 40例(76.9%)、CT 1例、両方6例、記載なし5例
治療 再手術と抗菌薬35例(67.3%)、抗菌薬のみ14例(26.9%)

出典:Stabile 2021

発熱がないことは否定の根拠になりません。腰痛や殿部痛、繰り返す骨盤痛、坐骨神経痛のような痛みが手術のあとに続くときは、時期が離れていても椎間板炎を鑑別に入れることが大切です(Stabile 2021)。直腸固定術のメッシュでも同じ合併症が起こるため、手術歴は術式の名前まで確かめます。

CT・MRIで見るポイント

MRI:椎間板炎・骨髄炎と膿瘍の広がり

椎間板炎・骨髄炎の診断の中心はMRIです。レビューでは、MRIが椎間板炎で最も感度・特異度の高い検査として扱われています(Stabile 2021)。見るべき所見は、一般的な化膿性脊椎炎と同じく、L5-S1の椎間板のT2強調像・STIR像での高信号と液体貯留、隣り合うL5・S1椎体の骨髄浮腫、終板の不整・破壊、椎体前面の軟部組織の浮腫・造影効果、硬膜外・椎体周囲の膿瘍です。化膿性脊椎炎の一般的なMRI所見は化膿性脊椎炎・椎間板炎とは?、硬膜外膿瘍の評価は脊髄硬膜外膿瘍のMRIを参照してください。

メッシュそのものの感染の評価にもMRIが使われます。英国の三次施設で腹部から留置したメッシュの合併症が疑われ、MRIを撮った87人の検討では、感染は11人(12.6%)に指摘され、手術所見とよく一致しました(κ=0.94)。この研究では、限局した液体貯留、膿瘍の進展、瘻孔(sinus tract)、骨髄炎のいずれかがあれば感染と判断しており、液体貯留が仙骨の高さまで広がっていた例もありました(Mahoney 2020)。別の英国の施設の97人の検討でも、MRIは感染の11例すべてを指摘し、そのうち10例(91%)では、診察から想定したより感染が広く及んでいました(Krishnaswamy 2022)。

一方、MRIでのメッシュの露出の評価は手術所見との一致が中程度(κ=0.58)、炎症所見は低い一致(κ=0.24)にとどまり、腟へのメッシュの露出は診察で確かめるのが基本とされています(Mahoney 2020)。

CT:骨盤内の膿瘍と骨の破壊

CTは、骨盤内の膿瘍(メッシュ周囲、腟と直腸の間など)の範囲や、ドレナージの経路を考えるのに役立ちます。骨の破壊の程度もCTで詳しくわかりますが、椎間板炎の初期にはCTで異常がはっきりしないことがあります。後で示す症例でも、入院時のCTでは加齢変化だけで、数日後のMRIで椎間板炎と硬膜外膿瘍が見つかりました(Miksić 2019)。腸腰筋への膿の広がりも確かめておきます(腸腰筋膿瘍のCT・MRI画像所見)。

症例 50歳代女性 仙骨腟固定術後の骨盤内膿瘍

仙骨腟固定術後の骨盤内膿瘍 腟と直腸の間の膿の貯留 CT
引用:Stabile G, Romano F, Topouzova GA, et al. Spondylodiscitis After Surgery for Pelvic Organ Prolapse: Description of a Rare Complication and Systematic Review of the Literature. Front Surg 2021;8:741311(Figure 3)(CC BY 4.0)

腹腔鏡下仙骨腟固定術のあと骨盤痛を繰り返した例のCTで、腟と直腸の間の骨盤内に膿瘍(矢印)がみられます。この例では骨盤MRIでL5-S1の周囲の軟部組織の造影効果もあり、椎間板炎と考えられました。再手術で、ポリプロピレンメッシュを巻き込む膿の貯留が確かめられ、メッシュの除去とドレナージが行われています(Stabile 2021)。

症例 80歳代女性 仙骨腟固定術後の椎間板炎と硬膜外膿瘍

仙骨腟固定術後のL5-S1椎間板炎 椎体の骨髄浮腫と椎体前面の浮腫 MRI STIR矢状断
引用:Miksić NG, Kljaić Dujić M, Rejc Marko J, et al. Bacteroides fragilis sacral spondylodiscitis and epidural abscess after sacrocolpopexy: a case report and literature review. J Int Med Res 2019;47(9):4568-4574(Figure 1)(CC BY-NC 4.0)

腹腔鏡下仙骨腟固定術から18週後に腰仙部痛と炎症反応の上昇で入院した例です。矢状断STIR像(a)でL5-S1の椎間板の炎症、隣り合う2つの椎体の骨髄浮腫、椎体前面の軟部組織の浮腫がみられます。1か月後(b)にはL5とS1の終板の陥凹と炎症の進行があり、1年後(c)には炎症は消えています。血液培養からBacteroides fragilisが検出され、S1のチタン製アンカーを残したまま抗菌薬で治療されました(Miksić 2019)。

鑑別と治療の流れ

術後早期には、手術操作による軟部組織の変化や液体貯留との区別が問題になります。メッシュを留めたこと自体では骨髄や軟部組織の信号変化は起こらなかったとする研究が紹介されており、術後の骨髄・軟部組織の変化はメッシュ感染や骨髄炎を疑うきっかけになるとされています(Mahoney 2020)。遅れて起こる例では、メッシュが直腸や腟に入り込んで生じた瘻孔が感染源になっていることもあるため、骨盤内の瘻孔の有無もあわせて確かめます(Stabile 2021)。

治療は長期の抗菌薬が基本で、多くはメッシュの除去や病巣の清掃を伴います。系統的レビューでは抗菌薬だけで治った例は26.9%でした(Stabile 2021)。高齢で手術の負担が大きい人では、固定具を残したまま抗菌薬で治療して再発のなかった例も報告されています(Miksić 2019)。どの治療を選ぶかは、感染の広がりと全身の状態をみて、婦人科・泌尿器科・整形外科・感染症科で決められます。感染巣を探す核医学検査については白血球シンチの記事も参考になります。

よくある疑問(Q&A)

Q1. 発熱がなければ椎間板炎は否定できますか?

できません。文献52例で発熱があったのは42.3%で、ほぼ全例にあったのは腰痛でした(Stabile 2021)。手術のあとに続く腰痛・殿部痛と炎症反応の上昇があれば、MRIで確かめることを考えます。

Q2. 手術からかなり時間がたっていても起こりますか?

起こります。52例の手術から発症までの平均は332日で、なかには数年後の例も含まれていました(Stabile 2021)。手術歴を確かめることが診断の第一歩です。

Q3. CTとMRIのどちらを先に撮ればよいですか?

椎間板炎・骨髄炎や膿瘍の広がりを見るにはMRIが中心で、総説も感染・膿瘍・椎間板炎ではMRIを主に挙げ、状況によりCTとしています(Haouari 2023)。CTは骨盤内の膿瘍の範囲や骨の破壊を見るのに有用ですが、初期の椎間板炎ではCTで異常がはっきりしないことがあります(Miksić 2019)。

Q4. メッシュの手術を受けた人が腰痛になったら、すぐ受診すべきですか?

腰痛だけでは多くは別の原因ですが、手術のあとに強い腰痛や殿部痛が続く、発熱がある、腟からの分泌物が増えた、脚にしびれや力の入りにくさが出たときは、手術を受けた医療機関に早めに相談してください。

参考文献

  1. Haouari MA, Boulay-Coletta I, Khatri G, et al. Complications of Mesh Sacrocolpopexy and Rectopexy: Imaging Review. Radiographics. 2023;43(2):e220137. PubMed
  2. Stabile G, Romano F, Topouzova GA, et al. Spondylodiscitis After Surgery for Pelvic Organ Prolapse: Description of a Rare Complication and Systematic Review of the Literature. Front Surg. 2021;8:741311. PubMed
  3. Stork AM, Giugale LE, Bradley MS, et al. Incidence of Sacral Osteomyelitis and Discitis After Minimally Invasive Sacrocolpopexy. Female Pelvic Med Reconstr Surg. 2021;27(11):672-675. PubMed
  4. Mahoney C, Hindle A, Rajashanker B, et al. MR scan evaluation of pelvic organ prolapse mesh complications and agreement with intra-operative findings. Int Urogynecol J. 2020;31(8):1559-1566. PubMed
  5. Krishnaswamy PH, Boodhoo VH, McNeil J, et al. Use of Magnetic Resonance Imaging in women with suspected complications following insertion of implants for pelvic organ prolapse and stress urinary incontinence surgery. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2022;273:44-53. PubMed
  6. Miksić NG, Kljaić Dujić M, Rejc Marko J, et al. Bacteroides fragilis sacral spondylodiscitis and epidural abscess after sacrocolpopexy: a case report and literature review. J Int Med Res. 2019;47(9):4568-4574. PubMed
  7. Nygaard I, Brubaker L, Zyczynski HM, et al. Long-term outcomes following abdominal sacrocolpopexy for pelvic organ prolapse. JAMA. 2013;309(19):2016-24. PubMed
  8. Good MM, Abele TA, Balgobin S, et al. Preventing L5-S1 discitis associated with sacrocolpopexy. Obstet Gynecol. 2013;121(2 Pt 1):285-290. PubMed

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