骨盤底機能低下、骨盤臓器脱
- 高齢女性や多産婦に多い。
- 加齢(閉経により、骨盤底筋の張力を保つエストロゲン低下)や経腟分娩により、肛門挙筋をはじめとした骨盤底筋が下垂、肛門挙筋裂孔が開大するため。
- 症状としては、骨盤部痛、圧迫感、尿失禁、残尿など。
- 骨盤臓器が本来の位置から下降する病態を骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)とよぶ。
- 骨盤臓器脱には、膀胱瘤(脱)(cystocele)、尿管膀胱瘤(cystoureterocele)、膣脱(vaginal vault prolaps)、直腸瘤(脱)(rectocele)、S状結腸瘤(脱)(sigmoidocele)、小腸瘤(脱)(enterocele)がある。
- 骨盤底機能低下、骨盤臓器脱は合併することがあるが、骨盤底機能低下に臓器脱を伴わないことがある。これら2者は区別する。
骨盤底機能低下、骨盤臓器脱のMRI画像診断
- 安静時およびいきんだ状態(Valsalva法)で撮影を行う。
- 骨盤底機能低下、骨盤臓器脱に使われるGrade分類は、いきんだ状態での画像で適応する。
- 下図のようにA点(恥骨結合下縁)とB点(恥骨直腸筋後縁)を結ぶ線をH線、A点とC点(尾骨第1節ー2節間)を結ぶ直線からB点に向かって引いた接線をM線とする。
- H線:恥骨直腸筋の走行を反映。開大は肛門挙筋裂孔の拡大を意味する。6cm以上が異常。また、骨盤臓器脱はこの線よりも下に下垂していることで診断する。
- M線:2cm以上あると骨盤底下垂を意味する。
症例 20歳代女性 正常例(T2WI矢状断像)、安静時
骨盤底機能低下のGrade分類(いきんだ状態)
Grade | 挙筋裂孔拡大(H線) | 骨盤底下垂(M線) |
0(正常) | 6cm未満 | 0-2cm |
1(軽度) | 6-8cm | 2-4cm |
2(中等度) | 8-10cm | 4-6cm |
3(重度) | 10cm以上 | 6cm以上 |
骨盤臓器脱のGrade分類(いきんだ状態)
Grade | H線からの臓器の位置 |
0(正常) | 上方 |
1(軽度) | 0-2cm下方 |
2(中等度) | 2-4cm下方 |
3(重度) | 6cm以上下方 |
症例 70歳代女性 子宮術後
いきんだ状態でMRI検査施行。
骨盤底機能低下のGrade分類1相当。膀胱脱もGrade分類1相当。
参考・引用)
・Boyadzhyan L,et al : Role of static and dynamic MR imaging in surgical pelvic floor dysfunction. Radiographics,28:949-967,2008
・臨床画像vol25,No.9,2009 P1011-1013