手首の親指側にある舟状骨(しゅうじょうこつ)は、骨折しても骨がつきにくい骨として知られています。骨折が見逃されたり、骨がつかないまま時間がたったりすると、折れたところが関節のように動く舟状骨偽関節(scaphoid nonunion)になります。放っておくと、手首全体の変形性関節症であるSNAC wrist(スナック リスト)へ進むことがあります。

この記事では、舟状骨偽関節をX線・CT・MRIでどう評価するか、とくにCTで見る骨のつき具合と変形、MRIで見る近位骨片の血流(骨壊死)、SNAC wristの進み方を、実際の画像とともに解説します。新しい骨折の見つけ方は舟状骨骨折の好発部位とCT画像診断、靱帯損傷による関節症は舟状月状骨解離とSLAC wristで扱っています。

先に結論:舟状骨偽関節の画像診断のポイント

  1. 定義:3〜6か月で骨がつかなければ遷延癒合、6か月を過ぎても骨がつかなければ偽関節とされます
  2. CTが中心:舟状骨の長軸に合わせた斜め矢状断で、骨のつながり(架橋)、骨折面の硬化・嚢胞、骨の吸収、背側に曲がる変形(humpback変形)を評価します
  3. MRIで血流:近位骨片の骨壊死の評価には造影MRIが勧められます。造影されない近位骨片は血流の低下・壊死を示します
  4. 変形の程度:側面の舟状骨内角(intrascaphoid angle)が大きいほど、成績が悪い傾向があります
  5. SNAC wrist:橈骨茎状突起と舟状骨の間から関節症が始まり、時間とともに手根中央関節へ広がります

舟状骨偽関節とは?

舟状骨は近位列と遠位列の手根骨をまたぐ細長い骨で(骨の位置は手の解剖と骨の名称)、血管は遠位側から近位へ逆向きに入ります。そのため近位の骨片は血流が乏しくなりやすく、虚血や骨壊死を起こす危険があるとされます(Dietrich 2026)。

骨のつき方は時間で区切って考えます。国際的な画像の合意声明では、3〜6か月で骨がつかなければ遷延癒合、6か月を過ぎても骨がつかなければ偽関節(nonunion、pseudoarthrosis)と定義されています(Dietrich 2026)。

偽関節を放置するとどうなるか

治療を受けていない舟状骨偽関節55人の検討では、受傷から5年以上たった32人のうち31人(97%)に関節症が生じていました(Ruby 1985)。症状のある47の偽関節を調べた別の検討では、変化が舟状骨の中にとどまる群の偽関節期間は平均8.2年、橈骨と舟状骨の間の関節症の群は17.0年、手首全体の関節症の群は31.6年で、骨折のずれと手根骨の不安定性が変化の重さと関連していました(Mack 1984)。手術を受けた52例の検討でも、DISIのあった8例はいずれも1mm以上の骨折のずれを伴い、関節症は時期の差はあっても避けがたいと結論されています(Milliez 1987)。偽関節は時間とともに関節症へ進む病気と考えられます。

画像の見方

X線(レントゲン)

舟状骨撮影(尺屈位の正面像など)を含む数方向で見ます。

  • 骨折線が残っている:受傷から時間がたっても黒い線が消えない
  • 骨折面の変化:辺縁の硬化(白くなる)、嚢胞、骨の吸収によるすき間の開大
  • 近位骨片の濃さ:近位骨片が周りより白く濃い場合は、血流低下を疑う手がかりになります
  • 手根骨の並び:側面像で月状骨が背側に傾いていないか。Mackらは月状骨の背屈10°以上を手根骨の不安定性の目安としています(Mack 1984)

ただし最初のX線で骨折が見えず、1年後に偽関節と診断される例もあります(Dietrich 2026)。手首の親指側の痛みが続く場合は、X線だけで判断しないことが大切です。

CT:骨のつき具合と変形を見る

合意声明では、次の点でCTが推奨されています(Dietrich 2026)。

  • 骨癒合の評価:CTが第一選択。転位のない骨折では、12週後に骨梁の架橋が50%以上あれば安定とみなす考え方が示されています
  • 新しい骨折か古い骨折か:X線で決められないとき、CTが最もよい方法です
  • 不安定性:1mmを超えるずれ、手根骨の不安定性、舟状骨内角35°超は不安定な骨折の特徴で、骨の欠損・粉砕、DISI(月状骨の背屈)、近位極の骨折も不安定性の基準に加えられます
  • 変形(humpback変形):CTが第一選択で、斜め矢状断での舟状骨の高さと長さの比が最も再現性のよい計測とされています

CTは舟状骨の長軸に合わせた斜め矢状断・斜め冠状断に再構成して読むのが基本です。普通の矢状断・冠状断では骨折面が斜めに切れ、すき間や架橋を見誤りやすくなります(再構成の考え方はマルチスライスCTとスライス厚)。

舟状骨偽関節 X線 CT
引用:Iheb et al. Cureus 2026(Figure 1)
(a)正面像と(b)側面像のX線で、Alnot分類・Bahri分類のIIA期の舟状骨偽関節がみえます(橙の円)。(c、d)CTでは骨折線が残り、辺縁は硬化し、近位骨片の濃度が上がっていて、血流の低下が疑われます。(出典:Iheb et al. Cureus 2026, Figure 1, CC BY 4.0)

変形と成績の関係

骨癒合した舟状骨骨折46件を調べた検討では、側面の舟状骨内角が35°未満の正常な形の群は83%で満足な成績、関節症は22%でした。一方、骨癒合の時点で45°を超える屈曲変形があった群では、満足な成績は27%、関節症は54%でした(Amadio 1989)。骨がついても、曲がったままでは成績がよくないため、偽関節の手術前には変形の程度をCTで測ります。

MRI:近位骨片の血流(骨壊死)を見る

偽関節の手術では、近位骨片に血流が残っているかどうかで、血管をつけた骨移植を選ぶかなどの方針が変わります。合意声明は、偽関節の血流評価には造影MRIが望ましいとしています。脂肪抑制T1強調像で造影されない近位骨片は、虚血や骨壊死を示します。一方、造影される部分には生きた骨髄だけでなく、偽関節の周りの線維血管性の修復組織も含まれるため注意が要ります(Dietrich 2026)。

術前MRIの精度をまとめたメタ解析(14研究)では、全体の感度0.702・特異度0.85、造影しないMRIは感度0.63・特異度0.85、造影MRIは感度0.77・特異度0.87でした。T1強調像での低信号は骨壊死の予測に信頼できる一方、等信号は骨が生きている証拠にはならないとされています(Mahmoudi Nasab 2025)。

舟状骨偽関節 造影MRI 近位骨片
引用:Dietrich et al. Eur Radiol 2026(Fig. 4)
舟状骨の長軸に沿った造影後の斜め矢状断MRIで、3人の近位骨片の血流を比べています。(a)近位骨片が強く均一に造影され(矢印)、手術で点状の出血が確認された生きた骨片。(b)近位極の掌側は造影される(生きた骨、矢印)が、背側は造影されない(壊死、矢頭)。(c)近位骨片がまったく造影されず(矢印)、手術でも出血がなく壊死と確認された例。(出典:Dietrich et al. Eur Radiol 2026, Fig. 4, CC BY 4.0)

SNAC wristの進み方

SNAC(scaphoid nonunion advanced collapse)wristは、舟状骨偽関節から始まる手首の関節症です。合意声明では次の3段階で示されています(Dietrich 2026)。

  • 1期:橈骨茎状突起と、それに向かい合う舟状骨の遠位骨片の間に限られた関節症
  • 2期:橈骨と舟状骨の関節から、舟状骨と有頭骨の関節へ広がる
  • 3期:有頭骨と月状骨の関節(手根中央関節)に及ぶ

X線と関節造影CTで段階を示した総説では、手根骨全体の関節症を4期として加えています(Bouredoucen 2026)。分け方には報告による違いがありますが、橈骨茎状突起の周りから始まり、手根中央関節へ広がるという流れは共通です。

SNAC wrist MRI 病期
引用:Dietrich et al. Eur Radiol 2026(Fig. 5)
(a)SNAC関節症の進み方の模式図(左から1〜3期)。(b〜d)冠状断の脂肪抑制プロトン密度強調像。(b)舟状骨腰部の偽関節で、関節症は橈骨茎状突起とそれに向かい合う舟状骨の縁に限られる(1期)。(c)舟状骨と有頭骨の関節へ広がる(矢印、2期)。(d)橈骨・舟状骨、舟状骨・有頭骨の関節に加え、舟状骨と月状骨の関節にも及ぶ進んだ関節症(矢印、3期)。(出典:Dietrich et al. Eur Radiol 2026, Fig. 5, CC BY 4.0)

SNAC wrist X線 関節造影CT
引用:Bouredoucen. Skeletal Radiol 2026(Fig. 5)
Watson分類によるSNACの各期を、X線正面像と関節造影コーンビームCTで示しています。(A、B)1期:橈骨茎状突起と舟状骨の遠位骨片の間に限られた関節症。(C、D)2期:橈骨と舟状骨の関節全体に広がり、有頭骨と月状骨の関節は保たれる。(E、F)3期:有頭骨と月状骨の関節にも及ぶ。(G、H)4期:手根骨全体の関節症。(出典:Bouredoucen. Skeletal Radiol 2026, Fig. 5, CC BY 4.0)

読影レポートに書いておきたいこと

  • 偽関節の場所(近位極・腰部・遠位)と、骨折面の硬化・嚢胞・すき間の幅
  • 架橋の有無(あればおよその割合)
  • 舟状骨内角・高さと長さの比などの変形、月状骨の背屈(DISI)
  • 近位骨片の濃度(CT)と造影の程度(MRI)
  • 関節症の範囲(橈骨茎状突起、舟状骨と有頭骨、有頭骨と月状骨)

見逃しやすい点・まぎらわしいもの

  • 「捻挫」として扱われた骨折:最初のX線で骨折が見えず、のちに偽関節として見つかることがあります(Dietrich 2026)。見逃しやすい手首の骨折は見逃しやすい骨折まとめにもまとめています
  • SLAC wrist:舟状月状骨靱帯の損傷から起こる関節症で、関節症の広がり方が似ています。舟状骨に偽関節があるか、舟状骨と月状骨の間が開いているかで区別します(舟状月状骨解離とSLAC wrist)
  • 舟状骨の骨壊死(Preiser病)・月状骨の骨壊死(Kienböck病):骨折のない骨壊死も手首の痛みの原因になります(キーンベック病、特発性骨壊死とその関連疾患)
  • MRIの「等信号」を過信しない:造影しないMRIで近位骨片が等信号でも、血流が保たれているとは限りません(Mahmoudi Nasab 2025)
  • 術後のスクリュー:金属のまわりでは骨癒合が見えにくくなります。合意声明でも術後評価にはCTが最も役立つとされています(Dietrich 2026)(プレート・スクリューのレントゲンの見方)
  • ほかの手首の骨折:有鉤骨鉤骨折、橈骨遠位端骨折

治療方針に関わる所見

舟状骨偽関節では、関節を守り手首の機能を保つために、一般に手術が適応とされます(Dietrich 2026)。どの手術を選ぶかは、主に次の画像所見で決まります。

  1. 偽関節の場所:近位極か、腰部か、遠位か
  2. 骨の欠損と変形:骨折面の吸収の程度、humpback変形、舟状骨内角、DISIの有無(CT)
  3. 近位骨片の血流:造影MRIでの造影の有無(血管をつけた骨移植を考えるかどうか)
  4. 関節症の広がり:SNACの段階。関節症が進んでいれば、骨をつける手術ではなく、手根骨の切除や部分的な固定術などが検討されます(Bouredoucen 2026)

まれに、慢性の偽関節が自然に骨癒合した報告もあります(Iheb 2026)が、多くの偽関節は時間とともに関節症へ進むため(Ruby 1985)、画像で段階を正しく伝えることが大切です。

舟状骨偽関節でよくある疑問(Q&A)

Q. 何年も前の手首のけがで「偽関節」と言われました。痛みがなくても治療が必要ですか?
A. 症状がなくても、偽関節は年数とともに関節症へ進むことが報告されています(Ruby 1985、Mack 1984)。ずれや不安定性の有無などを画像で確認し、主治医と方針を相談します。

Q. CTとMRIはどちらを撮ればよいですか?
A. 骨がついているか、どれだけ変形しているかはCT、近位の骨片に血流が残っているかは造影MRIが向いています(Dietrich 2026)。目的によって使い分けます。

Q. 骨壊死があると治りませんか?
A. 近位骨片の血流が乏しいと骨がつきにくくなるため、血管をつけた骨移植などの方法が検討されます。MRIで造影されない部分の広さが、方法を選ぶ材料になります(Dietrich 2026)。

※手首の親指側の痛み・腫れが続く、手をついてから手首の痛みが取れないなど、気になる症状があれば医療機関(整形外科)を受診してください。

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参考文献

  1. Dietrich TJ, Teh J, Schmitt R, et al. Interdisciplinary consensus statements on imaging of scaphoid fractures. Eur Radiol. 2026;36(10):7584-7598. PubMed
  2. Ruby LK, Stinson J, Belsky MR. The natural history of scaphoid non-union. A review of fifty-five cases. J Bone Joint Surg Am. 1985;67(3):428-32. PubMed
  3. Mack GR, Bosse MJ, Gelberman RH, et al. The natural history of scaphoid non-union. J Bone Joint Surg Am. 1984;66(4):504-9. PubMed
  4. Milliez PY, Courandier JM, Thomine JM, et al. The natural history of scaphoid non-union. A review of fifty-two cases. Ann Chir Main. 1987;6(3):195-202. PubMed
  5. Amadio PC, Berquist TH, Smith DK, et al. Scaphoid malunion. J Hand Surg Am. 1989;14(4):679-87. PubMed
  6. Mahmoudi Nasab O, Najd Mazhar F, Behmanesh A, et al. How accurate is preoperative MRI in assessing scaphoid vascularity in patients with scaphoid nonunion? A systematic review and meta-analysis. Eur J Med Res. 2025;30(1):970. PubMed
  7. Bouredoucen H. Surgical management and imaging evaluation of post-traumatic periscaphoid osteoarthritis (SLAC and SNAC wrists). Skeletal Radiol. 2026;55(5):947-971. PubMed
  8. Iheb T, Saibi K, Laamarti D, et al. Unexpected Spontaneous Consolidation of a Chronic Scaphoid Nonunion: A Report of a Rare Case and Review of Previously Published Cases. Cureus. 2026;18(6):e111610. PubMed

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