MDCTとスライス厚 薄い画像・再構成・冠状断

CTで「スライス厚1mmで再構成します」「冠状断も見ます」と聞きました。マルチスライスCT(MDCT)になって、読影は何が変わったのですか?スライスは薄いほどよいのでしょうか。
MDCTは体軸方向に検出器が複数列あるCTで、薄いスライスを短時間で撮れます。薄いデータがあるとどの断面にも作り直せ、小さな病変も追いやすくなります。ただしノイズや枚数も増えるので、スライス厚と再構成関数の使い分けが大切です。

先に結論:薄いスライスは「小病変と任意断面」に強く、厚いスライスは「ノイズの少ない全体像」に強い。目的で使い分ける

項目 ポイント
MDCTとは 体軸方向に複数列の検出器を並べたCT。1回転で複数の断面を同時に撮り、薄い画像を短時間で得られる
薄いスライス 画素が立方体に近い(等方性ボクセル)ため、冠状断・矢状断・斜めの断面を横断像と同じ画質で作れる
スライス厚の使い分け 薄いと小さな病変が見えやすく、厚いとノイズが少なく読む枚数も減る。薄いデータは保存し、厚い画像で通読して薄い画像で確認する
見落としの原因 厚いスライスでは部分容積効果で小さな病変が薄まる。再構成関数(軟部・肺野・骨)の選び違いも見え方を変える

MDCT(マルチスライスCT)とは

従来のヘリカルCTは、体軸方向(頭尾方向)に並ぶ検出器が1列でした。MDCT(multidetector-row CT)は、この検出器を体軸方向に複数列並べた装置で、X線管が1回転する間に複数の断面のデータを同時に集めます。現在の一般的な装置は64列以上で、さらに広い範囲を1回転で撮れるものもあります。

項目 単列のヘリカルCT MDCT
1回転で得る断面 1つ 複数(検出器の列数ぶん)
撮影の速さ 範囲が広いと時間がかかる 広い範囲を短時間で撮れる
薄いスライス 広い範囲では撮影が長くなる 広い範囲でも薄く撮れる
造影の時相 動脈相など短い時間帯を撮り分けにくい 動脈相・門脈相などを撮り分けやすい
断面の作り直し 画質が落ちやすい 冠状断・矢状断も高画質

腎臓のMDCTの総説では、薄いスライスにより空間分解能が高まること、スライスを足し合わせて(厚くして)コントラスト分解能を高められること、64列の装置で等方性ボクセルが実現したこと、任意の断面の画質が撮影した断面の画質に並んだことがまとめられています。また、撮影が速くなったことで、動脈相・皮髄境界相・ネフログラム相・排泄相のように時相を分けて撮れるようになりました(Coppenrath 2006)。同じ総説は、薄いコリメーション(検出器の幅)で撮ると被ばくが増えうることにも触れており、プロトコールを施設ごとに決める必要があります。

等方性ボクセルとは:なぜどの断面にもなるのか

CT画像の1画素は、実際には厚み(スライス厚)を持つ小さな立方体のかたまり(ボクセル)です。体の横断面の分解能はもともと細かい一方、スライス厚が厚いと体軸方向だけ粗くなります。

ボクセルの形 特徴 冠状断・矢状断
厚いスライス(体軸方向が長い) 横断像は細かいが、体軸方向は粗い 階段状・ぼやけた画像になる
薄いスライス(立方体に近い=等方性) どの方向にも分解能がほぼ同じ 横断像に近い画質で作れる

この性質のおかげで、1回の撮影から冠状断・矢状断・斜めの断面、血管の立体像まで作れるようになりました。MPR・MIP・VRの使い分けはMPR・MIP・MinIP・VRとはで解説しています。ここでは、スライス厚と見落としの関係に絞って見ていきます。

スライス厚で何が変わるか

撮影時の検出器幅(コリメーション)と、画像にするときのスライス厚(再構成スライス厚)は別のものです。薄いコリメーションで撮ったデータがあれば、あとから厚い画像にも薄い画像にも作り直せます。逆に、厚くしか撮っていなければ、あとから薄くはできません。

項目 厚いスライス(例:5mm前後) 薄いスライス(例:1mm前後)
ノイズ 少ない 増える
画像の枚数 少ない(通読しやすい) 多い(読むのに時間がかかる)
小さな病変 部分容積効果で薄まりやすい 輪郭と濃度が保たれやすい
冠状断・矢状断 画質が粗い 高画質
向く場面 全体の通読、軟部組織のコントラスト 小結節、細い血管・管腔、骨折、MPR・3D

実際のデータでも、薄さの差は結果に現れます。低線量CTで2mmと10mmのスライスを6人の放射線科医が読んだ検討(360人)では、両方で同じ診断になった結節は67.6%でした。10mmでは見逃しが10.6%、診断が食い違ったものが21%ありました。検出できるかどうかは結節の大きさとCT値(濃度)に強く左右されました(Sinsuat 2011)。

転移性肺腫瘍106例の検討では、5mmのCTで結節が1個とされた例は1mmの結果との不一致が少なく、2個以上とされた例では不一致が多くなりました。著者らは、5mmで2個以上見えるときは正確な個数を知るために1mmで見直す必要があるかもしれないと述べています(Iyoda 2021)。

虫垂炎が疑われる212人のMDCTを、5mm・3mm・2mm(間隔1mm)で再構成して比べた研究では、薄くするほど虫垂が見える割合と読影者の自信が上がりました。一方、診断の正しさそのものは再構成法で有意に変わりませんでした(Johnson 2009)。薄くすればいつも診断が変わるわけではなく、「見える安心感」と「見落としにくさ」が変わると考えるとわかりやすいでしょう。

症例 60歳代男性 癒着性バンドによる閉塞(閉塞ループ)

癒着性バンドによる閉塞ループ 造影CT 冠状断像 U字型ループ
引用:Radiopaedia(Closed loop small bowel obstruction due to adhesive band – U-shaped loop)

癒着性バンドによる閉塞ループ 造影CT 矢状断像 口側の移行部
引用:Radiopaedia(Closed loop small bowel obstruction due to adhesive band – U-shaped loop)

骨盤内に孤立して拡張し、液体で満たされた小腸の区間があります。症例ページでは、鋭い屈曲を示す隣り合う2つの移行部(transition point)によってできた区間とされ、冠状断ではU字型のループが示されています。矢状断の図には、閉塞ループへ入る口側の移行部は矢状断でしかよく見えないと注釈があります。横断像だけでは追いきれない所見を、薄いデータから作った別の断面が補います。

再構成関数(カーネル):軟部・肺野・骨の使い分け

CT画像は、撮影した生データに再構成関数(カーネル、フィルタ)をかけて作ります。同じデータでも関数を変えると、画像の質が変わります。

関数の種類 特徴 主な使い道
軟部用(なめらか) ノイズが少なく、わずかな濃度差を見分けやすい。輪郭はやわらかい 腹部・縦隔・脳などの軟部組織
肺野用(鮮鋭) 輪郭がくっきりし、細かい構造が見える。ノイズが増える 肺の小葉構造、間質、結節の辺縁
骨用(鮮鋭) 骨梁や皮質のわずかな断裂が見やすい 骨折、骨の構造、副鼻腔・側頭骨

再構成関数と、画面で調節するウィンドウ(窓)の幅・レベルは別のものです。窓は同じデータの見せ方を変えるだけで、関数は画像そのものを作り直します。肺野条件・縦隔条件と呼ばれるものは、関数と窓の組み合わせを指すことが多いです。

スライス厚と関数は、数値の測定にも影響します。肺気腫の程度を測る指標(肺の低吸収の割合)を、21人のデータから20通りの厚さと関数の組み合わせで求めた研究では、厚さと関数の影響は有意で、指標が中程度の人ほど大きく変わりました(Gierada 2010)。経過を比べるときは、撮影条件と再構成条件を揃えて比較するのが基本です。比較のコツは比較読影とはでまとめています。

部分容積効果と見落とし

1つのボクセルの中に、濃度の違う組織が混ざると、CT値はその平均になります。これが部分容積効果です。スライスが厚いほど、小さな結節の周りの空気や脂肪が混ざり、結節は薄く(低吸収に)見えます。嚢胞のCT値を測るときに、壁や周囲の影響で数値が変わるのも同じ仕組みです。

場面 起こること 対策
小さな肺結節 濃度が薄まり、血管や気管支と区別しにくい 薄いスライスで連続して追う
小さな病変のCT値の測定 周囲の影響で値がずれる 病変の中心に小さめの測定領域を置き、薄い画像で確認する
細い構造(虫垂・尿管・血管) 連続性が追えない 薄いスライスとMPRを併用する
骨の境界 皮質の連続性が不明瞭になる 骨用の関数と薄いスライスで見直す

部分容積効果は、ほかのアーチファクトとあわせてCTのアーチファクトで見え方を解説しています。

冠状断・矢状断が読影をどう変えたか

薄いデータからのMPRは、診断の精度や確信度を実際に高めています。急性の椎体骨折55人(70椎体)の検討では、矢状断と冠状断のMPRだけを読んで、骨折した70椎体すべてを診断でき、偽陽性もありませんでした。不安定骨折43個のうち42個もMPRだけで正しく診断され、読む画像の枚数も有意に減りました。ただし、複雑な骨折や判断に迷う所見では、横断像を読む必要があるとされています(Begemann 2004)。

小腸閉塞69人の16列MDCTの検討では、移行部の位置を当てる正確さが、横断像のみで86%・84%(2人の読影者)、MPRを加えると93%・90%でした。読影者の確信度もMPRで有意に上がりました(Hodel 2009)。腸閉塞の読影におけるMPRや最大値投影などの後処理の使い方は、総説にもまとめられています(Aufort 2005)。

実践:薄い画像と厚い画像の読み分け

順番 やること
1 厚め(5mm前後)で全体を通読し、大きな所見を拾う
2 気になる所は薄い画像(1mm前後)に切り替えて連続性・輪郭を確認する
3 冠状断・矢状断を作って、管状の構造や臓器の境界、移行部を追う
4 肺野や骨は、専用の関数の画像で見直す
5 過去画像と比べるときは、スライス厚・関数・断面を揃える

腹部の横断像の見方は腹部CTの読み方も参考にしてください。

よくある疑問(Q&A)

Q. スライスは薄いほどよいのですか?
A. 薄いほど小さな病変や細い構造は見えやすくなりますが、ノイズが増え、読む枚数も増えます。虫垂のMDCTでは薄いほど描出と確信度が上がりましたが、診断の正しさは有意には変わりませんでした(Johnson 2009)。目的に合わせて使い分けます。

Q. 1mmのデータは必要ですか?
A. 小さな結節の個数や細い構造の確認、冠状断・矢状断の作成に役立ちます。転移性肺腫瘍では、5mmで結節が複数見えるときに1mmでの見直しが必要かもしれないとされています(Iyoda 2021)。

Q. 前回と画像の見え方が違うのですが、病変が変わったのでしょうか?
A. スライス厚や再構成関数が違うと、大きさやCT値、肺気腫の指標などが変わります(Gierada 2010)。条件が違うときは、同じ条件で再構成した画像で比べる必要があります。

Q. 薄く撮ると被ばくが増えますか?
A. 薄いコリメーションで撮るとノイズが増えるため、被ばくが増えうることが総説で指摘されています(Coppenrath 2006)。実際の撮影条件は、検査の目的に合わせて施設が決めます。検査について心配な点は、担当の医師や技師に相談してください。

参考文献

  1. Coppenrath EM, Mueller-Lisse UG. Multidetector CT of the kidney. Eur Radiol. 2006;16(11):2603-2611. PubMed
  2. Sinsuat M, Saita S, Kawata Y, et al. Influence of slice thickness on diagnoses of pulmonary nodules using low-dose CT: potential dependence of detection and diagnostic agreement on features and location of nodule. Acad Radiol. 2011;18(5):594-604. PubMed
  3. Iyoda A, Azuma Y, Sakai T, et al. Necessity of Thin Section CT in the Detection of Pulmonary Metastases: Comparison between 5 mm and 1 mm Sections of CT. Ann Thorac Cardiovasc Surg. 2021;27(6):366-370. PubMed
  4. Johnson PT, Horton KM, Kawamoto S, et al. MDCT for suspected appendicitis: effect of reconstruction section thickness on diagnostic accuracy, rate of appendiceal visualization, and reader confidence using axial images. AJR Am J Roentgenol. 2009;192(4):893-901. PubMed
  5. Gierada DS, Bierhals AJ, Choong CK, et al. Effects of CT section thickness and reconstruction kernel on emphysema quantification relationship to the magnitude of the CT emphysema index. Acad Radiol. 2010;17(2):146-156. PubMed
  6. Begemann PG, Kemper J, Gatzka C, et al. Value of multiplanar reformations (MPR) in multidetector CT (MDCT) of acute vertebral fractures: do we still have to read the transverse images? J Comput Assist Tomogr. 2004;28(4):572-580. PubMed
  7. Hodel J, Zins M, Desmottes L, et al. Location of the transition zone in CT of small-bowel obstruction: added value of multiplanar reformations. Abdom Imaging. 2009;34(1):35-41. PubMed
  8. Aufort S, Charra L, Lesnik A, et al. Multidetector CT of bowel obstruction: value of post-processing. Eur Radiol. 2005;15(11):2323-2329. PubMed

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