
先に結論:白質裂傷は乳児(とくに生後1年未満)の前頭葉に多い、皮質下白質の線状の裂け目。髄液様の液体か、液面を作る出血を含む。T2*強調像・SWIで見つけやすい。AHTの子どもで報告が多いが単独で虐待を証明する所見ではなく、分娩外傷などの鑑別と、全身の所見・経過を合わせて判断する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな子に見られるか | AHT 137例中18例。18例中16例が1歳未満(Palifka 2016、Caré 2022のまとめ) |
| MRIの見え方 | 皮質下白質の線状の裂け目、液面形成や層をなす出血。前頭葉に多い(Caré 2022) |
| 見つけやすい撮像法 | 18例の半数以上でT2*強調像(GRE)かSWIでいちばんよく見えた(Caré 2022) |
| 事故との比較 | 中等度〜重度の事故による脳外傷28例では0例(Palifka 2016) |
| 注意点 | 難産・器械分娩後の皮質の裂け目や、静脈うっ滞による変化という説もある(Au-Yong 2009、Larsen 2019) |
乳児の白質裂傷(contusional tear)とは
白質裂傷は、脳の実質、とくに皮質下白質や皮質と白質の境界に生じる線状・スリット状の裂け目です。文献では contusional tear、contusional cleft、cortical tear、parenchymal laceration、subcortical cleft などさまざまな名前で呼ばれています(Larsen 2019)。成人の脳挫傷が脳の表面(皮質)の出血・浮腫として現れることが多いのに対し、乳児では表面の挫傷は少なく、皮質下に裂け目ができるのが特徴とされます。成人を中心とした脳挫傷の画像は脳挫傷とは?症状・原因と好発部位で解説しています。
この病変は病理の報告から知られるようになりました。繰り返しの虐待による頭部外傷で亡くなった2歳半までの12人の脳を調べた研究では、生後5か月未満の9人の脳すべてに、星状膠細胞に囲まれ、古い出血と新しい出血の跡を伴うスリット状の白質病変(contusional tear)がありました。5か月を超えた3人では、成人の閉鎖性頭部外傷に近い白質病変がみられています(Calder 1984)。乳児の脳は水分が多く、髄鞘化が進んでいないため、成人とは違う形で壊れると考えられています。
生前の画像では、まず頭部エコーで報告されました。虐待を受けた6人の乳児で皮質下白質の contusional tear がエコーで見つかり、揺さぶりによる損傷の所見として報告されています(Jaspan 1992)。現在はMRIで評価されることがほとんどです。
MRI・CTでの見え方
白質裂傷は、皮質下白質や皮質と白質の境界に沿った線状の裂け目として写り、主に前頭葉と側頭葉の前部に生じます。中身は髄液に近い液体のこともあれば、出血が下側にたまって液面(fluid-fluid level)を作ることもあります(Caré 2022)。上を覆う軟膜下出血(subpial hemorrhage)を伴うことがあります(Cartocci 2021)。
| 撮像法 | 見え方・役割 |
|---|---|
| CT | 線状の低吸収や液面を作る高吸収の出血として見える。Palifkaらの18例では9例がCTで見えた(Caré 2022) |
| T1強調像・T2強調像 | 境界のはっきりした裂け目。液体の中の出血の層を確かめる |
| T2*強調像(GRE)・SWI | 出血の層や小さな出血を拾う。18例の半数以上でいちばんよく見えた(Caré 2022) |
| FLAIR | 裂け目の検出に感度が高い。髄鞘化がほぼ終わる2歳以降でとくに有用とされる(Cartocci 2021) |
| 拡散強調像(DWI) | 18例中2例ではDWIでいちばん見つけやすかった(Caré 2022)。周囲の虚血性変化の評価にも使う |
Palifkaらの18例では、病変は前頭葉に最も多く、7例は多発していました。11例(約60%)に頭蓋骨骨折か頭皮の腫れがあり、多くの例で網膜出血や頭蓋内の出血など、ほかの外傷所見も見つかっていました(Caré 2022)。乳児の頭部MRIで各撮像法をどの順に見るかは頭部MRIの読み方|T1・T2・FLAIR・DWI・T2*(SWI)を参照してください。
症例 生後4か月の男児 両側の白質裂傷と軸索損傷

引用:Caré MM. Parenchymal Insults in Abuse—A Potential Key to Diagnosis. Diagnostics (Basel) 2022;12(4):955(Figure 4)(CC BY 4.0)
けいれんと傾眠で受診した例です。CT(a)で右の大脳鎌に沿った硬膜下血腫(白矢印)、骨条件の冠状断(b)で右頭頂骨の骨折(黒矢印)と頭皮の腫れがあります。4日目のT2強調像(c)では、側頭葉と後頭葉の境界付近の両側に、液体と出血の液面を伴う裂け目(白矢印)がみられます。SWI(d)では、裂け目の中に層をなす出血(白矢印)と、両側の前頭葉の皮質・白質境界付近の軸索損傷(黒矢印)が写っています(Caré 2022)。
出血・脳挫傷・ほかの病変との区別
白質裂傷は出血を含むことが多いため、「脳内出血」や「出血性脳挫傷」と読まれがちです。見分けるときは、形・場所・経過に注目します。
| 病変 | 白質裂傷との違い |
|---|---|
| 出血性脳挫傷 | 脳の表面(皮質)に沿う出血と浮腫。最初の数日で大きくなり、周りに浮腫が広がることが多い(Caré 2022)。白質裂傷は皮質下の線状の裂け目で、出血は裂け目の中で層をなす |
| 静脈性梗塞・出血 | 傍矢状部の前頭頭頂葉や側頭葉後部など静脈の灌流域に沿い、損傷した架橋静脈や硬膜下血腫の深部に生じる(Caré 2022)。静脈洞・皮質静脈の血栓を確かめる |
| 分娩に関連した皮質の裂け目 | 器械分娩などの難産のあとの新生児にみられ、5例中4例が難産だった報告がある(Au-Yong 2009)。出生時からの経過と分娩歴を確かめる |
| 嚢胞性の脳軟化 | 髄液様の裂け目は小さな嚢胞性軟化に似るが、形と経過の変化で区別する(Caré 2022) |
| 裂脳症・脳梗塞 | 裂脳症は灰白質で裏打ちされた裂け目が脳室まで達する奇形。孤立した皮質の裂け目の鑑別に挙げられている(Au-Yong 2009) |
裂脳症などの奇形については大脳皮質形成異常のMRI、新生児・乳児のけいれんで撮るMRIの全体の見方は新生児・乳児けいれんのMRIにまとめています。
症例 生後2か月の男児 左前頭葉の限局した白質裂傷

引用:Caré MM. Parenchymal Insults in Abuse—A Potential Key to Diagnosis. Diagnostics (Basel) 2022;12(4):955(Figure 6)(CC BY 4.0)
早産で生まれ、けいれんで受診した例です。CT(a)で左前頭葉に小さな裂け目があり、後ろ側に出血が層をなしています(白矢印)。T1強調像(b)では、境界のはっきりした低信号の裂け目と、後ろ側のわずかな出血の層(白矢印)がみられます。この例では、その後の全身骨撮影で治りかけの骨折が見つかっています(Caré 2022)。
虐待による頭部外傷(AHT)との関係
白質裂傷が注目されるのは、AHTとの関係です。3歳未満でAHTと診断された137例と、中等度〜重度の事故による脳外傷28例をMRIで比べた研究では、白質裂傷はAHT群の18例にみられ、事故群では1例もありませんでした(Palifka 2016)。事故群には転落・交通事故・歩行中の事故などが含まれ、そのうち8例は1歳未満でした(Caré 2022)。総説も、外傷の記録がない乳児にこの所見を見たときは、虐待による損傷を考えるきっかけにすべきだとしています(Caré 2022)。
ただし、次の点に注意が必要です。
- AHTのMRIの総説は、AHTの診断は単純ではなく、詳しい病歴をもとに多職種で行うものだとしています(Cartocci 2021)。白質裂傷を「揺さぶりに特有」とした報告がある一方、AHTで多いという報告として紹介されています。
- 器械分娩などの難産による皮質の裂け目が報告されており、虐待の所見と誤って解釈されないよう注意が促されています(Au-Yong 2009)。
- 病理の立場から、皮質下の裂け目の7例で外傷性軸索損傷に特徴的な軸索の腫大が裂け目の周りに見られず、直接の外力ではなく静脈の還流障害による二次的な変化ではないかとする報告もあります。この報告は、皮質下や軟膜下の出血を見たら脳静脈血栓症を探すべきだとしています(Larsen 2019)。
このように、白質裂傷が生じる仕組みには議論があります。画像の役割は所見を正確に記載し、ほかの外傷所見(硬膜下血腫、骨折、網膜出血など)や静脈血栓の有無を確かめ、鑑別を示すことです。虐待かどうかの判断は、病歴・診察・全身骨撮影・眼底検査などを合わせ、小児科・脳神経外科・小児虐待の専門チームで行われます。子どもの頭部外傷でどの検査を選ぶかは頭を打ったときの画像検査も参考にしてください。
年長児での報告
白質裂傷は1歳未満の乳児に特徴的とされてきましたが、繰り返しの頭部外傷のあった10歳代の男子3人で、両側の大脳白質に高度の裂傷がみられた報告があります。2人は就学前から自分で頭を強く打ちつける行動があり、1人は幼少期から空手とボクシングをしていました。以前の画像では裂傷がないか軽く、小児期に後から生じたと考えられています(Murofushi 2020)。乳児以外でも、頭部外傷を繰り返すことで同じような病変が起こりうることを示す報告です。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 白質裂傷があれば虐待と考えてよいですか?
この所見だけで虐待と決めることはできません。AHTの子どもで報告が多く、事故の比較群では見られなかったという研究はありますが(Palifka 2016)、分娩に関連した裂け目(Au-Yong 2009)や静脈性の病態とする説(Larsen 2019)もあります。ほかの所見と病歴を合わせ、多職種で判断します。
Q2. どの撮像法で見つけやすいですか?
出血の層を伴うことが多いため、T2*強調像(GRE)やSWIで見つけやすく、Palifkaらの18例では半数以上でこれらがいちばんよく見えました。DWIでいちばん見つけやすかった例もあります(Caré 2022)。CTでは18例中9例しか見えなかったため、CTで異常がなくてもMRIで見つかることがあります。
Q3. 出血性脳挫傷とはどう見分けますか?
脳挫傷は脳の表面に沿う出血と浮腫で、数日で大きくなり浮腫が広がることが多いのに対し、白質裂傷は皮質下白質の線状の裂け目で、出血が中に層をなします(Caré 2022)。乳児では表面の挫傷自体が少ないとされています(Larsen 2019)。
Q4. 経過観察の画像では何を見ますか?
髄液様の裂け目は小さな嚢胞性の脳軟化に似ることがあり、特徴的な形と時間による変化を確かめることが区別に役立つとされています(Caré 2022)。あわせて、ほかの外傷所見や静脈血栓の有無も確かめます(Larsen 2019)。乳児の頭部の打撲のあとに、けいれん、ぐったりしている、繰り返す嘔吐などがあれば、すぐに医療機関を受診してください。
参考文献
- Palifka LA, Frasier LD, Metzger RR, et al. Parenchymal Brain Laceration as a Predictor of Abusive Head Trauma. AJNR Am J Neuroradiol. 2016;37(1):163-8. PubMed
- Caré MM. Parenchymal Insults in Abuse-A Potential Key to Diagnosis. Diagnostics (Basel). 2022;12(4):955. PubMed
- Calder IM, Hill I, Scholtz CL. Primary brain trauma in non-accidental injury. J Clin Pathol. 1984;37(10):1095-1100. PubMed
- Jaspan T, Narborough G, Punt JA, et al. Cerebral contusional tears as a marker of child abuse–detection by cranial sonography. Pediatr Radiol. 1992;22(4):237-45. PubMed
- Larsen KB, Barber Z, Squier W. The pathology and aetiology of subcortical clefts in infants. Forensic Sci Int. 2019;296:115-122. PubMed
- Au-Yong IT, Wardle SP, McConachie NS, et al. Isolated cerebral cortical tears in children: aetiology, characterisation and differentiation from non-accidental head injury. Br J Radiol. 2009;82(981):735-41. PubMed
- Cartocci G, Fineschi V, Padovano M, et al. Shaken Baby Syndrome: Magnetic Resonance Imaging Features in Abusive Head Trauma. Brain Sci. 2021;11(2):179. PubMed
- Murofushi Y, Hosoyama K, Kubota K, et al. Cerebral white matter lacerations in children caused by repetitive head trauma. Brain Dev. 2020;42(1):83-87. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
