
先に結論:白血球シンチは「感染巣そのもの」を探す検査。人工関節感染・骨髄炎・腹部膿瘍で使われるが、骨髄との区別が必要で、脊椎感染や抗菌薬投与中は偽陰性に注意する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 検査のしくみ | 自分の白血球(主に好中球)を99mTc-HMPAOまたは111In-oxineで標識して戻し、感染部位への集積を撮影する(Signore 2018) |
| 得意な場面 | 人工関節感染、末梢の骨髄炎、腹部の膿瘍、不明熱など。感染と無菌性の炎症の区別がつきやすい |
| 骨髄との区別 | 白血球は正常の骨髄にも集まる。99mTc-硫黄コロイドの骨髄シンチを併用すると、骨髄炎との区別と全体の正確さが上がる |
| 偽陰性 | 脊椎の感染、抗菌薬の投与中、慢性の感染・膿瘍などで集積が乏しいことがある |
| 他の検査 | 脊椎の感染ではFDG-PET/CT(とMRI)が中心。ガリウムは、FDG-PETが使えないときの代替という位置づけ |
白血球シンチ(標識白血球シンチグラフィ)とは
検査のしくみ
白血球シンチは、自分の白血球を、体の外で放射性同位元素により標識してから、静脈に戻す検査です。標識した白血球は、まず肺に入り、傷んでいなければ肝臓・脾臓・骨髄などの細網内皮系へ向かいます。注射の約1時間後から骨髄へも移り、感染があれば、細菌や炎症のシグナルに引き寄せられて感染部位に集まります。集まる速さは感染の場所で違い、心臓・血管の組織では数時間で比較的早く、末梢の骨や中枢神経では遅いとされます(Signore 2018)。
標識される白血球の中心は好中球です。標識した白血球は、がんや、正常に治っていく手術の傷にはほとんど集まらず、この点が感染と無菌性の炎症を区別しやすい理由で、高い特異度につながります(Signore 2018)。標識の手順は、EANMの別の手順書で定められています。
99mTc-HMPAOと111In-oxineの違い
標識に使う薬剤は、主に99mTc-HMPAOと111In-oxineの2つです(Signore 2018)。細かな量は施設の手順書に従うため、ここでは考え方の違いに絞ります。
| 項目 | 99mTc-HMPAO | 111In-oxine |
|---|---|---|
| 撮影のタイミング | 早期像(30分後)、遅延像(3〜4時間後)、後期像(20〜24時間後)が一般的な撮影時刻。ただし腹部の感染・炎症性腸疾患では、30分後と2〜3時間後のみを撮る(Signore 2018) | 時間をかけて集積を待つ運用が中心で、翌日にかけた撮影になる(施設の手順書による) |
| 注意点 | 標識した白血球から代謝物が放出され、肝臓から胆汁を介して腸へ排泄されるため、遅い時間の像では腸管の偽陽性が出る(Signore 2018)。腹部では遅い像を避ける。瘻孔や膿瘍が疑われる場合のみ、4〜6時間後に撮ることがある | HMPAOのような代謝物の腸管排泄の問題は、HMPAO側の注意点として示されている(Signore 2018) |
| 画質・手軽さ | 99mTcは画質がよく、当日中に撮影しやすい | 放射性同位元素の性質上、撮影は翌日にかけて行う運用になり、画質はやや劣る |
どちらを使うかは、施設の備えと疑う部位で決まります。腹部の感染では、HMPAOの遅い像で腸管排泄の偽陽性が出ることを知っておくと、読み違えを避けられます。
どんな場面で使うか
EANMの手順書(2018年)は、白血球シンチと抗顆粒球抗体シンチの臨床的な適応、撮影法、読み方を示しています(Signore 2018)。主な適応を整理すると次の通りです。
| 場面 | 位置づけ |
|---|---|
| 人工関節感染(人工股関節・膝関節など) | 金属の影響を受けにくく、感染と無菌性のゆるみの区別に役立つ。白血球と骨髄の併用が最も正確(精度は88〜98%の範囲と報告)(Signore 2018) |
| 末梢の骨髄炎、糖尿病足、骨折後の感染 | 骨シンチやMRIで判断しにくい場面の補助。骨髄シンチの併用で精度が上がる(Palestro 2015) |
| 腹部・術後の感染、膿瘍 | CTやエコーで見つかった液体貯留が膿瘍かどうかの確認、術後の感染の評価。正常な術創にはほとんど集積せず特異度が高い(Signore 2018) |
| 炎症性腸疾患 | エコー・CT・MRIが第一選択で、白血球シンチは疾患の活動性と広がりの追加情報を与える(Signore 2018) |
| 不明熱 | 感染の可能性が低い場合はFDG-PETを先に、高い場合は白血球シンチを先に、という考え方が示されている(Signore 2018) |
| 血管グラフト感染、心内膜炎など | 血管グラフト感染での精度は90%を超えるとされる。心内膜炎では超音波で判断しにくい場合の補助(Signore 2018) |
人工関節感染
人工関節では、痛みが感染によるのか、無菌性のゆるみなのかの区別が難しく、画像の役割が大きくなります。単純X線は感度も特異度も高くありません。骨シンチはスクリーニングに向き、陰性なら感染もゆるみも考えにくくなります。白血球と骨髄の併用検査は、下肢の人工関節感染に特異度が非常に高く、感度はばらつきがあるとされています(Palestro 2023)。肩の人工関節では、白血球・骨髄のSPECT/CTもFDG-PET/CTも、特異的だが感度は高くないという限られたデータが示されています(Palestro 2023)。
FDG-PETは、人工関節感染では「感染と、ほかの原因による炎症を区別しにくく、読み方の基準も統一されていない」ため、日常の検査手順に入れる合意が得られていません(Palestro 2023)。X線でのゆるみ・感染の所見は人工関節・プレート・スクリューのレントゲンの見方で整理しています。
骨髄炎
骨髄炎のCT・MRIの所見は骨髄炎のMRI画像診断で説明しています。そのうえで、脊椎を除く骨髄炎では、体外で標識した白血球を使う検査が、核医学での選択肢として挙げられます(Palestro 2015)。EANMの手順書では、MRIなどの画像を補う形で、白血球と骨髄シンチなどの核医学検査を合わせた全体の精度は90%を超えるとされています(Signore 2018)。
腹部の膿瘍
腹部の液体貯留は、膿瘍・出血・術後の変化・腫瘍などが混ざり、CTやエコーだけで区別しにくいことがあります。白血球シンチは、膿瘍を、そのほかの液体貯留・腫瘍・正常な術後変化と区別する補助になり、特異度が高い点が長所です(Signore 2018)。ただし、HMPAOでは遅い時間の像で腸管に集積が出るため、前述の撮影時刻を守ります。腹腔内膿瘍のCT所見は腹膜炎の原因とCT画像所見に書いています。
骨髄との区別:白血球と骨髄シンチの併用
標識した白血球は、感染だけでなく正常な骨髄にも集まります。このため、骨で集積があっても、それが感染なのか、ただの骨髄なのか区別できないことがあります。特に、人工関節の手術や骨折などで骨髄の分布が変わっている部分では、判断が難しくなります。
この問題を補うのが、99mTc-硫黄コロイドの骨髄シンチとの併用です。硫黄コロイドは骨髄の細胞に取り込まれるので、白血球の集積が、骨髄の分布と一致するか(骨髄)、骨髄の分布より余分に出ているか(感染)を比べられます。白血球と骨髄の併用検査の精度はおよそ90%とされ、骨髄の分布が変わっている状況の骨髄炎診断に特に有用です(Palestro 2006)。
| 白血球の像 | 骨髄シンチの像 | 解釈 |
|---|---|---|
| 集積あり | 同じ場所に集積あり(一致) | 正常な骨髄(または骨髄の変化)。感染とは考えにくい |
| 集積あり | 同じ場所に集積なし(不一致) | 感染を示唆する |
| 集積なし | (参考にならない) | 感染の可能性は低い方向。ただし偽陰性の条件に注意 |
併用検査にも落とし穴があります(Palestro 2006)。
- 白血球の集積がその部位になければ、骨髄シンチを撮っても役に立たない
- 感染が始まってから約1週間は、硫黄コロイドの像が「冷たく」なるため、急性期の読影は慎重に行う
- リンパ節に白血球が集まり、判断を惑わすことがある(丸い・境界がはっきりしている・多発・線状・両側などの特徴がある)
- 調製が不適切、または2時間ほど経った硫黄コロイドは画質が悪く、誤った結論につながる
症例 糖尿病足の白血球シンチ(抗菌薬の前後)

引用:Albano D, Lauri C, Signore A, et al. Br J Radiol 2026;99:1024-1035(Figure 2). CC BY 4.0(無加工)。PMC
糖尿病足の患者さんの、前方からの白血球シンチ(planar像)です。論文の説明では、(A)が抗菌薬の開始前、(B)が抗菌薬の投与後で、投与後に集積が大きく減ったと述べられています。感染の治療の効果を見る場面でも使われます。
偽陰性:見逃しやすい場面
白血球シンチは特異度が高い一方で、感染があるのに集積が出ないことがあります。EANMの手順書は、白血球の集積しやすさが、感染の場所、病原体の勢い、病原体の種類(真菌は細菌より白血球を呼びにくい)、抗菌薬やステロイドの使用、血流の状態などで変わることを挙げています(Signore 2018)。慢性の感染や膿瘍では、遅い時間の像で集積が乏しいこともあります。
脊椎の骨髄炎・椎間板炎
代表的な偽陰性が脊椎の感染です。生検で診断が確定した22人を調べた検討では、感染のある18人のうち、111Inの白血球シンチは15人(83%)で偽陰性、陽性は3人(17%)でした。感度は17%、特異度は100%、正確さは31%で、抗菌薬を使っていた場合に偽陰性が多く、有用性は、抗菌薬を使っていない患者に限られる可能性があると述べられています(Whalen 1991)。脊椎では、椎体の血流が浮腫で圧迫されて白血球が集まりにくいことも一因と説明されています(Signore 2018)。
このため、EANMの手順書は、脊椎の感染の診断に標識白血球は適さず、FDG-PET/CTとMRIの組み合わせが最も精度が高いとしています。ただし、発症から1週間以内の早期の椎間板炎や、椎体周囲の軟部組織の感染には、白血球シンチを使える場合があるとされます(Signore 2018)。
抗菌薬を使っているとき
2014〜2025年に白血球シンチを受けた1,016人のうち、最終診断が確定した484人を解析した単施設の後ろ向き研究では、全体の感度は66%、特異度は97%、正確さは86%でした。抗菌薬を使用中の人では感度が30%まで下がり、抗菌薬を中止してからの期間が長いほど感度が上がって、16日以上では100%でした。研究チームは、検査のために15日ほど中止することが望ましいと結論しています(Lauri 2026)。
ただし、これは1施設の後ろ向きの結果で、抗菌薬を止められるかどうかは、患者さんの状態と感染の重さで違います。抗菌薬を自分で止めたり調整したりせず、主治医と検査施設の指示に従ってください。EANMの手順書も、抗菌薬やステロイドの使用が白血球の集積を減らし得ると述べています(Signore 2018)。
FDG-PET・ガリウムシンチとの使い分け
| 検査 | 得意なこと | 注意点 |
|---|---|---|
| 白血球シンチ | 感染と無菌性の炎症の区別。人工関節感染(骨髄シンチ併用)、末梢の骨髄炎、腹部の膿瘍など | 骨髄との区別が必要。脊椎・抗菌薬投与中・慢性の感染で偽陰性。標識に手間がかかる |
| FDG-PET/CT | 脊椎の感染(感度が高く、椎間板炎と変性を区別できる)、不明熱、血管炎、サルコイドーシス(Palestro 2020) | 人工関節感染では、感染とほかの炎症を区別しにくい(Palestro 2015、Palestro 2023) |
| ガリウムシンチ | 感染・炎症のほか腫瘍にも集まる。FDG-PETが使えない場合の脊椎感染などで代替に使われる | 画質が劣り、投与から撮影まで時間がかかり、特異性も低い(Palestro 2020) |
脊椎の骨髄炎では、FDG-PETは感度が高く、陰性的中率も高く、椎体終板の変性と感染を区別できるため、核医学の検査として第一に考えられます。ガリウムは、以前は骨シンチの補助として使われましたが、現在は主にFDGが使えない脊椎感染に限られます(Palestro 2015)。ガリウムの基本はガリウムシンチとは?検査の流れ・適応(SLIM)・正常の生理的集積とPETとの違いで説明しています。
入院患者の疑い感染での比較では、FDG-PET/CTのほうが標識白血球より感度が高く(89.7%と66.7%)、特異度は同程度、臨床医への有用性も高いと報告されています。ただし、これは1つの病院の後ろ向きの研究で、人数も少なく(白血球57人、PET/CT 42人)、すべての場面にあてはまるわけではありません(Dibble 2019)。
症例 60歳代男性 腰椎の化膿性脊椎炎(FDG-PET/CT)

引用:Albano D, Lauri C, Signore A, et al. Br J Radiol 2026;99:1024-1035(Figure 1). CC BY 4.0(無加工)。PMC
背部痛と炎症反応の上昇があり、血液培養で黄色ブドウ球菌が陽性だった60歳代男性のFDG-PET/CTです。(A)第4・第5腰椎に相当する椎間板と隣り合う椎体に集積があり、化膿性脊椎炎が疑われました。(B)は3か月の抗菌薬治療後で、集積が広がり強くなっていて、治療が効いていないと判断されています。(C)は抗菌薬を変更して2か月後で、一部に代謝の改善がみられました。
読影・検査で注意すること
- 正常分布:早期像で肺、のちに肝臓・脾臓・骨髄に集まる。肺に強い集積が4時間を超えて続くのは異常(日和見感染、放射線肺臓炎、薬剤性肺障害など)で、標識・再注射のトラブルによる集積は4時間以内に消えることが多い(Signore 2018)
- 腸管の集積:HMPAOでは時間とともに腸管に出る。小児では1時間後に20〜30%、成人では3〜4時間後に2〜6%で正常の腸管集積があるとされる(Signore 2018)
- リンパ節の集積:感染と紛らわしいことがある(Palestro 2006)
- SPECT/CT:位置の特定に役立つ。CTを減弱補正に使った画像と、補正なしの画像の両方を見る(Signore 2018)
核医学の検査の全体像は核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめも参考にしてください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 99mTc-HMPAOと111In-oxineのどちらが優れていますか?
A. 一方が常に優れているわけではありません。HMPAOは画質がよく当日に撮れる一方、遅い時間の腹部では腸管排泄による偽陽性が出ます(Signore 2018)。疑う部位と施設の体制で選ばれます。
Q. 骨髄シンチはなぜ併用しますか?
A. 白血球は正常の骨髄にも集まるため、集積が感染か骨髄かを区別するためです。併用した検査の精度はおよそ90%とされ、骨髄の分布が変わった部位で特に有用です(Palestro 2006)。
Q. 白血球シンチが陰性なら、感染はないと言えますか?
A. そうとは限りません。脊椎の感染や、抗菌薬を使っているとき、慢性の感染では偽陰性が起こります(Whalen 1991、Lauri 2026)。臨床症状や他の検査と合わせて判断します。
Q. 今は白血球シンチよりFDG-PETを選ぶべきですか?
A. 場面によります。脊椎の感染や不明熱ではFDG-PET/CTが中心ですが、人工関節感染では白血球・骨髄シンチが特異的とされます(Palestro 2023)。どの検査が適切かは、主治医や検査施設と相談してください。
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参考文献
- Signore A, Jamar F, Israel O, et al. Clinical indications, image acquisition and data interpretation for white blood cells and anti-granulocyte monoclonal antibody scintigraphy: an EANM procedural guideline. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2018;45(10):1816-1831. PubMed
- Palestro CJ, Love C, Tronco GG, et al. Combined labeled leukocyte and technetium 99m sulfur colloid bone marrow imaging for diagnosing musculoskeletal infection. Radiographics. 2006;26(3):859-870. PubMed
- Palestro CJ. Radionuclide imaging of osteomyelitis. Semin Nucl Med. 2015;45(1):32-46. PubMed
- Palestro CJ. Molecular Imaging of Periprosthetic Joint Infections. Semin Nucl Med. 2023;53(2):167-174. PubMed
- Whalen JL, Brown ML, McLeod R, et al. Limitations of indium leukocyte imaging for the diagnosis of spine infections. Spine (Phila Pa 1976). 1991;16(2):193-197. PubMed
- Dibble EH, Yoo DC, Baird GL, et al. FDG PET/CT of Infection: Should It Replace Labeled Leukocyte Scintigraphy of Inpatients? AJR Am J Roentgenol. 2019;213(6):1358-1365. PubMed
- Lauri C, Campagna G, Ottaviani R, et al. Diagnostic accuracy of radiolabelled-WBC scintigraphy in patients with antibiotic therapy. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2026;53(9):5605-5616. PubMed
- Palestro CJ. Molecular Imaging of Infection: The First 50 Years. Semin Nucl Med. 2020;50(1):23-34. PubMed
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