手の骨の解剖 骨の名前と並び方

手の骨は、手首の手根骨8個・手のひらの中手骨5本・指骨14本の、片手27個でできています(豆状骨以外の種子骨は数えない)。研修医のハジメくんと一緒に、手根骨の並び方、指と向きの名称、関節の名前、手首のレントゲン正常像の見方を順に整理します。

先に結論

  1. 手根骨は8個。親指側から近位列:舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、遠位列:大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨。手の骨は手根骨8・中手骨5・指骨14の27個。
  2. 向きは橈側=親指側・尺側=小指側、掌側=手のひら側・背側=手の甲側。指の関節は指先からDIP・PIP・MP、手根骨との境がCM関節(母指はIP・MP・CM)。
  3. 手首のX線は、正面像でGilulaの3本の弧と手根骨のすき間、側面像で橈骨・月状骨・有頭骨・第3中手骨の並びを見る。手をついて転んだ後は舟状骨骨折を見逃しやすい。

目的から読む: 手根骨8個の並び・覚え方 / 手の骨の数 / 指・向きの名称 / 関節の名前 / 手首レントゲンの見方 / 骨ごとの正常像 / 舟状骨骨折

手根骨は8個|名前と並び方、覚え方

手根骨は手首にある8個の小さな骨で、前腕側の近位列4個と指側の遠位列4個の2列に並びます。どちらの列も、親指側から順に名前を言えれば十分です。

ハジメハジメ(研修医)
先生、手根骨って何個でしたっけ。手首のX線を見ても、小さな骨が団子みたいに固まっていて、7個くらいにしか数えられません…。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
8個です。数え落とすのは、たいてい豆状骨ですね。正面像では三角骨の手のひら側に重なるので、1個に見えてしまいます。まず、2列に分けて並べてみましょう。

手根骨の解剖・場所のイラスト・図

列 親指側 → 小指側
近位列 舟状骨(scaphoid) → 月状骨(lunate) → 三角骨(triquetrum) → 豆状骨(pisiform)
遠位列 大菱形骨(trapezium) → 小菱形骨(trapezoid) → 有頭骨(capitate) → 有鉤骨(hamate)

覚えるときは「近位列:舟・月・三角・豆」「遠位列:大・小・頭・鉤」と、親指側から4つずつ区切って唱えると整理しやすくなります。

図1 手根骨8個の2列の並び 右手を手の甲側から見た模式図です。近位列4個と遠位列4個を色分けし、親指側から順に名前を書いています。豆状骨は三角骨の手のひら側に乗ります。
図1 手根骨8個の2列の並び 右手を手の甲側から見た模式図です。近位列4個と遠位列4個を色分けし、親指側から順に名前を書いています。豆状骨は三角骨の手のひら側に乗ります。
ハジメハジメ(研修医)
豆状骨はどこにあるんですか?近位列なのに、ほかの3つと横に並んでいない感じがします。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
いいところに気づきました。豆状骨は尺側手根屈筋の腱の中にある種子骨で、三角骨の手のひら側に乗っています。手首の小指側の付け根で、出っぱりとして触れる骨です。

レントゲンの正面像では、豆状骨は三角骨の手のひら側に重なって見えます。また、舟状骨の骨折は受傷直後のレントゲンでわかりにくいことがあります(舟状骨骨折の節)。

手の骨の名前と数|手根骨・中手骨・指骨で27個

手の骨は手首側から手根骨(8個)→中手骨(5本)→指骨(14本)の3グループで、片手27個です(豆状骨以外の種子骨は数えない)。指骨が14本なのは、母指だけ中節骨がないためです。

ハジメハジメ(研修医)
指は5本で、どの指も骨が3本ずつだから、指骨は15本ですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
親指を曲げてみてください。曲がる所は、ほかの指よりひとつ少なくありませんか。母指は基節骨と末節骨の2本だけなので、5本×3から1を引いて14本です。
図2 手の骨の3つのグループ 右手の骨を手の甲側から見た模式図です。手根骨8個・中手骨5本・指骨14本を色分けし、母指には中節骨がないことがわかります。
図2 手の骨の3つのグループ 右手の骨を手の甲側から見た模式図です。手根骨8個・中手骨5本・指骨14本を色分けし、母指には中節骨がないことがわかります。
グループ 骨の名前 数
手根骨 舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨・大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨 8個
中手骨 第1〜第5中手骨(手のひら・手の甲の部分) 5本
指骨 基節骨(5本)・中節骨(4本、母指にはない)・末節骨(5本) 14本

指の骨は、根元から基節骨・中節骨・末節骨と呼びます。合計すると、片手の骨は27個、両手で54個です(豆状骨以外の種子骨は数えない)。このほか、母指の付け根などに種子骨という小さな骨が見られることがあり、骨片と間違えないよう注意します。

手の解剖と名称|指の名前と、橈側・尺側・掌側・背側

指は親指から母指・示指・中指・環指・小指、向きは親指側を橈側・小指側を尺側、手のひら側を掌側・手の甲側を背側とよびます。

ハジメハジメ(研修医)
橈骨と尺骨って、どっちが親指側でしたっけ。尺骨のほうが太そうだから親指側…?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
手首で太いのは、じつは橈骨のほうです。橈骨は親指側、尺骨は小指側。「橈側」「尺側」という向きの名前も、この2本の骨から来ています。手のひらを上に向けても下に向けても、親指側はいつも橈側です。
図3 指の名前と向きの名称 右手の手のひらを前に向けた模式図です。母指から小指までの名前と、橈側・尺側、近位・遠位を書き、横から見た手で掌側・背側を示しています。
図3 指の名前と向きの名称 右手の手のひらを前に向けた模式図です。母指から小指までの名前と、橈側・尺側、近位・遠位を書き、横から見た手で掌側・背側を示しています。
部位 解剖学の名称 ふだんの呼び方・英語
第1指 母指(ぼし) 親指・thumb
第2指 示指(じし) 人差し指・index finger
第3指 中指(ちゅうし) 中指・middle finger
第4指 環指(かんし) 薬指・ring finger
第5指 小指(しょうし) 小指・little finger
手のひら 手掌(しゅしょう) palm
手の甲 手背(しゅはい) dorsum of hand
親指の付け根のふくらみ 母指球 thenar eminence
小指の付け根のふくらみ 小指球 hypothenar eminence
手首 手関節 wrist

向きの名称:手のひら側を掌側(palmar/volar)、手の甲側を背側(dorsal)、親指側を橈側(radial、橈骨のある側)、小指側を尺側(ulnar、尺骨のある側)、体の中心や手首に近い側を近位、指先側を遠位とよびます。

手の関節の名前|DIP・PIP・MP・CM関節と手首の関節

指の関節は指先からDIP関節・PIP関節・MP関節、中手骨と遠位手根骨の間がCM関節です。母指は関節がひとつ少なく、IP関節・MP関節・CM関節になります。

ハジメハジメ(研修医)
PIPとDIP、どっちが指先側かいつも迷います。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
頭の文字を読むと決まります。P は proximal(近位)、D は distal(遠位)。IP は「指の骨と骨の間」なので、近い側の IP が PIP、遠い側の IP が DIP です。MP は中手骨(metacarpal)と指骨(phalanx)の間、CM は手根骨(carpal)と中手骨の間ですね。
図4 指と手の関節の名前 示指と母指を横から見た模式図です。示指はDIP・PIP・MP・CM、母指はIP・MP・CMの関節があり、母指は中節骨がないぶん関節がひとつ少なくなります。
図4 指と手の関節の名前 示指と母指を横から見た模式図です。示指はDIP・PIP・MP・CM、母指はIP・MP・CMの関節があり、母指は中節骨がないぶん関節がひとつ少なくなります。

CM関節(carpometacarpal joint / CMC joint)

遠位手根骨と中手骨基部の関節です。第1CM関節(母指)は鞍関節(saddle joint)で、よく動きます。ほかのCM関節は平面関節が主体で、正面像では関節のすき間が均等かを見ます。

MP関節(metacarpophalangeal joint / MCP)

中手骨頭と基節骨底の関節です。正面像で関節のすき間の幅と均等さ、側面像で脱臼や、掌側板(volar plate)損傷の手がかりになる小さな裂離骨片がないかを見ます。

PIP関節(proximal interphalangeal joint)

第2〜5指の近位指節間関節です。正面像で関節のすき間の均等さ、側面像で関節面が平行かを見ます。変形性変化や外傷による変化を最初に確かめる場所です。

DIP関節(distal interphalangeal joint)

第2〜5指の遠位指節間関節です。末節骨の基部の骨硬化・骨棘や、石灰化がないかを見ます。

IP関節(interphalangeal joint)

指節骨の間の関節です。母指にはIP関節が1つだけあります。正面像で関節のすき間の幅と、骨棘・骨硬化の有無を見ます。


手首(手関節)はひとつの関節ではない

ハジメハジメ(研修医)
手首の関節は「手関節」でひとつですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
名前はひとつでも、中身はいくつかの関節の集まりです。橈骨と手根骨の間、手根骨の2列の間、それに橈骨と尺骨の先どうしの間。どこが痛いかで、見る関節が変わります。
図5 手首をつくる関節 手首の正面の模式図です。橈骨手根関節・手根中央関節・遠位橈尺関節(DRUJ)を色分けし、尺骨と手根骨の間にTFCCがあることを書いています。
図5 手首をつくる関節 手首の正面の模式図です。橈骨手根関節・手根中央関節・遠位橈尺関節(DRUJ)を色分けし、尺骨と手根骨の間にTFCCがあることを書いています。

手首の関節の名称:手首(手関節)は1つの関節ではなく、橈骨と近位手根骨の間の橈骨手根関節、近位列と遠位列の間の手根中央関節、橈骨と尺骨の先端どうしの遠位橈尺関節(DRUJ)などが集まったものです。尺骨と手根骨の間には、三角線維軟骨複合体(TFCC)というクッションがあります。

TFCCの正常な形と、損傷したときのMRIでの見え方は、TFCC損傷とは?手関節MRI画像所見とTFCCの正常解剖で画像と合わせて確かめられます。

手首(手関節)レントゲンの見方|正常像のチェックポイント

手首のX線は正面(PA)像と側面像が基本です。正面像ではGilulaの3本の弧と手根骨どうしのすき間、側面像では橈骨・月状骨・有頭骨・第3中手骨が一直線か、両方で骨の輪郭の途切れを見ます。

マルオマルオ(技師)
撮る側からのひとことです!側面像は、橈骨と尺骨の先がきれいに重なっているかに加えて、豆状骨の手のひら側の縁が、舟状骨の遠位部と有頭骨の手のひら側の縁のあいだにあるかも見ると、まっすぐ横から撮れたかを確かめられます。ずれて写っていると並びの評価が難しいので、気になったら遠慮なく撮り直しを相談してください。舟状骨が気になるときは、依頼に「舟状骨撮影」と書いてもらえると、尺屈位の正面などを追加できますよ。

手首のレントゲンは、正面(PA)像と側面像を基本に、必要に応じて斜位像や、舟状骨を見やすくする舟状骨撮影(尺屈位の正面など)を追加します。正常像では次の点を確認します。

ハジメハジメ(研修医)
正面像で手根骨が詰まって見えると、どこが正常の並びなのかわかりません。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
骨を1個ずつ見る前に、縁をつないだ線を見てみましょう。近位列の前腕側の縁、近位列の指側の縁、有頭骨と有鉤骨の前腕側の縁。正常なら3本ともなめらかな弧になります。どこかで段がついたら、そこで並びが崩れています。
図6 Gilulaの3本の弧 手首のX線正面像の模式図です。近位列の前腕側の縁、近位列の指側の縁、有頭骨と有鉤骨の前腕側の縁をつなぐと、正常では3本のなめらかな弧になります。
図6 Gilulaの3本の弧 手首のX線正面像の模式図です。近位列の前腕側の縁、近位列の指側の縁、有頭骨と有鉤骨の前腕側の縁をつなぐと、正常では3本のなめらかな弧になります。
  • Gilulaの3本の弧(正面像):①近位列(舟状骨・月状骨・三角骨)の前腕側の縁、②近位列の指側の縁、③有頭骨と有鉤骨の前腕側の縁、をそれぞれ結ぶと、なめらかな3本の弧になります。弧が途切れたり段差があれば、脱臼や靱帯損傷を疑います(Gilula 1979)
  • 関節のすき間:手根骨どうしの間隔がほぼ均等で、骨の縁どうしが平行かどうかを見ます。舟状骨と月状骨の間だけが広い場合は、靱帯損傷の手がかりになります

舟状骨と月状骨の間が広いときの基準と、その先に起こる変化は、舟状月状骨解離(SL靭帯損傷)とは?X線・MRIの画像診断の基準とSLAC wristで症例と合わせて見られます。

図7 側面像で見る一直線の並び 手首のX線側面像の模式図です。正常では橈骨・月状骨・有頭骨・第3中手骨の軸がほぼ一直線に並び、左が手のひら側、右が手の甲側です。
図7 側面像で見る一直線の並び 手首のX線側面像の模式図です。正常では橈骨・月状骨・有頭骨・第3中手骨の軸がほぼ一直線に並び、左が手のひら側、右が手の甲側です。
  • 側面像の並び:橈骨・月状骨・有頭骨・第3中手骨がほぼ一直線に並ぶかを確認します
  • 骨の輪郭:骨皮質(骨の外側の白い縁)が途切れていないか、特に舟状骨・橈骨の先端を確認します

橈骨の先の角度と長さ(正常値の目安)

ハジメハジメ(研修医)
橈骨の先の角度って、正常値はいくつですか?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
側面像の掌側傾斜はおよそ15度、正面像の橈骨傾斜は20度台が目安です。ただ、集団や人によって差があるので、骨折のときは反対の手とくらべる考え方も役に立ちます。
図8 橈骨の先で測る4つの値 手首の正面像と側面像の模式図です。正面像で橈骨傾斜・橈骨高・尺骨変異、側面像で掌側傾斜を、どこからどこへ線を引いて測るかを書いています。
図8 橈骨の先で測る4つの値 手首の正面像と側面像の模式図です。正面像で橈骨傾斜・橈骨高・尺骨変異、側面像で掌側傾斜を、どこからどこへ線を引いて測るかを書いています。

骨折の評価では、橈骨の先端の角度や長さも測ります。手関節レントゲン981枚を測定した報告では、次の平均値でした(Bilgin 2023。トルコの集団での値で、人種・個人で差があります)。

計測項目 見る像 平均値(±標準偏差)
掌側傾斜(volar tilt) 側面 15.4±4.3度
橈骨傾斜(radial inclination) 正面 26.8±3.6度(男性)
橈骨高(radial height) 正面 13.6±2.1mm
尺骨変異(ulnar variance) 正面 0.8±1.9mm

骨折したときにこれらの値がどう崩れるか、見逃しやすい合併損傷は、橈骨遠位端骨折のレントゲンの見方とCT画像所見で続けて読めます。

骨ごとのレントゲン正常像|手根骨・関節・中手骨・指骨・尺骨・橈骨

ここからは、骨ごとにX線のどこを見るかを、ラベル付きの正常像で確かめます。まず日本語と英語の対訳です。

日本語 英語(標準表記) 備考
三角骨 triquetrum(triquetral bone) 近位列・尺側
月状骨 lunate 近位列中央
舟状骨 scaphoid 近位列・橈側
CM関節 carpometacarpal joint 略語:CMC joint
IP関節 interphalangeal joint 母指はIPのみ
MP関節 metacarpophalangeal joint 略語:MCP joint
PIP関節 proximal interphalangeal joint 第2~5指
DIP関節 distal interphalangeal joint 第2~5指
中手骨 metacarpal (bone) 第1~第5
基節骨 proximal phalanx 全指に存在
中節骨 middle phalanx 母指にはない
末節骨 distal phalanx 指先の骨(爪の下)
尺骨茎状突起 ulnar styloid process 尺骨遠位端の突起
尺骨 ulna 前腕の尺側の骨
橈骨 radius 前腕の橈側の骨(手関節では遠位端を主に評価)

近位手根骨

ハジメハジメ(研修医)
正面像で三角骨の輪郭がぼやけて二重に見えたので、骨折かと思いました。
ごろ〜ごろ〜(指導医)
そこは豆状骨が重なる場所です。輪郭が二重でも、それだけで骨折とは言えません。斜位像で重なりを外してから、骨皮質が途切れていないかを見ましょう。

三角骨(triquetrum)

近位列の尺側にあります。正面(PA)像では豆状骨(pisiform)と重なりやすいため、輪郭が不明瞭なことがあります。斜位像では重なりが外れ、輪郭を追いやすくなります。

月状骨(lunate)

近位列の中央にあります。側面像で橈骨遠位端〜月状骨〜有頭骨〜第3中手骨が一直線に並ぶかを確かめます。正面像では概ね四角形の輪郭、側面像では半月形の輪郭と、骨皮質の連続性を見ます。

舟状骨(scaphoid)

近位列の橈側にあります。尺屈位(ulnar deviation)の正面像で撮ると、舟状骨が短く重なって写るのを避けやすく、くびれた腰部(waist)を評価しやすくなります。単純X線で骨折が見えないこともあり、その場合の考え方は舟状骨骨折の節にまとめます。


中手骨(metacarpal (bone))

第1〜第5の5本です。正面像では基部(base)〜骨幹(shaft)〜骨頭(head)の連続性と、骨皮質の途切れ・骨梁の乱れを見ます。第1中手骨は短く、母指球側にあります。

基節骨(proximal phalanx)

すべての指にあります。正面像で基部の関節面とMP関節の合い方、側面像で骨皮質の途切れ(裂離骨折など)を見ます。

中節骨(middle phalanx)

第2〜5指にあります(母指にはない)。PIP関節とDIP関節の目印として、基部・頭部の形を押さえます。

末節骨(distal phalanx)

指先の、爪の下にある骨です。正面像で先端のふくらみ(末節骨粗面、tuft)の形を見ます。指先をはさんだ・打ったあとは、骨折線と、爪の下の血腫を思わせる軟部の腫れに注意します。


尺骨茎状突起(ulnar styloid process)

尺骨の遠位端の、背側〜尺側に突き出た部分です。正面像や側面像で茎状突起の位置と骨片(尺骨茎状突起骨折)を確かめます。TFCC損傷の臨床像と合わせて評価することがあります。

尺骨(ulna)

前腕の尺側の骨です。手関節のX線では遠位部だけが写ります。正面像で遠位橈尺関節(DRUJ)の合い方、側面像で橈骨との重なり方と、背側・掌側へのずれがないかを見ます。

橈骨(radius)

前腕の橈側の骨です。手関節のX線では遠位橈骨(distal radius)がいちばん大事な評価部位です。正面像では舟状骨窩(scaphoid fossa)と月状骨窩(lunate fossa)の連続性、DRUJの合い方を見ます。側面像では掌側傾斜(volar tilt)、背側へのずれ、関節面の段差(step-off)がないかを確かめます。

関連:手根骨、橈骨・尺骨、手関節の関節名のレントゲン解剖(画像をめくりながら骨の名前を確かめられます)

舟状骨骨折を見逃さないために|X線で見えないときはMRI

手をついて転んだあとに手首の親指側が痛むときは、最初のX線で骨折が見えなくても舟状骨骨折が残っていることがあります。疑いが続くときに、骨折を確かめるにも除外するにも最も正確なのはMRIです(Carpenter 2014)。

ハジメハジメ(研修医)
手をついて転んだ人の手首のX線で骨折が見えなかったら、「骨折なし」で大丈夫ですよね?
ごろ〜ごろ〜(指導医)
舟状骨だけは、そう言い切れません。受傷直後は骨折線がずれずに細いので、X線に写らないことがあるからです。親指の付け根の背側のくぼみ、嗅ぎタバコ窩(snuffbox)を押して痛がるかも聞いてみましょう。押して痛くなければ、骨折の見込みはかなり下がると報告されています(Carpenter 2014)。
マサマサ(技師)
…MRIだと、骨折線はT1強調像で骨髄の中を走る黒い線、まわりの骨髄浮腫は脂肪抑制のT2強調像やSTIRで白く出ます。黒い線が見えるかどうか、ぼくはまずT1から見ますね。
図9 舟状骨骨折が疑われるときの流れ 手をついて転倒→X線(尺屈位の正面を含む)→骨折が見えればその評価、見えず疑いが続けばMRI(使えなければCT)と進む流れ図です。
図9 舟状骨骨折が疑われるときの流れ 手をついて転倒→X線(尺屈位の正面を含む)→骨折が見えればその評価、見えず疑いが続けばMRI(使えなければCT)と進む流れ図です。

初回X線で骨折が見えない場合、骨折の確定にも除外にも最も正確なのはMRIで、CTは骨折の確認には有用ですが除外には不十分とされています(Carpenter 2014)。同じ報告では、救急外来で舟状骨骨折が疑われ初回X線で診断できない成人のうち、あとの画像で骨折が見つかる割合の推定は25%でした。診察所見では、嗅ぎタバコ窩の圧痛がないこと(陰性尤度比0.15)だけが骨折の見込みを大きく下げ、ほかの所見だけでは確定も除外もできませんでした(Carpenter 2014)。

Cochraneレビュー(11研究)では、X線で骨折が見えない舟状骨骨折疑いに対する成績は次のとおりでした(Mallee 2015)。

検査 感度 特異度
CT 72% 99%
MRI 88% 100%
骨シンチグラフィ 99% 86%

骨シンチは感度が高いものの特異度が低く、疑い例のうち本当に骨折している割合は中央値20%と低いため、偽陽性による過剰治療が増える点に注意が必要です(Mallee 2015)。

あわせて読みたい:舟状骨骨折とは?好発部位、CT画像診断のポイントは?

あわせて読みたい:有鉤骨鉤骨折とは

手の骨・手首のレントゲンでよくある疑問(Q&A)

Q. 豆状骨はどこにありますか?

手のひら側・小指側の手首にある小さな骨で、三角骨の手のひら側に乗っています。手首の小指側の付け根に出っぱりとして触れ、正面のレントゲンでは三角骨と重なって見えます。

Q. 手の骨は全部で何個ありますか?

片手で27個です。手首の手根骨が8個、手のひらの中手骨が5本、指の骨(指骨)が14本で、両手では54個になります(豆状骨以外の種子骨は数えていません)。

Q. 指の正式な名前は?

親指から順に、母指・示指・中指・環指・小指とよびます。指の骨は根元から基節骨・中節骨・末節骨で、母指だけは中節骨がありません。

Q. 手首のレントゲンで「異常なし」でも痛みが続くのはなぜ?

舟状骨骨折は、受傷直後のレントゲンで写らないことがあります。レントゲンで骨折が見えない舟状骨骨折疑いでは、MRIの感度88%・特異度100%、CTの感度72%・特異度99%と報告されています(Mallee 2015)。痛みや嗅ぎタバコ窩の圧痛が続くときは、MRI(使えなければCT)で骨折を確かめます(Carpenter 2014)。

よくある勘違い

Q. 手根骨は7個?

8個です。豆状骨が正面像で三角骨と重なるため、数え落としやすいだけです。近位列は舟状骨・月状骨・三角骨・豆状骨、遠位列は大菱形骨・小菱形骨・有頭骨・有鉤骨です。

Q. 尺骨は親指側の骨?

いいえ。親指側は橈骨、小指側が尺骨です。手首では橈骨のほうが太く、手根骨と大きな関節をつくります。

Q. 手首のX線で骨折が見えなければ、舟状骨骨折は否定できる?

できません。受傷直後のX線に写らないことがあります。疑いが続くときに骨折を確かめるにも除外するにも最も正確なのはMRIで、CTは確認には役立ちますが除外には不十分とされています(Carpenter 2014)。

今日のまとめ

  1. 手根骨8個は2列。親指側から舟・月・三角・豆/大・小・頭・鉤。手の骨は片手27個(母指は中節骨がない)。
  2. 親指側が橈側、小指側が尺側。指の関節は指先からDIP・PIP・MP、手根骨との境がCM。
  3. 手首X線はGilulaの3本の弧・すき間・側面の一直線を見る。X線で見えない舟状骨骨折は疑いが続けばMRI。

参考文献

  1. Gilula LA. Carpal injuries: analytic approach and case exercises. AJR Am J Roentgenol. 1979;133(3):503-17. PubMed
  2. Carpenter CR, Pines JM, Schuur JD, et al. Adult scaphoid fracture. Acad Emerg Med. 2014;21(2):101-21. PubMed
  3. Mallee WH, Wang J, Poolman RW, et al. Computed tomography versus magnetic resonance imaging versus bone scintigraphy for clinically suspected scaphoid fractures in patients with negative plain radiographs. Cochrane Database Syst Rev. 2015;2015(6):CD010023. PubMed
  4. Bilgin Y, Ekinci M, Ozmen Z, et al. Radiological measurement parameters of distal radius and wrist measured on X-rays in the Turkish population. North Clin Istanb. 2023;10(4):484-489. PubMed

症例画像は各図の引用元のとおりです。

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