先に結論:上肢の骨折・脱臼の初期対応
- 上肢の外傷は、部位ごとの典型的な骨折と固定方法を知っておくと初期対応がしやすくなります(鎖骨は8の字包帯+三角巾、前腕・手関節はシーネ固定など)
- 見逃しやすいのは、Monteggia骨折(尺骨骨折+橈骨頭脱臼)・舟状骨骨折・月状骨周囲脱臼・小児の肘の骨折です。疑ったら固定して整形外科へつなぎます
- 小児の肘の骨折・転位のある骨折・脱臼・神経血管損傷は整形外科にすぐ相談します
- 肩関節後方脱臼はまれで、けいれんや感電でも起こり、正面像だけでは見逃されやすいため、腋窩撮影やCTで確認します
- 整復に鎮痛・鎮静が必要な場合は、施設の手順に沿って行います
鎖骨、肩鎖関節、肩
▶鎖骨骨折:中1/3での骨折が多い。ついで、遠位端骨折、初期治療はクラビクルバンド。(8の字包帯)と三角巾。胸を張って装着すること。
鎖骨骨折はこちらに詳しくまとめました→【画像あり】鎖骨骨折とは?症状、分類、治療、手術適応まとめ!
▶肩鎖関節脱臼→三角巾
▶上腕骨近位端骨折、骨幹部骨折:肋骨骨折用のバストバンドを用いて、患肢上腕を体幹に巻きつけて固定の上、三角巾。
▶肩関節脱臼:
- 頻度が多いので、非専門医もできることが望ましい。
- 整復法はいろいろある。
- 筋肉をリラックスさせることが必要。
- 疼痛でできないときは、施設の手順に沿って鎮痛・鎮静を検討する。
- 大結節骨折を合併することがあり、整復後レントゲンを撮る。
- 三角巾にて固定。外旋位固定が再脱臼率を下げるとの報告もあるが、メタ解析の結果は一致していない。が、初療でそこまでする必要なし。
肩関節後方脱臼(見逃しに注意)
- 後方脱臼は前方脱臼よりまれで、年間10万人あたり1.1人。67%は外傷で、残りの多くはけいれん発作によるものでした(Robinson 2011)。感電でも起こります(Vaishya 2026)。
- 見逃されやすく、慢性化した後方脱臼の総説では、50〜79%が初診時に見逃されていたとされます(Vaishya 2026)。
- 腕を内旋したまま外旋できないのが手がかりです。正面像では上腕骨頭が内旋して電球のような形(light bulb sign)に見えることがあり、腋窩撮影やスカプラY撮影で骨頭の後方へのずれを確認します。骨頭前方の陥没(reverse Hill-Sachs病変)の評価にはCTが役立ちます(Vaishya 2026)。
- 整復後も、1年以内に17.7%で不安定性を繰り返し、40歳未満、けいれん発作による脱臼、大きなreverse Hill-Sachs病変が再発の予測因子でした(Robinson 2011)。整復は整形外科に相談します。
※肩周囲の外傷はなぜか夜寝るときにかなり痛む。肩甲骨の下に枕を入れるなど工夫するよう説明。痛み止めの処方を忘れずに。
肩関節脱臼についてはこちらに詳しくまとめました→反復性肩関節脱臼の原因は?CT、MRIの画像所見は?
肘(子供編)
▶肘内障:幼児が上肢を引っ張られた時に起こる。まずこのエピソードを確認する。確認できないときにはレントゲンをとる。整復は肘外側を押さえながら屈曲回外していく(回外屈曲法)。前腕を強く回内する過回内法の方が1回目の整復失敗が少なかった(9.2%対26.4%)とするメタ解析もある(エビデンスの質は低い)。
▶上腕骨顆上骨折:小児の肘周囲で一番多い骨折。活動性が増す幼稚園年長から小学生に多い。肘伸展位で手をついたときに起こる。肘正側面が大事。
▶上腕骨外顆骨折:顆上骨折に次いで多い。顆上骨折と同じくらいの年齢層に多い。肘伸展位で転倒したときに起こる。肘正面で健側と見比べる。
▶上腕骨内側上顆骨折:思春期に多い。肘伸展位で転倒。肘関節を安定させる内側側副靭帯が付着している部分であり、転位が大きければ肘関節は脱臼する。
※小児は訴えが分かりにくい。腫れるのも急速。気づかぬうちにコンパートメント症候群になることもある。そのため、肘内障でなければ整形外科をコールする。(特に転位が認められる場合は)
肘(共通編)
▶上腕骨顆骨折:上腕骨遠位fossa部の骨は薄く、この部位の骨折は偽関節となりやすい。シーネ固定。
▶肘頭骨折:肘頭を打った時に多い。シーネ固定。
▶橈骨頭骨折:肘伸展位で転倒したときに多い。橈骨頭骨折に骨間膜損傷と遠位橈尺関節の脱臼を合併したものをEssex-Lopresti骨折という。手関節の障害(遠位橈尺関節の尺骨頭長軸脱臼)を来すことがあるので、手関節までシーネ固定。
▶肘関節脱臼:肘伸展位で受傷した際に多く、ほとんどが後方脱臼。整復が必要。整形外科コール。
前腕
▶Monteggia脱臼骨折:
- Pit fall!尺骨骨幹部骨折を見たら、肘正側面を忘れずにとり、橈骨頭脱臼がないことを確認。
小児のMonteggia骨折は見逃されやすく、橈骨頭脱臼が数か月気づかれないまま慢性化することがある。早期に診断・整復すれば経過は良好だが、見逃して慢性化すると尺骨骨切りなど複雑な再建手術が必要になり、結果も予測しにくくなる。 - 橈骨頭前方脱臼は後骨間神経麻痺を合併することがある。後骨間神経はpure motorであるため、知覚障害を伴わない。長橈側手根伸筋は後骨間神経が分岐する前の橈骨神経本幹から支配されるので、手関節の背屈はできるが、指の伸展ができないのが特徴。
- 整形外科医をコール。
手関節
▶橈骨遠位端骨折:手をついて転倒した時に多く、高齢者に多い。上腕から手関節までのシーネ固定。固定後は三角巾で腕を吊り、腫れを抑えるため手を心臓より高く保つよう説明する。指が動かせるか、しびれがないかも確認する。
▶舟状骨骨折:
- 手をついて受傷することが多い。疼痛はそれほどでもないことがあり、見逃され、偽関節となることがある。
- Anatomical snuff box,distal pole,proximal poleに圧痛があるときに疑う。舟状骨3方向でレントゲン。診断することよりも、疑って後日整形受診させる方が重要。
▶舟状骨月状骨解離、月状骨周囲脱臼:
- これも手をついて受傷することが多い。疼痛がそれほどでもなく見逃されやすい。
- 手関節正面でGilula’s arcの乱れをみることがわかりやすい。診断することよりも、疑って後日整形受診させる方が重要。
- 手関節の外傷はTFCC損傷の可能性もあり、手関節捻挫と診断しても、後日整形受診が必要。
指
▶中手骨骨折:
- 掌側シーネ固定。注意すべきは第5中手骨の頸部骨折。別名ボクサー骨折。
- 人や壁などを殴った時に折れる。皮膚の観察が重要。ヒト咬傷になっていることがある。
▶基節骨以遠の骨折:掌側シーネ固定。隣の指とBuddy-tapeした方が安定。
▶PIP脱臼:
- 掌側脱臼はOberst麻酔下に整復を試みる。整復できれば伸展位で掌側シーネ固定。
- 整復できなければ伸筋腱が介在している可能性が高く手術を要する。
- 背側脱臼は中節骨のlipの骨折を伴う。軽度屈曲位で掌側シーネ固定。
▶槌指変形(mallet finger):
- 突き指で起こる。伸筋腱の末節骨付着部での断裂。DIP伸展位でのシーネ固定。
- 骨片が大きい・関節の亜脱臼を伴う骨性マレットは手術を検討
あわせて読みたい:PIP関節脱臼と画像診断のポイント
参考文献
- Whelan DB, Kletke SN, Schemitsch G, et al. Immobilization in External Rotation Versus Internal Rotation After Primary Anterior Shoulder Dislocation: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Am J Sports Med. 2016;44(2):521-532. PubMed
- Shinagawa K, Sugawara Y, Hatta T, et al. Immobilization in External Rotation Reduces the Risk of Recurrence After Primary Anterior Shoulder Dislocation: A Meta-analysis. Orthop J Sports Med. 2020;8(6):2325967120925694. PubMed
- Ruchelsman DE, Pasqualetto M, Price AE, et al. Persistent posterior interosseous nerve palsy associated with a chronic type I Monteggia fracture-dislocation in a child: a case report and review of the literature. Hand (N Y). 2009;4(2):167-172. PubMed
- Torabi M, Lenchik L, Beaman FD, et al. ACR Appropriateness Criteria Acute Hand and Wrist Trauma. J Am Coll Radiol. 2019;16(5S):S7-S17. PubMed
- Miller TC, Fishman FG. Management of Monteggia Injuries in the Pediatric Patient. Hand Clin. 2020;36(4):469-478. PubMed
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- Krul M, van der Wouden JC, Kruithof EJ, et al. Manipulative interventions for reducing pulled elbow in young children. Cochrane Database Syst Rev. 2017;7(7):CD007759. PubMed
- Robinson CM, Seah M, Akhtar MA. The epidemiology, risk of recurrence, and functional outcome after an acute traumatic posterior dislocation of the shoulder. J Bone Joint Surg Am. 2011;93(17):1605-1613. PubMed
- Vaishya R, Saiyed A, Vaish A, et al. Chronic posterior shoulder dislocation: Current evidence, treatment options, and a decision-making algorithm. J Orthop. 2026;77:142-149. PubMed
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